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君が為の言葉を
俺の屍を越えてゆけでエロパロ2

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俺の屍を越えてゆけでエロパロ2
177 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:17:41.71 ID:TfpRFnu6
通された場所は、京の屋敷とも、迷宮とも違う所だった。
京の屋敷と同じ穏やかな木々の香りが漂う空間。だが、屋敷とは違い、木材がそのままの形で張り巡らされており、ごつごつとした表面が露わになっている。
その無骨な空間に、見た事がない鮮やかな植物が敷物や装飾として飾られている。
何より、所狭しと飾られた武具の数々。そのどれもが意思を持っているかのように存在していた。
その空間に男女が向かい合って座っている。
女の方は、まだ元服をして間もない、幼さを残した少女。だが、煌煌と輝く朱い瞳には鋭い刃のような力強さが宿っていた。

「此度、交神の儀によりこちらに参った火乃(かの)と申す。こういった事は不慣れであるが、どうかよろしく頼む」

娘――火乃は恭しく頭を下げる。その姿は至って平静であり、とても儀式の前とは思えない程普段と変わらない面持ちであった。
もちろん、これから行う事の意味を理解していない訳では無い。だが、火乃の思いはこれから行われる事柄よりも、目の前の相手に集中していた。

「ハンダキ、ボボイスタメーレ!」

火乃の挨拶に、奇抜な被り物を身に付けた男神――梵ピン将軍は歓喜とも狂乱ともつかぬ珍妙な声を上げた。

一族において、交神の儀を行う神は交神を行う本人が選ばなければならないという決まりがある。
元々は親になる者としての決意や自覚を促す為であるが、それは、短命の一族が数少ない我儘を押し通せる場所でもあった。
子孫を残すというただそれだけの制度。だが、その行為によって一族は確かな愛に満たされ、その愛は神の方にも確かに存在していた。
とは言え、普通の男女の付き合いのように相手の人柄で選ぶというのは困難だ。神の情報は世話係であるイツ花か、姿絵屋の絵画でしか確認する事は出来ない。
その為、交神の儀において相手を選ぶ基準は見事にバラバラだった。顔であったり、遺伝情報であったり、時には触り心地が良さそうという理由で選んだ者もいる。
どんな理由があれ、基本的に交神の儀の相手は希望通りになる事が多い。だが、火乃の場合は一族全員に満場一致で難色を示された珍しい例であった。

「その、梵ピン殿とお呼びして良いか?」
「ンダキ」
「……それは肯定の意と捉えてよろしいだろうか?」
「ンダキ、ンダキ!」
「そうか、良かった。私の事は好きに呼んでくれ」
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178 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:18:37.58 ID:TfpRFnu6
火乃が反対された理由として、梵ピン将軍の意思疎通の困難さがあった。
イツ花曰く、元々この神は京より遥か遠くの異国の地ににて祀られていた神だったらしい。
だが、それ自体は大して珍しい話ではない。梵ピン将軍のような異国から来た神は決して少なくはないからだ。
しかし、梵ピン将軍はそんな渡来神の中でも新しい時期にやって来た神だった。
八百万の神は言えど、言語の壁というのは厳しい。未だに異国の言葉が抜け切れない彼は、他の神々とも少々壁があるのだとイツ花は苦笑しながら教えてくれた。
梵ピンを見つめる。これからこの神と行うのは男女の営みと何ら変わらないものだ。
だが、今の雰囲気はとてもそうとは思えない。睦言の事など何も知らない生娘とはいえ、どうも今の梵ピンにその意思があるとは思えない。
何故なら、火乃の目の前には香ばしい匂いを漂わせる色とりどりの料理が並んでいたからである。

「キダキ、ボボイスタン!」
「一つ尋ねるが、これはその……食べ物、だよな?」
「ンダーキ」
「……もしかして、馳走にあずかってよろしいのか?」
「ンダキ!」

イツ花は神は食事が必要無い存在だと言っていた。という事は、これは火乃の為に用意してくれたという事になる。
交神に協力をしているとはいえ、すべての神が一族に好意的な訳では無い。もしかしたらと少々身構えていたものの、梵ピン将軍は少なからず友好的ではあるらしい。

