- 【ネウロ】松井優征作品総合26【暗殺教室】
648 :酔夢 C[sage]:2014/11/03(月) 00:03:23.63 ID:1PT7chVm - 「篚口…貴様は許さん…」
足元から這い上がってくるような声音。中毒者たちの絶え間ない攻撃により、ネウロはかなりのダメージを負っているはずだが、 それを感じさせないほど、その声は凄まじい怒気と殺気を孕んでいる。ざわざわと篚口の肌が粟立つ。本能が危険を感じ取っているのだろう。 しかし、電子ドラッグが麻痺させているのか、篚口は一切恐怖を感じていなかった。 「後で俺を殺すつもりか? どーでもいいよ。桂木が手に入るなら」 本当にほしかった形で弥子を手に入れる事はできない。だから、せめて体くらい貰ったっていいはずだ。 「これぐらいいいだろ!? けちけちすんなよ!俺が本当にほしかったもの手に入れてるくせにさぁ!!」 激しい怒りが込み上げ、篚口は感情的に怒鳴っていた。 怒りにまかせ、改造リモコンでスフィンクスから発せられる音量をさらに増大させる。 「やめて、やめて!!ネウロに酷い事しないで!!」 弥子が必死に篚口に縋りつく。逆効果だと言ってやりたかったが、口には出さず、シニカルな笑みを浮かべて弥子に向き直った。 「殺しはしないよ、約束したもんな。桂木も約束守れよ」 「わ、わかってる…私のことは好きにしていいから…」 弥子は両手を腿の横に付け、俯いた。篚口は弥子の裸体をじっくりと眺める。 普段制服越しに見た限りで小さいだろうと推測していたが、予想通り小振りな乳房だ。 その可愛らしい膨らみを手のひらで包み込むようにして触れると、また弥子がびくりと震える。 小さいが柔らかく心地良い感触に篚口は感動しながら、ゆっくりと弥子の乳房を揉みしだいた。そのうちに薄桃色の乳首がぷくりと立ち上がってくる。 篚口はすかさず乳首を指先で摘み上げた。 「ここ、尖ってきてるよ。なんかやらしいね、桂木」 茶化すような口調で言ってやると、弥子は顔を真っ赤にした。篚口は乳房に顔を寄せると、乳首を口に含み、赤ん坊のように吸い上げた。 乳首を吸いながら、右手で弥子の体を撫で、下方へとスライドさせていく。 「やっ…」 その手が弥子の秘所へ辿りつくと、弥子は思わず後ずさりする。 「動くな。ちゃんと真っ直ぐ立てよ」 篚口は弥子の腰を掴むと、地面に膝をつき、秘所に顔を近づける。そっと割れ目を指で開くと、薄桃色をした秘められた部分が現れる。 弥子は耐えられずに、両手で顔を覆う。 篚口はごくりと唾を飲み込むと、目の前に晒された秘裂にそっと指で触れる。そこはしっとりしていて柔らかかった。 性経験はないが、いくらかの予備知識はある。花弁を何度か指でなぞった後に、最も性感帯が凝縮されているという小さな芯に触れる。 「やだ…やだ…」 弥子は顔を覆ったまま首を振る。腰を引こうとするのを、篚口は片手で制し、逃げられないようにする。 薄皮に包まれた芯を指先で摘むようにして捏ねる。そうしていると、心なしか芯が固く膨らんできたようだった。 そっと指で包皮を上に引っ張ると、隠れていた小さな赤い芯が顔を覗かせる。 「ここ、気持ちいいの?」 篚口はくすりと笑った。 「桂木も女の子なんだな…」 普段色気よりも食い気の弥子が、性的な部分を刺激されて反応している様は可愛らしく、篚口をいっそう興奮させた。 篚口は弥子の秘所に顔を寄せると、そこに舌を這わせる。 「ひっ…」 弥子は篚口の舌から逃れようと腰をくねらせるが、篚口は逃がさない。 ぷっくりとした芯は固いのに柔らかい。弥子から湧き出てきたものの味がする。もっとそれを味わいたくて、篚口は弥子の秘裂に舌を差し入れた。 「…っく…ふぅっ……や、あ…!」 弥子が時折漏らす声は、泣き声にも嬌声にも聴こえる。蜜で満たされた弥子の内部は温かくて柔らかく舌触りがいい。 奥へと更に舌を伸ばし、篚口は夢中で蜜を啜った。 「っあ…!」 弥子が尻もちをつくように地面にへたり込んだ。 「もしかして、イッたの?」 篚口が笑いながら聞くと、弥子は涙目でキッと篚口を睨んだ。篚口は立ち上がると、弥子を見下ろした。 「今度は、桂木が俺にしてよ」
