- 二次元キャラを牧場で飼い慣らす妄想スレ 第16牧場
292 :『蛍火(前日譚)』 ◆MsIhShA4mM [sage]:2014/08/28(木) 21:13:32.41 ID:ErFdwAxp - 「…やっぱ寝てられないわね」
小さく毒づいて、風見幽香はビーチチェアのリクライニングを戻した。 眼前に広がるワイキキビーチとミコノス島沿岸と江の浜海岸を足して3で割ったようなどこまでも続く白い砂浜と、気色悪いほどに青く澄んだ海は、 いずれも牧場が人工的に作った海岸であった。ここ「愛奴牧場第2海水欲情(誤字ではない)」では、数日前まで大々的な乱交会が行われていた。 そう、第9牧場>>481にて、現在パチスロ化が行われている某ライトノベルのキャラが上からも下からも大騒ぎになったあの海辺である。 現在は盆休み期に地獄から強制的に蘇らせた悪女・敵女との降霊セックス会に総動員された牧場のスタッフたちの労をねぎらうべく、3日間の 休暇兼合宿が行われているこの第2海水欲情では、様々な遊びに興ずるスタッフたちの姿が垣間見えた。 水上バイクに跨る坂田銀時と、その後ろでなぜか引きずられているレヴェッカ・リー。 沖で砲身から海水をぶっ放し、上にパルスィとネギを乗せて水上ジャンプを行うレオ何とかさん。 クウガゴウラムでサーフィンに興じる門矢士(漫画版)。 超巨大なギャグボールを噛まされたタ級戦艦に跨り意味もなくピースサインをする黒き三連星の水陸両用ドムトルーペン。 ゴムボートを浮かべて釣りに興ずる平和島静雄と寂海王。 浜辺にオープンしたかき氷屋で客を次々に裁く、日番谷冬獅郎(氷担当)と松本乱菊(練乳担当)。 その小屋の中でわざとらしくハート型のストローを指した得体のしれない色のドリンクを呑む便所草といじりがいのありそうな顔つきの茶髪の少年。 サングラスを額に上げてそんな活気に溢れすぎな光景を一通り目に焼き付けると、幽香はちらりと人気の少ない方の砂浜に目をやった。 そこには川端に隣接するような地味なプレハブ小屋と、その前方で男型の便所草だけがぽつりと在った。 (たしかアレって…) 考えをめぐらせて、幽香はぽんと手を叩いた。 あのプレハブ小屋の中には、数年前に入荷された「モリガン」とか言う名前の牝畜がいたはずである。 その美貌は魂さえも喰らいつくし、その肉体は汗の一滴で猛獣をも発情死させる。あまりに強力すぎて、隔離された牝畜であった。 (なるほど、あーまでしないと泳ぐことも出来ないってわけね) 誰よりも美しく強いが故に、誰とも触れ合うことの出来ない悪魔。 普段なら憐憫など辞書のどこを探しても出てこない幽香であったが、今日ばかりは勝手が違った。 (私には何もしてやれないか。まあ、彼女もあの怪獣植物もそれを望んではいないしね…) そんなことを考えていると、不意に声がかかった。 「何、らしくもねェ表情してるんですかィ姉御」 いつものようなあどけなさの残った声がして、幽香は振り向いた。眼前に広がる上司の顔を見て、幽香は目を伏せて応えた。 「別に。なんでもないわよ」 「あっそ、それなら別にいいんですけどねィ」 そう言って沖田は幽香のそばに立て付けられたビーチチェアに腰かける。 ふと沖田が小脇に抱えているものが気になって、幽香は問いかけた。 「沖田君それ何?」 「ああこれですかい」 ずいと突き出したそれは、白い水着を身にまとった今にも泣きそうな顔の少女だった。 「拾ったサーフボードでさあ」 「ゲソォォォ…」 「……」 確かに全く起伏のない板のような体つきだったが、明らかにそれは深海からの侵略者であった。どこから突っ込むべきか幽香が考えあぐねていると、 沖田は少女の頭に手をやり、楽しげに告げた。 「まあ1時間くらいサーフィンやってもうクタクタですし、これは他の奴にやろうかと思ってやすけどね」 「ゲソォォ!! 頭は! 頭は駄目じゃなイカァァ!! 抜ける! 死ぬぅぅぅ!!」 「…クズの世界チャンピオンね…」 自分のことを棚に上げて呟く幽香。沖田はポイと少女を投げ捨て、そこに男性スタッフたちが「さすが副隊長話が分かるお方だ〜!!」と叫び、死体に 群がる鴉のようにウジャウジャとルパンダイブしていく。ゲソゲソとやかましい悲鳴をBGMにバラバラに引き裂かれた白い布片が飛び散り、盛大な解体 ショーが始まった。
