- 百合カップルスレ@18禁創作板10
220 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:41:57.09 ID:syi31BWD - 【あんこもなか】 6.あんこ、暴走!
「あ、あたしはもなかが好きだ!好きなんだぁぁあ!」 「やだぁん、あんこったらぁん!愛の告白?」 「ど、どうとでも取ってくれ!とにかく!」 耳の先どころか、指の先まで。身体中を朱に染めて。 「あたしはもなかが好きだ!大好きだっ!」 はにかんだ笑みを浮かべるもなか。 その表情を見て、もなかは可愛いと改めて思う杏子。 「うん、あたしも、あんこが好き…」 「も、もなか…!!」 「ねえ、あんこ…ちゅーして、いい?」 「…………お、おぅ!!」 もなかが目を閉じる。唇がゆっくりと迫り、そして… ※※※ 「うわぁぁぁあああああああああああああああああああああああああっっっ!!」 「ど、どうした杏子!?何があった!」 「入ってくるなクソ親父ぃぃぃぃっ!!」 「ぐぼぉぉおお!?お、お前、その、技は…っ!?ぐはぁっ!!」 悪夢、と言えるかも知れなかった。動悸は激しく、身体中に嫌な汗をかいていた。 悲鳴を上げて跳ね起きたら父親が飛び込んできて、慌てて思わず奥義を放ってしまった。 「くそ…なんつー夢だ…!」 悩むのはやめたつもりだった。ふっきったつもりだった。でも。 自分のもなかへの想いは、友情以上のものかもしれない。いや、恐らく…そうなのだ。 そしてもなかは…「ちゅーして、いい?」などと聞くもなかは…もなか、も? 「わかんねぇ…わかんねぇよ…」 ※ ※ ※ 「よぉ、もなか」 「あ、お、おはよ、あんこ」 「お、おお…あ、あれ?」 「ん?どうかした?」 「い、いや、その…いつもみたいに飛びついてこねえな、と…」 恥ずかしくて顔が火照るからやめて欲しい…と思いながら、実際それがなくなると一抹の寂しさを感じる杏子であった。 「え、えへへ。ちょっとね、もなかもね、少しはおしとやかになろーかなーと」 そう言って笑うもなかの笑みがぎこちない。 「そ、そうか。そりゃい、いい事かも知れねえな」 「でしょでしょ?目指せ!大和撫子!なんだよぉ」 あははははと笑う二人。だが、その様子は端から見て違和感バリバリだった。 ※※※
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221 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:43:14.22 ID:syi31BWD - 「ねえ、朽木さん…もなかと何かあったの?」
「な!?何かってなんだぁ!?な、ななな、何もないぞ!?な、何があるってんだ、おおっ!?」 「…やっぱり、何かあったんだ」 「んぐっ…!いや、その…!!」 (なんで…なんで解ったんだ!? 丸わかりなのである。 「何があったか知らないけど…私たちで良ければ相談に乗るからね?」 クラスメイトの女子からそんな風に言われて、杏子は赤面する。 気を使ってくれている事は解る。だが、おいそれと相談できる性質の事でもなかった。 「あ、ああ…あんがとよ。でもま…多分…自分自身で、決着つけなきゃいけない事なんだと思うから」 「そっか!なんだかわかんないけど…頑張って!応援してる!」 そう言って離れていくクラスメイトを見送って、ふと杏子は気付く。 「そういや…もなかは?」 転校してきて以来、学校では殆ど一緒に過ごしてきたもなかの姿を、その日杏子はろくに見ることが出来なかった。 ※※※ 昼休みの屋上にも、もなかの姿は、ない。 (…避けられ、てるのか? その認識はひどく辛いものだった。 ほんの数ヶ月前には、想像も出来なかった喪失感だ。 (…嫌われ…た?もなかに? ぶるっ!と身体が震えた。まだ冬には早いというのに、冷える。 冷えているのは身体じゃなく、心。 (え、ウソ…だろ?え、あたし…どうすりゃいいんだ? 杏子は一人の屋上で呆然と立ち尽くす。 蒼ざめた顔で、食事もせず、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。 ※※※
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222 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:45:32.48 ID:syi31BWD - 「もなかっ!」
