トップページ > エロパロ > 2014年06月01日 > xsJ58xTF

書き込み順位&時間帯一覧

2 位/261 ID中時間01234567891011121314151617181920212223Total
書き込み数000000019200000000000000021



使用した名前一覧書き込んだスレッド一覧
五行戦隊 ◆vPNY1/7866
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(1/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(2/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(3/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(4/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(5/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(6/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(7/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(8/19)』
五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(9/19)』

その他11個すべて表示する
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19

書き込みレス一覧

不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
443 :五行戦隊 ◆vPNY1/7866 [sage]:2014/06/01(日) 07:18:55.91 ID:xsJ58xTF
連鎖悪堕ちと触手スーツな寄生もの、第八話。

<前回まで>
鈴華【金】清見【水】:寄生済み。学校生徒を人質に暗躍
翠【木】:寄生済み。エロエロな拷問を受ける
灯【火】:進行中。人質の生徒を救出しようと行動
睦美【土】:健在
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
444 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(1/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:21:01.97 ID:xsJ58xTF
朝の空は、鉛色の曇り空だった。
朝日はほとんど遮られ、日光のかわりに冷たい雨粒が地上に注がれる。
通勤時間を過ぎた道路は閑散としていて、町全体に陰鬱とした空気が漂う。

道端に立つ一本の街路灯。
そこのもともと電球があった位置に、一匹の異形の蟲がすり替わる。
芋虫のような体の表面に目玉が生え、その単眼を使って町の様子を静かに眺める。

ふと、異形の蟲は何かを見つけたか、瞳孔の虹彩をレンズのように絞った。
遠く離れた建物の上を、一つの赤い影が高速に移動していた。
目が醒めるほど鮮烈な赤い衣装。
それを着こなした人物は、誰かに気付かれることもなく、
屋根裏を平地のように渡って疾走する。
一瞬にして通り過ぎる赤色は、陽炎のように美しかった。

蟲は目玉を端から端へと移すが、やがて視界の外へと消えてしまう。
すぐに異形はアメーバのように変形して街灯の上へ這い登った。
黒一色だった軟体は妖しくうねり、まわりへ微弱な妖気を発する。
それが信号となり、遠くの仲間と情報交換する手段となる。
だが今回はどうしてか、信号の返事がなかなか返ってこない。

その時だった。
二本の指が妖眼蟲を摘み上げる。
「監視カメラの役目、ご苦労さん」

妖眼蟲は驚くように目玉を見開く。
ついさきほど通り過ぎたはずの赤服が眼前に現れた。
不敵な笑みを掲げた少女が、街灯の頂上でしゃがみこむ。
ほがらかな顔立ちだった。
凛とした目元や陰の無い表情は、ボーイッシュな可愛さを作り出す。
その明るい雰囲気に近付いただけで、体中が太陽の光を浴びたようにポカポカする。
だが妖魔にとって、その活力はこの上ない忌々しいものだった。

妖眼蟲はすぐさま動いた。
液体のように指の合間からはみ出すと、一瞬にして少女の頭から足元まで覆うほど広がる。
だがその途端、少女の手から放たれた高熱が肉質を浸透する。
薄くなったことが逆に仇となって、高速に溶け出してしまった。

敵が完全に浄化したことを確認すると、少女は地上に降り、
すぐ近くの壁の影に身を隠した。
「ハァ……」
付近に人の気配は無い。
それが分かった途端、少女は壁にもたれ、息を漏らした。
さきほどまでの雰囲気と一変して、彼女は風邪を患ったように目をトロンとさせ、
呼吸にねっとりとした熱を帯びた。
両腕に抱きしめられる体は、一向に震えが収まらない。

少女の名前は灯(あかり)、五行戦隊の一員。
妖魔に陥れられた仲間を助けるため、学校へと向かっている途中である。
しかし今の彼女には、とある発作に悩まされている。

「うぅ……」
熱い息を漏らすと、灯はついに太ももを広げてしまった。
そして悔しそうに唇を噛み締め、おそるおそる手つきでスカートの下を触れる。
思った以上びっしょり濡れた下着に、頬がますます赤くなる。
だが、それでも手の動きは止まらない。
下着の更なる奥にある、女の子の一番大切な部分に触れるまで。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
445 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(2/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:23:34.70 ID:xsJ58xTF
 
