- 実況パワフルプロ野球のSS Part14
470 : ◆JDJvu05CbFHN [sage]:2014/07/20(日) 02:58:11.52 ID:8oYr2i16 - どうしてこういう状況になったのだろう。
「ねぇ、起きてる?」 「い、一応…」 ただ同僚の荷物を部屋に運ぶだけだったのにいつの間にか…寝床を共にすることになった。 普通の男女が寝床を共にするのであればそれはそれでまあ問題はないのだが、今回は相手が職業柄手を出してはいけない相手なのでまずい。 それは重々自覚しているつもりなのだが断れない自分がいる。 夏場の試合の後で疲れ切っているのに眠気は一切ない。むしろ眠気はさえていく一方だ。 女性経験のない自分にはなおさらだ。 そもそも自分にはこういう状況になるつもりはなかった。 たまたま帰りの足がなくなった同僚を家まで送って行った。 それから荷物を運ぶのを手伝い終え帰ろうとした時、事件は起きた。 「あのさ、もう少し話したいことがあるから…いいかな?」 この言葉が自分をこの状況へと引きずり込んだ。
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471 :名無しさん@ピンキー[age]:2014/07/20(日) 03:53:06.19 ID:8oYr2i16 - 彼女に引き留められた後、2人の間には沈黙が漂っていた。
正確には彼女は話を切り出そうにも苦しそうだった。 いつものはきはき話す印象とは違う。 思わず心配になる。 「…どうしたの、あおいちゃん。」 すると名前を呼ばれ我に帰ったのか、はっとしたような表情をした後に口を開けた。 「えっと、その…」 しかし、すぐに言葉は途切れる。 おかしい、明らかにいつもの彼女とは違う。 次第に表情は曇っていき、肩を震わせすすり声が聞こえた。 「うっ…ぐすっ…」 突然の涙に驚いた。 声をかけようにも言葉が出ない。 「…大丈夫?」 彼女が泣き止んだのはそれから少し後だった。 泣いている途中、自分は特に何もできなかった。 抱きしめることもなく、涙を拭いてやることもなく、ただそこにいるだけだった。 「…うん。 ごめん、急に泣き出して…」 「ああ、まあびっくりはしたけど気にしなくていいよ。」 また、二人の間に沈黙が訪れる。 こんな時なんて話せばいいかわからず、また話を切り出せない自分に嫌悪感を抱く。 「…聞かないの?」 「ん?」 沈黙を破ったのは彼女だった。 「…ボクが、なんで泣いたか」 うつむいていた顔をこちらに向けると、泣きはらした目をこちらにのぞかせた。 「…うん。」 「…そっか。」 度胸がないというのもあるが、一番は訳を聞くのはとても野暮ったく思えたからだ。 「「…あのさ、」」 二人の声が重なる。 「…そっち先にどうぞ」 「いや、そっちがしゃべってよ。」 彼女だけにしゃべらせるのもなんだか不公平そうで罪悪感があるのでしゃべらせてもらうことにした。 「なんで俺を呼び止めたの?」 そう言うと彼女は心なしか痛いところを突かれたような表情をして、その後自信なさげに続けた。
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472 : ◆JDJvu05CbFHN [sage]:2014/07/20(日) 04:18:09.55 ID:8oYr2i16 - 「…恥ずかしいけどさ、」
「うん。」 「最近…家で一人でいるとさみしくてさ。」 「…」 「それで今日、いつも野球でしか一緒にいられない小波君が家に来てくれて…うれしかった。」 彼女の口から明かされることにドキッとする。 「でも帰っちゃうってなった時に、またあのさみしさを味わうのかなって思ったら…」 「…そっか。」 一つ謎が解けてすっきりした気持ちと、さっきのドキドキが入り混じった何とも落ち着かない気分が自分を支配する。 「…ごめんね、試合で疲れているのに呼び止めちゃって。」 「…いや、いいよ。」 「…でさ、小波君。」 「…うん。」 「今日…一緒にいてほしいんだ。」 やり取りの中で薄々勘づいたあおいちゃんの気持ち。 Yesで答えたい。 もしあおいちゃんが野球選手じゃなければすぐに答えられるのに。 「…だめ、かな。」 返事に悩んでいると、不安でいっぱいそうな表情でポツリと呟いた。 この時、自分の中で腹が決まった。 「一緒にいるよ、今晩。」
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473 : ◆JDJvu05CbFHN [sage]:2014/07/20(日) 05:08:53.88 ID:8oYr2i16 - そして今に至る。
腹を決めて言ったはいいものの、実際は想像をはるかに超えるものだった。 一人暮らしゆえ寝床のベッドは2人入るには窮屈で必然的に体を寄せ合うことになる。 普段顔を合わせている時ではあまり意識しないことまで意識せざるを得なくなってしまう。 寝方も分からなくなっているところに彼女の呟きが聞こえた。 「手…貸して」 横を振り向くことなく手を出すと、両手で握り返された。 心臓の鼓動がより一層早くなる。 「…ごめんね。」 彼女が呟く。 「…小波君のやさしさに、甘えていること。」 「…気負うなよ」 「俺だって腹は決めたんだ。 今まで野球選手ってことでしっかり向き合ってはいなかったけれど、ちゃんと向き合うよ。一人の女性として」 言った後にとても恥ずかしくなって、何かに解放された感じがした。
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474 : ◆JDJvu05CbFHN [sage]:2014/07/20(日) 05:18:31.35 ID:8oYr2i16 - 目が覚めると、横に彼女の寝顔があった。
寝覚めの身には刺激が強すぎてドキドキする。 しばらくして隣人も目を覚ました。 「おはよう、あおいちゃん。」 「おはよう、小波君。」 起きた後、少し互いにぼんやりと見つめあった後、昨晩のやり取りを思い出してか赤面する。 「「あのさ、」」 また話を切り出そうとしてお互い言葉が重なったが、互いの腹の音も重なった。 「「…ハハハ!」」 さっきまでの緊張が嘘のようにお互い笑う。 「そういや昨日は何も食べずに寝ちゃったね。」 「うん。ボク、お腹すいたよ。」 「俺もだよ、朝飯どうする?どっか食べに行く?」 「いや、ボクが作るよ。」 出来上がった朝食を食べていると、彼女が切り出した。 「ゆうべはありがとう。久々にぐっすり眠れたよ。」 「そりゃあどうも」 ここ最近あまり見ることのなかった元気な表情を浮かべる。 「…ねえ、小波君。」 表情を少し引き締めて彼女は言う。 「小波君と一緒にいると、安心できてどんなことでも乗り越えられると思う。」 「野球でもそうかもしれないけど、もう君がいないとダメなんだ。」 「…だから、ずっと一緒にいてほしい。」 腹を決めたはずなのに、いざこういう場面を迎えると戸惑ってしまう。 本来男が言わなくてはいけないセリフを女性の彼女に言わせてしまっていることもあって答えに時間がかかる。 「…だめ、かな?」 でも、もう答えは決まっていた。 これだけ彼女に勇気を出させた以上それに応えないといけない。 「一緒にいるよ、ずっと。」
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475 : ◆JDJvu05CbFHN [sage]:2014/07/20(日) 05:21:10.30 ID:8oYr2i16 - 以上で終わりです。
文才、作品の知識などいろいろ至らない点はあると思います。 失礼しました。 あと、非エロなので期待された方申し訳ありません。
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