- 【パチンパチン】ブラックラグーンVOL.16【バシィッ】
291 :ロクレヴィ 雨[sage]:2014/08/19(火) 13:12:14.45 ID:06+ICi1y - いつだって一番欲しいと思うものは、手に入らなかった。
いつだって手に入りそうになって、するりと指の間をすり抜ける。 欲しいと望めば望むほどいつだって、それはあたしを裏切るんだ。 その度に傷付くのが辛くて、馬鹿らしくて、いつしか望むのを辞めちまった――… ここ数日ずっとバケツをひっくり返した様な雨が降り続いている。 ロアナプラは本格的な雨季に入った。 仕事が休みなく入っていれば何も考えなくて済むのだが、そう都合のいい事は起こらない。 突然の先方の依頼のキャンセルにより、望まぬ長期休暇を手に入れてしまい、暇を持て余していた。 雨の日は嫌いだった。 何か無くても気分が鬱々としてくる。 余計な事を考えてしまう。 おまけに何もする事がない。 余計に鬱々とする。 散らかった部屋の片隅で、窓を打つ雨の音を聴きながら、レヴィはベッドに横になっていた。 トレーニングも飽きたし、カトラスのメンテナンスも終えた。 イエローフラッグに繰り出すのも悪くないが、時間が早い上にこの雨だとあまり外に出たくない。 「あー…クソだりぃ…」 この鬱憤を晴らしたくて声を出してみるものの、先程から同じ言葉しか出てこない。 はぁ、と溜息をついて不意に目についたカトラスを手に取った。 ――子供の頃、手に入れたくても入らなかった銃。 これを手に入れたくて、やれる事なら何でもやった。 金さえあれば、容易く手に入った。 金は何より自分を裏切らないし、銃を手に入れた事によって力も手に入れる事ができた。 唯、金があっても力があっても、手に入らないものはあったが…。 「あああー…クソっ!やってらんねぇ…」 誰に対してイラついているのか。 自分は何がしたいのか。 何だかよく分からない内に腹を立て、ベッドの上で暴れた。 ――この雨の所為だ。 この鬱々とした気分は雨の所為なんだ。 決してアイツの所為じゃ……。 「…って、何でロックが出てくるんだよ!」 …コンコン 「うわ!!!」 突然のノックの音に飛び上がる。 「おーい、レヴィ居るんだろ?開けてくれ」 今まさに考えていた相手の突然の訪問に戸惑い、即座に動く事が出来なかった。 再び、おーい、と声をかけられて我に返ると不機嫌そうにドアを開けた。 そこには酒瓶を両腕いっぱいに抱えたロックの姿があった。 「何の用だよ、ロック、こんな大雨の中。家にシャワーあんだろ、わざわざ外にシャワー浴びに行ったのか?」 随分とずぶ濡れなロックの姿を見て、溜息交じりの屁理屈。 「ひとりで部屋に籠ってるのも飽きてきてね。どうせレヴィの事だから部屋にいると思って、二人で飲もうと思ったんだ」 そんな事はお構いなしにへらへらと笑みを浮かべて、ロックは部屋に入ってきた。 随分と勝手な奴だ…、ブツブツと文句を零しながら、レヴィはドアを閉めた。 「ところでさ…さっき俺の事、何か言ってなかったか?俺の名前を叫んでた気がするんだけど…」 「…馬っ鹿!!何で手前の事なんか!ついに頭がイカれたか?」 嗚呼、結構大声で言ってたんだな…と恥ずかしさが込み上げて、それを隠す為にロックを罵倒する。 そこまで言わなくても…じゃあ空耳だったのかな…、なんて呟きながらロックはグラスを探す。 「…グラスはあたしがやっとく。手前はさっさとシャワーでも浴びやがれ。部屋中水溜りが出来たらかなわねぇ」 「そう?じゃあ遠慮なく借りるよ」 さっさと行けとばかりにタオルをロックに投げつける。 ロックはそれを片手で掴むと、シャワールームのドアの向こうへ消えて行った。 レヴィはそれを見送ると、グラスを2つ手に取り机に置いた。 雨は未だに強く降り続いている。 突然の訪問者に最初こそ戸惑ったが、この鬱憤が少しでも晴れる様な気がして悪い気はしなかった。
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