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233 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 13:59:24.53 ID:8ebInpvv - 投下しまっす
・鷲ノ宮星彦×一族女 ・不倫、凌辱描写があるのでご注意ください 空を覆う雲は遠のき、カラリとした暑さと共に夏の星々が輝き始める。 そこは天界の最西端。夜の帳に満点の星々が描かれる中、外界との接触を阻むような離れ小島の中心に鷲ノ宮星彦の社がある。 その社は常に閉ざされている。夫婦の契りを交わした女神――琴ノ宮織姫にかまけ、職務を放棄した罰としての監獄であるからだ。 年に一度だけ、恩赦として許される逢瀬以外は従者である鳥たちだけと過ごす日々。それが星彦のすべてだった。 だが、その日は社に訪れる者がいた。 朱点童子討伐の為に遣わされた一族。そして、その娘を既に星彦は知っている。 「ふふ、お久しゅうございます、星彦さま」 記憶にある姿よりも美しくなった娘――美緒はあの時と同じように無邪気に笑った。 美緒に初めて会ったのは半年ほど前の事だった。 当時、まだ彼女は元服を迎えたばかりであり、その身体つきは女性として生まれ変わりつつあったものの、未だに少女の殻に覆われていた。 美しいと思った。といっても、顔立ちは殊更美人という訳ではない。星彦がそう感じたのは、美緒の身に纏う雰囲気だ。 あどけなさを残す面影の中に、底無し沼のように相手を引きずり込むような何かがあった。 姿を見た時、思わず妻の――織姫の名前を口に出してしまった。美緒に見惚れてしまった事を隠す為に、わざと比べるような事を言ってまで。 そう言えば、きっと怒るだろうと思った。義務とはいえ一夜を共にする相手にそのような事を言われて不快にならない訳がない。 美緒を見たくなかった。一目見て感じた戦慄にも似た感情を消し去りたかったのだ。だが――。 ――あら、嬉しい。 美緒は僅かに顔を赤らめ、無邪気に笑った。怒り、嫉妬、虚勢。そのどの感情でもなく、純粋にその言葉を口にしたのだ。 「お変わりないようで、何よりですわ。それと、到着が遅れて申し訳ありません。本来ならもう少し早く着く予定だったのですが……」 「……いや、別にいいさ。……また、お前が交神か」 「ええ、家の総意で。わたくしだけでなく、もっと他の方々の血を残した方が良いと思うのですけど」 美緒は一族の中でも特に優れていた。 時折相手をからかうような素振りはすれど、性根は心優しく忍耐強い。そんな性格を表すように、彼女は『水』の気質を中心に高い素質と力を秘めていた。 優秀な遺伝子は可能な限り残すべきだ。その一族の悲願に従い、またも天界へ赴く運びとなったとどこか物憂げに答えた。
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234 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:00:07.57 ID:8ebInpvv - 「星彦さま」
美緒が星彦の手を取る。戦いに赴いているとは思えない程に細く白い指が絡む。互いを縛る鎖のように、一つ一つがぴたりと合わさる。 「……ずっと、お会いしとうございました。あれが今生の別れと覚悟を決めていたのに、来る日も来る日も、思うのは貴方の事ばかりで」 身体が動かない。されるがままに、星彦は相手に身を委ねていた。 ――落ちる。縋りついている一本の綱がほつれ、底なし沼の上でゆらりと揺れている。 「才能があって良かったとこれほど思った事はありません。だからこそ、家の者に無理を通せたのですから。――ねえ、星彦さま」 美緒を見る。それは全てを呑み込む聖女のように優しく――悪鬼のように残酷な顔で、星彦を誘っていて。 「――美緒をまた、女にしてくださいまし」 その言葉は、命綱を千切るのには十分だった。 一族に掛けられた二つの呪い。その血を絶やさぬために考え出された交神の儀。 