「ああ、それはわざわざ……」

ぎゅう。申し訳ない、の言葉は腹から漏れた音によって打ち消されてしまった。

「……あ、え、えっと」

今朝方から禊の為何も口にしていないのを思い出した。天界に到着したのは日没間近であったため、普段なら夕飯の時間である。

「メレ!」

梵ピン将軍が笑いながら食器を手渡す。まるで「気にしてない、遠慮するな」と言っているようで。
恥ずかしさに俯きながら食器を受け取り、料理の一つを口にした。

「……美味しい」

思わず出た言葉に、仮面の下から覗く口元がほころぶ。その言葉が嬉しかったのか、もっと食べろと言わんばかりに次々と火乃の皿に料理を載せていく。
イツ花の料理とは違う、今までに食べた事もない味ばかりであったが、どの料理も美味な物ばかりだった。
一族以外と、それも神と食事をする。思ってもみなかった光景だが、それはいつもの食事と同じように心休まる事であった。
誰かと一緒に食事をする事の楽しさ。それは種族や言葉が違っていても決して変わる事が無い物だった。
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179 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:19:10.31 ID:TfpRFnu6
天界での日々は目新しくも穏やかに過ぎていった。
しかし、火乃天界に来た大きな目的である交神の儀は未だには執り行われていなかった。
それどころか、肌に触れる所か、同じ部屋で寝た事すらない状態だった。一応聞いてみたものの、「ボボイスタ、ボボイスタ!」と首を振るだけで。
梵ピンの行動を図りかねるまま、火乃はつかの間の休暇を味わっていた。
火乃の人生において、生きる事とは戦う事だった。来る日も来る日も迷宮へ赴き、鬼を切り、経験を積む事が日常だった。
だからこそ、今の生活はどうにも落ち着かない。天界に来てからも自主的な鍛錬は欠かさず行っているが、それだけではどうにも身体が疼いてしょうがない。
そんな退屈そうにしているのを見かねたのか、梵ピンは外へ連れ出すようになった。他の神々の社や名所、時は最果てまで赴き、日が暮れるまで出歩いた。
そして、天界に来てから三日後。その日は梵ピンに連れられ、天界を散歩していた。
やはり、家でじっとしているよりはこちらの方が性に合っている。火乃は雲が路傍の石のように存在する道を歩きながら、天界の風景を眺めていた。
思えば、普段は景色をじっくりと観察した事は無かった。精々、外の迷宮は季節によって攻略の仕方が変わるから面倒だと思っていたくらいだ。
綺麗だと思った。こんなに美しい物をいつでも見られるのなら、どんなに幸せな事だろうとも。

「ハンダーキ、メレ、メレ、ボボイスタン!」
「ほう、あんな所にも神々は住んでいるのか。洞穴では住みにくいだろうに」

この数日間で火乃は梵ピンの言葉が大分理解出来るようになった。
とは言っても、未だに会話というよりは火乃の方が話してばかりだが、意思疎通が円滑になっていく事に嬉しさを覚えていた。
梵ピンは親切だ。毎食異国の料理を振る舞い、時には散歩に連れ出してくれたりと義務以上の事を果たしてくれている。
だが、だからこそ疑問に思ってしまう。ここまで火乃に良くしてくれる意味を。そして、未だに交神の儀を拒む理由を。

「おう、梵ピンじゃねえか」

振り返ると、隻眼の男神が気さくげに呼びかけていた。
浅黒い肌に大柄な身体。屈強ではあるが、鍛え上げられた名刀のような柔和な雰囲気をも併せ持つ神。それは、火乃にとって馴染みの深い神でもあった。

「どうした、今は交神の儀の最中だろうに? ん、お前は……」
「お初にお目にかかる、タタラ陣内殿。私は火乃と申す。前に一族の者が交神で世話になった」
「――ああ、やはりアイツの子孫か。道理で似ている訳だ」

火乃の曾祖母に当たる女性はタタラ陣内と交神し、祖父を授かっている。何でも、鬼として囚われていたタタラを救ったのが切っ掛けだったらしい。

「メレ?」
「ああ、前にこいつの祖先と交神してな。こうなる事は予想していたが、まさかお前と交神する事になるとはな」
「ンダーキ、ンダーキ、ンダンギギッ!」
「ああ、違いない。顔つき合わせた相手が親戚になるとは、天界もますます狭い世界になったものだ」

