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630 :名無しさん@ピンキー[]:2014/09/28(日) 00:44:22.28 ID:1qAtWPye - >>629
ありがとうございます!本編で結ばれなかったのが本当に残念・・・ しんみり系で話考えてるうちにミレポとヴォルケンの話も思いついたので5話目書きたいと思います。 放課後の鐘の音とともに、帰りのホームルームが終わり、ミレポックは学級委員長の残りの仕事と勉強のため教室に残る。 皆各自それぞれの活動へ向かい、今教室にはミレポック一人しか残っていない。 「・・・はぁ。今日は何を書いたらいいかしら」 ミレポックが今頭を悩ませているのは、学級委員長が記録をつける日誌の報告だ。これまでのものを読み返すと、 毎日同じようなことしか書いていないことに気付いてしまった。毎日これに目を通す担任のハミュッツがどう思っているのだろうか などと、変な心配をしているのが良くないのだが。元来生真面目な性格のミレポックは、他人なら気にしないような 小さなことでも心配し、頭を悩ませてしまうのだ。 「毎日同じ事の繰り返し、か・・・」 ミレポックは、新しいクラスになり委員長を決めた日のことを思い出し、そして自ら立候補を決めた時の己の意気込みを 今更になって恥じた。動きの止まっていたペンを机に置き、両手を首の後ろで組む。 「私、何だか馬鹿みたい・・・。」 新しいクラスになり、初対面のクラスメートばかりで皆が緊張していた頃。 いきなりクラスのリーダーを決めなければならず、互いに気まずいまま皆が沈黙してしまっていたところに、 一人の少女が顔を少し俯けたまま手を挙げた。一見大人しく、いかにも真面目な優等生風の少女。しかし、 彼女が立候補したのは、決して気まずい雰囲気に堪えきれなかったからではない。学級委員長を務めようとしたのには 明確な目的があった。クラスの皆の役に立ちたい、誰かから頼られ必要とされる人間になりたい―そう決意しての立候補だった。
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631 :名無しさん@ピンキー[]:2014/09/28(日) 01:12:47.62 ID:1qAtWPye - 中学時代、その真面目すぎる性格とやや潔癖な性質から周囲に疎まれてしまったミレポックは、
中学3年時あたりからあまり人と関わらないようにしてきた。(疎まれた理由の半分が、不良女子が片思いしていた男に 言い寄られたからであるということには気付いていない) 本当は、同じクラスの子と仲良くしたい。自分の存在を否定するのではなく、クラスの輪に入り、ありのままの自分として 振る舞っていきたい。そんな自分に変わろうと勇気を出してのことだった。 しかし、現実には学級委員長になったところで何か大きな変化があるわけでもなく。 クラスのリーダーとはいっても、普段から特別な仕事という仕事は特に無く、これまでとそう大差ないのが 現状だった。幸い、このクラスは皆性格のいい人間ばかりで、それなりに学校生活を楽しく過ごせてはいるが、 当初思い描いていた理想からは遠いものだった。ミレポックの生真面目で抑制的な性格がそれを否定するが、高校生らしく 青春を謳歌してみたいと心の底で願っていたのである。学級委員長の仕事でクラスの中心に立つことはあるが、 それ以外の何気ない日常の中で青春らしい青春を送っているかと聞かれれば、答えは否だ。 このままで本当にいいのだろうか・・・そんなことを考えていると、ふと窓の外から、初夏の陽を浴びてキラキラと 輝く葉桜が見え、その綺麗な色から、一人の男子生徒の姿が頭に浮かんだ。校庭を見下ろし、部活に励んでいるその姿を目で追った。 陽光を浴び輝く若草を思わせる髪に、実直さと強い意志を湛える瞳をもつ男、ヴォルケン・マクマ―ニだ。 彼とは1年の頃から同じクラスで、入学当初、今よりずっと内向的な性格だったにも関わらず、すぐに打ち解けることができた。 彼も非常に真面目な性格で、どことなく自分と似たところがあると感じていたが、他人を外見や能力で判断せず、誰にでも誠実に接する 優しい男だった。 彼は元々この地域ではなく、隣の県から来た生徒だった。陸上で全国上位クラスの記録をもち、 部活のために養父のもとを離れて暮らしていると聞いた。たった一人で生活しているにも関わらず、勉強に部活、人間関係も、何もかも こなしてしまう彼に、ミレポックは尊敬の念を抱いていた。
