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いつもの人 ◆2XMU15nbVw
黄昏乙女×アムネジアでエロパロ3

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黄昏乙女×アムネジアでエロパロ3
19 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:09:00.20 ID:ebzoRtAU
>>18
追いかけてきてくださってありがとうございます。
そう言って頂けるのが何よりの励みです。
では続き投下。
黄昏乙女×アムネジアでエロパロ3
20 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:09:50.32 ID:ebzoRtAU
・・・・・・・・・・・・。

「当然、家長代理だったわたしも駆り出されてね。ただでさえ疫病による混乱の対処に追われていたから
 その頃にはもう、とてもじゃないが親父の行動を気にかけていられる状態じゃなかった。
 ・・・まさか、旧校舎に隠していたとはねえ・・・」
「家長さんは、その・・・黎子さんの遺体を、わざわざこちらまで持ってきたんですか?」
「いや、わたしたちで遺体をこちらに葬り直そうという話になったんだ。
 戦時中は余裕もなくて、庭先に簡易な墓標を立て、そこに残った黎子の遺体を埋葬していたから・・・。
 そのまま置き去りにするのはあまりに不憫だから、せめて故郷のこちらで眠らせてやろうと思ってね・・・」
「家長さんはなぜ、旧校舎に遺体を隠したんでしょうか?」
「分からない。木箱に書かれた言葉のように、なにか親父なりの意味があったのか・・・。
 あるいは、当時ここいらはお焼き場の処理が追い付かなくて、
 誠教も教室の一部を遺体の仮安置所として貸していたから、
 そこに隠せば目立たないと考えたのかも知れない。
 ・・・あんな箱ではかえって目立つような気もするがね」

確かに、安置所として貸していた教室の壁や床に埋めるなりすれば、
あえてそんな場所を調べようとする人間はいないでしょうね。
もっとも、それが60年も隠蔽されたままっていうのは驚き・・・

・・・あ、ううん、わたしが言えた義理じゃないか・・・。

「・・・結局、遺体をあの木箱に納めることで、何が起こると家長さんは考えたんでしょうか・・・」
「まあ、先ほども言ったように、黎子が蘇るということだろうが・・・。
 具体的に何が起こってそうなると考えたのかは、さすがに知る由もないねえ。
 ・・・しょせん、正気を失った人間の妄想だから」
「・・・そう・・・ですね。
 ・・・すみません・・・」

応接間を重苦しい空気が包み込む。
貞一くんは間を持たせようとするかのように、出された麦茶で唇を湿らせた。

「いや、いいんだ。さっきも言ったように、わたしがきみたちと話してみたかったんだから」
「・・・」
「・・・では、最も聞きたかったことをお聞きします。
 ・・・怪談『カシマレイコ』と、『木嶋黎子』さんは、どういう関係なんでしょうか」
「!」
「新谷・・・」

そう。心情的には最も触れがたいことだけれど、怪異調査部としては最も追求しなきゃいけないこと。

「・・・」
「・・・・・・・・・」

再び、応接間を刹那の沈黙が支配した。
おじいさんは何かを思い出すかのようにしばし目を臥せったあと、すっと顔を上げて、重々しく口を開いた。

「・・・それに関しては、むしろわたしたちが聞きたいくらいでね・・・」
「・・・え?」
「あれは・・・1970年代の・・・初頭くらいだったか・・・。
 もう黎子のことが古傷となって久しい頃、ラジオ好きの弟が突然、わたしにある話を聞かせに来た。
 当時弟がよく聞いていたラジオ番組の人気コーナーで、とある噂がよく投書されてくるため、
 話題になってるということだったんだ」
「噂・・・」