「ううぅ……ん!」
灯は必死に喘ぎ声を抑え、背中を壁に預ける。
そのままうずくまって息を大きく乱した。
意識が一度淫欲に負けると、もはや取り戻すことは不可能だった。
無意識のうちにもう片方の手も服の上から胸をまさぐり、溢れる欲望に身を任せる。
誰かが通りかかると思うと、麻薬にも似た背徳感が脳を麻痺させる。
近くの気配をしきりに確認しながらも、灯は体の愛撫を止めなかった。
体が快感に跳ねるごとに、声の抑制がだんだんと効かなくなる。

こうして町中で自慰するのは、もう三度目になる。
最初は我慢しようとも思った。
だが抑えれば抑えるほど、体に宿る疼きが際限なく増大し、
結局より大きな欲火となって身を焦がす。

「はあああぅっ……!」
灯は最後に締め付けるような嬌声をあげた。
少しずつ力を抜きながら、その場でぐったりと崩れる。
絶頂を迎えた後のぼんやりとした心地良さ。
そんな夢見心地に浸りながら、灯は愛液が付着した指をぼんやり見つめた。

「イク」という行為にも、少しずつ慣れてきた。
少し前まで処女だった自分にはとても考えられないことだった。
自慰することは死ぬほど恥かしい。
だが今となって、それ以上に厳しい問題が発生していた。

(だめ、もうこの程度の刺激じゃ……満足できない)
中途半端に鎮火した火事のように、体のあちこちに余熱ばかりが残る。
少しでも火の気があれば、すぐにも乾ききった草のように燃え盛りそうだ。

アイツにされた時と比べたら、何もかも足りなかった。
たくましい陰茎。
ねっとりと愛撫する触手。
いやらしい糸を引く汁、立ちこもるような淫臭。
そして自分の意思などまったく構わずに、一方的な蹂躙。
自慰するたびに、アイツに犯された記憶が何度も何度も浮上してくる。

「く……っ!」
灯は幻像を払うかのように地面に拳を殴りつける。
犯されたことは確かに屈辱だった。
しかしそれよりずっと屈辱なのは、自分の体がそれを求めようとしていることだった。
さきほどの妖眼蟲も、外見を見ただけで、心臓が異様にドキドキした。

(しっかりしなきゃ……! あの蟲どもを倒して、みんなを助けるんだから!)
灯は自分の心を抑え、改めて勇気の炎を焚きつけた。
五行戦隊随一の闘志の持ち主として。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
446 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(3/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:25:59.34 ID:xsJ58xTF
 


学校のまわりは、しーんとしていた。
授業時間に入ったせいか、喧騒音は聞こえなかった。
正門から見える校舎の建物は、普段と同じような穏やかな雰囲気が流れる。

灯は学校の裏側に回りこむと、塀の前で立ち止まった。
そして路傍から小石を拾い、敷地の内側へポイと投げる。
放物線を描く小石が壁の上方を越えようとした途端、何の脈絡もなく消えた。
空にはただ透明の波紋が少し揺れるだけだった。
そのわずかな変化を、灯は見逃さない。

(なるほど……結界でご丁寧に学校をまるごと包んでるわけか)
灯は目をまばたきさせ、素早く敵の意図を探った。
結界から感じる妖気の力は少なく、攻撃能力は皆無だった。
おそらく通行を制限するだけのものだろう。
外からの進入のみを許し、内側の光や物音を全て遮る。
発見を遅らせることもできるため、人質を閉じ込める鳥篭としては最適であろう。

こんな術式を施した人物が誰なのか、だいたい見当はつく。
五行戦隊の中でもとびっきり知識豊富な人物。
無愛想で、人が盛り上がっているところに水をさす嫌なヤツ。
しかしどんな絶望的なピンチでも動じない、頼りになるヤツ。

感傷の気持ちを胸に仕舞い込むと、灯は首からさげた赤い勾玉に触れた。
身にまとっていたバトルスーツは赤い炎と化し吸い込まれ、
変身前の制服姿が浮かび上がる。
結界に殺傷力は無さそうだが、護霊服を着たまま通過すれば
確実に霊力と反発してしまう。
術者の力を考えれば、それでは感づかれてしまうだろう。