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649 :酔夢 D[sage]:2014/11/03(月) 00:07:55.40 ID:1PT7chVm - 弥子は涙で潤んだ目で篚口を見上げた。篚口の顔を見ながら、弥子は口に含んだ篚口のものに舌を這わせ続ける。弥子の瞳の中で揺れている光が綺麗だと思った。
しかし、あの悲しそうな顔で篚口を見つめてくる。篚口は目を逸らすと、自身から弥子を引き剥がした。 「……もういいよ。桂木下手くそだから萎える」 「篚口さん…もう、こんなことやめよう」 「は?何、急に? お前が決める事じゃないし」 篚口は弥子を睨むと、冷たく言い放った。 弥子の表情は相変わらず蒼ざめていたが、その目は真っ直ぐ射抜くように篚口を見つめていた。 「篚口さん、本当はこんな事、望んでないんでしょ?」 「……知った口利くな…」 篚口は拳を握りしめる。心の奥底を見透かすような弥子の視線に耐えられず、篚口はまた目を逸らした。 「篚口さん、ずっと苦しそうな顔してる。気付かない振りしてるの?篚口さん、本当は…」 「うるさいなっ!!黙れよっ!!」 その声は今にも泣き出しそうで、怒鳴った篚口本人が一番驚いた。 篚口は強引に弥子を押し倒し、首にナイフを突き付ける。 「これ以上、余計な口利いたら、お前もネウロも殺すからな!!」 弥子の顔が恐怖に引き攣る。力尽くで弥子を組み敷くと、その秘所に、無理やり自分のものを突き入れた。 その瞬間、弥子の体がギュッと強張り、悲鳴がほとばしった。 予想以上に強い締め付けに篚口は眉を寄せ、呻き声を漏らす。少し自分を落ち着けてから、体の下にいる弥子に聞いた。 「…桂木、痛い?」 弥子も、苦痛から呻き声を漏らす。篚口の問いかけも、耳に入っていなさそうだ。 ――いい気味だ。 腰を動かすと、途方もない快感と真っ黒な感情が、篚口の中に湧き上がる。 「いっ…!ぅあっ!ネウロ…ネウロっ…」 ずっと恐怖と恥辱に耐えていた弥子が、ついに助けを求めるようにネウロの名を呼んだ。 「はっ…、助けられる状況なら、とっくに助けてるだろうよ」 篚口は冷たく笑った。 「残念だったな。初めての相手がネウロじゃなくて」 ――ざまあみろ。 弥子に欲望を叩き込むほどに、快楽が際限なく増大していく。しかし、同時に、それとは真逆の何かも大きくなっていく。 篚口はそれから逃れるように、快楽のみを求めるかのように、がむしゃらに腰を動かし続けた。 嗚咽が聞こえる。胸を締め付けられるような声だったが、篚口は無視した。 嗚咽に混じり、何か呟いているのが聞こえた。何を呟いているのか、最初は聞き取れなかった。 「……ごめん…」 思いもよらない言葉に、篚口は弾かれるように動きを止めた。 「ごめん…桂木……」 涙に濡れた声だったが、はっきり、そう聞こえた。 篚口は愕然とし、目を見開いて、弥子を見下ろす。弥子はあの悲しげな顔で篚口を見ている。その瞳に自分の姿が映り込んでいる。 酷く苦しそうに涙を流している自分がそこにいた。今もなお、聞こえてくる嗚咽が、自分の口から漏れ出ているものだという事に、篚口はようやく気付いた。 弥子がほしかった。心も体も自分のものにしたかった。それが叶わない事だと解っても、諦められなくて、誰にも渡したくなくて。 誰のものにもさせたくなかったから、弥子をめちゃくちゃに傷つけてやりたくて。 自分のした事が、結果、両親を死に追いやってしまった事で、ずっと自責の念にかられていた。 あんなに罪の意識に苛まれていたくせに、大切な人を凌辱し、大勢の命を奪うようなまねをしてしまった。 こんな事をしたかったはずじゃない。こんな事を望んでいたわけじゃない。
