- 強制喫煙シチュ 2
392 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/09(日) 03:24:29.72 ID:I18RrseN - 笑子(えみこ)という女の話。
笑子はずっと女優にあこがれ、高校では演劇部に入っていた。 まじめで、成績優秀だったため周囲からは一流大学への進学を強く勧められたが、 笑子の強い希望により高校卒業後すぐ単身上京し、小さな劇団に入団した。 その劇団を仕切る演出家、五郎は非常に高慢で 厳しい指導方針から何人もの役者の卵を潰してきた。 笑子も当然それを知りつつ、一から修行する覚悟で入団したのだった。 五郎は入団した新人すべてに対し、まず人格否定から入る。 洗礼とでも言うべきだろうか。 笑子の凛とした美しさ、それでいて純粋で誰からも親しまれそうな嫌味のない性格。 いっぱしの女優にするためにはそんなものは必要なかった。 五郎は連日笑子に対し人間としての尊厳を失うほどの罵詈雑言を浴びせ、 ときには暴力とも取れるような稽古を行った。 新人は大体この段階で劇団を去ってしまう。時には自殺未遂する者まで現れた。 しかし笑子は耐えた。どんな罵声を浴びせられても、身体中アザだらけになっても 女優になる将来を夢見て、自分を失わずに耐え続けたのだった。 五郎もそんな笑子を認め始めていた。 この娘は劇団始まって以来の大女優になるかもしれない。そんな期待さえ持ち始めていた。 五郎は笑子にひとつの役を与えた。 それは場末のアバズレ女の役であった。 高校卒業したてでまだ未成年の笑子にとっては、あまりに不似合いな役だといえよう。 しかし笑子はどんな役であろうと初めての役をもらえて心の底から嬉しかった。 笑子は様々な映画や舞台を観て「アバズレ」というものを研究した。 しかしキチンとした教育を受けてきた笑子には、どうしてもアバズレになりきることができなかった。 自分なりのアバズレを演じても、五郎のOKは出なかった。 そんな笑子についに激昂した五郎は、笑子に試練を与えた。 「おう、これ吸ってみろや」 五郎が笑子に投げつけたのは、くしゃくしゃになったタバコのソフトケースだった。 「それが吸えねえようなら女優なんて今すぐやめちまえ」 笑子にはわかっていた。 アバズレになり切るためにはそれを避けられないことを。 しかし笑子にはどうしてもできない理由があった。
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393 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/09(日) 03:26:15.82 ID:I18RrseN - 笑子は中学生の頃、母親を肺ガンで亡くしていた。
笑子の父親は食事の合間にまでタバコを吸うほどのヘビースモーカーで、いつも母は そんな父に小言を言っていた。 しかし父親はタバコをやめなかった。結果病気になったのは父ではなく母の方であった。 母は死に際、笑子に「お父さんを恨まないで」と言い残し逝った。 父はその日以来二度とタバコを吸わなくなった。 「みんなが見てる前で吸え、ほら、お前の根性見せてみろ」 五郎はそういうと笑子の目の前にタバコを一本差し出した。 笑子の目には涙がいっぱい溜まっていた。 うっうっと嗚咽のようなものが溢れてくる。 あのときタバコなど何があっても吸わないと心に誓ったのだ。 「おら、簡単なことだろうが、吸えよ!」 五郎は笑子の手を引っ張ると無理やり指を開き、人差し指と中指の間に タバコをねじ込んだ。 「おら、こうやって持って、俺が火ぃつけたらすぐに吸うんだぞ」 笑子は五郎にされるがままになりながらまだ葛藤していた。 タバコを口に近づけようとする手が小さく震えていた。 五郎のつけたライターの火が、タバコの先端をチリチリと焦がす。 「さあ、さあ吸え、思いっきり」 「う、うう、ううう〜・・・!!」 悔しさのあまり思わず涙があふれる。 声にならない声を漏らしながら、笑子は思いっきり吸い込んだ。 (お母さん、ごめんなさい) 数秒後、笑子の頭の上に白い煙が勢いよく舞い上がった。
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394 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/11/09(日) 03:27:28.07 ID:I18RrseN - 笑子が十八のときに上京してから二年が経った。
笑子の父は一人、田舎の家で笑子のことを案じながらも静かに生活していた。 そんな折、家を出て以来一度も姿を見せなかった笑子が突然家に戻ってきた。 「ただいま、お父さん」 二年ぶりに現れた笑子は、もう父親の知る笑子ではなかった。 笑子は五郎のしごきに耐え続け、気づいたときには 笑子という人格は五郎にすっかり蹂躙されてしまっていた。 最初に与えられたアバズレ役でタバコの試練を乗り越えて以来、 笑子は驚くほどの成長を見せ、見る見る垢抜けていった。 化粧を覚え、男を覚え、女としての魅力を開花させた笑子は、 父親の知るあどけない純粋な笑子とは全くかけ離れてしまっていた。 「ねえ、タバコ吸ってもいい?」 笑子は手馴れた手つきでブランドバッグからソフトケースのタバコを取り出す。 「お前、タバコ吸うのか」 「うん、お芝居で必要だったからね」 笑子はなれた手つきでタバコに火をつけ、片膝を立てたまま旨そうにタバコをふかした。 「昔のお父さんみたいだね、アタシ。多いときは一日二箱吸っちゃうの」 「そうか」 「お母さんが見たらなんて言うかなあ。きっと口うるさく注意されちゃうだろうな」 「そうだな」 「私ね、もうお芝居やってないんだ。今はキャバで、あ、キャバクラで キャバ嬢やってるんだけど、まあ今の仕事にお芝居の経験もそれなりに役立ってるから 無駄じゃなかったかなって思うのね。 それで好きな人がお芝居の演出家の人なんだけど、 今一緒に住んでて、私が支えてあげなきゃいけなくて」 「うん」 「ふぅーーーー、で今度その人が新しい劇団立ち上げるらしくて まとまったお金が必要だから、言いにくいんだけど、良かったらお父さんにお金貸して欲しくて」 「いくらだ」 「えっ貸してくれんの?よかったぁ〜四百万くらい必要なんだけどさあ」 笑子の身体からは香水のニオイとヤニのニオイが混ざり合ったなんとも不快なニオイが漂っていた。 ときおり除かせる歯は黄色く変色し、タバコのヤニを張り付かせている。 母の遺影には目もくれず、ゴテゴテのネイルを施した指で一万円札を数える娘の姿を、 笑子の父はいつまでも見ていた。 終わり
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