だが、神も一族もその義務をすぐに終える者は限りなく少ない。一月という僅かな間だけでも、彼らは身体だけでなく言葉や心でも交わっていた。 だが、それはあくまで一般的な話。かつて一月を共にした二人に言葉は不要だった。 布団に倒れ込む。抱いた肩はその手ですっぽりと包んでしまえるほどに柔らかい。組み敷いた鬼切りの娘は、驚くほどに華奢であった。 視線が交錯した瞬間、互いの唇が吸い寄せられる。触れ合うだけで柔く、溺れてしまいそうだった。 「ん、ふっ……!」 開いた隙間から舌をねじ込む。最初は驚いていた美緒も、すぐに応えるように絡ませ合う。 その口元から銀色に光る糸が引く。それはどんな美酒よりもかぐわしく、酩酊させる妖気を帯びていて。 紅を引いたような唇から溢れる蜜は毒の味がした。 「は、んっ……本当に、星彦さまはお変わりになりませんね」 「……な、何がだ?」 「初めてわたくしとこうした時にも、同じようなお顔をしていましたのを思い出して」 最初、美緒は星彦の事を知らずに来たのだと思った。でなければ、夫婦の片割れと事を為そうとは到底考えられなかったからだ。 美緒は織姫の存在を分かっていた。そのうえで星彦との交神を望んでいた。 理由を聞いてみたのだが、曖昧な笑みと共にかわされ続け、今日まで核心を突く答えは引き出せていない。 だが、どんな理由があるにせよ、選ばれた以上は交神の儀に及ばなければならなかった。 しかし、義務とはいえ実際にするのは男女の睦言と何ら変わりはない。織姫への想いに悩む星彦に美緒はこう言ったのだ。
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235 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:00:47.41 ID:8ebInpvv - 『気にしないでくださいな。所詮は一月の夢幻。星彦さまにとっては一瞬の事なのですから』
あの一月は不思議だった。美緒は閨以外では必要以上に星彦の邪魔をする事もなく、だが、ふと人恋しさを感じた時にはいつのまにか傍にいる。 ある日、炊事場を借りていいかと聞かれ承諾すると、その日から素朴だがどこか温かみのある食事が用意されるようになった。 そして、その家事一切も美緒は行うようになった。最初は断ったものの悲しそうにため息をつく姿に良心が耐えられなくなり、いつしか任せるようになって。 そんな夫婦のような生活をも交えながら一月は終わった。たった一月だけ。ただの義務であり、光陰のように一瞬の出来事なのだと、美緒の言葉を反芻しながら。 「う、うるさいな。神とは不変の存在なんだ。そう簡単にお前たちみたいには変われないんだよ」 「ふふ、そうですね。貴方さまも、ここも、本当に変わらない。……まあ、三度来訪しただけの身で、星彦さまと同列に語るのはおこがましいですわね」 「――は?」 三度。美緒は確かにそう言った。 美緒との交神はこれが二回目。そして美緒と交わり彼女を女にしたのも星彦。 ――だったら、だったら、もう一回は何だ。 「っ……!」 気が付くと美緒の手首を掴んでいた。 美緒が苦痛の呻きを挙げる。だが、細く滑らかな素肌に指先が食い込んでいくのを止められなかった。 「……誰だ。誰とした?」 一族が天界に昇るのは交神の儀のみ。なら、必然的に美緒は星彦以外の男神とも執り行っている事になる。 だが、美緒は言っていたではないか。会いたかった、いつも星彦を想っていたと。そして、あの一月では確かに通じ合っていたじゃないか。 そう問うように美緒を見つめる。だが――。 「――星彦さまには関係ありません」 その顔には何も宿っていなかった。灰のように乾いた双眸が星彦を映しているだけで。 吐き出された言葉は真の意味を閉ざすように冷たく、無機質なものだった。 「交神は双方によって行われるもの。それ以外の神には無関係なものです。……奥さまの事も、先月までご存じなかったのでは?」 「……っ」 三月ほど前、織姫もまた交神の儀が行い、その子が先月下界へ送られた。それが先月に――年に一度の逢瀬で織姫本人から伝えられた事実。 夫婦でありながら互いに違う者と交わり、子を為した事。織姫はそれを咎める事はなかったが、悪びれる事もなかった。 「これはただの遊戯だから」と織姫は言う。だが、それは詭弁だ。ただの遊びと言うには呪われた一族を気にかけ、自身の子を慈しんでいたのだから。 星彦も知らない「母」の顔つき。それは、永遠の崩壊だった。