おじいさんの話に耳を傾けていたみんなが、『まさか』という表情を浮かべた。
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21 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:10:36.52 ID:ebzoRtAU
「曰く、『戦時中に爆撃で脚をなくした人間の霊が、その話を聞いた者の元を訪れ、脚を奪い取ろうとする』・・・と。
 最初は悪趣味なヨタ話だと一笑に伏したが、すぐに黎子のことを連想して不愉快になった。
 しかし戦時中は珍しくもない話だ。たまたまだろうと、その時はさして気にしなかった」
「・・・・・・」
「しかし、気になった弟はその噂を追い続けた。
 そして時が経つにつれ、その噂にはどんどん『肉付け』がされていったんだ。
 ・・・最初は性別も定かじゃなかったのに、女性とされることが多くなり、爆撃も民間への空襲と状況が特定された」
「!」
「それが『カシマさま』と呼ばれているらしいということを知ったのは、それからすぐのことだった。
 ・・・そして、時代が下るにつれて・・・。
 怪談『カシマさま』には『レイコ』という名前が付き、『キジマ』という別名まで出てきた」
「・・・・・・・・・」
「生きた心地がしなかったよ。時の流れとともに、怪談の設定は
 まるで黎子のことを狙い撃ちするかのように肉付けがなされていったからねえ・・・」

そこでおじいさんは、軽くため息をついて再び顔を伏せた。

「しかし、最もショッキングだったのは、色々と異説や別名があったはずの『カシマさま』の名前が
 いつの間にか『カシマレイコ』で定着してしまったことだった」
「え・・・?」
「さっきも言ったように、木嶋黎子は祝言を目前に控えて命を落としたせいで、『嘉嶋黎子』になれなかった。
 ・・・まるでその未練を果たすかのように、黎子の亡霊が『カシマレイコ』を名乗り、
 噂という形で日本中をさまよい歩いてるような気がしてねえ・・・。
 ・・・情けない話だが、正直恐ろしかった」

俯きがちに言葉を続けながら、おじいさんは自嘲気味に笑った。

「どこで聞きつけたのやら、得体の知れない記者やらライターやらが押しかけてきたこともあった。
 ことごとく追い返したがね。・・・最も困惑していたのは、他ならぬわたしたちだったんだから」
「・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・。でしたら、なぜ今日はわたしたちのインタビューに応じてくださったんでしょうか?」
「あの木箱は君らが調査しなければ、恐らくわたしらの方にまで話が回ってこなかっただろう。
 回ってきたとしても、もっとずっと後になっていたと思う。
 ・・・いつか、誰かに話して、心の整理をつけたかったんだ。
 そしてそれは、どうせなら無礼なゴシップライターなどにではなく、
 わたしらに話を繋げてくれた純粋な若者の方が良かった」
「喜之助さん・・・」

そこでようやくおじいさんの表情が、玄関先で会った時のような柔らかい笑顔になった。

「家内に昼げを作らせるから、ここで昼食を取っていきなさい。
 いつも二人きりの寂しい食卓でね。
 若い人らと卓を囲めば、華やかになるというものだ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

ザ―――・・・。

「まったくもー、あのコたちったら、後片付けを貞一くんに押し付けて・・・」
「いえ、いいんですよ夕子さん。僕から申し出たことなんですから。
 おいしいおそばもご馳走になりましたしね」
「そういえば、貞一くんはおそばが好物なんだっけ。・・・ふふっ。
 わたしも今度作ってみよっかな〜・・・」

時刻は午後の1時近く。おじいさんの好意に甘えて昼食をご馳走になったわたしたちは、
せめてものお礼にと後片付けを申し出たんだけれど。
昨日の昼食の準備と夕食の後片付けをサボったカドで、自己申告ながら貞一くんが一人でやることになってしまった。
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22 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:11:35.88 ID:ebzoRtAU
あのコたち、貞一くんのお人よしっぷりに付け込みすぎ・・・
・・・なに?一番付け込んでる奴が言うなって・・・
あーはいはい。どうせわたしは付け込みまくりの憑きまくりですよーだ。

「いやあ、すまないねえ。後片付けしてもらっちゃって」
「え?・・・あ」

背後から掛けられた声に振り向くと、いつの間にかおじいさんが台所の入り口に立っていた。

「いえ、お昼ご飯をご馳走になったんですから、これくらい当然です。
 それより、その・・・たくさん頂いてしまってすみません」

そう言いながら、貞一くんはわたしの方にちらりと視線を向けてきた。

「いやいや、きみくらいの男子が遠慮なんかしちゃいかんよ。
 見た目の割にはよく食べるから、少し驚いたが」

それもそのはず、貞一くんはわたしの分も確保するため、多めにおそばをおかわりしたのだ。

・・・ま、まあ、いいじゃない。育ち盛りの男の子なんだから、ちょっとくらい。ねえ?