「あん…こ!」 放課後。 1人でそそくさと帰ろうとするもなかを捕まえた。 もなかの手を掴んで、逃げられないように。 柔らかいもなかの手の感触に、頬が火照る。 「んだよ、どこ行くんだ?」 …そんなつもりは無かったのに、刺々しい声が出た。 「ど、どこって…おウチに帰るんだよ、あはは」 「1人でかよ?」 「だ、だってもなかのおウチだもん。もなかしか帰らないよ。もなかのおウチに帰るんだもん。1人でか、かえ、かえりゅん…ぐしっ!」 (…え? 杏子は動揺する。もなかは唇を噛み締め、ポロポロと涙を零し始めた。 「あんこは来れないんだよ、もなかはもなかのおウチに帰るんだもん。ふえ、ふええええっ!!」 「もな、か…な、なんだよ!なんで泣くんだよ!あ、あたしか!?あたしが何か酷い事したのか!?」 「あんこは悪くないよぉだって仕方ないよぉあんこは女の子なんだもんんんんーーー!」 「い、意味わかんねえぞ!も、もなか!ちゃんと説明しろ!なんで…なんであたしを避けるんだよっ!!」 学校の廊下でこんな事をしていれば、注目を集めない訳が無い。 二人の周囲を、既に人垣が取り囲んでいた。 だが、2人はそんな周囲の状況などまるで気にしていない様子だった。 「だってえだってえ…!」 「だからなんだっつーの!!わかんねえよ!頼むよ!言ってくれなきゃわかんねえんだ…!」 杏子はホゾを噛む。友達だと、親友だと、そう思ってきた。 いつしか、それ以上の気持ちさえ、もなかには抱くようになった。 なのに、もなかの気持ちが、解らない。 好き、なのに。なのに、解らない。解ってやれないなんて。 「頼む…!もなか!頼む…!!」 「やだよぉ…!だってぇ…!こ、これ以上…あんこに嫌われたくないもぉ!!」 (…は? 「え?もなか?あたしがお前を嫌う?なんで?なんでだよ?」 「だってえ!ちゅーしてくれなかったし!」 「はああああ!?」 人垣がどよめく。
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223 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:46:44.13 ID:syi31BWD - 「き、気絶するほど、イヤだったの?も、もなかの事、嫌い?あんな事するコ、き、気持ち悪い?だよねだよね…!でもでもでもぉ」
もなかの顔は涙と鼻水でグチャグチャだ。 「あんこが好きなんだもぉ…!だ、だから、嫌われたくないもぉ…!でも、どうしていいか解らないんだもぉ…!」 「もなか…!あ、あたしは…!」 「お願い…お願いだよぉ…もなかの事、嫌いにならないでえ…」 完全に誤解だ。 「もなか!そんなことないぞ!あたしは…」 「あんこぉ…お願いだよぉ…あんこぉ…えぐっえぐっ…ひっく!」 だが、その誤解の原因を作ったのは、他ならぬ杏子なのだ。 そう思うと自分に対して怒りが湧いてきた。 もなかに誤解させ、悲しませた自分が許せなかった。 (で、でも、ど、どうすれば…! 泣きじゃくるもなかには、もはや杏子の声も届いていないようだ。 その時。 人垣の中、一緒に恋バナに花を咲かせた、もなかの危機を知らせてくれた、一緒に海で過ごした、相談に乗るど言ってくれた…杏子のクラスメイトたちが、誰もが同じようなジェスチャーをしていた。 『あんこ!もなかを、抱きしめちゃえ!』 彼女たちは、杏子ともなかをいつも見てきた…そう、彼女たちも、杏子の友達だ。 だから、2人を応援してくれている。朴念仁の杏子と違い、状況からなんとな〜く事情を察して。 (…抱き、しめ、る? (こ、こんな、人だかりの中でかよ!? さっきまで気にしていなかった人だかり。しかし一度意識してしまうと忘れることも出来ない。 (そ、そそそ、そんな事、出来るかあ!! 心で絶叫する杏子。 だが、その絶叫より胸に響く声がある。 もなかの、泣き声。 (…もなか!! 頭が真っ白になる。そして、次の瞬間。 杏子はもなかを抱きしめ…キスしていた。 「そ、そこまでやれとは言ってないわよ!?」 「きゃーっ!きゃーキャーキャー!す、すごいもの見ちゃった!」 「朽木さんやるぅ!!」
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224 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:47:42.35 ID:syi31BWD - 「………!」
