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男が早くに死ぬ世界
世界や常識がエロくなる話 part5

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世界や常識がエロくなる話 part5
596 :男が早くに死ぬ世界 1/5[sage]:2014/08/09(土) 17:16:00.29 ID:v9TtKwf2
>>587さんの設定をお借りしました
必ず死ぬ、と言うわけではないのですが、男が20歳前後で死ぬ世界

鬱風味ですので、苦手な方はご注意ください




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「隣の高田さんのところの唯ちゃん、もうじき三十になるのにまだ未婚でしょう?
 だから翔太君が、行くことになったんだって」

夕飯時に母からそんな話をされて、理沙は思わず箸を止めた。
そう言えば先週、翔太の誕生日をお祝いしたのだが、気が付けばそんな年である。

「翔太君も、ついに所帯を持つんだねえ。
 理沙と一緒に走り回ってたやんちゃ坊主が、一丁前にお父さんになるなんて……夢でも見てるみたいだよ」

まるで我が子を思いやるように、母は目を細めてため息を吐き出した。
理沙は「そうなんだ」、と興味が無い風を装って相槌を打つ。
けれど内心は、どきどきと胸が高鳴って、息ができないほど苦しかった。


翔太は、三軒向こうの家に住む、理沙の幼馴染だ。
一つ年上だが、母親同士が友人のため、よく行き来する仲だった。
中学時代はサッカー部のキャプテンで、生徒会の書記で、まさに絵に描いたような優等生だ。
そんな翔太に、理沙は妹のように扱われていた。

『まったく、理沙はそそっかしいな。本当に目が離せないよ』

背が高くて、笑うと優しそうに目が垂れる。
そんな翔太が、理沙は好きだった。
幼馴染として抱く好感以上に、一人の少年として、翔太の事が好きだった。
そして翔太もまた、一人の少女として、理沙の事を心からかわいがっていた。

その翔太が、隣の家のお姉さんと結婚する―――理沙にとって、それは残酷な運命の幕開けに違いなかった。
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597 :男が早くに死ぬ世界 2/5[sage]:2014/08/09(土) 17:16:55.91 ID:v9TtKwf2
原因不明のウイルスの蔓延により、男の死亡率が劇的に上がった2XXX年―――

数百年前まで男の平均寿命は80歳と言われていたそうだが、現在はその4分の1の21歳である。
無論、中には40歳まで生きてテレビに出る人もいるが、百万人に一人の割合だ。
ウイルスはまるで心筋梗塞のように突然発症し、大抵の男は夢も半ばに命を落としていく。

結果、男の結婚可能年齢は16歳まで引き下げられ、代わりに女は24歳まで引き上げられた。
これは生涯未婚の女性を減らすための、苦肉の策である。
男は16歳になるとすぐに結婚し、子供ができると離婚する。そして再び、別の女性と結婚し、子供を作る。
平均すると、男は生涯で5人以上の女性と所帯を設けることになっている。

結婚は多くが見合いで行われ、それも親同士が決める場合がほとんどだった。
精子バンクを利用した子作りもあるにはあるが、やはり一度でも配偶者がいることが世の女たちの憧れである。
そのため、16歳の男と40歳の女の結婚話も珍しくはない。
もはや恋愛結婚は死語に近く、結婚は社会人のステータスの一つとして、便宜上存在するただの契約に成り下がっていた。
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598 :男が早くに死ぬ世界 3/5[sage]:2014/08/09(土) 17:17:55.14 ID:v9TtKwf2
翔太が一度目の結婚をすると聞いてから、早一年が過ぎようとしていた。

隣のお姉さんが、膨らんだお腹を愛おしそうに撫でながら散歩するのを、理沙はこの所よく目にするようになっていた。
その隣を歩く翔太の姿も何度か見かけていたが、声を掛けることもなく、意図的に避けていた。
母が翔太と翔太の母を家に招いている時も、理由を付けて外出するようにしていた。


「理沙」

だから、その日家の前で懐かしい声を聞いたとき、理沙は一瞬反応することが出来なかった。
土曜日の昼過ぎで、理沙は近所の文房具店からの買い物帰りだった。
鞄から取り出した鍵が滑り落ち、かしゃんと乾いた音を立てる。
早く家の中に逃げ込みたかったが、身体が強張って動かない。

側に寄ってきた翔太が、足元の鍵を拾い上げた。

「おい、理沙。聞いてるのか? 何で無視するんだよ」

「……無視なんて、してないよ」

顔を伏せたまま、理沙はぶっきらぼうに答えた。
翔太の顔が見られないのは、怖いからだ。
翔太はもう結婚して、さらにこれから父になろうとしている。
きっともう、理沙の知っている翔太ではない。

鍵を受け取って、理沙は無言のまま家の扉を解錠した。
翔太は立ち去る様子もなく、頭一つ分上の位置から、理沙の様子を伺っているようだ。
それが息苦しくて、理沙はドアノブに手を掛けたまま、小さく口を開いた。

