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いつもの人 ◆2XMU15nbVw
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2

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黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
97 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:09:37.35 ID:uRdgRdSv
「!!」
「えっ!?」
「バイクとの接触です。
 ・・・怪我自体は軽かったんですけど、
 それ以来、完全に自分に『生け贄の呪い』が掛かってると信じこんでるみたいで・・・」
「まさか、まだ入院してるの?」
「いえ、そもそも入院しなかったみたいです。
 それくらいの怪我だったんですけど・・・。
 学校には出てきてるんですが、すっかり塞ぎこんでしまってて」
「精神的なものか」
「・・・それも、わたしたちが追い討ちをかけたようなものなんです」
「え・・・?」
「まだなんかあるのか?」
「・・・」
「そこまで言ったからには、聞いて欲しいんでしょう?」
「・・・。
 その子が事故に遭った後、わたしたちもパニックになってしまって・・・。
 ・・・もし、その子を追い詰めた話の大半がわたしたちのでっち上げだとバレたら・・・
 って考えたら、夜も眠れなくて」
「・・・」
「それで、バレないように考えた方法が・・・
 ・・・」
「後付けでウソを事実にした・・・か」
「・・・はい」
「え?え?どういうことですか?」
「『夕子さま』を現在のルールで広めたのはこの子たちってことよ」
「え・・・」
「その子が休んでた二週間ほどの間で、わたしたちが考えた捏造ルールを必死に広めて・・・。
 元々『夕子さま』そのものは流行っていたわけですから、後付け部分も驚くほどスムーズに浸透していきました」
「それでその子が学校に来たら、自分を追い詰めた『裏ルール』が事実として蔓延し始めちゃってたわけか。
 ・・・さぞかしショッキングだったでしょうね」
「・・・」
「儀式の話も、その時に噂として広がった?」
「はい。噂を広め始めた時は、わたしたちも動揺してて、不要な情報までうっかり流してしまっていたので・・・」
「なるほど・・・」
「・・・このこと、他の人には・・・」
「言ってません・・・。と言うか、とても言えません・・・」
「じゃあ、なんでわたしたちにはこんな洗いざらい話したんだ?」
「・・・。
 それから一ヶ月くらい経って・・・。
 急激にあかマントの噂が流行り始めて、わたしたちは頭がおかしくなりそうでした。
 あかマントが、わたしたちに罰を与えに来たような気がしたんです」
「・・・」
「あの・・・、今さらですけど、三年の庚霧江先輩・・・ですよね?」
「!」
「え?わ、わたしのことか?」
「それから庚先輩があかマントを退治したって噂が流れて、あかマントの噂は落ち着きました。
 それでわたしたちも安心したんですけど、
 ・・・その、安心したら、今度は・・・わたしたち、一体何をやってるんだろうって・・・」
「・・・」
「元々は、怖がりなのに見栄を張ろうとするのが気に食わないって、ただその程度だったんです。
 ・・・なのに、気がついたら必要以上に痛め付けていて、わたしたちも自分自身のウソに振り回されて、
 もうわけわかんなくなっちゃって・・・」
「・・・」
「それで今日、庚先輩から儀式のことで声をかけられた時、何もかもバレたのかと背筋が凍りつきました。
 でも、これはむしろ全部話すべきなんじゃないかって思えてきて」
「・・・苦しかったんだね」
「・・・すみません・・・。
 ・・・あの、やっぱりこの事、先生とかに報告するんですか?」
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
98 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:11:17.00 ID:uRdgRdSv
「いや、それは・・・」
「それであなたの気が晴れるなら、そうしてあげてもいいけど」
「!」
「お、おい桐島!」
「そうじゃないんでしょう?だったら、報告するかはあなたが決めなさいな」
「・・・」
「・・・あのね、あなた。懺悔とか免罪っていうのは、本来なら高い買い物なんだよ?
 あなたと二歳しか違わないわたしが言うことでもないんだけど」
「・・・・・・」
「痛い目に遭って、ようやくほんとの意味での懺悔は終わる。
 ・・・この数ヵ月間、誰かがあなたを罰したりした?しなかったでしょ?
 ・・・でも、あなたは誰かに責められたわけでもないのに・・・
 ・・・と言うか、責められなかったからこそ苦しかったんだよね?」
「・・・・・・・・・はい・・・」