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- 【ネウロ】松井優征作品総合26【暗殺教室】
650 :酔夢 D (すみません。前回、文章一部抜けてました)[sage]:2014/11/03(月) 00:31:50.09 ID:1PT7chVm - ズボンのファスナーを下げ、ずっと張りつめていたものを引き出す。
弥子は蒼ざめて、目を逸らした。まともに見られないらしい。 「そ、そんなの、したことない…」 目を逸らしたまま、弥子は震え声で言った。 「ネウロを助けたいんだろ?」 その名前を口にすると、弥子の表情が変わる。一番大切な相手を守らなければという、強い気持ちがその表情から窺い知れた。 こんな事を弥子に問う事で、篚口は自らをも傷つけているような気持ちになる。 弥子は怖々と篚口の方に目を向けた。逡巡しながらも、震える手を篚口自身へ伸ばす。 弥子の指が触れた時、篚口は少し体を震わせた。恐怖と緊張の為か弥子の指は冷たく、熱を持った下肢に心地よく感じられた。 「桂木…舐めてよ」 弥子は恐る恐るといった様子で、篚口のものに口を付けた。躊躇いがちに、それを舐め始める。 「…っ、…咥えてみて…」 篚口は上ずった声で弥子に言った。篚口に言われるまま、弥子は篚口のものを、その小さな口に含む。 弥子の温かく柔らかな口内に包み込まれ、その舌に慰撫される。初めて味わう感覚に、篚口は思わず吐息を漏らす。 弥子の舌技はぎこちなく、拙いものだったが、経験のない篚口には充分に気持ちいいものだった。 「桂木…俺の顔見ながらやってよ…」 達しそうになるのを懸命に堪えながら、篚口は弥子の前髪を掴み、顔を上げさせる。弥子は涙で潤んだ目で篚口を見上げた。 篚口の顔を見ながら、弥子は口に含んだ篚口のものに舌を這わせ続ける。弥子の瞳の中で揺れている光が綺麗だと思った。 しかし、あの悲しそうな顔で篚口を見つめてくる。篚口は目を逸らすと、自身から弥子を引き剥がした。 「……もういいよ。桂木下手くそだから萎える」 「篚口さん…もう、こんなことやめよう」 「は?何、急に? お前が決める事じゃないし」 篚口は弥子を睨むと、冷たく言い放った。 弥子の表情は相変わらず蒼ざめていたが、その目は真っ直ぐ射抜くように篚口を見つめていた。 「篚口さん、本当はこんな事、望んでないんでしょ?」 「……知った口利くな…」 篚口は拳を握りしめる。心の奥底を見透かすような弥子の視線に耐えられず、篚口はまた目を逸らした。 「篚口さん、ずっと苦しそうな顔してる。気付かない振りしてるの?篚口さん、本当は…」 「うるさいなっ!!黙れよっ!!」 その声は今にも泣き出しそうで、怒鳴った篚口本人が一番驚いた。 篚口は強引に弥子を押し倒し、首にナイフを突き付ける。 「これ以上、余計な口利いたら、お前もネウロも殺すからな!!」 弥子の顔が恐怖に引き攣る。力尽くで弥子を組み敷くと、その秘所に、無理やり自分のものを突き入れた。 その瞬間、弥子の体がギュッと強張り、悲鳴がほとばしった。 予想以上に強い締め付けに篚口は眉を寄せ、呻き声を漏らす。少し自分を落ち着けてから、体の下にいる弥子に聞いた。 「…桂木、痛い?」 弥子も、苦痛から呻き声を漏らす。篚口の問いかけも、耳に入っていなさそうだ。 ――いい気味だ。 腰を動かすと、途方もない快感と真っ黒な感情が、篚口の中に湧き上がる。 「いっ…!ぅあっ!ネウロ…ネウロっ…」 ずっと恐怖と恥辱に耐えていた弥子が、ついに助けを求めるようにネウロの名を呼んだ。 「はっ…、助けられる状況なら、とっくに助けてるだろうよ」 篚口は冷たく笑った。 「残念だったな。初めての相手がネウロじゃなくて」 ――ざまあみろ。 弥子に欲望を叩き込むほどに、快楽が際限なく増大していく。しかし、同時に、それとは真逆の何かも大きくなっていく。 篚口はそれから逃れるように、快楽のみを求めるかのように、がむしゃらに腰を動かし続けた。