もなかは見た。 真っ赤な杏子の顔、ぎゅっと目をつむって、眉間にはシワが寄っている。 プルプルと震え、汗がだらだら流れている。 (あんこ…あんこが、キス、してくれた…! (う、嬉しい…嬉しい嬉しい嬉しい…!嬉しい、けど… もなかの顔色が赤くなり、次いで青くなる。 (…い、息が!く、苦し!! もなかを窒息させかねない熱く長いベーゼ。 たっぷり、1分以上は続いただろうか。 「…ぷはぁ!はあ!はあ!はあ!」 杏子自身の息も限界だった。 なにしろ、ファーストキスだ。 やり方などまるで解らない。 「はあ!はあ!はあ!あ、あんこ…」 「はぁはぁ…!あ、あたしがもなかを嫌うだってえ?んなこと、ありえねえ!」 「あ、はい。う、うん…」 「あんときゃあんまり興奮…いや、その、ど、動揺して!だから!し、したくなかった訳じゃなくて!」 「あ、あん…こ!」 「だーーっ!えと、だから、つまり!!」 「あんこ…あんこ、あんこ、あんこぉぉ…!」 「あたしは!もなかが好きだっ!抱きしめてキスしたくなるくらい、大好きだっ!!」 周囲から口笛と歓声が沸き起こる。 ※※※
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225 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:48:42.03 ID:syi31BWD - …もなかはね、あんこが大好きなの。
あんこが転校してきた時、ステキなコだなって思った。 見た目だけじゃなくて、心も…スゴく綺麗だった。 だから、もなかはあんこが大好きになったの。 あは、な〜んも考えてないお気楽娘に見えた?見えたよねえ、うんうん。 あれはもなかの素だよ。好きな人にはありのままの自分を見て欲しいから。 でもね。いつか嫌われるんじゃないかってビクビクしてたのも、確かなんだ。 え?そんな事気にしたってしょうがない? うん。ありのままの自分で嫌われたら…しょうがないよね。 ご縁がなかったって事だから。でも、それで怖くなくなる訳でもないよ。 それに、それにね。 あなたに、解るかな? 女の子なのに女の子に恋しちゃったもなかの気持ちが、あなたに、解る? 怖いんだよ、自分の気持ちが。 怖いんだよ、相手の気持ちが。 それはきっと、男の子との恋より、ずっと。 もなかはあんこを友達として好きなんだと思ってた。 でも、そうじゃなかった。もなかはあんこに恋してたの。 それが解ってからは、もっともっと怖くなった。 もし、もなかの気持ちを知られたら…でも知ってほしい。でも… 女の子同士なのに、友達なのに、キスをねだるコなんて… あんこは、気持ち悪いと思ったに違いないって… 嫌われたと、そう思った。 だから逃げたの。怖くて。あんこの気持ちを知るのが…怖くて怖くて。 でも。 あんこはもなかを、捕まえてくれた… 好きって気持ちと、優しいキスをくれたの…! もなかは、もなかは幸せだよ…! ※※※
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226 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:49:35.93 ID:syi31BWD - だが、その想いは言葉にならない。
ただ涙が零れる。杏子への想いと一緒に、溢れて止まらない。 「あん、こ…あんこ、あんこぉ!」 「だーら!もう泣くな!」 「な、泣いて、ないも!う、嬉しいのに、なんで、泣くの!」 「いいから!泣くな!あたしがついてる!あたしが守るから!」 「あんこ…!!」 「そうだ…こうなりゃ、毒喰らわば皿までだ!」 用法が微妙に間違っている事を、初めてのキスで逆上した杏子は気付くよしもない。 「もなか!あたしとずっと一緒にいたいっつったよな!」 「う、うん!言ったよ!あんことずっと一緒にいたい!」 「夫婦になれたらいいのにって、言ってくれたよな!」 「うん!言ったよ!夫婦になれたら、ずっと一緒にいれるから!」 「よし!もなか!あたしと結婚しよう!!」 「「「「ええええええっっ!?」」」」 周囲の観衆が、全員同じリアクションをした。 「そうすりゃ一緒に帰れるぞ!ずっと…ずっと、一緒にいられるぞ!」 ※※※ 杏子は走る。もなかをお姫様抱っこしたまま、走る、走る。 「あ、あんこ!?ど、どこ行くの!?」 「和菓子屋、秋野!!」 「も、もなかんチ!?なんで!?」 ※※※
