- 実況パワフルプロ野球のSS Part14
519 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/10(月) 08:58:36.65 ID:o5HRXDNc - 久々にいってみようと思いつきで書いていたらよく分からないものが出来上がってしまった
モテる友沢とやきもきするみずきちゃん+αin2013準拠エロは無し
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520 :1[sage]:2014/11/10(月) 08:59:59.02 ID:o5HRXDNc - 「橘ただいま戻りましたー……なによ、ここにも居ないじゃない」
部室に入ると、聖と進くんが向かい合って座っていた。私が探している友沢先輩は影も形も見えない。 「む、みずきか……ここは外角にカーブだな。高さはアバウトで良いぞ」 「了解です」 「何してんの?」 「ぱわぷろだぞ。矢部先輩から借りたんだ」 「対戦……?じゃないか。PSP一つだし」 「CPUと試合をしているんですよ」 「私が操作すると一つもアウトが取れなくてな。進にお手本を見せてもらっているのだ。たまに指示も出す」 機械音痴もここまで来ると哀れである。あのゲームは現実に忠実というわけではないから、仕方ないのかもしれないが。 「そんなんじゃ進くんがつまらないでしょうが」 「僕は大丈夫ですよ?聖さんの配球も参考になりますし」 「はぁ……君ってどこまでも親切よね。まぁ良いか。ところでさ、二人とも、友沢先輩どこに居るか知らない?」 「先輩なら、少し前までここに居ましたよ」 「うむ。マネージャーに呼ばれてどこかに行ったようだ」 「……もしかして、『また』お呼ばれしたのかしら」 「そうかもしれませんねぇ」 練習の前後に、友沢先輩が消えることは割とよく有る話だ。嫌な予感はしていたが、案の定そういう事らしい。
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521 :2[sage]:2014/11/10(月) 09:02:19.03 ID:o5HRXDNc - 「かーっ!人に向かって偉そうに『走って体作って来い』とか言うくせに何なの!自分は女の子に呼ばれて色ボケ?ふざけんな!」
「こらこら、別に先輩が悪いわけじゃないだろう」 「先輩、かっこいいですからね。仕方の無い面も有るかと思います」 特待生扱いの転校という事もあって、先輩は校内でもちょっとした有名人である。 昔は生意気で冷たいような所が目立っていたのだけれど、怪我をして以来良くも悪くも丸くなってしまった。 元々見た目はちょっといい感じなのだ。野球にはストイックな反面、普段は隙があるというギャップも相俟って、女子からの評価は鰻上りであった。 「どうせ『今は野球があるから』とか言って断るんだから、最初から無視すればいいのに。馬鹿?」 「それでは相手が可哀想だ」 「私はもう随分前からスライダー教えてもらう約束してるの!こうも頻繁にないがしろにされたらたまったもんじゃないわ!」 夏の大会で自分の投球の幅の狭さを痛感した私にとって、スライダーの習得は急務である。 既に投手を引退していて、故障まで抱えている先輩に教えを請うのは、それだけ先輩の技術を認めているからなのに。 「はぁ……何かもう今日はいいわ……適当にクールダウンして帰ろ……」 「先輩が戻って来たら、何か言っておきますか?」 「もう二度とアンタから教わることは無いって伝えておいて。んじゃ」 後ろ手で愛想を返しつつ、私は部室を後にした。 ―― 「行ってしまったな」 「うーん……どうしましょう。先輩が戻ったら、そのまま伝えるべきでしょうか」 「まぁ、問題無いんじゃないか。先輩なら、こういう時のあいつの扱い方は心得ているはずだし」 「それもそうですね。あ、次はどうします?」 「フォーク……は今使ったか。じゃあアウトローのストレートだ」 「うーん、ここは僕と違うなぁ。参考になります……あ、失投……」カキーン 「なー?!」
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522 :3[sage]:2014/11/10(月) 09:04:53.34 ID:o5HRXDNc - ――
部室を出た直後、校舎の方に視線を向けたら、先輩っぽい後姿が見えたような気がした。 追いかけるのは癪だったが、かと言って気にならないわけではない。 聖達には突き放した言い方をしたけれど、結局私に今一番必要な技術を持っているのは間違い無いのである。 (ここは一つ大人になって、先輩を許してあげるべきか……) そんな事を考えながら、校舎の方に足を向ける。 噂は色々と聞こえてくるけれど、実際にどんな娘が先輩に言い寄ってくるのかは見たことが無い。ついでに見てしまえ。 他人の逢瀬を覗くのはあまり褒められた事じゃあないが、こっちは待たされているのだからそれくらい許されるだろう。 先輩が消えていった校舎裏の方へ壁沿いに進む。曲がり角で一度止まって、物音を立てないように角の先を覗き込もうとすると。 「えぇと……話っていうのは?」 (ビンゴー!) 思わず壁にへばり付いてしまった。この位置から問題なく声が聞こえるという事は、曲がってすぐの所に先輩が居るという事だ。 改めて細心の注意を払いながら覗き込む。 「あ、あの……私」 (……うひゃー……まさか、あの娘とはね) 先輩の背中越しに見えたのは、隣のクラスの娘。学年、いや校内でも五指に入るのではと評判の美人さんだ。 本格的に野球をやっている私なんかとは比べようも無い、思わず守ってあげたくなるような、女の子らしい女の子である。
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523 :4[sage]:2014/11/10(月) 09:06:29.03 ID:o5HRXDNc - (このレベルの娘でも振るんだから、全く罪作りよねぇ……ん?)