「ははは・・・」
「・・・そのままでいいから、聞いてくれないかね?」
「え?」

おじいさんはそう言うと、先ほど応接間で話を聞かせてくれた時のように、真剣な面持ちになった。

「実は、理事長に特別に頼まれてねえ。・・・新谷くんだけに、本当の意味で全てを話してやってほしいと」
「えっ!?」

紫子が?貞一くんに?
・・・って言うか、本当の意味でってどういう意味なんだろ。

「きみは、少しばかり『視る力』が人間離れしているらしいね?」
「!!」

それって、ひょっとして・・・。
・・・過去を見る力のこと?

「昨夜な、理事長から送信されてきたレポートの写しに目を通したわたしは、
 泡を食って思わず理事長に掛け直したんだ。
 ・・・そりゃそうだろう。あのレポートには、理事長すら・・・
 と言うか、当時の木嶋家の人間しか知らないようなことが断片的にでも書かれていたんだからね」
「・・・」
「どういうことなのかと理事長に問いただしたら、
 理事長は一言、このレポートは孫娘と、庚家にとっての救世主がまとめたのだと」
「きゅ・・・救世主・・・!?」

きゅ・・・きゅうせいしゅぅ〜・・・!?

「きみのことを少しばかり聞かせてもらったよ。
 最近孫娘と友人になったとある少年に、少しだけ記憶を辿る力があって、
 それで庚家の因業を晴らしてもらったのだと。
 もしこのレポートに木嶋家しか知らないはずのことが載っているのなら、それもその少年によるものなんだろうと。
 最初はふざけているのかと思ったが、理事長はこういうことでは決して冗談や悪ふざけを言う人ではなかったからね。
 だから、そういうことなんだろうと」
「・・・・・・・・・」
「だからわたし自身の目でその少年を見定めたくて、その少年と話してみたいと理事長にお願いしたんだ」
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23 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:12:20.04 ID:ebzoRtAU
・・・あ、ううん。救世主という表現に一瞬面食らってしまったけれど、
確かに、少なくともわたしにとって貞一くんは救い主なわけで。
でも、事情を知らないこのおじいさんにサラリとそんなことを言ってしまえる紫子は、やっぱり紫子だわ。

「えっ・・・と。まず、誤解があるかも知れないんですが・・・。
 僕は別に、超能力者とか霊能力者だとか、そういうのでは全然ないんです。
 木嶋さんの一族の過去にまつわる出来事を知ることができたのは、何と言うか・・・。
 ・・・」

貞一くんはそこで言い淀んだ。
そうよね。こればかりはさすがに説明のしようがないよね。

わたしだったら胸を張って『貞一くんとわたしの愛の力です!』って言っちゃうけど。

「ああ、分かってる。わたしだって、何もきみのことを
 小説やドラマに出てくるエスパーのように思ってるわけじゃない」
「えっ?」

と、入り口に寄りかかっていたおじいさんが姿勢を正し、その口元をきゅっと真一文字に結んだ。

「つっけんどんな頼みになるが・・・。
 わたしの父に会ってくれないかね」
「・・・は!?」

父!?父って。
だってこの人のお父さんは・・・。

「黎子さんのお父さんが生きているんですか!?」
「ああ。不幸にも、と言うべきか・・・」

おじいさんの瞳が、一瞬悲哀の色に満ちた。

「今年で106だ。もう、何も分からないようになって久しいがねえ。
 今は市の病院に入っているが・・・。
 状態が状態だから、長寿として取り沙汰されることもほとんどない」
「・・・」
「終戦後・・・。
 任地から戻ってきたわたしが変わり果てた親父を見た時、もう親父は長くないのだろうと思った。
 歳を取ってからああいう状態になった人間からは、生きる力が急速に失われてしまう。
 ・・・しかしどういうわけか、親父は今の今まで生きてしまった」
「・・・・・・」
「不謹慎な言い方になるが・・・。
 早めに黎子のところへ行くのが、せめてもの慰めだと思ったんだがねえ・・・。
 悲嘆に暮れた時期もあった。
 カシマレイコの噂を耳にしてからは、生きて苦しめと、黎子の呪いのように感じたこともあった」