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227 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:50:29.12 ID:syi31BWD - 「お父さんお母さんっ!!」
どごん!と音を立てて、杏子の両の拳が畳にめり込んだ。 ケンカ腰に見えるが本人にそんなつもりはない。ただ、余裕が無いのだ。 耳の先まで真っ赤にしながら、杏子は叫ぶ。 「お、お嬢さんを!もなかを、あたしに下さいっ!」 「は?それってどういう…!」 「け、けけけ、結婚させて下さい!」 「いや、君ね…君、女の子、だよね?」 もなかの父、煎兵衛は常識人であった。 「そうよぉ、あんこちゃん。残念ながら日本では同性婚は認められてないのよぉ?」 「知ってます!」 「いや、母さん。そういう問題じゃ…」 「そうだよ、知ってるよ!こう見えて、あんこは頭いいんだから!」 「いや、もなか、そういう問題じゃ…」 「しかし世界では!同性婚が認められている国や地域もたくさんあります! オランダ、ベルギー、スペイン、ノルウェー、スウェーデン、ポルトガル! アイスランド、デンマーク、フランス、イギリス、ルクセンブルク!! アルゼンチン、カナダ、ウルグアイ、ブラジル、メキシコ!!! アメリカでもマサチューセッツ州、カリフォルニア州、コネチカット州、 アイオワ州、バーモント州、ニューハンプシャー州、ワシントンD.C.、 ニューヨーク州、ワシントン州、メイン州、メリーランド州、ロードアイランド州、 デラウェア州、ミネソタ州、ニューメキシコ州、ニュージャージー州、ハワイ州、 イリノイ州…それからそれから…!!」 「す、すっごい、あんこ!そんな事いつ調べたの!?」 「昨日!!」 「あらあらまあまあ」 もなかから『夫婦』などという単語が出てすぐに調べたらしい。 もなかの父、煎兵衛は確信した。 (…この少女は、本気だ! 確信せざるを得ない必死さだった。 (だが可愛い娘を、もなかをまだ嫁にやる訳にはいかん!おお!そうだ! 「あんこさん…といったかな?しかしね、キミはまだ学生じゃないか」 「…え?」 「結婚生活の基盤となる仕事も、収入もない学生に…娘はやれんっ!」 がーーーん! という擬音が、杏子の脳天を直撃したようだった。 まさに青天の霹靂。迂闊としかいいようがなかった。 「くっ…不覚!」 がっくりと項垂れる杏子。しかし、もなかは。 「なるほど!結婚には反対しないけど卒業、もしくは就職までお預けって事だね!」 「え?」 「いや、その…も、もなか?私はだな…」 「ありがとうお父さん!もなか達の結婚を認めてくれて!」 「あらあらまあまあ」 ※※※
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228 :【あんこもなか】 6.あんこ、暴走![sage]:2014/11/03(月) 21:58:17.21 ID:syi31BWD - という訳で。
「あーーー!恥い!めちゃくちゃ恥ずかしいっっ!」 逆上状態から我を取り戻した杏子は、自身の言動を後悔していた。しまくっていた。 穴があったら入りたいと言い、公園の砂場に穴を掘ろうとしてもなかに止められるくらい後悔していた。 「あははっ、すごかったねえ今日のあんこは!」 「うう…す、すまねえ…ああ!もう!時間を巻き戻してやり直してえっ!」 「やだ。そんなの」 「もなか?」 「もなか、嬉しかったんだもん。悲しくて泣いちゃっても、失敗して恥ずかしくても、全部ぜ〜んぶ!もなかとあんこの大切な思い出だよ。無かったことになんてしたくないよ。違う?」 「…違わねえ」 「でしょ?」 「あ、ああ」 ひと気のない、夕闇の児童公園。 もなかは不意にきょときょとと辺りを見回す。 「ねえ、あんこ」 「あ?なんだ?」 「誰もいないね?」 「そうだな」 「誰も見てないんだよ?」 「…そう、だな」 杏子の頬が朱に染まる。 「じゃあ…んー…」 もなかが瞳を閉じ、唇を突き出す。 杏子がギクシャクと錆び付いたロボットみたいな動きでもなかに近づき… 震える唇が、そっと重なった。 続く
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