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632 :名無しさん@ピンキー[]:2014/09/28(日) 01:40:54.05 ID:1qAtWPye - ホイッスルが鳴る音と共に、普通ならば到底飛び越えられない高さに設定された
高飛びのバーに向かって彼は走っていく。ミレポックはその過程に思わず目を奪われる。 見事な踏み切りとともに、高く舞い上がった身体がしなやかなアーチを描いてバーを飛び越えていく。 着地と共に、審判の白旗が上がった。 「すごいな、ヴォルケンは・・・」 以前キャサリロから、ヴォルケンのことが好きなのかと聞かれたことがある。そのときは恥ずかしさのあまり思い切り 否定したが、本当のところ、ミレポック自身もよくわからない。彼のことは尊敬している。友人として誇らしいと思うし、 間違いなく好意は抱いている。だが、同時にそんな彼が酷く眩しい存在に見えるときがある。どれほど過酷な日々を 過ごしていても、嫌な顔一つせず、どんな障害も軽々と飛び越えてしまう。そんな風に見えるのだ。異性の友人に対してこんな 感情を抱くのは少しおかしいかもしれないが、「羨望」に近い感情を抱いているのかもしれない。 視線を戻したミレポックは、ため息を吐き、結局無難な内容を日誌に書き留めることにする。流麗な字を紙面に滑らせ書き終え、 いささか納得できなかったが、そのまま提出することにした。職員室に日誌を提出したあと、そのまま教室に戻り勉強することにする。 今の時点で難関大学への進学を志しているミレポックにとって、時間は少しでも無駄にしたくない。こんな考えだからだめなのだろうか、と一瞬考えたが、 雑念を振り払い、机に問題集とノートを広げる。 夜の7時30分になり、そろそろ学校の下校時刻が近づく。荷物をまとめ、一人しかいない教室の電気を消そうと教室前方の扉に近づいたとき、 外から突然扉が開かれた。 「きゃっ!?」 あまりに突然のことだったため、ミレポックは思わず悲鳴をあげた。 「す、すまない!大丈夫か?」 扉を開けたのは、予想外の人物だった。 「ヴォルケン・・・?どうしてここに?」 いつもなら部活が終わった後はそのまま真っ直ぐ帰るはずだ。この時間の教室で誰かと二人きりになるのは 初めての事だった。 「いや、弁当と傘を忘れたから取りに来たんだけど・・・」 「傘?」 ふと外を見たミレポックは、ザーザーと雨が降っていることに気付いた。朝の天気予報を 確認していなかったミレポックは、傘を持ってきていなかった。 「どうしよう・・・。傘、持ってきてないわ」 電車通学のミレポックは、学校から駅までの1キロ未満の距離を歩いて行かなければならない。 思わず憂鬱な溜息が溢れる。
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633 :名無しさん@ピンキー[]:2014/09/28(日) 03:02:41.23 ID:1qAtWPye - 「ミレポック」
生真面目そうな、やや堅い声に振り向くと、目を逸らし、照れくさそうな様子で、ヴォルケンは自分が持っていた傘を差しだしてきた。 「・・・駅まで送るよ。」 「え?だ、大丈夫よ!それに、ヴォルケンの家は駅とは逆方向だったでしょう?」 慌てて断ろうとするが、風邪を引くから、とヴォルケンが譲ろうとしなかったため、結局一緒に一つの傘で駅まで向かうことになった。 先程よりいくらか勢いは収まったが、雨が地面を打つ音は止まない。しかし、そんな雨の音すら聞こえなくなるほど、ミレポックの心臓は 激しく高鳴っていた。異性とこんなに近くに寄り添ったのは初めてだった。部活帰りの他の同級生が見ていたらどうしよう・・・と心配する。 昨日同じ時間に下校したときは、キャサリロとノロティが通学路の途中にあるドーナッツ店にいた。仮に見つかったとして、 ノロティなら特に気にしなさそうだが、キャサリロに見つかったら絶対に何か言われるだろう。 そんな心配をするミレポックだったが、学校を出てからまだ一言もヴォルケンと口をきいていないことに気付き、 ちらりと横顔を伺う。ヴォルケンの方は、真っ直ぐ前を向き何事もないかのように歩いている。しかし、一つだけ気付いたことがあり、 ミレポックはようやく口を開いた。 「あの・・・ヴォルケン。私は少しくらい濡れても平気だから、その・・・ちゃんと傘の中に入ったら?」 平静を装っているようだが、やはり女子と密着して歩くのは気恥ずかしかったらしい。間隔を取ろうとするあまり、 傘の大部分はミレポックに差し掛かっており、道路側を歩いている彼はほぼずぶ濡れになっている。 「大丈夫だ。さっき運動してきたばかりで暑いから、少しくらい濡れても問題ない」 「・・・どう見ても少しじゃないんだけど。」 