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- 【ネウロ】松井優征作品総合26【暗殺教室】
651 :酔夢 E[sage]:2014/11/03(月) 00:36:01.89 ID:1PT7chVm - 嗚咽が聞こえる。胸を締め付けられるような声だったが、篚口は無視した。
嗚咽に混じり、何か呟いているのが聞こえた。何を呟いているのか、最初は聞き取れなかった。 「……ごめん…」 思いもよらない言葉に、篚口は弾かれるように動きを止めた。 「ごめん…桂木……」 涙に濡れた声だったが、はっきり、そう聞こえた。 篚口は愕然とし、目を見開いて、弥子を見下ろす。弥子はあの悲しげな顔で篚口を見ている。その瞳に自分の姿が映り込んでいる。 酷く苦しそうに涙を流している自分がそこにいた。今もなお、聞こえてくる嗚咽が、自分の口から漏れ出ているものだという事に、篚口はようやく気付いた。 弥子がほしかった。心も体も自分のものにしたかった。それが叶わない事だと解っても、諦められなくて、誰にも渡したくなくて。 誰のものにもさせたくなかったから、弥子をめちゃくちゃに傷つけてやりたくて。 自分のした事が、結果、両親を死に追いやってしまった事で、ずっと自責の念にかられていた。 あんなに罪の意識に苛まれていたくせに、大切な人を凌辱し、大勢の命を奪うようなまねをしてしまった。 こんな事をしたかったはずじゃない。こんな事を望んでいたわけじゃない。 自分が本当に望んでいたものは何だったか。何を一番に望んでいたかといえば、ある思いが浮かぶ。弥子への恋心を自覚する前に、抱いていた思い。 初めて弥子に会った時、可愛い子だなと純粋に思った。くるくる変わる弥子の表情はどれも魅力的だったが、篚口が最も気に入ったのは笑顔だった。 自分はあんな風に笑う事はできないと思った。心から嬉しそうに、楽しそうに笑う弥子は、今まで幸せにすくすくと育ってきたのだろうと窺い知れた。 ずっと見ていたいような笑顔だった。これから先も、弥子にはこんな風に笑っているといいなと思った。 いつからか、弥子を自分のものにしたいという思いが芽生え、そこに腐心するようになり、本来の望みを見失っていた。 一番に望んでいたものを、自ら粉々に打ち砕いてしまった。 後悔と絶望と罪悪感が篚口の心をずたずたに切り裂いた。止め処なく涙が零れる。 篚口の背後に、巨大な闇が広がっていた。その闇は、闇夜よりも黒く、夜行動物特有の光る眼が付いていた。 真ん丸い眼なのに、獰猛な光を孕んでいる。闇は光る眼で篚口をじっと見下ろし、呑み込むように、篚口の体を覆っていった。 「――篚口さん…!?」 弥子は戸惑った声で篚口に呼びかけた。弥子の手には改造リモコンが握られている。 篚口は地面に横たわり、胎児のように体を丸めて、むせび泣いている。 過去の辛い経験を話した後、篚口は具合が悪そうになり、そのまま崩れるように地面に倒れた。 弥子は急いで篚口が落とした改造リモコンを拾い、音を停止させた。 弥子に改造リモコンを奪われても、篚口は起き上がらなかった。倒れたまま、苦しげに呻いていたが、今のような状態になった。 「篚口さん…!どこか痛いの!?」 弥子は屈み込み、篚口の背中を摩った。篚口は弥子の呼びかけに反応を返さず、その閉じられた目から涙を流し続ける。 酷く苦しそうな様子に、弥子はおろおろと篚口の背中を摩り、必死に声を掛け続けた。 スフィンクスを破壊したネウロが弥子の元に戻ってきた。 「ネウロ!!」 弥子はネウロに駆け寄る。意外と平気そうにしている事に、弥子はまず安堵した。 犠牲者が出てない事をネウロから確認し、胸を撫で下ろす。が、すぐに不安げな顔になった。 「篚口さんの様子がおかしいの…!」 弥子に言われ、ネウロは篚口を一瞥する。その視線には侮蔑が込められていた。 「魔界獏を召還し、憑依させただけだ」 弥子は唖然とする。 「魔界バク…? え?ネウロの仕業だったの?いつの間に…」 「魔界獏は憑依した宿主の深層心理を抉り、悪夢を見せる。悪夢を醸成し、完全に熟してから夢を食らう」 「じ、じゃあ、篚口さんはただ眠っているだけ?」 「今はな。魔界獏は、悪夢を食った後、宿主の精神も食らい尽くす。そうなると、宿主は廃人同然になる」 「やばいじゃん!!早く篚口さん起こさないと!!」