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236 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:01:26.42 ID:8ebInpvv - 「交神の儀は双方の利があるからこそ。わたくしがこうして身体を重ねるのは、ひとえに一族の悲願。ただそれだけの為に過ぎません」
これはただの義務だ。男女の営みとはいえ、朱点童子討伐という目的の為に天界が考え出した天界の策でしかない。 だが、星彦は変わった。変わってしまった。織姫も同じだ。盤石の永遠だった夫婦にはヒビが入り、もう不変の存在ではなくなった。 そして、美緒は不変の理を崩壊させ、星彦の心身へ踏み込んだ。そして、その心を乱し、決して消える事のない感情を植え付けた。 あの時の事を考えるだけで狂ってしまいそうになる。それなのに、美緒は素知らぬ顔で他の男神と交神し、あまつさえそれを義務だと切り捨てる。 ――そんな勝手が許せるものか。 胸の奥から湧き出す溶岩のように沸騰し黒々と燃え上がる劣情を、星彦は止める事は出来なかった。 鳥の鳴き声が聞こえる。おそらくはいつも従えている猛禽な従者だろう。それはまるで、主の行動を糾弾するようにも扇動しているようにも思えた。 薄暗い社の中からは獣のような息遣いが聞こえる。だが、それを発しているのは男女の交わりにはあまりにも不釣り合いな姿になった娘だ。 純白の布の上に転がされた身体。その両の手は後ろに縛られ、下肢を開くように固定された美緒の姿があった。 呪術を施した縄が白い四肢に食い込む。それは、さながら装飾が施された贈与品のようだ。 美緒は時折苦しげに身体を身悶えさせる。捕えたはずなのに、その姿は何故か自由に見えて。その様子が尚の事、星彦を苛立たせた。 「……随分と成長したな。前はいくら交わっても女に成り切れてなかったというのに」 結ばれた帯を乱暴に紐解き、着物をはだけさせる。 布一枚隔てられた障壁の間から形の良い乳房が表れる。半年前はまだ少女の面影を残していたそこも、今は成熟し、欲望を促す存在へ変化していた。 「んんっ!」 柔らかな双丘を掴む。膨らみこそあれど、堅く張っていた乳房はもう見る影もない。 握り返す度に指が埋没し、掌からこぼれた肉が形を変える。指の腹で引っ掻くように弄れば、美緒は小刻みに肩を震わせる。 弾力に反発し、力任せに揉む。指の跡が透き通った肌に赤々と浮かび上がった。 「……ふふっ。女は、年月と共に変わっていくのですよ」 美緒が笑う。先程の言葉も、今の状況もまるで無かったかのように普段通りの調子だ。 美緒は移り変わる。星彦と「誰か」によって、あどけなさを残す少女から、女の色香を漂わせる女性へと変貌を遂げた。 なのに、星彦は変わらない。美緒と子を為そうが、美緒が「誰か」に抱かれようが、星彦はいつまでも贖罪を受ける神であり、織姫の夫でしかない。 それは、星彦が自ら望んだ願いだったはずなのに。
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237 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:02:11.15 ID:8ebInpvv - 「あ、くぅ……!」