『・・・・・・・・・・・・』

「だったらもう、それでいいじゃない。
 ・・・あとはこの退魔師さんが上手いこと片付けてくれるわ。
 ・・・・・・・・・多分」
「おい!偉そうに説教垂れといて肝心の部分は人任せか!」
「いいじゃない。そういう役割分担なんだから」
「お前はそもそも部員ですらないだろうがぁ―――っ!!」
「・・・」
「・・・様付けとか、捧げ物のくだりも君たちが考えたの?」
「・・・え?あ、はい・・・」
「なぜ?生け贄扱いして怖がらせるのが当初の目的だったなら、不要なくだりに感じるけど・・・」
「・・・無意味なクッションを置いた方が、リアリティが出るだろうって・・・」
「なるほどねー。いいセンスしてるね」
「おいヘンなとこで感心すんな!」
「他の二人はどうしてるの?」
「あかマントの件以来、あまり話していません・・・。
 でも多分、わたしと同じ心境だと思います」
「ケガした子とは・・・」
「学校にきて以来、ほとんど話してないです・・・」

「そっか・・・。
 ・・・ありがとう。よく話してくれたね」
「・・・」
「とりあえず、今日はもう帰ってもらえるかな?
 ・・・大丈夫。他の人に話したりしないから。
 僕たちも何とかできるように協力するよ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・さて、どうしたもんかな」
「・・・」
「・・・なんか、肩透かしだったね。
 わたしの当初の予感通り、確かに悪意ありきではあったけれど。
 ずいぶんとショボくれた悪意だったわ」
「・・・おい、言葉には気をつけろよ。そもそもお前は偉そうなこと言える立場じゃないんだからな」
「・・・ふん。
 まあいいわ。今日のところはわたしも帰ってあげる」
「・・・帰って『あげる』?」
「わたしがいるとやりづらいんでしょう?会議」
『・・・』
「い、いや、そんなことは・・・」
「ああ、そうだ。だからとっとと帰れ」
「・・・。
 じゃあね、新谷くん。夕子さんによろしくね」
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
99 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:12:24.10 ID:uRdgRdSv
スッ・・・。