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- 【ネウロ】松井優征作品総合26【暗殺教室】
652 :酔夢 F[sage]:2014/11/03(月) 00:38:27.30 ID:1PT7chVm - 慌てて篚口に駆け寄ろうとした弥子を制し、ネウロは自ら篚口に近づいた。篚口の側に立つと、いきなり脇腹に蹴りをぶち込んだ。
「篚口さん!!」 情け容赦のないネウロの挙動に、弥子は思わず悲鳴を上げる。 篚口は8メートル程、地面を転がった。胃の中の物を吐き出し、篚口は激しく咳き込んでいる。相当荒っぽい方法だったが、目を覚ましたようだ。 「篚口さん、大丈夫!?」 弥子は篚口に駆け寄ろうとしたが、ネウロの側を通り抜けようとした時に、頭を鷲掴みにされ、篚口とは別の方向に放り投げられた。 弥子も5メートル程、地面を転がった。 「ふぎゃあ!何すんの!!」 体を起こしながら怒鳴ったが、ネウロは不機嫌そうに弥子を睨んだ。 「黙れ。貴様、主人の心配はせん癖に、他の男の心配ばかりするのだな」 「え?だって、ネウロ、意外と平気そうだったし、今大変なの篚口さんだから、その…ごめん…」 ネウロはフンと鼻を鳴らした。 「……我が輩、篚口がした事は許さん…」 「そりゃあ簡単に許せるような事じゃないかもしれないけど…。でも、ネウロ大丈夫だったし、犠牲者も…」 「こいつが現実でした事はどうでもいい!夢でした事は許さん!!」 「ゆ、夢…?」 弥子はきょとんとした。篚口が見ていた悪夢の内容を弥子は知らない。 「夢の中の出来事なら、不可抗力じゃない?」 そう言ったが、ネウロがギリッと睨んでくるので、弥子は首をすくめた。 ――なんだか、ネウロ随分機嫌が悪いなぁ…。 制服の埃を払いながら、弥子は立ち上がる。ネウロに近寄ると、ふっと息をついた。 「でも、ネウロが無事でよかった…」 「…………」 ネウロも弥子に近づく。やけに距離を詰めてきた、むしろ近すぎると思った時に、ネウロに抱きすくめられた。 「ネ――」 弥子の足が地面から浮き上がり、次の瞬間、豪快にフロントスープレックスをかまされた。 「ぎゃあー!!さっきから、いろいろひどい!!」 「フハハ、貴様は地面に転がっているのがお似合いのダンゴ虫だからな。そうして這いずり回っていろ」 楽しげな口調でそう言い、ネウロはすたすた歩き出した。数歩、歩くと立ち止まり、弥子を振り返る。 「いつまでも転がっていないでさっさと来い。貴様はそんなに地面が好きなのか?」 「あんたは、今、自分が言った事とやった事を覚えてないのっ!」 地面を踏み鳴らすようにして弥子は立ち上がる。ネウロはじっと弥子の顔を見つめている。 「……何?」 ネウロは何も言わず弥子の顔を見つめ、無邪気な笑顔を見せた。それから前に向き直り、また歩き出した。 なぜか、ネウロは機嫌が直っているようだった。 弥子には不可解だったが、ネウロが何を考えているのか考えるのが面倒になった。 というか、単なる気まぐれで、特に何も意味はないのだろうと思った。弥子は急いでネウロを追いかけた。 end
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- 【ネウロ】松井優征作品総合26【暗殺教室】