「平気だよ。雨には慣れてるし」 しかし、このままではどうにも申し訳ない。どうしたらよいものかと考え込み、しばし沈黙する。 少し間が空いた後、ヴォルケンの方から声を掛けられた。 「なあ。最近、何か悩んでいることでもあるのか?」 「え?」 彼の方からそんな風に心配をされたのは初めてだ。自分はそんなに浮かない顔をしていたのだろうか。 放課後の悩みを悟られないよう、平静を装い答える。 「べ、別にないけど・・・どうして?」 「いや、最近よく溜息を吐いているから、何か困っていることでもあるのかと思って」 自分でも気がつかなかったことを指摘され、ミレポックの頬が少し赤くなる。 「えっと・・・、そんなに大したことじゃねいから平気よ!その、私が勝手に気に病んでるだけというか・・・」 「なんだ、やっぱり悩んでるじゃないか」 こちらの顔を少し覗きこむように見て、ヴォルケンはほんの少し悪戯っぽく笑った。こんな風に笑うこともあるのかと 少し驚くミレポックだが、同時に嘘がばれて気恥ずかしくなる。顔が赤く染まっているのを見られないよう、淡い金色の頭を俯けて歩く。 そんな彼女の様子に気付いているのか否や、ヴォルケンは再び目を向いて言った。 「ミレポックは、本当に頑張り屋だな。」 「え?何・・・」 「頑張り屋だけど・・・あまり一人で抱え込むなよ。皆だって、お前の役に立ちたいと思っているはずだから・・・」 そこまで言い、ヴォルケンは口を閉じ、話すのを辞めてしまった。言われた瞬間はよくわからなかったが、 どうやら自分を元気づけようとしていてくれたらしい。その不器用さに、思わず笑いそうになる。 「ミレポック?震えてるけど、寒いのか?」 こちらが笑いをこらえていることには気がついていないようだ。 「ううん、何でもない。」
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634 :名無しさん@ピンキー[]:2014/09/28(日) 03:14:27.86 ID:1qAtWPye - もうすぐ駅に着く。この信号が変わり、横断歩道を渡ってしまえば、二人の時間も終わってしまう。
そんな風に思った瞬間、何故かミレポックは胸にぽっかりと穴が空いてしまったかのような寂寥感に襲われた。 隣にいる彼の温もりがもうすぐ消えてしまうことが、無性に悲しくなった。 「・・・ミレポック?青になったぞ」 その声にはっと我に返り、慌てて横断歩道を渡る。とうとう駅に着いてしまった。初めはとても長い距離のように思えたが、 まだまだ続いて欲しかったと、子供染みたことを考えている自分に気付いた。 「じゃあ、俺はここで・・・気をつけて帰れよ。」 「ええ。今日は本当にありがとう。風邪、引かないでね」 緩やかな笑みを浮かべた後、ヴォルケンは背中を向けて元来た道へと歩き出した。ミレポックもホームへ向かおうとしたが、 その後ろ姿を思い出した瞬間、訳もなく行って欲しくないという気持ちがこみ上げ、思わず振り向いてその名を呼んだ。 「ヴォルケン!」 呼び止められたヴォルケンが歩みを止め、こちらを振り向く。 「どうした?」 ただ訳もなく呼んでしまったミレポックは、呼び止めた後になって慌てて言い訳を考える。 雨で濡れた若草色の髪を見て、鞄の中にしまっていた予備のタオル地のハンカチを取り出した。 「あの・・・これ、使って!」 彼女が差し出したのは、品の良いラベンダー色に、白やピンクの小花柄が散りばめられた綺麗なハンカチだった。 母親が既にいないヴォルケンにとって、無縁だと思っていた代物だった。汚すのは悪いから、と断るヴォルケンだったが、 風邪を引くから、と頑として譲らなかったため、ヴォルケンはそれをぎこちない仕草で受け取った。 今度こそ二人は別れ、ミレポックは駅のホームに、ヴォルケンは自宅へと向かっていく。ホームのベンチで電車を待つ少女の胸を占めていた 悩みや寂寥感は、嘘のように解消されていた。あるのはただ、温かい温もりと、甘い幸福感だけ。ミレポックはそこで漸く、彼への感情の 正体を理解したのだった。恋とはこんなにも温かい感情だったのか・・・ ミレポックは胸の中に芽生えた小さな幸せを、大切に抱き締める。もう普通の友人として話ができなくなると、別の悩みに頭を抱えるのは少し先の話。 一方、帰宅したヴォルケンは、借りたハンカチから女の子らしい良い香りがすることに気が付いてしまってから、 一人悶々と夜を過ごす羽目になるのだった。 5話目終了です。 アニメで司書にハマった最初のきっかけがこの二人だったので、書けてほっとしました。
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