- 百合カップルスレ@18禁創作板10
253 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/26(水) 00:35:07.36 ID:s7eEU985 - 撫子寮の人です。久しぶりに自作を投下。
エロ無し&超短いですが、賑やかしにでもなれば。
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254 :彼女と愛に関する幾つかの考察[sage]:2014/11/26(水) 00:36:56.02 ID:s7eEU985 - 「愛、というものがあるわね」
そんなことを先生が言ったのは、二人してソファでごろごろしている時だった。 「いえ勿論、そんなものがあったら、という仮定の話だけど」 「いや、ちゃんとありますから。……ある、と思いますけど。仮に定めなくても大丈夫ですって」 恋人の前で何を言い出すかな、この人は。 先生が思いつきで変な事を言うのは毎度の事だったけど、今回はその中でも一際妙で難しそうだった。なんだろう。愛? 哲学の話でもするのだろうか。この人の専門は社会学のはずだけど。 僅かに身じろぎをする度、パンツスーツの腰までかかった黒髪がさらさらと揺れた。しどけなくしなやかなその様子は、何と言うか黒猫のような妙な色気がある。 ……スーツのまま横にならないでって、もうちょっと厳しく言うべきだろうか。あれ、皺になると色々と面倒だから。 「『それ』は生物学上、子孫を残すためのシステムに過ぎないという説があるわ。人を好きになるという状態は、つまりセックスをするための準備段階に過ぎないというような、ね」 眉をひそめる私に構わず、横で寝そべる先生は続ける。 黒猫のような、というか。んんー、と伸びをして見せる姿は猫その物だ。気持ち良さそうに目を細めて、横に座っていた私の太ももに腕を預ける。先に陣取っていた読みかけの小説は、ひょいと取り上げられてしまった。 ……まぁ、いいけど。こんな話を聞きながら、恋愛小説を読む気にはならない。 「そうだとすると、恋愛感情と繁殖欲とはイコールということになるわね。つまりこの主人公と恋人も肉欲垂れ流しのエロエロって事になるんだけど」 先生が、開いたページから目線を上げる。目が合った。涼しげな笑み。 「どう思う?」 「……はぁ」 いや、どうとか言われても。 ひとつ、ため息をつく。こんなことは慣れっこだ。元から、乙女心だとか浪漫だとかいうものとは正反対にいる人なのだ。 「それ、言ってる先生の存在からしてもう破綻してるじゃないですか。私と先生が愛し合った所で、子供なんてできないでしょう」 「そうなのよねぇ。だから異端なんだと思うのよ、私。ほら、言うじゃない」 ――異常性愛って。 流行りのファッションでも話題にするかのように先生の口から転がり落ちた言葉。それがまるで茨の棘のように、ちくりと妙に心に刺さる。 ……異端で、異常。『普通』から外れた、私たち。 「異常ですか」 「異常でしょう。だって、遺伝子的に無意味極まりないじゃない」 先生は肩をすくめる。 「女同士愛し合った所で、子供が出来る訳でもなし。最近はそういう技術も開発されつつあるっていうけど、そんなの設計段階では想定されていない訳でしょう。だったら」 だったら。 その先を、何となく聞きたくないような気がして。けれど先生の綺麗なソプラノに、つい耳を傾けてしまう。 「異常性愛者の何が異常かと言えば、それは繁殖を度外視している所にあると思うわ。……貴女の意見は、どう?」 先生の口調は、ゼミで質問をする時と全く同じものだ。優秀な教授が優秀な学生に掛ける、無味乾燥な問い。
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255 :彼女と愛に関する幾つかの考察[sage]:2014/11/26(水) 00:38:51.71 ID:s7eEU985 - ……だから、私が発した声が思ったより尖った響きになったのも、仕方ないことなのだろう。