灯は勇敢な女の子であるが、決して無謀ではない。
敵の要求は、正午に学校の屋上へ来ること。
ということは、それまでの間は別のことに手間をかけているはず。
正面から突っ込むより、こうして不意を突いたほうが勝機も上がるはず。

灯は壁の中央につま先をつけ、軽々と一躍した。
そのまま壁を飛び越え、猫のように物音立てず着地する。
まわりにあるのは校舎裏の雑木林で、敵影は見当たらなかった。
しかし、あたりの風景は激変する。

(なんて凄まじい妖気……!)
呼吸するや否や、灯は息が詰まりそうになった。
薄ピンク色の大気が学校の敷地全体を充満し、甘ったるい匂いが鼻腔から入り込む。
甘い微風は服の隙間から肌を撫ぜ、ねっとりとした湿気がこびり付く。
霊感の無い人間には、このような現象に違和感を覚えないだろう。
だが長時間この妖気の中で生活していれば、いずれ精神が淫らに感応してしまう。

背後を見ると、紫色の膜が塀から空高くまで伸び、校外の様子が一切見えない。
(一方通行、ってわけか)
それほど強固な結界ではないから、自分のような使い手なら簡単に突破できる。
だが妖気を一箇所に閉じ込めることは、灯にとっても都合が良かった。
なんとしても、町まで被害を広げないために。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
447 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(4/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:28:10.01 ID:xsJ58xTF
 
灯はそこから一歩踏み出すと、軽いめまいに襲われた。
空気を多く吸い込んだだけで、ぼんやりとした恍惚が頭を包む。
下腹部あたりにゾクゾクするような疼きがまた蘇る。
無意識のうちに手で置くと、刺激が大きく反応する。

(ひゃっ……!)
灯は慌てて手を引っ込め、そのまま触り続けたい衝動を抑えた。
わずかに残った感触が残像のようにいつまでも焼き付く。

(ちょっと、余裕ないかも……)
歯を食いしばりながら、灯は呼吸量をなるたけ抑えた。
変身すれば対抗できるだろうが、同時に妖眼蟲に気付かれるリスクも高まる。
(これは人質をこっそり助けるためだから。
 別にこの空気をもっと吸いたい、わけじゃないんだから……)

どこか言い訳まがいの気持ちを抱きつつ、
灯はふわふわした感覚のまま雑木林から歩み出た。
熱を帯びた体の奥に、成長しつつある妖気の鼓動に気付くことも無く。

「なっ……なにこれ?」
校庭に出るや否や、灯は目を疑った。
目の前にそびえるは緑色の建築物。
それがツタに覆い尽くされた校舎だと理解するには、しばらくかかった。
建物がまるごと寄生されているのだ。

屋上を中心におびただしい量の寄生蔓が流れ出て、学校全体を緑色に染め変える。
もともと小綺麗だった白壁の上を、妖葉の絨毯がぎっしり敷き詰める。
咲き綻びる花びらから胞子が噴き出て、空気を淫らなピンク色に染め続ける。
壁の底を這い回る太い茎がドクンドクンと脈動する。
まるで魔界に迷い込んだような不気味な景観だった。

一際強烈な妖気が、校舎の屋上から感じる。
脅迫映像にもあった通り、おそらくそこに鈴華と清見がいるはず。
しかし灯はそこへ近付くどころか、まったく違う方向へ歩み出した。

校舎に寄生する植物を観察すると、灯はあることに気付いた。
壁底に張り付いている太いツタは皆一つの方角へと集結していた。
目の前の異変と比べれば、それは取るに足らない事柄だった。
しかし、灯はそこに何か重要なことを感じ取った。

校舎から離れるほど茎同士は深く絡め合う。
その先にある建築物の正面へやってくると、灯は怪訝そうに眉を動かす。
「これは……体育館?」
まばたきしながら、灯は奇怪なものを見るような目で見上げた。