言葉の所為で他の神達と距離があると聞いていたが、どうやらタタラとは話が出来るようだ。
梵ピンの方も心なしか楽しそうに話をしており、やはり似たような神だからこそ意思疎通が出来るのだろうか。
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180 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:20:54.08 ID:TfpRFnu6
「すごいな、タタラ殿は。やはり、同じ武器の神様だから分かるのだろうか?」
「ん? いや、コイツとはそれなりに長い付き合いだからな。というか、俺は鍛冶錬鉄の象徴だ。梵ピンも武器ではなく戦いそのものの象徴だ」
「む、そうなのか? 梵ピン殿の社に多くの武器が飾られていたのはそういう意味だったのか」

梵ピンの社には原初的な建物には不釣り合いな様々な武具が所狭しと飾ってあった。
剣、槍、槌といった馴染みの深い物から、筒に槍の穂先が付いた大筒や全体が蛇の様に曲がりくねった剣といった京には無い武具の数々に、最初相手も忘れて見入っていたことを思い出す。

「……ああ、お前はあれを見たのか」
「まあ、じっくり見た訳では無いが、あれはすごい! あんな素晴らしい武具は京ですらそうそうお目に掛かれない。機能もそうだが、武具の質自体も良い物ばかりだ。剣福殿でさえ造れるかどうか」

火乃は武器の類が好きだった。剣士としての性もあるが、討伐隊に入る前は蔵にある武器を玩具にして遊んでいた程に筋金入りだ。
そんな火乃は自身の家系に鍛冶神であるタタラ陣内がいると聞いて嬉しくなると同時に、交神をした曾祖母を羨ましがったものだ。
そのタタラに会えた。そして、タタラと同じように武器を愛し、素晴らしい武器の数々を生み出す事が出来る神に会えるなんて。

「やはり、梵ピン殿は良い神様だな」

火乃にとっては何気無い一言だった。
あんなに良い武器を造れるなんてすごい。ただ、それだけの意味で言っただけだったのだが――。

「ハ、ハンダーキィッ……!!」

梵ピンの身体が硬直する。声にならない呻きを上げたかと思うと火乃の方をちらりと見上げて。
あっと思った時にはくるりと背中を向け、走り出してしまった後であった。
一瞬の出来事であった。あっけにとられていた二人だったが、梵ピンの背中が見えなくなってから、ようやく思考が戻って来た。

「タ、タタラ殿! 何かまずい事を言ってしまっただろうか!?」
「いや、そういう訳じゃないな。ただ、間というか、機会というか……まあ、相手がお前だったのが悪いな」
「そ、そんな!? や、やっぱり何か粗相を……っ!」
「いや、何と言って良いのか……」

何かを考えるかのように視線を泳がせる。だが、やがて腹を括った様な面持ちで火乃の瞳を見据えた。

「さっきも話したが、あいつは戦いの神だ。それは分かるよな」
「ああ、戦い自体を司る神様……で合っているか?」
「そうだ。だが、それはただ殺し合うだけではない。人や鬼、武器に思想。梵ピンは戦に関わる物すべてに通じる……謂わば概念そのものだ」

梵ピン将軍という神の役割は戦における「統率」であった。
将軍という名の通り自らが前線に出て戦うのではなく、指揮官として部隊を鼓舞し、率いていたという。

「あいつは多くの物を引き寄せ、多くの物を死なせた。そして、それらが実体を失っても魂は残り続けた。人や、鬼や、武器そのものまでもが、な。あいつの社にある武器はその根源である魂で作られた物だ。戦いで死んだ魂を弔いとして飾っているんだ」
「そうだったのか……なら、梵ピン殿は神としての職務を全うしているだけではないか。どうして逃げるような事を……」
「あいつは悔やんでいる。自分の為に散っていた命を、朱点を止められなかった事を。そして、自分の所為で宿命を背負わせた……お前達の事をだ」
「……私達、を?」
「ああ、いつもお前達の事を気にしていたさ。謝っても償い切れない物を背負わせてしまった。交神の儀の間だけでも出来る限りの事をしたい、とな」
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181 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:21:34.67 ID:TfpRFnu6
ああ、ようやく合点がいった。火乃を丁重にもてなし、退屈しないよう外へ連れ、そして、今まで義務を果たさなかった事。
あの献身的な態度はすべては一族を――火乃を思っての行動だった。
天界の真の目的が発覚した時から、一族と天界の間には埋められる事の無い溝が出来上がってしまった。
神々が一族を利用した事は覆す事の無い事実だ。だが、その神々の中にも一族に好意的な者や、同情的な神様も確かに存在したのだ。
やはり思った通りの神様だと思った。だからこそ、そんな神には思いを伝えなければならない。火乃がここへ来た理由を、あの神を選んだ意味を。