ガララッ・・・。ピシャンッ。

「・・・」
「・・・」
「・・・やりづらいって分かってるなら来るなよな・・・」
「・・・いえ、そういうことではなく、僕たちが夕子さんを交えて相談しづらいから、って意味かと・・・」
『・・・もう、絶対見えてるよね、あのコ』
「いや〜、ただのハッタリだと思うけどなあ・・・」
「まあ、せっかく桐島さんが気を遣ってくれたんですし、作戦会議に入りましょう。
 まず、具体的な解決手段ですけど・・・」
「やっぱいつものアレだろ?」
「ああ、茶番劇ね」
「・・・。
 茶番劇とか言うなよ・・・。お前だって主演だろ夕子」
「うふふふふ。まーね。主演女優だしね!」
「うーん・・・。でも、具体的にどういう風に話を持っていくかなんですよね・・・」
「うん?いつも通り、あいつらの前で夕子を退治すればいいだけじゃないのか?」
「いえ、それだけじゃ根本的な解決にならないんですよ」
「え?」
「そうだね・・・。
 確かに、そのケガしたコの前で、あかマントに扮したわたしがあなたに退治されたフリすれば、
 少なくとも生け贄の暗示は解けるかも知れないけど。
 ・・・でも、心の傷の本質はそこじゃないんじゃない?」
「・・・」
「そもそも、本当にあかマントが怖いだけなら、こないだあかマントが退治されたという噂が流れた時点で
 暗示は解けてるはずなんです。でもその子は未だに塞ぎこんでいる」
「『夕子さま』自体は依然流行ってるからじゃないのか?」
「もちろん、それもあると思います。でも・・・」
「・・・きっと、自分でも分かってたんだね。怖がりなのに・・・
 ・・・ううん、怖がりだからこそ、つい攻撃的になっちゃう自分のまずさが。
 ・・・あなたも心当たりあるでしょ?」
「なっ!?し、失礼なこと言うな!」
「本当は、いつか謝らなきゃと思っていたのかも知れませんね。
 でも、その前に追い詰められてしまったから・・・」
「・・・う〜ん・・・」
「厄介なのは、元々不仲と言うか、仲違いしてたっていう点ですね。
 滝岡さん姉妹みたいに元々仲良しだったなら、
 夕子さんがちょっと刺激するだけで絆が戻ってくるんですけど・・・」
「今回の場合、わたしがあのコたちの前にいきなり姿を現したら
 他の三人はそのままケガした子を置いて、逃げていっちゃうかも知れないんだよね・・・。
 ・・・そうしたらそのコ、今度こそ立ち直れなくなっちゃうかもね。逆効果だわ」
「しかしなあ・・・。もうそこまでいくと当人間の問題だろ。
 だいたい、元々仲が悪かったのはわたしたちにはどうしようもないことだぞ」
「そうですね・・・。でも、なんとかしてあげたいんです」
「新谷・・・お前な〜・・・」
「・・・正直に言うと僕は今回の件、少しホっとしてもいるんです」
「・・・え?」
「僕は最初、僕と同じ時期に僕と同じ手段で夕子さんの風評を広めた人間がいると推測して、
 『ケンカを売られた』と感じました。
 ・・・その推測自体は、確かに間違ってなかったんですけど・・・」
「・・・」
「・・・でも、やっぱり、『敵』なんていなかったんです。
 ちょっとしたボタンの掛け違いが、思い掛けない波紋を呼んでしまっただけで。
 僕は臆病ですから、常に『敵』を意識してそれと正面からぶつかり続けるなんて、とてもじゃないけどできません。
 ・・・そんなことをしたら、きっと・・・あっという間に心が磨り減ってしまう」
「貞一くん・・・」
「新谷・・・」
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
100 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:13:12.56 ID:uRdgRdSv
「でも、納得はしたいんです。『敵』はいなくとも、『因縁』はできた。
 夕子さんの『因縁』は、僕・・・僕たちで決着をつけたい」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・なあ、新谷」
「・・・はい?」
「・・・なんかえらくカッコいいこと言ってるけど・・・。
 もともとあかマントの噂が広まっちゃったのは、お前と夕子の変態行為のせいだって忘れてないよな?」
「うっ・・・」
「ぐっ・・・」
「この件はお前ら変態カップルの尻拭いの面もあるってこと、肝に銘じておけよ」
「で、でも、それは前回片付いたことであって、今回は『夕子さま』の調査がメインで・・・」
「因果関係があるかも、って最初に推測したのはお前だし、実際あったよな?」
「・・・ごめんなさい・・・」
「はぁ・・・。
 ・・・でも、だから、まあ、わたしたちの手で決着つけるべき、ってのは確かにそうだよ。
 今までだって、だいたい夕子のせいだったしな」
「あー、ひどーい」
「お前もちょっとは反省しろ!」
「はいはい。・・・ちぇっ。
 ・・・とにかく、今回は作戦に少し『ひねり』を加えないとダメみたいね」
「・・・その口ぶり、何か案があるのか?」
「うーん、まだイマイチまとまってないんだけれどね・・・」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「・・・どういうつもり?こんなとこに連れてきて・・・」
「・・・」
「いや・・・その・・・」
「言っとくけど、わたしをまた生け贄にしようったって無駄よ。
 ・・・もうなっちゃってるんだから」
「いや・・・あれは・・・その・・・」
「・・・実は、わたしたちもよく知らないの」
「・・・は?」
「三年の庚先輩って知らない?
 ・・・ほら、この学園って怪異の噂とか多いでしょ?そういうのを解決するのでちょっと有名な人なんだけど」
「・・・」
「こないだのあかマントを退治したって言うのも、その人なんだけどね・・・。
 その人があんたの力になりたいから、ここに連れてこいって」
「・・・退治・・・?あかマントを?
 ・・・バカじゃないの?」
「でも、あんた、自分が・・・その、生け贄になってるっていうのは信じてるんでしょ?」
「そーよっ!
 だからそんな恐ろしいもの、わたしたちよりちょっと歳上なだけの人が退治できるわけないでしょっ!?
 て言うか!もうほっといてよっ!」
「・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「・・・大丈夫なんでしょうか、ホントに・・・」
「・・・」
「庚先輩の言う通り、他の三人もこの旧校舎跡に連れてきましたけど・・・。一体ここで何を」
「・・・大丈夫かどうかはあの子たち次第だよ」
「・・・え?」
「・・・そして君もね」
「え?え?」
「昨日、言われたよね?ほんとの意味での懺悔には、相応の対価が要るって。
 対価というのは、つまり・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
101 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:14:05.94 ID:uRdgRdSv
「―なによ!そんなこと言って、またわたしを生け贄に祭り上げるために呼び出したんじゃないの!?」
「違うってば!だいたいあれは―」
「ちょっと!それは言ったら―」

《・・・かぃ・・・んとぉ・・・》

「・・・。
 ・・・え?」

《・・・おぃ・・・んとぉぉ・・・》

「な、なに?なに今の声?」

《・・・っちがぁ・・・しぃぃ・・・?
 ・・・らなぃぃならぁ・・・・・・こせぇぇ・・・》
「え!?
 ・・・!?
 ・・・え!?」

ザリ・・・。ザリ・・・。ザリ・・・。ザリ・・・。

《ぃいぃらないならぁあぁ!くくくくもつをよぉこせぇえぇぇええ!》

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「!?え!?
 なに!?なんなんですかあの赤いの!?」
「・・・あれが何なのかは、君たちの方が詳しいんじゃないかな?」
「・・・。
 ・・・あ・・・か・・・マン・・・ト・・・?」
「・・・人の繋がりって言うのはね、とても重いものなんだ。それを繋ぎ直すほどの対価は・・・つまり・・・
 ・・・『供物』しかないんじゃないかな」
「!!!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