建物のあらゆる窓や隙間から植物が突き破り、校舎方面へと繋がる。
四方八方へと伸びる太茎はそれぞれドクン、ドクンと脈打ち、
その生々しさがまた不気味さを増す。
外縁を沿って歩くと、灯は比較的隙間の空いた窓を一つ見つける。
側のツタを掴んで登り、窓から体をねじり込んで中の様子をうかがう。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
449 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(5/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:30:25.18 ID:xsJ58xTF
 
ここは体育館すぐ隣のプール室だった。
何よりも目線を吸引したのは、プール中央に鎮座する一本の巨樹。
数人いても抱き切れない太い幹や、天井を衝くほどの高さは、
社で祭られる神木を連想させる。
だがこの大樹から感じる気配は、決して神々しいものではなかった。

その材木は、なんと肉質にうねっていた。
醜悪な姿をした枝は天井に届くと、無秩序にまわりへと延伸する。
おかしいのは樹だけではない。
プールを満たしているのも青い水ではなく、ドロドロした白い粘液だった。
淫臭の匂いがたちこめるそこに、十数人ほどの少女達が浸かっていた。

ある者は水面下から伸びる触手の愛撫を受け、ある者はほかの少女と白液を塗り合いながらキスし、
またある者は何人もの男子に輪姦されていた。
彼女達の表情に共通するのは、淫らな幸せ。
それぞれの体から垂れ落ちた精液や愛液はプールに滴ると、
そのまま粘液として同化される。
水面を浮かぶ大きなハスの花や、その表面を彩る雫の輝かは、
どこか堕落した桃源郷のように人の心を虜にする。

灯はゾクッとした。
妖眼蟲はここで何をしようとしているのか、直感的に分かった。
巨大樹は吸い上げた淫気を幹の中で濃縮した後、それを校舎側へと供給している。
成長した寄生植物は催淫香を放ち、胞子を撒き散らしながら人間に寄生する。
そうして虜にした人間から、更なる淫気を集めるだろう。
ここは妖眼蟲の培養槽替わりにされているのだ。
さしずめ、ここにいる人達は妖眼蟲の繁殖を助ける奴隷のような存在だろう。

(妖眼蟲の……奴隷……)
その言葉を意識した途端、灯は頬を赤らめた。
少し考えただけで、甘美な感情が体を充満していく。
プールから漂う淫香は外よりも数倍濃密で、体を火照らせるのに十分だった。
この白液の中に肌を沈めたらどれほど気持ち良いか、想像しただけで頭がぼーっとする。

淫行を繰り広げる少女達は、誰もが幸せそうな表情を浮かべる。
彼女達が今どんな気持ちでいるか、灯にはたやすく想像できた。
女であれば誰であろうと、一度その快楽を味わえば虜となってしまう。
妖眼蟲と出会う前の自分ならいざ知らず、今となっては否定する気も無くなった。

心に綻びが生まれてしまう。
それまで灯が隠していた気配が、わずかに緩んだ。
その瞬間、壁に無数の妖眼が見開き、その全ての視線を灯に集中する。
灯が掴んでいた窓枠はぐにゃり沈むと、バランスを失って室内へ倒れ込んだ。
舌打ちしながら、灯はくるりと回転して着地する。

「壁に耳あり障子に目ありってか。妖魔のくせに、 
 セキュリティーががっちりしてるんだから」

近くの天井や壁に目玉が次々と寄せ集める中、灯は不敵な表情を浮かべる。
赤い勾玉を握り締めると、正面に炎輪が現れる。
そこを通過した灯は、真っ赤なコスチュームを身にまとった。
――どうやらこの場所は、鈴華や清見達が苦労して用意したらしい。
だったら二人がいない間、全部ぶっ壊して台無しにしてやる。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
450 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(6/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:33:04.05 ID:xsJ58xTF
 
「さあ、かかってきなさい!」
灯は炎を掴むと、両手にそれぞれ赤い霊気の鉤爪が覆う。
そして彼女が走り出したと同時、妖眼蟲の群れがトビウオのように壁から飛び出す。

「はぁあああっ!」
灯はおたけびを上げると、スピードを一切緩めず突き進んだ。
烈火の鉤爪に少しでもかすると、妖眼蟲は一瞬にして燃やし尽くされ浄化される。
波のように寄せて来る蟲に対し、赤炎の少女は少しも怯まなかった。

