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207 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:17:00.28 ID:85/Ku4jk - 【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん
「あほもなか!空っぽか、お前の中身は!」 「あははーだから、あんこがつまってくれなきゃねー」 「えーい!ああ言えばこういう!なんであたしはこんなのと友達やってんだっ!」 「んも〜あんこだってぇ、もなかが大好きな、く、せ、にん♪」 「いや、それは、その…!た、頼むからもう少し真剣にやってくれっ!出ないと海なんか行けないんだぞっ!」 「おぅ!それは困る!大変困るっ!あんことのデートがお預けだなんて!」 「デ、デデデ、デートぉ!?いや、違う!断じて違うだろが、それは!」 …事の発端はこうだ。 クラスの何人かで夏休みの旅行計画が持ち上がった。行き先は、海。 だが、もなかの母・かのこは、もなかに課題を課したのである。 『期末試験の平均点50点以上』 それは平均40点、いつも赤点ギリギリのもなかにとって、到底不可能と思われる数字であった。 「たく、もなかのお袋さん、優しそうな顔してなかなか厳しいよなあ」 「いやあ、もなかの点数がいつも悪すぎるのがいけないんだよお」 「それが!解ってんなら!真面目に!やらんかあ!」 「はーい!」 返事だけは良いもなかである。 そして。 ※※※
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208 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:18:26.75 ID:85/Ku4jk - 「うぉっ!?ギリギリ!まさに瀬戸際!」という点数で、もなかはなんとか条件をクリアしたのだ。
「あれ?あんこ、どうしたの」 「つ、疲れた…もう海なんか行く元気残ってねえぞ…」 もなかの試験勉強を見てやっていた杏子は、すでに疲労の極みにあった。 「ダメダメ!さあ!張り切って行ってみよー!海だ!水着だ!太陽だーっ!」 「みず、ぎ…?」 ピクリと、杏子が身じろぎする。 「み、水着…着る、のか?」 「あったりまえでしょー?海だよ?うーみー」 「だ…」 「だ?」 「ダメだダメだダメだっ!み、水着なんてとんでもねえっ!」 ガタガタと震える杏子。 (おー!?あ、あんこが! (あのマッド・クッキーの異名を持つ狂犬あんこが…怖れている!? もなかは奇妙な感慨を得た。 (あんこにも苦手なものがあったんだねえ。 うんうんと頷き、そして。 「で?水着の何がそんなに怖いの?」 恐怖のあまり(?)蒼ざめ、ガタガタと震える杏子に問う。すると。 「は…」 「は?」 「は、恥ずかしいじゃねえか!水着なんて!あんなの、し、下着と変わんねえぞ!?」 「…」 …杏子はあのもなかを呆れさせるという偉業を達成した。 それはいまだ誰も成し遂げた事のない前人未到の快挙であった。 「はーなるほど。はい、それじゃ行ってみよーかー」 「も、もなか?」 「お買い物ー!あんこのために飛び切りセクスィ〜〜〜な水着を選んであげる!」 「ち、違う!それ、違う!もなか!?」 「だいじょぶだいじょぶ!あんこ、スタイルいいんだからぁ恥ずかしがる事ないってば!」 「もなか!頼む!聞いてくれ!人の話をちゃんと聞けーーー!」 「あ、あたし、それ一番苦手だー!知ってた?」 「…知りたくねえけど、知ってたぁ!」 ※※※
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209 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:19:45.56 ID:85/Ku4jk - と、いうわけで。
「うーみーっっ!海だよ、あんこ!あれ全部水なんだよっ?おまけにしょっぱいの!すごいねー!!」 「お、おお」 水着にパーカーをかぶっただけのもなか。 その隣に立つのは、上下ともに学校指定のジャージを着込んだ杏子。 夏の海にはミスマッチこの上ない姿であった。 「く、朽木さん?どうしたのその格好」 同行したクラスメイト(黄色いワンピース+パレオ)に問われて憮然とした表情をかえす杏子。 「水着、忘れた…とか?」 恐る恐る問う別の少女(ピンクのセパレートタイプ)。 「まっさかー!なあなあ、朽木さんの水着姿、見たいなあオレ」 「うん!見たい見たい!」 と、尻馬に乗る2名の男子(ヤシの樹が描かれたボクサーパンツとブルーグレーの競泳パンツ) 「こらー!あんこをやーらしー目で見るなー!プンスカ!」 と、膨れるもなか(花柄のビキニ) 総勢6人のパーティの中、杏子(学校指定ジャージ)だけが浮いていた。 「い、いいんだよ、あたしはこれでっ!」 ダラダラと汗を流しながら杏子が吠える。 ともあれ、楽しい旅行の始まりであった。 ※※※
