- 【パチンパチン】ブラックラグーンVOL.16【バシィッ】
392 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/26(金) 09:17:11.49 ID:rpJ3U543 - 事実、外省人の子供たちと私は、馬が合わなかった。
眷村と呼ばれる、私にはスラム街にしか思えないエリアから来る子供たちは、どこか 私たちと違っていて。 日本人が残した官舎から通ってくる子供たちも、どこか高慢で、私たちの話す日本語 混じりの台湾語を一段低く見ていて。 「自由民主統一中国」がてんで呆れる、とビールを飲むたびに多桑はよく私に言うでもなく ひとりごちていた。 自由も民主も、何もない、いつまで続くかもわからない戒厳令に縛られたこの国。 国連からも、「国ではなく地域だ」とされ、「漢賊不両立」と叫び議席を放棄した、この国。 そこらじゅうに銅像の立っている、あの交通事故以来表に姿を現さなくなった禿と、 その息子の百貫デブが生きている限り、私たちには自由も民主も、いつまでも 訪れそうにはない。 そんな、秘密警察に聞かれたら緑洲山荘送りになりかねないようなことを、家では 平気で多桑は口にしていた。 だからこそ、あれは必然だったのかもしれない。 あの夜のことは、私たち姉弟を奈落のどん底に落としたあれは、運命だったの かもしれない。 あの黒服の男たちに両親が連行されたあの日を、私は今でもはっきりと覚えている。 泣き叫ぶ私たちをよそに、ユーロンのエンブレムのついたあの黒塗りの車で、 手錠を嵌められて連れて行かれた両親の姿を、私は今でもはっきり覚えている。 いつまで待っても、両親は帰ってこなかった。 「シェンホァ、すぐ戻る。」 両親はそう言っていた。 だけど、そんな約束が叶うはずもなかった。 私は、生きるために何でもやった。 思い出したくもない、脂ぎった中年親父にだって、お金のために抱かれた。 うんざりするような、どろどろの下水から食用油を取り出しては売る作業だって、 何も辛くなかった。 ただただ、がむしゃらにお金を貯めた。 そして体を鍛え、いつか荒事師としてこの娼婦生活から脱したかった。 いつかこの国の政府に復讐するために。 いつか両親を奪ったこの国に、倍返しするために。 「お姉さん、可愛いね。いくら?」 ほら、今日も客が来た。 私は営業スマイルで、その男の声のほうへと振り返った。 完
|