一際大きな嬌声と共に、表情が崩れる。星彦がその薄紅色の頂に吸い付いたのだ。 美緒は痛みには慣れていても、快楽への耐性は無い。それは、星彦が最初の閨で気付いた事だった。 生娘だった美緒が、たった数度の交わりで絶頂に導いた。 歯で挟み、唾液を塗布し、堅くなったそれを舌の先で執拗に責める。ちゅうちゅうと吸えば、ビクビクと身悶える。 「ふあ、あっ、やぁ……そこ、ばっかりっ……!」 月下にゆらめく水面のような面持ちが波立つ。素肌は火照り、赤く染まっていく。 それは紛れもなく女の顔だ。清楚な様相が、欲望を誘う底なし沼へ変貌する。あの時よりも、強烈な妖気を放っていて。 その姿はまるで織姫のようだ。琴の音のような麗らかさを装いながら、実際はかなりの短慮。だが、それでも合わせ絵のように求めずにはいられない相手。 妻の姿が浮かんだ瞬間、何故か心の奥底から苦味が広がる。それがどちらに対する後ろめたさだったのかは、もう分からなくなっていた。 「……んぁっ!」 手持無沙汰になった右手を下腹部へと滑らせる。 手荒く指を押し入れた筈のそこは、十分すぎる程に粘り気を帯びていた。 「――乱暴にされても感じるのか」 「もちろんですわ。星彦さまに触られているのですから」 他の男にもそう言ったのか。いや、非道に扱っても快楽を覚えるまでに仕込まれたのか。 考えれば考える程、沼へと沈んでいく。それは抗いがたい程に優しく、溺れてしまうには残酷なものでしかないのに。 心に抱いた思いをそのままぶつけるように奥底へと推し進める。二本の指はあっさりと侵入を許した。 「ひゃ、あっ、んぅ……!」 すんなりと星彦を受け入れた筈だったそこは、受け入れた瞬間に拒むように収縮する。 腹いせに、動きに真っ向から逆らうように押し広げていく。動かす度にぐちゃりと粘ついた水音が響き、溢れ出した粘液が星彦の指に鎖のように張り付く。 それはまるで、星彦を歓迎しているかのようで。忌々しい。このままでは、美緒が満足するだけ――だとしたら。
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238 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:03:01.13 ID:8ebInpvv - 「あっ……」
乱雑に指を引き抜き、荒い呼吸を繰り返す美緒の上に覆い被さる。 取り出した充血した己を、紅い唇に押し当てる。 「……舐めろ」 もう一度強く押し付けながら、眼前に転がる少女を見下ろす。 一瞬、美緒は何かを言いたそうな視線を投げかけたが、すぐに視線は眼前のものへと移り、躊躇いもなく舌を伸ばした。 「ん、ふっ……う、んんっ……」 舌先が先端を中心になぞる。包皮の間や脈打つ血管を舐め取り、刺激していく。 その様子はとてももどかしく、羽虫が這いずるような不快とも言える快楽でしかなくて。 こういった事も初めてではない。かつての交神でも、頼みもしないのにいきなり口取りを申し出て来たくらいだった。 あの時の美緒は初心だった。生娘だった彼女の動きは未成熟で、星彦の欲望を吐き出させるには物足りないものだった。 だが、今は違う。星彦自らが手ほどきし、結果として想像以上に上達してしまった。それこそ、教えた事を後悔したくなる程度にまで。 だからこそ、今の美緒の動きは可笑しさを禁じ得なかった。――この娘はわざとじらしているのだ。舌だけという、かつての失敗談を真似てまで。 「ぐ、うぅっ!」 縹色の髪を掴み、無理矢理押し込む。喉元を突いた所為か、苦しげな呻きが漏れる。 どうやら、まだ自分が置かれた状況を理解していないらしい。苦痛に歪む姿も、今はただ欲望を焚き付けるものでしかない。 だが、それが美緒の目的だったと気付いた時には、もうどうしようもなくて。 「んぐっ、ん、んううっ!」 動かす。美緒の様子など全く配慮せず、ただ己の思うがままに打ち付けていく。 柔らかくすべすべとした粘膜の感触が直に伝わる。ぞくりと背筋を駆け抜け、悪寒のように全身へと広がっていく。 「うごっ、あ、ん、んうむぅ!」 互いの体液が混ざったものが、唇の合間から零れ落ちる。美しい顔が唾液に塗れ、琥珀色の瞳からは涙が伝う。 非道な行為だ。織姫にさえした事はない。そうしている最中にも、星彦の心に針で刺すような罪悪感が積もっていくのが分かる。 だが、間違いなくこの姿は、この面持ちは、他の誰でもない星彦が引き出し、星彦にだけ向けられたもの。 そう思った瞬間、どす黒い笑みが零れるのを止める事は出来なかった。