「タタラ殿、ご迷惑をお掛けして申し訳ない。だけど、私は……」
「ああ、行ってやれ。おそらく、社に帰っているだろうよ」
「! ああ、かたじけない!」

火乃は駆け出していく。その姿が見えなくなるまで見つめた後、タタラは小さく笑みをこぼした。

「……良い神様か。まったく、血は争えないな」

そう呟いたタタラの瞳は、どこか懐かしそうに空を仰いだ。


「梵ピン殿!」

タタラの言った通り、梵ピンは社に戻っていた。
数多の武具に囲まれた中で、静かに佇んでいた。だが、その背中には拒絶の意思が見え隠れしていた。

「梵ピン殿、私は貴方に伝えたいんだ。貴方を、交神相手として指名した事だ」

一族の為に死ぬ事に悔いも未練もない。だが、火乃という個人として生きている間にやりたい事があった。
あの時からずっと、梵ピンに伝えたい事があった。

「最初に貴方の事を知ったのは術書だった。なんと便利な術があるのだろうと感心したんだ。これならどんな鬼にも太刀打ち出来ると思った」

火乃は体の火が低かった。前線に立つには細く、貧弱な身体。このままでは一族としての責務を果たせないという焦燥感にいつもかられていた。
だが、その術に出会ってから火乃の悩みは消えた。幸いにも、火乃は術の使いに長けていた。誰よりも早くに習得し――今においても、習得しているのは火乃一人だけであった。
嬉しかったのだ。火乃だけではなく、他の皆の助けにもなれるその術を習得出来た事が、本当に嬉しかったのだ。
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182 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:22:50.83 ID:TfpRFnu6
「だから、それを作ってくれた人に会いたかったんだ。最初は反対されたけどな。でも、私は会いたかった。生きている間に、貴方にお礼を言いたかったんだ」

一族には関係の無い事であっても、個人の我儘であっても、それだけは火乃が幼少の頃から頑なに抱いていた決心であった。
火乃は何としてでも会いたかった。絶対にこの神様でなければ駄目だと強く思っていたのだ。

「それと、タタラ殿から聞いたのだが……確かにあれは貴方の事を思えば軽はずみな発言だった。でもな……」

周りに飾られた武具の数々を見る。剣、槍、槌に異国の武器。数多の武器が、あるべき物として鎮座している。
武器とは殺生が目的で作られる物だ。その性質上、生物の感情が宿りやすいという。道具と役割を全うした結果、やがては呪物に変貌する物もある。
だが、そこから漂うのは邪悪なものではない。むしろ、神聖といっても過言ではない程に清らかな聖気に満ちていて。

「人々はきっと、貴方を慕っていたんだ。貴方の為なら死んでも良いと思ったから一緒にいたんだ。でなければ、死んでも傍には来ないさ。貴方の元に集まった魂は、幸せではなくとも、不幸でもないはずだ」

戦いは突然訪れる。ある日突然戦わなくてはならない状況になってしまう事は多々あるものだ。
だが、梵ピンに付き従った人達は自ら望んでその道を進んだのではないか。でなければ、このような姿形になるはずはない。
この武具となった魂は、ただ主の傍にいたかっただけなのではないか。

「それは一族だって同じだ。今更どうこう言った所で、何も変わらないしな。貴方のような神様がいるだけで、私は嬉しいよ」

天界を完全に信じる事は出来ない。だが、タタラのような親となった神や、一族の味方である神も確かに存在している。
人が人を愛するように、神にも情愛が芽生えている。その変化を火乃達は確かに認めていた。

「むしろ、そう思ってくれる神様のどこが悪い神様なんだ。十分じゃないか! 他がそう思わなくても、私は思うよ。というか、今確信した! 梵ピン殿は良い神様だ!」

その時、梵ピンが振り返る。
後悔、哀愁、追憶。それらが混ざり合った――今にも泣きだしそうな顔で火乃を見つめていた。
気が付いた時には、火乃の身体は梵ピンを抱きしめていた。
その身体は驚く程儚かった。小柄ながらも引き締まった身体も、今は手のひらにすっぽりと収まってしまいそうな程に小さく見えた。
自分と同じだ。小さな身体で大きな物を溜め込んで、人の為になりたくて。誰かを思いやれる強くて優しい人なのだ。