「唯さんは?」

「今日は病院だって。混んでるからしばらく帰れないって、さっき連絡が来た」

「そっか、大変だね。……じゃあ、またね」

そこで手短に会話を切り上げようとしたのだが、理沙が扉を閉める前に、翔太が手で押さえた。

「待ってよ。理沙の事だから、来月の期末テストの勉強、はかどってないんだろう?
 少しくらい見てやるよ」

「いいよ……そんな、子供じゃないし」

「遠慮すんなって」

いつもの気さくな調子で、翔太は強引にドアを開く。
ドアノブごとぐいっと引っ張られ、理沙ははっと息を呑みこんだ。

そこでようやく、理沙は翔太の顔を見ることが出来た。
ずっと怖がっていたのに、そこにあったのは、一年前の誕生日に見たものと変わらない、優しい翔太の笑顔だった。
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599 :男が早くに死ぬ世界 4/5[sage]:2014/08/09(土) 17:18:47.41 ID:v9TtKwf2
一年前の翔太の誕生日―――理沙は翔太の部屋で、初めてセックスをした。
誕生日プレゼントは何がいいか聞いたところ、翔太がそうしたいと言ったので、理沙は特に悩むことなく承諾した。
学校で習ったばかりの知識で、たどたどしく行ったのに、それは予想外に心地よかった。
お互い欲深い年齢ゆえに、できることなら毎日でもしたいと思った。
けれど四度目をする前に翔太の結婚が決まり、今日まで二人が触れ合うことはなかった。


「翔ちゃん、翔ちゃん!」

うわの空で名前を呼びながら、理沙は枕に顔を埋めた。
後ろから激しく翔太に突き上げられる。
この一年で肉付きの良くなった理沙の白い尻が、翔太の腰と激しくぶつかり合った。

「あ、あっ!」

翔太の指先が結合部に伸びて、理沙の芽を擦る。
理沙は身体を震わせて、軽い絶頂を味わう。
一しきり後ろから攻められた後、身体を起こされて、正常位に戻る。

何もかもが一年前と一緒だ。
サッカーで鍛えられた翔太のたくましい身体を抱きしめながら、理沙ははっはと犬のように空気を舐めた。
閉め切った部屋の中に、二人の息遣いが響く。

「理沙っ、中、中っ……!」

切羽詰まった翔太の声に、理沙は激しく頷いた。
便宜上とは言え、既婚男性だ。不貞が知られれば、罪になる。
けれど知られたとして、何が悪いと言うのだろう。二人はこんなにも、愛し合っているのに。

「う、ん、いいよ……中でっ、いいよっ!」

「理沙、理沙ぁ……!」

より一層動きが激しくなり、理沙はふわりとした感覚に身を任せた。
やがて苦しそうな息と共に、翔太は理沙の一番深い所で精を吐き出した。
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600 :男が早くに死ぬ世界 5/5[sage]:2014/08/09(土) 17:23:18.71 ID:v9TtKwf2
「俺、来月離婚するんだ」

事が終わった後、理沙がいそいそと服を直していると、唐突に翔太がそんな事を呟いた。
隣のお姉さんのお腹の大きさから、そろそろだろうと予想していたので、理沙はあまり驚かなかった。

「子供が無事に生まれたら、離婚する」

「それじゃあ、しばらくは独り身なの?」

「ううん。母さんが、もう次を決めているみたいでさ。隣の県の人だって……転校しなきゃだめみたいだ」

そう言って、翔太は頭の後ろで手を組んだ。
現代では、婚姻期間が短いため、男が女の家に住むのが一般的である。
そして再び子供が出来たら、別の女のところに行く。
まるで流浪の民のように、男は遠くへ流れていき、そして、知らない土地で最期を迎える。

「理沙ともしばらく会えなくなるな。まあ、この一年会ってないようなものだったけど、寂しくなるな……」

何気なく呟かれたその一言に、理沙は口の奥が酸っぱくなるのを感じた。
熱くなった目頭から、ぽたり、と水滴が零れ落ちる。
気が付けば、理沙は泣いていた。肩に力が入り、服を握り締める手のひらに力がこもる。

「どうして、そんな事言うのよ……」

「理沙?」

「私だって……私だって、翔ちゃんと結婚したかった! 翔ちゃんと家族を作りたかった!」

それ以上の言葉が続かなくて、理沙はぐっと唇を噛みしめた。
悔しさとも悲しさとも付かない気持ちが、胸いっぱいに広がる。
これから翔太は、たくさんの人と結婚して、子供を作る。
なのにその候補に、理沙は入れない。

「泣くなよ理沙。俺だって、理沙が好きだ。理沙と結婚したい」

「けど、私が24歳になる頃、翔ちゃんは!」

「大丈夫だよ。俺は理沙が24歳になるまで、頑張って生きる……だから、泣くな」

慰められれば慰められるほど辛くて、理沙は子供のように泣きじゃくった。
子供だましがもう通用しないことを、翔太は気づいていないのだろう。
ウイルスの致死率は、20歳から急激に上昇する。理由は分からない。
だから、翔太が帰ってくる確率は、ほぼゼロに等しい。

「翔ちゃん、私翔ちゃんが好きだよ! ねえ、どうして、どうしてなの―――」

翔太の胸板を叩きながら、理沙は一しきり涙を流した。
けれど涙が枯れたところで、二人は結婚できない。

ウイルスのせいではない。
この国の、歪んだシステムのせいだ。
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601 :男が早くに死ぬ世界[sage]:2014/08/09(土) 17:24:47.78 ID:v9TtKwf2
翌月、翔太は引っ越して行った。
それから少しして、理沙は隣のお姉さんに生まれたばかりの赤子を見せてもらった。
隣のお姉さんは、念願の一人娘を抱いて嬉しそうだった。
翔太がいなくなったことなんて、もうすっかり忘れてしまったみたいだ。

理沙はその赤子の安らかな寝顔を眺めながら、静かに自分の下腹部を撫でたのだった。



終わり
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すみません、改行が多くてずれてしまいました
スレ汚し失礼しました


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