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293 :『蛍火(前日譚)』 ◆MsIhShA4mM [sage]:2014/08/28(木) 21:17:30.55 ID:ErFdwAxp - >>291
大して珍しくもない光景にうんざりした様子で幽香はサングラスを戻し、再びチェアに背中を預けた。 肌の色こそ黄色人種のそれではあるが、千年の時を生きる妖怪だけあって彼女の肢体は人間離れした妖艶さを漂わせていた。もとより大きかった 二つの女性の証は重力に逆らうかのように聳え立ち、深々とした谷間と今にも零れ落ちそうな南半球を描き出していた。腹はきゅっと括れ、羚羊の ようなすらりと伸びた脚に向かい一目で安産型と分かる腰は、鼠蹊部をギリギリまで露出したローライズのパンティで覆われていた。 柄こそあまりに安直な赤字に黒の格子ではあったが、そのビキニ姿は見る者に劣情させる暇も与えず圧倒する美しさを持っていた。 そんな大輪の花のような艶姿を特に何の感想も抱かずに沖田が観察していると、荒い息と怨嗟の声が聞こえだした。振り向くと、冗談のようなでかさの コンテナを背中に抱えた上条当麻が、親の仇を見るような目でこちらを睨みつけていた。 「おぉ上条、おつかれ。ジュースおごってやろうか」 「ジュースごときで済むかーッ!!」 火山の噴火の如く激昂し、結び付けていたベルトを外してアロハシャツと短パン(どこかで見たような姿だ)の上条は沖田を指差した。漫画なら 『ビッシィィィ!!』と効果音が付くことだろう。 「280人分のスイカを保冷剤付きで担いで持って来いってあんたはバカか! バカなのか!! 普通小分けにして乗り物かなんかで運ぶだろーが! 運んでくる道中だけで何回死にかけたと思ってんだこのクソ上司があああ!!!」 「ぶぶー、残念でしたー。俺ァ今年度から調教班専属になったので捕獲班のお前さんとは上司部下の関係ではありませーん。ただ階級が上なだけです」 「一緒だこの脳内血みどろ男!! 鬼! 悪魔! ガラガランダ! ヤマアラシロイド!!」 「何とでも言いなせぇ。楽して運ぶ方法はいくらでも考え着くのにバカ正直に運ぶことを選んだお前さんが悪い」 「だぁーっ!! 許さん! ゆ゛る゛さ゛ん゛!! 絶対に許さん! 今日という今日は天と牧場上層部と全国のファンが許しても俺が許さねえ! てめーがいつまでも俺を玩具にしようってんなら、俺はそのふざけた幻想をブチ殺す!」 「やってみろ…無能力者ァ! ここで格の違いを見せてやる、三下ァァァァ!!!」 「望む所だァァァ!!!」 ちゅどーん。 ずどーん。 どばこーん。 瞬く間に平和(?)な砂浜は特撮番組終了5分前の採石場と化した。 イカ娘を輪姦していたスタッフ団はそのまま神輿を担ぐかのように足並みをそろえて避難し、周囲の海水浴客も思わぬアクシデントに口笛を鳴らし 手を叩いて囃し立てる。 これまた大して珍しくもない光景に溜息をついて、風見幽香は再び足を組んで椅子にもたれかかった。 「嵐脚! 指銃! 獣厳! 空木!!」「甘い! 踏み込みが足りねェ!」「避けるな! 当たれ!」「そっくり返すぜ!」「なんか知らねえうちにあんな美人の 愛人囲みやがって! もげろ!」「なら俺より早く愛人囲ったお前はその10倍の苦痛を受けろ!」「お前が苦痛を受けないでいい理由にはならねえ! 綺麗な 姉貴分は一人っ子のロマンスなんだよ!!」「弟キャラ兼年上好きで何が悪い!」「フロイト先生の本読んでこいこのマザコン!」「ブーメラン野郎!!」 (…何気に褒められてない?) 途切れることなく続く罵詈雑言の嵐の中にさりげなく潜む自分へのメッセージに耳をそばだてる幽香。 しかしその安息は長くは続かなかった。 「ならそのブーメランで仕留めてやる! 最大級の嵐脚、受けやがれ!! そのふざけた幻想をブチ殺ぉぉぉす!!!」 海上で番場蛮のように強引に体を捻り、上条当麻は健脚を振るう。その脚先から三日月状の鎌風が描き出され、沖田の喉笛へと一直線に喰らいつく。 ふふん、と鼻を鳴らし、沖田は鎌鼬をよけるために腰を落とす。が、直後に何かに気が付いたように両手で愛刀「菊一文字RX-78」を掴み、上段に構え 直した。