「ボ、ボボイスタッ、ボボイスタッ、メーレ―!!」

梵ピンの嗚咽が聞こえる。表情は分からない。だが、その様子は何かから解放されたような、そんな声だった。
ああ、これでやっと救われた。そして、繋がる事が出来たのだ。

「梵ピン殿が私を気遣ってくれてすごく嬉しい。でも、これで私の気持ちは分かっただろう。だから……」

やっと、想いを伝えようではないか。

「貴方の事をを教えてくれないか?」
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183 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:23:56.46 ID:TfpRFnu6
梵ピンの寝所は、やはり京の屋敷とは大分異なる様相だった。
色鮮やかな植物や奇抜な被り物が所狭しと並べられており、寝具の周りを松明の炎が照らしている。
無秩序な寝所の所為か、これから行われる事への不安なのか。火乃はどことなく落ち着かない様子で梵ピンを見つめていた。

「その、こういった事は初めてだから勝手が分からないんだ。私は何をすれば……」

言いかけた言葉は、梵ピンの行為によって遮られた。

「ぼ、梵ピン殿?」

火乃の腕が引き寄せられ、梵ピンに身体を預けるような形になる。
梵ピンの腕が優しく身体を包む。突然の出来事に一瞬身構えたものの、火乃の方もおずおずと背中に手を回した。

「あ、よ、良い身体だな、うん。無駄も無く、引き締まっていて」

思わず頓珍漢な事を口走ってしまったが、梵ピンは可笑しそうな吐息を漏らしただけだった。
懐かしくもくすぐったい感触。だが、このままこうして身を委ねていたいと思ってしまう程に心地良いものだった。

「あ……」

触れ合った身体が一瞬離れ、再び向かい合うような姿になる。視線が交差した――そう認識した時には、既に相手の領域に踏み入れていた。
唇が重ねられる。挨拶のように軽く、一瞬のもの。ただ少し触れただけだったが、身体の奥底から何かが滲み出て来るのを感じた。
どちらともなくもう一度口付ける。今度は長く、味わうように。互いの存在を確かめるように強く押し付けて、吸い付いて。
ぽすん、と軽快な音が閨に吸い込まれる。
布団に倒された火乃の身体は、その事を気にも留めない程に目の前の行為に夢中になっていた。

「ん、うっ……!」

舌が入り込んでくる。ぬるりとした生温かい物が火乃の口腔を舐め取るよう弄っていく。
ぐちゅりという水音が聞こえる。気が付くと、火乃の方も自身の舌を絡め合わせていて。
身体が熱い。思考が沈んでいく。これだけで熱に浮かされてしまっているのに、これ以上の事をされたらどうなってしまうのだろう。

「っ!」

火乃の身体がビクリと波打つ。
梵ピンの手が双丘に触れていた。酩酊しかけた意識が引き戻される。ただ触れているだけなのに、火乃には鬼の攻撃以上に残酷で理不尽に思えた。
火乃の気持ちを知ってか知らずか、梵ピンは動かない。それは遠慮か、配慮か。だがやがて、その掌に力が込められたのを感じた。
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184 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:25:02.27 ID:TfpRFnu6
「あ、っはぁ……」

枯れ木のような硬い手指がゆっくりと二つの膨らみをほぐしていく。
布切れごしであるにも関わらず、梵ピンを直に感じる。指先が動く度、火乃の奥底に疼く何かがさらけ出てしまいそうで。
脳天に悪寒にも似た震えが走る。その悪寒が全身を駆け巡り、より一層身体が火照っていく。
柔軟な感触を味わうかのように張り巡らされた指先が、もどかしそうに布地に食いこんだ。
持て余した梵ピンの左手が火乃の着物の帯を掴む。脆くも隔てる砦をするりと解き、胸元をはだけさせ――突然、その動きが止まった。

「梵ピン殿……? どうかしたか?」

視線を辿る。その動きで火乃はすべてを理解した。
梵ピンが梵ピンが見つめる先にあった物。それは、火乃の無数に散らばる傷の数々だった。
傷があるのは鎖骨の下から爪先にかけてのすべて。どの傷も薄皮一枚残している程度だが、幾重にも連なったそれはまるで鎖のように絡みついていた。

