- P2でエロパロ その2
586 :永き地獄の終わり61/?[sage]:2014/06/24(火) 01:57:26.36 ID:CbMFhoZM - 準決勝の会場が日本だと聞いたので、それを最後にしようと思った。
ここ数年、二日以上遅れたことのないあれが、五日も来ていない。 検査薬で調べるまでもない。 その前に、私には最後の決着を付ける必要があった。 この居城に来たのは、日本に逃げたあの日以来か。 愛した故郷というわけではないけど、こうして覚悟を決めて見上げると、 大仰な正門も、尖塔の数々も、ホールを飾る彫刻も、回廊を飾る名画も、 それなりに、愛しかったと言えなくもない。 それと比較にならないくらい愛しいものができて、初めて見下ろすことができた。 まるっきり立場こそ違え、兄もこうして数々の芸術を睥睨していたのか。 呼ばれることなく自らこの部屋に入ろうなどと、かつての私が見たら正気ではないというだろう。 ローゼンベルク家当主に相応しい威圧感を漂わせる寝室の扉だが、 かつてその中から放たれる威圧感は扉の比ではなかった。 今は、その威圧感が、うっすらと枯れたように感じられる。 息を一つ吸い込んで、召使いに任せずに自分で扉を開ける。 右肩から右肘にかけてだけとはいえ、包帯を巻いて寝台に座る兄など生まれてこの方初めて見た。 似合っていない。あまりにも似合っていない。 その屈辱の衣装に落ち込んでいるかと思いきや、妙に清々しい顔をしていた。 だが、その顔がこちらを向き、私を捉えた途端に驚愕が浮かんだ。 それすらも、ありえない。 私が近づいて来たことに、そこまで気づかなかったということ事態が。そもそも。 「エリス……」 その視線に捉えられても、私はもう怯まなかった。 身体の中にあるものが、今の私を支えてくれている。 「お兄様、お別れを申し上げに参りました」 兄に対してこんな口調がよくもできたものだ。 学校で、お姉様やヒロムたちと暮らしていた頃の私を、今ここで奮い立たせる。 お姉様以外の誰にも私はもう怯まない。 「別れ……? エリス、おまえ……その身体は、どうした……?」 恐るべき妄執といったところか。 私自身でさえやっと気づいたような私自身の変化に、兄は触れもせずに気づいたのだ。 多分、この男は、私を愛していたつもりだったのだろう。 どれほどにねじくれて、どれほどに凶悪であっても。 それを断ち切る言葉を放つ。ヒロムが兄を断ち切った姿を思い浮かべながら。 「ええ。孕みました」 その言葉を耳にした瞬間の兄の顔を、私は生涯忘れない。 その絶望に満ちた表情が、私の中の堰を切って、とどめのような言葉を紡ぐ。 「だって、ヒロムはお兄様に勝ったんですもの。指輪は二度と返さなくてもいいでしょう」 きっと、私はこのとき笑っていた。 暗い、暗い、果てしない地獄から抜け出て、太陽を見上げたときのように。 地べたを這いずる敗北者を見下ろしながら、私は自らの所有権を宣誓した。 「だからもう、私のここは、ヒロムのもの」 勝ち誇った笑みを浮かべている自覚とともに、私は自らの下腹をこれ見よがしに撫でて見せつける。 まだ外から膨らみはわからないけど、いずれ膨らむその様が、兄の目には見えたに違いない。 「う……」 あの兄の顔に、絶望という傷を刻みつけて叩き潰すその爽快感は、 ヒロムに貫かれたときの快感とはまた違った、 十年分の途方もない絶頂となって私の身体を、魂を、揺さぶるように震わせた。 「ああああああああ!!!」 かつて私が味わった絶望を埋めるには足りなくても、 少しとは言え、溜飲を下げてくれる絶叫を上げながら兄はその場に突っ伏して髪をかき乱して 顔を掻き毟って悶え苦しみながらその場で痙攣して嘔吐した。 見るに堪えないはずのその様をしかと私は目に焼き付けて、もはや聞こえてもいないだろう その様に言い告げる。 「さようなら。お兄様。永遠に」
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