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294 :『蛍火(前日譚)』 ◆MsIhShA4mM [sage]:2014/08/28(木) 21:20:39.51 ID:ErFdwAxp - >>293
「はああああああああッ!!」 裂帛の気合いと共に、音よりも早く沖田の両腕は振り下ろされた。 刹那、刀と鎌風が真正面から激突し、二つに分かれた衝撃波が砂浜に向かい突き進んでいく。 ドシャアア、と凄まじい風切り音と共に一方は森の中に突っ込み、もう一方は先刻まで沖田が座っていたビーチチェアを掻っ捌いた。 ピッと小さな音がして、数本の栗毛が宙を舞う。 ばちゃり、と音を立てて、上条当麻は着水した。小さな波紋を立てて、少年は膝まで海水に浸かる。 「すっげぇ…」 あの一撃をよけるのではなく切り裂くとは。少年は眼前で起こった剣劇に畏怖の念を感じた。 小さく息を吐き、スイカ割りのように振り下ろした刀の切っ先を上条に向け、沖田は嘯いた。 「それで仕舞いかィ」 「…なんの。そのくらい強くなくちゃ倒し甲斐がねぇ」 ゆっくりと肩を落とし、上条当麻は構える。その獣のような気魄…学園都市で喧嘩番長をやっていた時代とは比べ物にならない、牧場での脳改造と 地獄の鍛錬、数えきれない実戦が生み出した闘気は、単なる一介のレベル0の持つそれではなかった。例え戦の原因がスイカ運びであってもだ。 「…」 無言で沖田も冴え渡る刃を向ける。キラリと秘剣影写しのように(分からない人はお父さんかお母さんに聞いてみよう)残光が煌き、海の中へと 消えていく。 が、唐突に沖田は溜息をつき、ゆらりと剣を下ろした。突然のノーガード戦法に驚き、上条は「えっ」と小さく声を挙げた。沖田はパーカーの 上から仰々しく結びつけた仮面ライダーにでも変身できそうなくそぶっといベルトに差した鞘に刀を納め、くるりと踵を返した。 何を考えているのかわからない上条は茫然とし、直後に硬直した。 彼の後ろには、15mほど離れている上条の目にもありありと分かるほどの狂気を湛えた笑みを浮かべた風見幽香が、切断されたビーチパラソルを 片手に歩を進めていた。 蛇ニ睨マレタ蛙。 まるで子供向けのことわざ辞典の用例のように分かりやすく、上条当麻は滝のような冷や汗を流した。 「________沖田君、傘、壊れちゃったわ」 血のように赤く輝く眼を細めて、『四季のフラワーマスター』風見幽香は、ビーチパラソルを肩に引っ掛けてカードを取り出した。 上条当麻はこの時、自分がナトリウムの固まりを水の中に放り込んでいたことにようやく気が付いた。 「でも、大丈夫」 聖母像のような慈愛に満ちた表情で、幽香は微笑んだ。 それが死刑宣告だとわかり、上条当麻は鉄の味がする生唾を飲み込んだ。 彼の顎を伝い、汗が落ちて海水と混ざった時、幽香は屠殺場の牛めがけ最後の祈りの言葉を言い終えた。 「原料の骨と皮は、ここで調達できるから」 瞬間、海水欲情上空の空を、光弾が埋め尽くした。 ふう、と息を吐き、沖田は呟いた。 「だから言っただろ、お前さんは所詮三下だって」 その言葉を聞き終えてから、幽香はカードを振り下ろした。 数えるのもバカバカしくなるほどの爆発音の中に、「不幸だあああああああああああああ」という叫び声が聞こえた、気がした。 巻き起こる爆風が静まった後、沖田は先刻潰えた少年の持ち運んだコンテナに手をかけ、中からスイカを取り出した。 【続く】
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