剣士という役割柄、火乃は誰よりも率先して鬼の攻撃を受け止めなくてはならない。
堅牢な防具に守られているとはいえ、鬼の攻撃は多種多様である。鋭い爪に貫かれ、 鉛武器に打ち付けられ、灼熱の炎や凍てつく水に嬲られ。
その常人ならざる治癒力を持ってしても、初陣から今まで火乃の身体から戦いの後が消える事はなかった。

「……済まない。あまり見ていて気持ちが良いものではなかったな」

傷を負うのは当たり前だった。むしろ、誇りにさえ思っていた。
後衛の者達が耐えられないような攻撃も防ぐ事が出来る。それが一族としての役目だと、火乃はその在り方を享受していた。
だが、急にそれが情けなくなった。その価値など何の意味があるのだろう。弓や扇で戦う者なら、ここまで傷が付くことはなかっただろうにとさえ思ってしまう程に。
一族の皆は感謝してくれる。火乃のおかげだと労わってくれる。だから、そんな皆の為なら痛くても、苦しくても平気だった――平気だったのに。

「ひ、ひゃあっ!」

突如、梵ピンの指が傷口に触れる。胸元ある大きな痕を――先日弓使いの少女をかばって貫かれた傷跡を沿いながら、ゆっくりと指を滑らせていく。
その動きは先程のような情欲ではない。それはとても丁寧で、優しいもので。

「あ、あの、何をして――」
「ハンダキ、ボボイスタ、ママレ。キダキ、キダキ!」

傷口を撫でていた。我が子を撫でる母のように、愛する者への抱擁のように、身体に刻まれた火乃の証を慈しんでいた。
指先で傷を撫でながら、梵ピンは火乃を見つめる。その声はとても明るく、そして、とても暖かいものだった。

――ああ、この神は褒めてくれているのだ。今までの戦いを、火乃の生き様を――火乃の身体を愛しんでいるのだ。

「き、傷だらけぞ、私。怪我をしてない所なんて一つもないんだ。……それでも、良いのか?」
「ンダキ!」

火乃は梵ピンと交神が出来て――出会えて良かったと、心の底から思ったのだ。
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185 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:25:54.78 ID:TfpRFnu6
あれ程明るかった外が、既に闇色に塗り替えられようとしていた。
重なり合う一組の男女。だが、その変化に彼らは気が付かない。煌煌と燃え上がる炎に照らされ、互いは獣のように相手を求め合っていた。

「う、あっ……!」

ぐちゅりという音と共に、打ち込まれた楔が蠢く。
普段はきつく閉ざされた場所。だが、秘所から溢れ出す潤滑油によって、指は易々と侵入を許していた。

「あ、ああっ! ん、くぅ……!」

頂にそびえ立つ突起物が舌で転がされる。ぴちゃりぴちゃりと唾液が混ざり、絡み合う。それは火乃から流れ出たものか、梵ピンの舌が舐めずる音か。今となっては分からない。
世の中の女性がこんな風に赤子に吸われるのだとしたら、火乃はきっと耐えられないだろう。
――こんなにも心が溶けてしまうのだから。

「――ああうっ!」

埋め込まれた指の腹が、ある一点に触れた。
それだけで、首切り大将に殴られたような、いや、それよりももっと理不尽で強烈な感触が火乃を襲った。

「い、いやっ! そこは止めて、止めてくれっ! へんに、なるっ……!」

それは未知の経験だった。欲に未成熟な火乃にとって生まれて初めての感覚だった。
火乃の身体は痛みしか知らない。火乃に触れる者は、負の感情に駆られるがままに欲をぶつけていた。
だが、これは違う。梵ピンの手付きは優しくて、火乃を汲み取る物で。なのに、鬼の攻撃よりも強い衝動に恐怖を覚えていた。

「――っ!!」

一瞬だった。脳天へ駆け上がった何かが霧散する。
下腹部から生温かい分泌物が股の間を流れていく。上り詰めた感覚が、全身に充満していって。
身体に力が入らない。肩で息をするのがやっとだった。