・・・・・・・・・・・・。

「しかし親父は、何も悪いことはしていないんだ。
 確かに独断で縁談を進めたり・・・そのせいで黎子は茨城に残り、ああいうことになってしまったが、
 そもそもそれは結果論・・・運命のいたずらでしかない」
「運命・・・」
「だからな、新谷くん。昨夜理事長から電話できみらのことを聞いた時、
 親父はもしかしたら逝きそびれたのではなく、何かを待っていたんじゃないかと思ったんだ」

・・・死に面して行きそびれたのではなく、ずっと『誰か』を待っていた、か。
わたしにはとても他人事のようには感じられなくて、ぎゅっと胸が締め付けられるような思いに駆られた。

「でも、僕は・・・」
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24 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:13:38.56 ID:ebzoRtAU
「分かっている。恐らくは何も起こらない。
 きみはきっと、普通の人間とほとんど何も変わらないし、
 そのきみを引き合わせたところで、親父に奇跡が起こるなんてわたしも思っちゃいない」
「・・・」
「だがな・・・新谷くん。さっき話したカシマレイコの噂もそうだが、
 長いこと生きていると、やはり理屈に合わないことというものは色々あるもんだ。
 わたしは、自分ではあまりオカルトの類は信じていない方だと思っているんだが、
 それでも今になってきみたちが妹の遺体と触れ合うことになったのは、
 何かの巡り合わせなんじゃないかと思っている」
「喜之助さん・・・」
「親父はもう長くない。今年中・・・いや、今月中も持たないかも知れない。
 今までも何度かそう宣告されたが、親父は留まった。しかし、今度こそダメだろう。
 ・・・だが、何か留まった意味のようなものをわたしは見いだしたいんだ」
「・・・」
「そして今になって、その親父がかつて秘匿した妹の遺体が発見され、理事長のお孫さんに伝わり、
 ・・・そしてその友人である君が触れることになった。
 普通の人間とほとんど何も変わらないであろう、
 だが、ほんの少しだけ普通の人間と違う『かも知れない』きみが」
「・・・・・・」

・・・不思議な人だな、とわたしはこの時思った。
紫子がどこまで話したのか知らないけれど、
この人は怪異調査部を立ち上げてから貞一くんが今まで辿った道のりなんか知らないはずだし、実際知らないだろう。
なのに、この人の貞一くんに対する口ぶりは、まるでわたしと同じように、
貞一くんの人としての真価を知っているかのように聞こえたのだ。

「玄関先で運命と言ったのも、そういうことさ。
 藁にもすがる思い、というやつだ。なにも起こらないなら、それでいい。
 だがあの厳格な紫子さんが、ヘタをすれば酔狂とも取れる言葉で評したきみだ。
 ・・・わたしを納得させてはくれないかね?」
「・・・」

貞一くんが、わたしの方に目を向けた。

―――その瞳には、かつて逃げ惑うわたしを射止めた時と同じ、強い光が宿っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「―では、何かあったら知らせてくださいね」

看護婦さんは入り口の前で軽く会釈すると、すたすたと廊下を歩いていった。

ここは、おじいさんの家があった場所からさらに一駅またいだ所にある、市立病院内のとある病室の前。
貞一くんは、他の怪異調査部の面々に事情を説明して一足先に帰ってもらうと、
おじいさんに連れられてこの病院を訪れたのだ。

時刻は午後の3時を既に回っている。
他人が大勢で押し掛けるような場所じゃないし、みんな貞一くんが特別だと
―――多少の誤解はあるけれど―――理解していたから、すんなり納得して帰っていった。

「じゃあ、入ってくれたまえ」

おじいさんに促されて貞一くん・・・とわたしが部屋に入ると、そこは八畳ほどの個室となっていた。
わたしと貞一くんが向かって右前方のベッドに近づくと、
そこには全身に管を通された細身のお年寄りが、繭のように横たわっていた。

「親父だ。もう、反応らしい反応もない」
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25 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:14:43.67 ID:ebzoRtAU
・・・ありがちな表現だけれど。
生きている、と言うより、生かされている、という感じだった。
この国はそういうことに関しては色々複雑らしいから、わたしたちがとやかく言うことじゃないのだけれど。
家族の人たちはどんな思いで、この人のこの姿を見守ってきたのだろう。