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210 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:20:50.72 ID:85/Ku4jk - 「ちぇーっ!せっかくあんこにピッタリの水着、選んであげたのになー」
「だ、だからちゃんと着てきただろが」 「ジャージで隠してちゃ意味ないよ〜ねえ脱いでよ脱ごうよ、ひっひっひ、良いではないか良いではないか」 「だ、ダメだ!絶対ダメだ!」 肌を見せるのが恥ずかしい。 貞操観念の強い杏子である。 しかも、もなかと一緒なのだ。 (なんでだ…もなかに見られると思うと…余計に照れ臭いとうか、恥ずかしい… (いても立ってもいられなくなるこの感じ…なんなんだよ、くそーーーっ!! 「あーーーっ!」 苛立ちのあまり、髪を掻き毟る杏子。 「あ、あんこ!?だいじょぶ!?」 「な、なんでもねえ!い、いいからもなかも皆と遊んで来いよ!」 砂浜のパラソルの下。もなかと杏子は2人だけだった。 同行の皆は海で、波打ち際で、砂浜で、楽しげに遊んでいる。 「もなか、今日は焼こうと思って。褐色の夏女になるんだよ、うふふん」 そういうと、もなかは水着のブラのホックをパチンと外しうつ伏せに横たわる。 「もな、か…?」 もなかの意外と大きな胸が砂地に押し付けられ、いわゆる横乳がはみだす。 何故か、杏子はその光景に魅入ってしまう。 (…もなかの胸、柔らかそう…だな ふと、そんな事を考え、顔が熱くなるのを感じた。 (バ、バカかあたしは!何考えてんだ、一体! 「ねーあんこ!背中にオイル塗ってよお」 まったくの不意打ちであった。 茹で蛸のように赤く染まり、脳天から湯気を吹きそうな勢いで、 「で、出来るかー!そんな事!!!!」 「あ、あああ、あんこ!?」 と、大声で絶叫。杏子はその場から走り去ってしまう。 「あん…こ?」 ※※※
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211 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:21:45.92 ID:85/Ku4jk - (…なんだってんだ。ったく…
あれ以来だ。調子が狂ったのは、あの日からだ。 『もなちゃんが一目惚れしちゃうのも解る解る』 (もなかが…あたしに、惚れてる?女同士、なのに? (それとも、あれはただのものの例えなのか。 (もしもなかがあたしに惚れてたら、あたしはどうするのか。嬉しいのか。 (もしあれが単なる物の例えで、もなかはやっぱりあたしを友達だと思っていたら… (あたしはどう思う?ガッカリするのか。 「…そんな事、考える時点でおかしいだろ…」 思わず、溜息。 「ゆーじょーもコイも知らずにきたからなあ。どうしていいのか、よく解んねえよ…」 経験値不足。どうやらそれに尽きるようだった。 ※※※ 「おーい、あんこ!どこ行ったのー?」 「朽木さーん、おーい」 杏子の耳に、彼女を探す声が届いた。 もなかと、同行の男子だ。2人で杏子を探しに来たらしい。 「あんこがいないと寂しいよーあんこー出ておいでー」 「…秋野はホントにあんこあんこなんだな」 「だって大好きなんだもん、もなかはあんこが大好きなの」 「ふーん。秋野は、男には興味ないわけ?」 「ん?どういう意味カナ?」 「ここに秋野もなかに興味を持ってる男がいるんだけど…どう?」 「ほへ?それっていわゆる告白ターイム!ってヤツですかい!?」 (…もなかに告白、だと? 岩陰に身を隠し、つい盗み聞きしてしまった杏子は、出るに出られなくなってしまった。 「オレより朽木さんの方が、いいのかな?」 「ん?んんん?んーーー?」 「あ、あれ?そこ、そんなに悩むとこ?」 「んーーーーーーーー????」 「あ、その…あ、あっちを探してみようか?おーい、朽木さーん」 「んーーーーっっっ!!!???」 ※※※
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212 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:22:33.68 ID:85/Ku4jk - 夏の太陽が海に沈もうとしている。