「メ、メレ?」
「ああ……大丈夫。何だか、すごく変な感じ、だな。だが……」

嬉しい。どうしてそう思ったのか。だが、その充足感が火乃の心を占めていた。
戦いの中だけで生きてきた火乃が、女として目覚めた時であった。
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186 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:27:33.59 ID:TfpRFnu6
――ようやく、準備が整った。
白い布切れの海に転がされた身体に梵ピンが覆いかぶさる。薄紅色に充血した這入口に楔を密着させ、僅かに開いた扉に宛がう。
梵ピンが何かを求めるように火乃を瞳を見つめる。それは、これから行う事の最終確認だった。
無言の問いに頷き返す。ついに本当の意味で神と交わる。だが、火乃の心は不思議と落ち着いていた。
その答えにう梵ピンは安心させるように火乃の髪を撫でると、ゆっくりと秘部へ侵入を開始した。

「ぐ、うぅっ……」

固く閉ざされていたがこじ開けられる。あれだけ密に塗れていた筈なのに、指よりもはるかに太く硬い異物を排除しようと締め上げる。
拒絶の動きに抗いながら粘膜の間を縫うように食いこませていく。隙を突く精密な動作によって、それは徐々に奥へと進んでいく。
断続的に伝わる鈍痛。思考が奪われないよう歯を食いしばる。辛いのは梵ピンも同じなのだから。
そうして時間は流れ。長い間続いた攻防戦だったが、やがて、その動きがついに止まった。

「は、入った……のか?」

少し身動きするだけでぐちゅりと奥底に先端が当たり、鈍い痛みが走る。
股をするりと伝わる感触と微かに感じる血の匂いから、無事に受け入れたのだと理解した。

「ン、ンダーキ? ハンダキ?」
「ん……痛くない、と言えば嘘になるが、これくらいは平気だよ。すまない、気を遣わせてしまって」 
「ボボイース、ボンボイース」

梵ピンはふるふると首を振り、安堵の吐息を漏らす。
出来るだけ痛みを感じないよう、慎重に事を進めてくれた。その気遣いに心が満たされていくのを感じた。

「……梵ピン殿。もう私の方は大丈夫だから、貴方の好きにしてくれ」
「ハ、ハンダーキ……」
「大分慣れてきたからな。……それに、そのままだとその、辛いのだろう?」

火乃には分かっていた。笑みの中に何かに耐えるような表情をを浮かべている事に。
天界に来てからずっと、梵ピンは常に火乃の事を優先していた。言葉が通じない相手であっても、一族の事情を知っていても、丁重に扱ってくれた。
だからこそ、この時くらいは好きにして欲しかった。

「ん、あうっ!」

脈動を続けていた肉棒が蠢き、遠慮がちに粘膜へ擦り付けていく。
打ち付けた所から粘ついた糸が引き、がむしゃらに締め付けていた内膜が緩急をつけ、まるで誘うような動きへ変化していく。
突き上げられる度に刺すような痛みが走る。だが、痛みの中からぞくりと湧き出す疼きに身を委ねる。

「も、もっと、強くこすってっ……! 貴方を刻み、つけてくれっ……!」

肉と肉とがぶつかり合う。痛みと快楽と混ぜ返り、火乃の意識を侵食する。
想いも、つながりも、そこにある全てを火乃は己に刻み付ける。梵ピンもまた、それに応えるように欲を打ち付けていた。
相手のすべてを焼き尽くすかのような、荒々しさ。それは、梵ピンが苛烈な火の神だと如実に証明していて。
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187 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:28:14.65 ID:TfpRFnu6
「んああくうっ! い、いああっ……いいっ! そこ、そこがいいのぉ!」

もう既に、お互いを思いやる理性は残っていなかった。
支配された思考は、更なる高みへ行き着きたいという願いを叶えるだけだった。
そこにいるのは神と人ではない。欲望をぶつけ、互いを喰らい尽くす男と女だった。

「あ、んああああっ……!」
「……ッ!」

甲高い嬌声が響き渡る。同時に一際粘膜が激しく収縮し、埋め込まれた楔を縛り付ける。
そして、それに呼応するように楔が痙攣し、吐き出された欲が肉壺に注ぎ込まれていく。
互いが絶頂を迎えたのは、ほぼ同時の事だった。

「ふ、あぁ……んんっ……」

どくどくと流れ込む子種を一滴たりとも逃さないように受け止める。そこは、一度の射精とは思えない程に絶えず注がれ続けていた。

その全てを出し切った後も、二人は離れようとしなかった。
火乃は腕を回す。離離れないようにしっかりとしがみ付い
神と人の間に生まれた子供。その半生は呪いを解く礎として育ち、鬼切りの一族として、常に戦いの中で生きてきた女剣士。
だが、その時だけは恋する少女として愛する者の腕の中に包まれていた。