ザリ・・・。ザリ・・・。

《ぁかぃ・・・まんとぉ・・・。
 ・・・あぉい・・・まんとぉお・・・》

「何!?何コイツ!?」
「ま、まさかホントにあかマント・・・?」

《どっちが・・・ほしぃいぃ・・・?どっちも・・・ほしぃぃ・・・?》

「か、かか、庚先輩が退治したんじゃ・・・」
「って言うか!そんなものホントにいるわけないでしょ!?」
「じゃ・・・じゃあ・・・な、なんで・・・」

《どっちも・・・ぃぃいらなぁぁいぃ・・・?》

「なんでコイツ・・・マントの裾から足が見えないのよぉぉっ!?」
「!!!」

《いぃぃぃいらななないならぁああぁくくもつをよよこせぇええええぇえぇぇえ!!》

「嫌あぁあっ!!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
102 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:15:21.14 ID:uRdgRdSv
「・・・は、はやくにげなきゃ・・・」
「・・・逃げるの?」
「な!?あ、当たり前じゃないですか!殺されちゃいますよ!?」
「逃げてどうするの?」
「はぁっ!?」
「君はもう知ってるはずだよ。ここでこのまま逃げたらどうなるのか・・・」
「!」
「確かに、死んじゃったら元も子もない。
 ・・・でもね、世の中には死ぬとか、なくなっちゃうとか・・・。
 ・・・つまりは、『ゼロ』になるより、もっと悲惨なことがあるんだ。
 ・・・君はもう、知ってるはずだよ」
「あ、あなた、一体・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

《くくくもつつつ、くもつがぃいるはずぅぅう》

「わ、わたしのこと・・・?」
「え・・・?」
「わたしが生け贄だから・・・」

《くくもつのまんとぉぉお、あぁかいまんとおぉ》

「いや、だってあれは・・・!
 ・・・・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「・・・この誠教にはね、あるおとぎ話が伝わってるんだ」
「お、おとぎ話なんて、こんな時に」
「いいから聞いて。
 ・・・昔、ある村に、とても仲のいい姉妹がいたんだ。
 姉妹は村のみんなから好かれていて、お父さんも鼻が高かった。
 ・・・でもね、ある日その村に悪い鬼がやってきて、村人を次々と食べ始めた」
「・・・」
「姉妹のお母さんも食べられてしまって・・・。
 村中が恐怖と不安に包まれてしまい、やがて村人たちの間でいさかいが起きた。
 心が強い人たちは、村のみんなが力を合わせて、鬼に毅然と立ち向かうべきだと主張した。
 ・・・でも、心が強くない人たち・・・つまり、大半の村人の意見は違った」
「・・・・・・」
「村で最も価値のあるものを鬼に差し出して、見逃してもらおうとしたんだ。
 ・・・そして、姉妹の姉は心が強い側だったけど・・・。妹はそうじゃなかった。
 ・・・そして、それが悲劇の始まりだったんだ」
「・・・まさか・・・」
「・・・妹は・・・。
 ・・・姉を、鬼に差し出してしまったんだ・・・」
「!」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