考えてみると、確実に振ると決まっているわけではない。もしかしたら、ここでカップル成立というのも有り得るのだ。 おしとやかに微笑む彼女の横に、笑った友沢先輩が立っている――そんな光景を想像してしまった。 (……お似合い、なのかな) 何故かその架空の光景は、私の心に重く、重く圧し掛かる。 「せ、先輩!私、先輩の事、中学の時から知ってて……ずっと憧れてたんです!」 (私は小学校の頃から知ってるっつーの) 舌打ちをしてしまいそうになる。この娘の事が特別気に入らないというわけでは決して無いのだけれど、 男の子に媚びる声音が何だか腹立たしかった。自分でもよく分からない内に、黒い感情はどんどん膨らんでいく。 「だから、もしよければ、付き合ってくれません……か?」 一体私はどうしてしまったんだろう。普段友達の恋愛話なんかを聞いている時は、すごく応援してあげたくなるというのに。 少しずつ弱気になっていく彼女の声を聞いても、気分が悪くなっていくだけ。 その反面、先輩の返事を聞き逃すまいと、耳に全神経を集中させている。まるで、自分が告白の返事を待っているかのようだ。
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524 :5[sage]:2014/11/10(月) 09:07:21.21 ID:o5HRXDNc - 「……ごめん」
「あっ……」 少し間を置いて、友沢先輩が口を開いた。一言目で大勢は決している。彼女の口から、静かに息が漏れる。 (まぁ、そうなるわよね。うんうん!) こういうのはお決まりのパターンなのだ。自分には野球がある、と先輩は続けるのだろう。 女の子の気持ちなんて全然理解しようとしない、でもとても先輩らしい答え方。私の期待通りの答え。 「俺、実は好きな子がいるんだ。だから……気持ちは嬉しいけど、ごめんなさい」 (そうそう、好きな子が……) 「……は?」 高い所から突き落とされたような、もしくは冷や水でも浴びたような。そんな気がした。
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525 :6[sage]:2014/11/10(月) 09:08:29.31 ID:o5HRXDNc - ――
橘と約束している時に限って呼び出しを受ける事が続いていたから、今日は土下座する覚悟くらいはしていたのだけれど、 グラウンドに戻った俺を待っていたのは、珍しく黙々と走り込みを続ける彼女だった。 普段こういう時は俺を見つけるなり、飛び蹴りをかますくらいの勢いで突っ込んできて、嵐のように罵倒の言葉を並べ立てるのに。 どこか具合でも悪いのか、と聞いても言葉は少なく、大丈夫、気にするな、の一点張り。 結局そのままフォームの調整なんかを始めたはいいが、本人がどこか上の空で成果は挙がらず、適当な所で練習はお開きとなった。 それまでずっとだんまりを決め込んでいた橘が口を開いたのは、着替え終わってから、何となく部室に残っていた時の事だ。 「……先輩」 「ん?」 野球雑誌に落としていた視線を上げると、どこか落ち着かない様子の橘がそこに居た。 実を言えば、練習している時から、何か話したいのだろうという察しは付いていた。 だからわざわざ部室で手持ち無沙汰に過ごしていたのだし、そこら辺は橘も理解していたようだ。 「えっと……その、先輩のですね」 「おう」 「す、好きな……」 「好きな?」 「……好きな……ど、動物って何ですか?」 「何だそりゃ」 「な、何でも良いじゃないですか!ただ何となく聞きたくなっただけです!」 「はぁ?まぁ良いけど……そうだなぁ……」
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526 :7[sage]:2014/11/10(月) 09:11:45.07 ID:o5HRXDNc - 「……猫、かな。出来れば高い奴」
「……ペルシャとか?先輩の家苦しいのに?」 「今それを言うなよ……まぁ、自由で、わがままで、最初はとっつきにくいけど、懐いたら物凄く可愛いような……そういう猫が良いな、俺は」 「ふ、ふーん……何か意外な感じですね」 「お前の話したい事、それで終わりで良いのか?」 「……まぁ、はい」 「だったら帰るぞ」 「あっ!ちょっと、今日私待たせたんだからスイーツ奢って下さいよ」 「金が無いのを分かっててたかるのかい」 「パワ堂の半額スイーツなら良いでしょ!」 「はぁ……仕方ない、分かったよ。ほら、行くぞ」 橘はまだ何か聞きたい事があるんじゃないか。そういう気もしたが、本人が良しと言っているのだからそれで良いのだろう。 学校を出る頃には、奔放で自分勝手な橘に戻っていて、少し安心した。
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