そして、義務は果たされた。だが、火乃は天界に留まり続け、ピンの元で来る日も来る日も言葉を交わした。
多くの事を知り、多くの経験を学んだ。戦神と一族の少女は、最後の瞬間まで心も体も繋がろうとしていた。
そして、月日が流れ、長くも短い一月が終わりを迎えようとしていた。

「梵ピン殿、今日まで色々世話になった。感謝する」

火乃が下界へ降りる日。別れのその時、二人は最初に出会った時と同じようにお互いを見つめていた。

「子どもの事を、よろしく頼む。どうか健やかに育ててほしい」

梵ピンは何も喋らない。昨日までは手に取るように分かっていた気持ちも、窺い知ることが出来ない。
もう会う事は無いだろう。火乃にとっての一生は、永遠を生きる神には瞬き程度の事柄でしかない。
そして、火乃も何も言えなかった。これ以上言葉を発してしまうと、その気持ちが鈍ってしまいそうな気がした。
幸せはいつかは終わる。未練を残さない為にも、一族の火乃として別れる事が最善なのだ。
梵ピンに背を向け、イツ花の待つ場所へ歩みを進める。もう二度と会えない身でも、最後に見せる姿は潔く在りたかった。
――それで終わりのはずだった。
俺の屍を越えてゆけでエロパロ2
188 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:37:33.06 ID:TfpRFnu6
「――カ、ノ」

火乃。それは、焔のように煌煌とした瞳の色を讃えて付けられた名前。
生まれ持った瞳は火乃の密かな自慢であり、瞳を模した名前もまた、火乃には同じように自慢であって。
その名前を確かに呼ぶ者がいた。

「カノ。アリガ、ト。イッショニ過ゴセテ、楽シ、カッタ」

振り返ると、一月を共に過ごした神がいた。
異国の言葉を話すその口で、火乃の名前を、感謝の言葉を伝えながら照れくさそうに笑っていた。

「わ、私も……私も貴方と共にいられて良かった! 貴方に会えて、良かった! 本当に良かった!!」

そう叫んだ時には、火乃の足は駆け出していた。
何かを伝えようとして、頬を伝わるものに気が付く。それに意味に気が付いた瞬間、堰を切ったようにとめどなくこぼれ落ちていて。
梵ピンの気持ちが分かるようになっても、夜を共にしても消える事の無かった不安。
だが、火乃の言葉は、想いは確かに届いていた。
そして――あの日交わした約束がようやく果たされた瞬間でもあった。


それから二月後、呪われた一族の元に新たな家族が送り届けられた。
唯(ゆい)と名付けられた少年は、時には率先して鬼に切り込み、時には皆を守る荒々しくも心優しい剣士へと成長する。
高い素養に加え、剣士でありながら術の扱い――特に補助術においても抜きん出ており、一族の中でも傑物として後世にも語り継がれる事になる。
そして、時を同じくして、不変の天界に小さな異変が起こる。
天界に渡来して数千年が経とうと頑なに異国の様相を崩さなかった戦神が、なんと共通の言葉を話し始めたのだ。
最初はたどたどしかったものの、他の神々の助力もあってか、いつしか謙遜無い程度にまで上達していった。
そして、孤立しがちだったその神は、次第に輪の中へ入るようになり、天界のみならず下界の出来事にも積極的に関わるようになる。
永遠の存在である神の変化。それは、最高神でさえ為し得なかった奇跡とも呼ぶべき出来事であった。
ある時、劇的な変貌の理由を聞かれた神は笑いながらこう答えたのだ。

――愛しい人の名前を呼びたかったんだ、と。

(完)
俺の屍を越えてゆけでエロパロ2
189 :君が為の言葉を[sage]:2014/09/20(土) 18:44:51.92 ID:TfpRFnu6
以上、>>177から>>188まで梵ピン×女剣士でした。
本当はこういった注意書きやらを冒頭に書くつもりだったのですが、すっかり抜けていました。本当に申し訳ありません。
>>167のおかげでSSネタと新たな萌えに目覚めました。ちなみに、梵ピン言語は俺屍2のセリフを参考にしていますが、話の設定は初代です。


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