「夕子さん」

貞一くんが小さく、低い声でわたしに合図した。
その腕には、家族の人に確認してもらうために持参した、例の木箱が抱えられている。

―――分かってるよ、貞一くん。これはわたしに・・・ううん、わたしたちにしかできないこと。

わたしはすっと、そのお年寄りの顔を覗き込んだ。
瞼は半開きで、瞳は白く濁っている。意識があるのかさえ伺い知れなかった。

・・・反応はない。

「貞一くん・・・」

どうしよう、とわたしが貞一くんの方を振り向こうとした途端。

むにっ。

「えっ?
 ・・・へっ!?」

わたしは一瞬、びくりと身体を震わせた。
それもそのはず。貞一くんは木箱をすぐそばに立て掛けると、何を思ったのか突然わたしの―――
あろうことか、太ももの間に左手を差し込んできたのだ。

ちょ、ちょっとちょっとちょっと!?いくらなんでもこんなとこで!

「ごめんなさい夕子さん、少し辛抱してください」

と、貞一くんは今度はそのお年寄りの頭に、そっと右手の指を這わせた。

「・・・」
「・・・」
「・・・・・・」

10秒か、1分か、それとももっと長かったか、あるいは短かったのか・・・。
そのまま時が止まったかのように、部屋を静寂が支配した。

と。

「・・・親父!?」

後ろで見守っていたおじいさんが、突然声を上げた。
その声にハッとしてわたしたちが振り向くと、

――指が。

動いている。痙攣するかのように、ぴくりと。

再びベッドの上に目を向けると、瞼が明らかに先ほどより大きく開いて・・・
・・・ううん、それより唇が・・・口が動いてる!

「・・・ぃ・・・」
「なんだ!?なんだ親父!?」
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26 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/08/24(日) 19:15:49.24 ID:ebzoRtAU
白く濁っていた瞳に、僅かに黒さが戻る。
首を僅かにこちらに傾けて、何かを繰り返しつぶやくように口を動かしていた。

・・・間違いない。わたしのことが見えている。

わたしは枯れ葉のようなその人の右手を、両手でそっと握った。
とうに枯れ果てていたであろうはずのその声に、次第に音の力が蘇っていく。

「・・・ぃ・・・こ・・・」

その言葉がなんなのか、わたしたちはすぐに理解した。

・・・でも、敢えてわたしは聞いた。きっとこの人は、そう答えるためにずっとずっと待っていたのだろうから。

「・・・わたしの名前、分かる?」

わたし問いを受けて、その人が、ゆっくりと、不器用に微笑んだ気がした。

「・・・れ・・・い・・・・・・こ・・・。
 ・・・『カ』・・・は・・・。
 『喜』ばしき・・・『加』護・・・の・・・『嘉』・・・。
 ・・・『シマ』は・・・。
 木『嶋』の『嶋』・・・。
 『レイ』は・・・。
 『黎』明の『黎』・・・。
 そして・・・『コ』は・・・。
 ・・・『コ』は、わたしの『子』・・・。

 ・・・『嘉嶋』・・・『黎子』・・・。
 ・・・おまえの名前は・・・。
 ・・・・・・・・・・・・『カシマレイコ』だ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「これは、ほんの心ばかりのものだが・・・」

駅の改札口で、おじいさんは貞一くんに封筒を差し出した。

「そ、そんな!受け取れませんよ!」

貞一くんはびくりとして、慌てて首を横に振る。

「頼むから、受け取ってほしい。・・・新谷くん。この世のあらゆる人間が、笑ってあの世に旅立てるわけじゃない。
 そして親父は九分九厘、笑って旅立てない側の人間だった。
 ・・・だったはずだった」
「・・・」
「だが、親父はさっき、確かに笑った。
 ここ数年、わたしや兄弟がいくら呼びかけても瞼すら動かさなかった、あの親父が。
 ・・・理屈はさっぱり分からない。本当にきみの力なのかすらも。
 だが、たった一つだけ、絶対的な真理がある」
「・・・・・・」
「『きみが来たことで、親父が笑った』・・・それだけは、覆りようのない真実だ。
 因果関係とか、理屈とか・・・そんなのは重要じゃないんだ」
「喜之助さん・・・」
「わたしだって、もう老い先短い身だが・・・」

おじいさんは、服の袖で目元を拭いながら言葉を続けた。

「・・・きみがしてくれたことを、わたしは決して・・・
 ・・・一生忘れない」


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