波が打ち寄せる岩場に座り、杏子は夕日を見ていた。 相変わらず、ジャージ姿のまま。そこをもなかがツッコむ。 「あんこってば、結局ジャージで通したねえ、暑くなかった?」 「全然」 「そっか。そろろ風が気持ちいいもんねえ、さすが海!大自然の驚異っ!」 「そーだな」 「ね、ねえねえ、あんこも花火しにいこうよ?」 「あたしはいい」 いつも以上にそっけない杏子の態度に、もなかの頬が大福のように膨れる。 「もお!あんこってば、何怒ってるの!?」 「怒ってねえよ!なんであたしが怒るんだよっ!」 「怒ってるじゃない!なんでなんでなんでっ!?」 「るせえ!怒ってねえってんだろがっ!?」 「もう!あんこのばかあ!知らないっ!」 「はっ!上等!!さっさと花火でもなんでも宜しくやってくりゃいいだろ!」 (…なんだこれ。何やってんだ、あたしは。 (…嫉妬?嫉妬、してんのか、あたしは。 (もなかが…何処か遠くにいっちまうような気がして…? 肩を怒らせながら歩き去るもなか。 その背中を見ていると、杏子の中に冷たい風が吹く。 (待って。待ってくれよ、もなか。 (あたしは…そんなつもりじゃ… (もなか!あたしは、お前が…! 「も、もなか!」 「何よっ!…ありり?」 振り返ったもなかの眼に、眩い光景が飛び込む。 夕日の中、真っ赤に染まったシルエット。 ジャージを脱ぎ捨て、そのしなやかな肢体を曝け出した杏子。 色は清楚な白。形状は大胆なビキニスタイル。 少ない布地のサイドをヒモで結んだいわゆるヒモビキニだ。 「あ、あんこ…?」 もなかが息を飲むのが解った。 その反応に、杏子はさらに顔が赤くなるのを自覚する。 (…ゆ、夕日が赤くて、良かった! 真っ赤な夕日に感謝しつつ、掠れる声で杏子が呟く。 「お、お前が選んでくれた、み、水着…に、似合ってる、か?」 もなかはまず無言でぶんぶんと首を縦に振る。そして。 「可愛い!綺麗!色っぽーい!すんごく似合ってる!」 「そ、そうか、そ、そりゃ、あんがとよ…」
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213 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:23:58.99 ID:85/Ku4jk - すらりと引き締まった体躯。しかし出るべきところは女の子らしく出ている杏子の肢体。
このまま水着モデルでも通用するのではないかともなかには思われた。 その険しい目付きと仏頂面をやめ、媚びたような笑みを浮かべられれば、だが。 (…ううん、そんなのあんこに似合わない。 (あんこはそのままで、すっごく素敵! もなかは嬉しくなって杏子に駆け寄ろうとした。 「おろろっ!?」 「も、もなか!?」 足元はバランスを取りにくい岩場。 杏子とは比べ物にならない運動神経の無さを誇るもなかがよく走れる場所ではない。 よろりとよろめくもなかに駆け寄り、だき抱える杏子。さすがの瞬発力であった。 「ふええ、危なかった!」 「たく、気をつけろよな…うあっ!?」 杏子は気付いてしまった。 お互い裸同然の格好で抱き合っている事に。 「ひ、ひえっぃぃぇぇ!!!!」 声にならない声をあげ、慌てて飛びすさる杏子。 と、足元の岩が転がり、足を掬われた。 「え…?」 ばっしゃーーーん!と、大きな水音と共に杏子の身体が海中に没した。 「あんこ!?」 もなかが慌てて覗きこむ。 「あんこ!だいじょぶ!?…ちょ、あんこ!?なにーガボガボって!?ねぇ、あんこ!もしかして…泳げないの!?」 もなかが驚くのも無理はない。あれ程身体能力の高さを見せて来た(主にバトル方面で)彼女が、まさかカナヅチだとは、誰が想像しえただろうか? …いや、陸ではちょっとやそっとの事じゃ動じねえ自信があるんだけどさ。 あたし、海っつーか、水中はダメなんだよな。うん。 何しろ山育ちっつーか、水と親しむ機会がなかったもんで… いやしかし、海の水ってのは辛えもんだな。喉が痛いぞ。 あ?なんだか息も…苦、し…よう、な……… …………… ……… ……
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214 :【あんこもなか】 4.ひとなつのけいけん[sage]:2014/10/31(金) 11:25:26.15 ID:85/Ku4jk - 「あんこ、しっかり!ねえ、しっかりしてよ!ほら、息!息して!ねえ!あんこってば!」
「ねえ!じ、人工呼吸とかした方がいいんじゃない!?」 「やる!もなかが、やる!」 (…っせえなあ…ちょっとは静かに…!? 朦朧とした意識の中、杏子は薄目を開ける。 すぐ目の前に、涙に濡れたもなかの顔があった。 目を閉じて、さらに近づく。唇に、柔らかい感触。 暖かい呼気が注ぎ込まれ、急速に意識が覚醒する。 「もな…がはっ!げほげほごほっ!!」 がばと上半身を起こし、激しく咳き込む杏子。 「良かった!朽木さん!」「おお、気がついた!」 「良かった…!」「偉い、もなか!よくやった!」 ひとしきり咳き込み、ようやく人心地を取り戻した杏子、その目がもなかを探す。 …いた。大きな丸い目から大粒の涙を溢れさせふるふると震えている。 「も、な…げほっ!」 「あんこぉぉぉおお!!」 力一杯、抱きしめられた。 「良かったああ!良かったよぉぉおお!あんこおおおおお!」 「も、もな…げほっ!げほげほがはっ!」 (さっきの…唇の感触は… 杏子の顔が、見る見る朱に染まる。 (唇…もなか…あれ、もなかの… 「え?え?え?」 ワナワナと震える杏子。 「ええええええええーーーー!?」 続く ※季節はずれでスミマセン…
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