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名無しさん@ピンキー
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】

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【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
374 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:23:48.58 ID:pLzKKcfl
じゃあ、キスだけでどこまでエロくできるかに挑戦しつつ書いた小市民を投下させていただきます
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
375 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:26:16.82 ID:pLzKKcfl
 残りはくちびるへのキスだけだった。
 無用なあこがれはそれで片づいて、ぼくたちは岐路を受け容れる。すくなくとも、そう思い込む予定になっているはずなのだ。



 きっかけは小佐内さんのちょっとした質問だった。
 受験勉強の合間を縫って、ぼくと小佐内さんは高校生カップルらしく映画を見に行った。
ただ、下調べに使う時間はなかなかに悩ましく、ぼくたちは結局、その場で見る映画を決めた。
 選んだ映画はそりゃあもうわかりやすくて、クライマックスで抱きしめあって、ラストシーンでキスをするような恋愛映画だった。
 帰り道、予定通りにチェーンの喫茶店に入り、ぼくたちは映画の感想を言いあっていた。
スイーツが美味しい店ではなくただのチェーンの喫茶店なのは小佐内さんの提案で、曰く「あんまり甘いものにばっかり集中したくないの」だそうだ。
思い出して、ぼくはそっと口元を隠す。
 さて、そんな風に恋人らしく話をしていたところで、小佐内さんが件の質問をしたのだ。
「ねえ、小鳩くん。小鳩くんは、キスってしたことある?」
 え、してもいいってことかい? というところまで飛躍するほどぼくも耄碌してはいないが、流石に質問の意図が読めずにどきりとはする。
「……ないけど、どうして?」
 なるべく平静を装って答えてから、いっしょにさぐりも入れる。
 すると小佐内さんはすぐ横にあるガラス張りのその向こうを見ながらかぶりを振る。
「ううん、なんでもないの」
 ぼくはここまでの展開の中に小佐内さんの質問の種を探す。……うぅん、さっぱりわからないし、勝手に暴いてしまっていいものかもわからない。
 どういうことだろう?
 考えていると、かちゃりとスプーンに触れる音がした。
 音のほう、つまり小佐内さんのほうを見ると、弱々しい笑顔が出迎える。どうやら、考え事が顔に出ていたようだ。
「小鳩くん、すごく怒るかも」
「……じゃあ、ソフトに怒るようにするから、まずは言ってみて」
 怒らない、とは口が裂けても言えない。今のぼくなら怒ってしまうこともあるだろうし、あんな甘い思いは二度としたくないからだ。
「わたしたち、卒業したら進路は別でしょう? いつ自然にさよならしてしまうか、わからないと思うの」
 小さな手の上に細いあごが乗って、幾分か伸びた黒髪が揺れる。
「だから、ちゃんと大人になったほうがいいのかなって」
 意味をはかりかねながらぼくの目はひとつ、恋人の可愛らしいところを見つける。
「ちょっと動かないで」
 それだけ言って、小佐内さんの口の端に残っていた小さな結晶体を指先で拭った。
 ぼくは予想通りちょっと甘い指先を舐めながらつづきを促す。
「途中でごめんね。それで、どうしてキスの話になるんだい?」
 小佐内さんはぼくが触れたところをひと撫でしてから紅茶を傾け、くちびるを舐める。
「わたしね、映画を見て思ったの。ああいうファーストキスにあこがれつづけるのは、これから先のわたしにとって邪魔になるんじゃないかしらって。
だったら、夢やあこがれを実体験ごと片づけてしまった方が、ってね。……小鳩くんなら、わたし、いいかなって」
 最後の一言は消え入りそうな声だったにも関わらず、ぼくの耳朶にいちばん強く残る。我ながら現金だ。
「なるほど、それでぼくの経験を聞いたんだね」
「そうなの。はじめてだったら、流石に悪いかなって」
 小佐内さんはそっと目を伏せる。それから先程よりもはっきりとした笑顔で自嘲してみせた。
「わたし、変なこと考えてたね」
 だからぼくは少々ずる賢く見えるように意識した笑顔で返す。ぼくだってもっと変なことを考えることができる、と。
「じゃあ、大学受験を片づけたら、いっしょに片づけてしまおう」
 ぼくたちが春、わかれてしまっても、悔いを残さないように。
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
376 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:28:12.25 ID:pLzKKcfl
 