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239 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:04:00.33 ID:8ebInpvv - 「ん、んんっ――!」
瞬間、増幅した感情はもう制御出来なかった。 自覚した時には、あっけなく己から吐き出されていた。瞬く間にそれは広がり、紅い唇が白く濁る。 口腔にすべて収まったのを確認したその時、美緒が逃れるように視線を逸らしたのを星彦は見逃さなかった。 「飲め」 咳き込もうとする頭を固定し、否が応にも受け入れざるを得ない体勢を作る。 美緒は一瞬怯えたような視線を向けたものの、星彦の望むがままに欲を飲み込んでいく。 ごくごくと喉元が上下する。この体勢では飲みにくいのだろう。美緒が嚥下する量はあまりにも少なく、飲む傍らからぽろぽろと涙が零れていく。 そして、えずきながらも長い時間をかけ、ようやくすべてを飲み干す。口元から引き抜くと、飲み干せなかった乳発色の糸を引き、橋を創った。 「う、あ……んんっ……」 美緒の口から引き抜く途中、一度冷めた筈の熱が再び集中していくのが分かった。 未だに心身に溜まった淀みは消えない。もしかしたら、このまま星彦を侵し尽くしてしまうのかもしれない。 もう考えたくない。ただ内にあるものから解放されたい。星彦に残された思いは、ただそれだけだった。 美緒の肩を押さえ付けながら、水気の絶えない蜜壺へ宛がい、そのまま腰を落とした。 「あっ……!」 半年ぶりであるにも関わらず、しとどに濡れそぼった砦はあっけなく異物の侵入を許した。 幾度となく己を受け入れた場所。だが、そこに星彦以外の誰かもまた侵入し、美緒との子を為した場所。 ――もしかすれば、美緒が遅くなったのはかの男神に会っていたからではないか。 先程は気にならなかった美緒の言葉が頭によぎる。 問いたい。紅い唇を貪り、柔らかな乳房を吸い、蠢く性器を汚し、胎内に子種を植え付けた男神を憎たらしい程に。 だが、美緒は決して口にはしないだろう。美緒か一族かどちらの意思にせよ、これが義務である以上星彦に告げる事はない。 そして、星彦もまたそれを知る事はない。それを知れば、もう二度と「天界に住まう神」として存在出来なくなってしまうだろうから。 「あ、ううんっ……! 嬉しい、ですわ……わたくしの為に、ここまで……」 美緒は焦点の定まらない恍惚とした表情でぽつりと呟く。その言葉は、星彦に向けられたものではなかった。 この娘は本気で悦んでいる。今までの様子は己に酔った訳でも、痩せ我慢でもない。心の底から星彦との行為を愛しんでいるのだ。 ああ、そうだとしたら。何の為にこの行為をしているのだろう。 だが、今更そう思った所で己の雄から発せられる熱を止める事は出来なかった。
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240 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:08:29.92 ID:8ebInpvv - 「い、ぁああっ……ん、あっ、んんうっ……」
細い腰を掴み動かしていく。 だが、それでも美緒は星彦に応えるように身体を密着させる。その度に、挟み込んだ膣壁が痛みを伴う程に締め上げる。 粘膜は星彦に合わせるかのように蠢き、その度に快楽が濁流となって押し寄せる。 「ひあっあ、あ、ほ、星彦さま……! どうか、わたくしの中に――!」 縛られた身体が反り返り、己の先端が膣内の最奥へ誘われる。 瞬間、美緒の求めに呼応するかのように全体が緊縮し、星彦の楔を目一杯絞り上げた。 「っ、……くっ!」 一瞬の静寂。刹那の途切れと同時に、洪水のように流れ出した美緒の胎内へ叩き付けられる。 