「よく、分かりませんけど。きっと愛って、そういうものじゃないんじゃないですか」 「……んん?」 「少なくとも私は、先生の子供が欲しいから先生の事好きになったわけじゃありませんし。システムとか子孫繁栄とか、言われても分かりませんし正直知った事じゃないです」 先生が、ゆっくりと上体を起こすのが見えた。続いて私の肩に手がかかる。 先生の手は、少し冷たい。……それが心の温度のように思えて、時々不安になる。 「私は、先生が好きだから好きなだけです。何か見返りが欲しい訳じゃ……ありません」 そう言っているうちに、自分でも口調が不貞腐れていったのが分かった。 きっと先生は、私に自分から言わせたかったのだろう。『好き』だってこと。さっきまでの難しい話は、そのための呼び水だったに違いない。 それが何となく腹立たしくて、むかむかして、じくじくする。 ……別に、先生に遊ばれるのが嫌な訳じゃない。 ただ、ちょっとだけ考えてしまう。いつも必死になるのは、私の方だから。先生は本当に私のことを、遊び相手ではなく恋人として見てくれているのだろうか、なんてことを。 だって、この話がもし本気なら、それこそ私を愛する理由なんかない訳で―― 先生はちらりとこちらを見た。髪の合間から覗く、黒瑪瑙のような綺麗な瞳。 その瞳は相変わらず、私の心を全て見透かしてしまうかのような色をしていた。 「いらないの? 見返り」 「……嘘付きました。キスしてほしいです」 「キスだけでいいの?」 「嫌です。好きって言ってほしいです。抱きしめてほしいです。抱きしめて、いっぱい愛して、ぐちゃぐちゃにしてほしいです」 「欲張りね」 そんなの、先生のせいです―― そう言おうとした私の唇を、先生の唇がふさいだ。あ、と目を丸くする間もなく、すぐにその柔らかな感触は離れていってしまう。 代わりに私に向けられたのは、満面の笑みだ。あぁもう、今まで小難しい話をしてたっていうのに、子どもみたいに無邪気な顔で。 「そんなあなたが、私は大好き」 ……そんな言い方は、とてもズルイと思う。 だから私は、咄嗟に何を言ったら良いのか分からなくて。結局不貞腐れた声のまま、言った。 「……私を捨てたら末代まで祟りますよ、先生」 「あら、それには及ばないわよ」 そう言って先生は笑った。 「だって私が末代だもの。非常に心苦しくて恐縮なのだけど、私の家には、愛ゆえに私の代で途絶えてもらいましょう」 ……そして、さらりとそんな物騒なことを言ってのける。 「愛ゆえに、ですか」 「愛ゆえに、よ」 ままならないわねぇ、と先生はうそぶく。いいのかなぁ。先生の家、昔から続く名家だと聞いたことがあるけど。 けど、それよりも何よりも、秤にかけるまでもなく私を選んでくれたのが嬉しくて堪らない。我ながら簡単な女だとは思うけど、だってそんなの仕方ないじゃない。 「柑奈ちゃん」 ほら、名前を呼ばれただけで、こんなにもドキドキしてる。 見つめられて、息を吹き掛けられるだけで、もっともっと好きになる。 「今日のスケジュールを、教えて?」 「これから二時間後に講義があります。……もう、ズル休みはダメですよ?」 「そう」 先生は私の肩を抱いて、ゆっくりと押し倒した。その唇が私へと落ちる。今度はただ合わせるだけじゃない、恋人同士のキス。 互いの唇に銀の橋をかけて、先生は私に囁きかける。 「じゃ、たっぷり二時間は、こうやっていましょ――私とあなたの命題を証明するためにも、ね」 ――そうして。 私たちは今日も、遺伝子に反逆する。 <了>
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- 百合カップルスレ@18禁創作板10
256 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/26(水) 00:41:32.74 ID:s7eEU985 - 投稿完了です。やっぱりトリップとか付けた方がいいのかなぁ。
それでは、お粗末さまでした。
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