 冬が解けていくにつれて、ぼくたちの周囲では別れの雰囲気が濃くなっていった。教室がすこしずつすかすかになっていって、
殆ど誰もが春四月のことを考え始めている。
 ぼくと小佐内さんはひっそりと密度を保ったまま、その間を縫って帰路につく。
 まだそこにあることを確かめるように、道路の雪を踏みしめた。

「お邪魔します」
「いらっしゃい」
 一歩先に上がった小佐内さんに出迎えられて、ぼくは御両親不在の家にお邪魔した。
「部屋で待ってて。飲み物を取ってくるから」
 ぼくは小佐内さんの言葉に従って先に部屋にお邪魔する。
 何度か来たことはあるが、やはりいつ見ても片付いた部屋だった。ただ、以前よりは生活感も感じ取ることができた。
部屋自体は変わっていないから、ぼくが変化したってことなのだろう。
「おまたせ」
「ありがとう」
 やがて小佐内さんがお盆を持って現れて、テーブルの上にココアを置く。
 ぼくは小佐内さんが座るのを待ってカップを持ち上げた。
「合格おめでとう」
 小佐内さんの両手で持たれたカップが、ぼくの持つカップにこつんと当たる。
「ありがとう。小鳩くんも、合格おめでとう」
 ぼくたちはそれぞれ、第一志望に合格していた。合格が決まったこと自体はもうすこし前だったのだけれど、
暗黙のうちに卒業が近づいてから祝う流れになっていた。
 健吾に教わった美味しいココアを飲んで、しばし、冷えたからだをあたためる。
 過剰に熱く思えたココアは、やがてあたたかく、はっきりとした甘さを伝えてくるようになる。感覚の薄れていた指先も、すっかりなめらかだ。
 まずはぼくがココアを飲み干して、次に小佐内さんが、空になったカップをそっと置く。
手がふるえていたのか、カップはかたたとひとつ多く音をたてた。
「小鳩くん、ほんとうにいいの?」
「ぼくは、いいと思う。小佐内さんは?」
 かたほうの手を重ねて問い返す。
「……わたしは、ちょっとこわいかな。いっしゅんで終わっちゃうなんて」
 小佐内さんのてのひらが、ぼくの手の方を向く。
 目をあわせたらそのまま終わりをしてしまいそうで、互いの視線が逃げつづける。
 そうしているうちに、ぼくの口からは本末転倒に聞こえる言葉が転がり出す。
「じゃあ、たくさんしよう」
 そして、面食らった小佐内さんに慌てて補足説明をするはめになる。
「水に入るときも末端から徐々にって、決まってるじゃないか」
 すると、さきほどまで緊張した様子だった小佐内さんがくすっと笑った。
「ふふ、小鳩くんおかしい」
 …………もう好きに言ってよ。
 半ばやけくそのぼくに、小佐内さんは小さく頷く。
「うん、そうしよう。そういうふうに、してほしいな」
 そうして小佐内さんはたおやかにひだりの手を差し出した。
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
377 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:33:51.92 ID:pLzKKcfl
 ぼくはなるべくうやうやしくその手を取って、さくら色のつめ先にくちびるを当てる。
 いつかのデートの日、お洒落を優先したことを忘れていた小佐内さんがうっかり舐めて渋い顔をしていた、まるいつめの先。
 そっと離れて見上げると、熟れた林檎のような頬の小佐内さんと目があう。きっとぼくもこんな色になっているのだろう。
 いつの間にか詰めていた息をついて、次に、指の感触を確かめる。やわらかく、細い指だ。
骨の上の皮は薄く、それでもやわらかい。そのまま、骨と血管の凹凸が感じられる手の甲にも口先で触れる。
 どちらのものかわからない汗で、ちょっとだけ手がすべる。
 ぼくはその手を返し、静かに握りなおして、てのひらにもキスをした。すこし湿ったそこからは、小佐内さんと、
小佐内さんの触れたもののにおいがする。ぼくの手汗も紛れているのだろう。
 汗を気にしてか、小佐内さんが僅かに身をよじる。ぼくは逆ににわかに力を強めて、手首の薄い肌の上で自分の呼気を塞ぐ。
「こばとくん……っ」
 小佐内さんが、上ずった声でぼくを呼ぶ。やめろとは、言われなかった。
 細い手首をつっと数ミリメートル撫でてからぼくは顔を上げて、小佐内さんの手をやさしくカーペットに下ろす。
それから目を閉じてじっと動かない小佐内さんにゆっくりとにじり寄って、確かめるように頬に触れる。
 小佐内さんは薄く目を開いて、それからぼくの手が頬に触れる面積を増やすためにそうしているように、その手を重ねる。
 心音の激しさが聞こえてしまいそうな距離から、息を止めて更に近づく。低く小さな鼻先をつっついて、すぐに戻る。
息を一度はくと、その油断が命取りとばかりに呼吸の激しさが増す。
小佐内さんもそれは同じらしく、薄いくちびるから漏れ出す息は決して穏やかではない。
 ぼくは小佐内さんのふとももの横にかたほう手をついて、もうかたほうで前髪に触れる。
まだ染まったことのない、この先は染まることもあるかもしれない、くせのない黒髪。
 考えて止まってしまう前にと前髪を上げ、額にくちづける。
 今度は息をついて間を生むことなく、ぼくは髪を梳いてもとに戻し、目と眉の間の脆い皮膚をくちびるでかすめる。
ぴくりと瞬きをするのがおかしくてこめかみにもキスを落とすと、小佐内さんが抵抗するように手を前に出してくる。
けれどその手はぼくの服を控えめに掴んで止まった。
 呼気が混ざりあうほど近くで目をあわせて、水蒸気と二酸化炭素の濃さにめまいを起こしそうになりながら微笑みを交わす。
それが頬にキスをする合図になる。後頭部を探るように小佐内さんの髪をかきあげると、人よりすこし厚い耳たぶに触れた。
「……っ」
 小佐内さんが息を呑む音が、そのまま聞こえる。
 つつつと指でなぞった耳には、髪の上からくちをつけた。
 そうして、ぼくたちは他の選択肢を失った。首筋を食むのは恐らく、調子に乗りすぎだろう。
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
378 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:34:59.86 ID:pLzKKcfl
 こつんと額をあわせて、焦点があわないなりに瞳の色をうかがう。黒にちょっとだけ茶が入った、一般的な日本人の虹彩。
細められたまぶたからのぞくそれは、誘い込むようにつやめいている。
距離を取ると瞳は隠れ、代わりにぼくの意識に小佐内さんの顔全体が映り込む。