「……あぁ、ふあ……」 断続的に膣内が収縮する。一滴も逃さないと言わんばかりに、美緒は流れ込む様子を目蓋に焼き付けていた。 これでまた、星彦の子供が生まれる。鮮やかな生命の塊がもう一度この手に抱かれる。他の誰でもない美緒と星彦との「結果」によって。 そう思うと同時に、張り詰めていた気持ちが嘘のように抜けていくのを、吐き出される濁流と共に感じていた。 夜が更ける。あれ程輝いていた星々は、白み始めた空へと姿を消し始めていた。 あの交わりから数刻後。軽い行水を終えた星彦は、身体に纏わり付く水滴を乱雑にふき取っていく。 湯船に張った水はまさしく凍るような温度だったが、昂った熱を引かせるには丁度良いものだった。 湯あみを終え戻って来た星彦が見たのは、何事も無かったかのように露に濡れた髪の毛を梳いている美緒の姿だった。 着物から見える肌には未だに痛々しい紅い痕が残っている。普段と変わらない姿に、今はただ罪悪の念が込み上げてくるばかりだった。
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241 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:17:51.38 ID:8ebInpvv - 「……すまん」
先程から喉元につかえた言葉をようやく絞り出す。美緒に向き直り、必死に頭を下げる。 いくら普段邪険に扱って来たとはいえ、あのような事をして平然としていられるのは人として、いや神としてどうかしている。 今はただ、後から後から湧き出てくる懺悔の念を美緒に伝える事しか星彦には考えられなかった。 「ふふ、そんなに落ち込まないでくださいな。元々は、星彦さまを怒らせてしまったわたくしの所為ですのに」 「違う! 俺が悪かったんだ! その、誤解しないでくれ。せっかくまたお前に会えたのに、いきなりあんな仕打ちをするつもりじゃ……」 その言葉に、美緒はきょとんとした様子で星彦を見つめる。 しばしの間、何かを確認するかのように視線を動かす。やがて納得したように笑みを浮かべる。 それは、いつものにこやかなものとは違うどこか悲しげな微笑みだった。 「――大丈夫ですわ。奥さまには、内緒にしておきますから」 そう言いながら、美緒は含むような視線を送る。その言い回しに、ふと星彦の記憶が蘇ってくる。 『あいつには、内緒にしてくれ』 それは、初夜を終えた時に星彦が懇願した言葉。その時は義務とはいえ、織姫以外の女を抱いたという罪悪感から出てしまったものだった。 またもや妻の名前を口にした事に慌てたものの、美緒は咎めもせずただ先の言葉を言っただけだった。 何故あの時と同じ事を言ったのか。そう問いかけようとして――星彦もまた、口に出す事は出来なかった。 「さあ、もう夜も遅いですし、後日ゆっくり語り合いましょう。……出来れば、もう少し優しくお願いしますね」 身体が動けば浮気だが、心が動けば何になるのだろう。 美緒と交わった事。美緒が去ってから、今まで以上に空虚な生活に感じた。またも交神の儀で訪れるのを知り、平静を保てなかった事。 そして、美緒が他の男神と身体を重ねるだけで、狂人のような行動をしてしまった事。 ただの戯れだった。戯れだと思いたかった。だが、それに誰よりも溺れてしまったのをもう誤魔化す事は出来ない。 この感情が愛なのか、それとも執念なのか星彦には分からない。 それでも、ただひとつだけ断言出来る。 ――もう、浮気じゃすまねえな……。 (完)
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242 :我が恋を嬬は知れる[sage]:2014/10/09(木) 14:27:36.47 ID:8ebInpvv - 以上です。
七夕夫婦って最初から割り切ってる奥さんと、だんだん遊びから本気になっていく旦那さんという対極っぷりが良いと思います。
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