―ザッ。

「一足遅かったか・・・」

「あっ!」
「えっと、あなた・・・
 ・・・えっと・・・!」

「わたしは中等部三年の庚霧江。・・・退魔師だ」
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
103 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:16:16.47 ID:uRdgRdSv
「え!?あなたが!?」
「・・・じゃ、じゃあ!なんでもいいから、こいつやっつけてよ!」
「・・・残念だが、それは無理だ」
「な、なんで」
「先月、わたしがこいつを調伏したという話は聞いているな?
 だが、今またこいつは甦った。
 ・・・力押しじゃダメなんだ。ダメな理由がある」
「な・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「・・・もちろん、姉を食い殺したところで、鬼が村人を見逃してくれるはずなんかなかった・・・。
 姉を差し出すことに同調した他の村人も、一人残らず食い殺されてしまったんだ。
 妹自身はからくも生き延びたけど・・・それが逆に不幸だった」
「・・・・・・・・・」
「妹はその後、大好きな姉を無意味な犠牲にしてしまったことを悔やみ続けながら、
 牢獄のような人生を歩み続けることになったんだ。ず―っと、ず―――っと。
 後悔しながら、苦しみ続けながら、自分を責め続けながら、おばあちゃんになるまで、ず―――――っと・・・」
「・・・・・・・・・・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「なんで力押しじゃダメなの!?」
「・・・わたしの降魔の力は、その全てがこの世のあらゆる悪鬼の一つ一つに精密に対応している。
 ・・・逆に言うと、何らかの要因でその悪鬼に『不純物』が混ざってしまっていると、
 情報が一致せずに対応しきれなくなってしまうんだ。
 調伏しきれず復活してしまったのもそのせいだ」
「不純物・・・」
「じゃ、じゃあ、早く逃げないと!」
「それこそ絶対にダメだ」
「なんでよ!?」
「こいつはいわゆる『ハメ』系の怪異なんだ。逃げるとかえって被害が大きくなる。
 ・・・絶対に助からない怪談とかあるだろ?答えずに逃げたくらいで助かるなら、みんなそうしてるさ」
「そんな・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「・・・逃げるな、って言ってるんじゃないんだ」
「・・・え?」
「僕もね、臆病な人間で、人と争うのは苦手だから・・・。
 だから、逃げるべき時は逃げた方がいいと思うよ。
 ・・・でもね、『逃げ時』はちゃんと見極めなくちゃいけない」
「・・・逃げ時・・・」
「君にとって、あの子はおとぎ話のお姉さんほど大切な人間じゃないと思う。
 ・・・でも、この三ヶ月間苦しくてしょうがなかったのは、
 君が本来は人を追い詰めて喜ぶような人間とは程遠い心の持ち主だからじゃないかな。
 ・・・だったら、今が『逃げ時』なのかどうかも見極められるよね?」
「・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「さっき言ってた『不純物』って言うのは?」
「・・・こいつは本来なら、生け贄を要求するタイプの悪鬼じゃない。
 どこかで不純物・・・つまり、余計な情報が混ざって『雑種』と化してしまっている証左だ」
「・・・」
「確かにこの誠教には、生け贄を要求する赤い怪人という異伝がある。
 でもそれは、『アカヒト』というあかマントとは似て非なるもの・・・本来は全く異なる悪鬼だ」
「じゃあ、なんで・・・」
黄昏乙女アムネジアでエロパロ2
104 :いつもの人 ◆2XMU15nbVw []:2014/06/22(日) 05:17:04.52 ID:uRdgRdSv
「推測だが・・・。恐ろしく歪んだ『思い込み』が、あかマントの在り方をも歪めてしまったのかも知れない」
「!」
「怪異というのは情念に影響を受けやすいんだ。
 例えそれが、元々はただのでまかせや苦し紛れだったとしても・・・
 いや、不純な動機から生まれた虚偽だからこそ、薄暗い波動のうねりとなって拡散していく」
「・・・」
「・・・もしかして・・・」
「そして歪みが歪みを生んで・・・
 つまり、そのでまかせを信じてしまった人の心がどす黒い『思い込み』で支配されてしまった時、
 怪異の在り方をも歪めてしまうほどの強力な・・・ん?」

《う゛・・・う゛・・・・う゛・・・》

「・・・へ?」

《う゛・・・う゛ぉ・・・う゛ぉお゛ぉお》

「な、なに?急にあかマントの様子が」

《う゛お゛ぉお゛ぉおおお゛ぉぉっ!!
 う゛ぉう゛おう゛ぉお゛おう゛おぉお゛お゛お゛お゛おおぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!》

「キャアアアァっ!?」
「お、おい!ちょっ!?」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

「な、なんですかあれ!?急にあかマントが暴れ始めましたよ!?」
「えっ!?・・・いや・・・あの・・・えーと・・・!!」
「あのままじゃみんな殺されちゃうんじゃ・・・!」
「あ、えーと・・・。
 ご、ごめん!君はここにいて!」
「え!?」
「いいね!絶対ここにいてね!逃げなくても大丈夫だから!」
「は・・・はい・・・」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

《う゛お゛っ!う゛お゛っ!う゛お゛ぉぉお゛っ!!》

「いやぁっ!ごめんなさいっ!たすけてえぇっ!」
「お、おい、お前ら落ち着け!
 え、えーと・・・」

「あぶないっ!!」

「・・・へっ!?」

ダダダダダっ・・・がばっ!

がしっ!

《う゛ぉっ!?》

「に、新谷!?」
「霧江さん、このままじゃあかマントが暴走します!霧江さんも力づくで押さえ込むの手伝ってくださいっ!」
「えっ?・・・あ、ああ!分かった!」
「・・・?」

がしっ!


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