653 :酔夢・後日談 [sage]:2014/11/03(月) 00:42:05.65 ID:1PT7chVm - HAL事件解決後、あれ程混乱していた世の中はすぐに平常を取り戻した。
街中には人々が溢れ、賑やかに行きかっている。都会の喧騒の中、篚口はある場所を目指し歩いていた。 「篚口さん!」 喧騒の中で、その澄んだ声は真っ直ぐに篚口の耳に届いた。篚口は立ち止まり、顔を上げた。 人込みの中で弥子が手を振っている。今から会いに行く予定の相手だったが、突然目の前に現れたので少し驚いた。 弥子は手に提げたコンビニの袋を揺らしながら、篚口に駆け寄ってきた。息を切らしながら、篚口を見上げる。 「いろいろ心配してたんだけど……ネウロに蹴られたお腹、大丈夫?」 「うん、まあ大丈夫」 正直なところ、しばらくの間は、まともに食事ができなかった。 「篚口さん、このへんに用事?」 「うん、ちょうどお前に会いに行くところだった」 「遊びにきてくれたの?事務所に寄ってほしいけど…、今ネウロがいるからなぁ…。なんか、ネウロまだ篚口さんの事、怒ってるみたいなんだよね…」 弥子は肩を竦めた。 「夢の中の出来事が許せないんだって。おかしいよね。あいつ、普段が傍若無人過ぎるんだから、夢の中で痛い目みるくらい、いいと思うんだけどね」 弥子は困ったように苦笑した。 胸がずきりと痛み、篚口は無意識に自分の胸の辺りを鷲掴みに握り締める。あの夢の事を思い出すと、おぞましさに慄然とする。 現実で実行しなくてよかったと、本当に本当に思っていた。 「いや…ネウロが腹立てるのも無理ないし…桂木、本当にごめんな…」 「私はべつに…。……篚口さん…あまり自分を責めたりしないでね」 弥子は篚口の顔を覗き込む。 「ずっと罪の意識を抱えて生きてきて辛かったでしょう?ご両親の事、自分のせいだって思っているなら、そうじゃないよ。篚口さんは何も悪くない」 篚口の目を真っ直ぐ見据え、弥子ははっきりと言った。 「篚口さんがほしかったものって、篚口さんにとっては、すごく重要なものだったんでしょう?だから、得られないことが苦しかったんだよね」 篚口を見つめる弥子の眼差しは温かかった。 子供の時に負った生涯消えないと思っていた傷が癒されていくようだった。 「手に入らないものも多いけど、一番重要だったものは失くさずにすんだよ。だから、俺、そこは初めて満足してるんだ」 俺はやっぱりこの子が好きなんだな、と篚口は自分の気持ちを再度自覚する。 今日、弥子に伝えたいことがあって、会いに来た。 「俺、警察に残れることになった。桂木、笛吹さんに頼んでくれたんだってな。ありがとうな」 あれ程の事を仕出かしたのだから、自分は警察には居られなくなると思っていた。天涯孤独であった自分が、思った以上に人の善意に囲まれていた事に驚いた。 弥子の顔がパアッと輝く。 「本当に!?良かったぁ!!」 弥子は心から嬉しそうだった。喜びを抑えきれないようで、弥子はコンビニの袋を揺らしながら、笑顔になる。篚口が一番大好きな弥子の顔。 今まで、これ程自分に真剣に向きあい、一生懸命になってくれた人はいなかった。 とても熱いものが、篚口の胸を満たす。 「桂木…俺、たまにお前に会いに行ってもいい?」 「うん、もちろん」 なぜそんな当然の事を聞くのかと、弥子は不思議そうだった。 「あ、じゃあ、今度お給料もらったらご飯奢ってくださいね!」 「えー、お前、26万円分も飯食ったんだろー?俺、生活できなくなるじゃん」 「あ、あれはパスワードを解く為に、脳に栄養を……でも、頑張ればいくらかセーブもできるから!」 「頑張ればって…どうだかなー」 弥子と話しているうちに、篚口は自然と笑顔になっていた。今まで抱えてきたもの全てが浄化されていくようだった。 この子と出会えて良かったと、篚口は心から思える。 end
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