 残りはくちびるへのキスだけだった。
 無用なあこがれはそれで片づいて、ぼくたちは岐路を受け容れる。すくなくとも、そう思い込む予定になっているはずなのだ。

 いっそここで禁を犯して抱いてしまおうか。そんな誘惑が腕の細胞を駆け抜けて、ぼくは思わず小佐内さんの肩を抱き寄せる。
 小佐内さんは驚いたようだけど目を開けない。ぼくが動くのを待っている。まるで復讐のチャンスをうかがっているかのようじゃないか。
それならそれで、いっしょう、ゆるさず追ってほしいものなのだけど。
 ぼくは寸前の呼気を食べるみたいに不様な作法で、自分と小佐内さんとのくちびるをくっつける。
 この一瞬で、ぼくたちの何かはとけてしまっただろうか。
 物足りなさを覚えて軽く吸うけれど、すき間の空気を飲み込んだだけに終わってしまう。
 空気の塊が胃に収まってしまったのを感じながらぼくは、くちびるを、からだを、そっと離した。
 ぼくがなんとか笑おうとすると、先に小佐内さんが泣き笑いのような顔になる。
「こまったなぁ」
 小佐内さんはぼくの指を自分の指で絡めとる。
「びっくりするくらい、全然足りないのよ」
 ぼくもだ。
 言葉の代わりにぼくはもう一度くちびるを重ねあわせる。
 ちゅぅとささやかな音を残して二度目のキスは終わるけれど、物足りなさは増すばかりで、粘膜と隣あわせの薄皮は間を置かずに繰り返し邂逅する。
 このまま口を開いたところで、さらに、もっとと求めるだけだろう。
 きっと、今まで口にした砂糖粒の数を以てしてもうめることはできないのだから。
【古典部】米澤穂信作品でエロパロ2【小市民】
379 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/09/17(水) 07:35:35.65 ID:pLzKKcfl
半端かもしれませんがここでおわりです
おそまつさまでした


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