「蹴散らす!」
灯の炎をまとった蹴りは、鋭い刃のように敵陣を突破していく。
その凄まじい闘志に押されるように、妖眼蟲の群れが徐々に後退する。

「「シュルルル……」」
ふと、生き残った妖眼蟲は一斉に唸り声をあげた。
彼らは一箇所に集まると、互いの体を貼り合わせて、一匹の巨大生物に融合する。
だがその融合が終わるのを待たずに、灯は巨体の端を持ち上げた。
そしてプールのほうへ向け、渾身の力で背負い投げを放った。

「シュルル!?」
予想外の事態に対処もできず、鈍い声をあげながら投げ飛ばされる蟲の集合体。
灯は間を空けずに、その上方へ飛びかかる。
踏み蹴りの足先が妖魔の肉塊に重々しくめり込む。
次の瞬間、フリッパーに弾かれたピンボールのごとく、巨大肉塊が落下する。

水面と接するよりも速く、内部まで叩き込まれた炎気が邪肉全体を貫通する。
バラバラに分解した蟲の残滓が直下の水面へ降りかかり、
そこから伸び出る触手の動きを牽制した。
一方踏み台を蹴落とした灯はプールの上空を一気に飛び越え、
弾丸の勢いで巨大樹に向かって突進する。

一撃でしとめてやる。
そう思いながら、灯は寄生樹中央にある大きな目玉を見据え
拳をギラギラに燃やした。

突如、彼女の足元から水柱が噴き上がった。
灯は即座に体勢を変え、水面に浮かぶハスの緑葉に飛び移る。
水柱は途中から無数の水玉に変化し周囲に降り注ぐ。
その中から、ひとりの人物が現れる。

無口な少女だった。
彼女は水上の何も無いところで立っていた。
透き通った柔肌は水に濡れ、青髪は氷海から切り出したブルーアイスのように美しい。
だが灯の明るい可愛さとは対照的に、その少女の美に邪悪さが含まれていた。
ダークブルーと黒の触手スーツはしなやかな体にぴったりと密着し、
体の女性的なラインを際立たせる。

大胆に露出した背中やヒップに食い込むレオタードのデザインは、
見る者の淫欲を煽り立てる。
胸部にフィットする肉布も、ぬめるように下乳のラインまでくっきり浮かばせ、
ほどよく膨らんだ乳房の形を描き出す。
少女がもともと持つ清らかさからか、
性欲を惹き立てる服装にも関わらずそこに下品さは一切無かった。
触手スーツの表面には、両脚から這いのぼるように次々と妖眼が見開き、青い眼光を輝かせる。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
451 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(7/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:35:21.80 ID:xsJ58xTF
 
灯が以前見たときと比べ、彼女の寄生された姿は一段と似合っていた。
宿主が持つクールな雰囲気になまめかしさが加わり、
その冷たい瞳に一瞥されただけで、魂さえも捧げて彼女の足元に跪きたくなる。
思わず屈従したくなる色香が彼女の体から放たれる。

「清見……!」
灯はすりつぶすようにその名を呼んだ。
青装束の少女は無表情のまま灯を見つめる。

「指定した時間よりだいぶ速いようだが」
「待たせると悪いと思って」
「場所も違う」
「少し寄り道しただけだ。これから行こうってところよ」
「見学は面白かったかい」
「ええ。あんたの後ろにあるその妖怪ツリーがなんなのか、ぜひ教えてほしいところだ」

灯は激情を抑えながら、淡々と受け答えた。
平常心なくして勝てるほど甘い敵ではない。
だが彼女の外見が美しくなればなるほど、怒りの気持ちが込み上がる。
なぜならば、今の彼女は妖眼蟲の寄生スーツを着ているのだ。
敵の服装を完璧に着こなす姿を見ると、なんとも言えない悔しさが胸を締め付ける。

清見の青い瞳からは、感情が一切読み取れない。
だが分かることも一つある。
清見から感じる妖気は、以前対峙した時よりも確実に強くなった。
それが何を意味しているのか、灯は薄々感付いていた。
鈴華や翠と同様、彼女もまた人間から淫気を吸収し、蟲として成長しているのだ。

「やはりここが気になったか。ここで待てば必ず灯と会えるって言ったが。
 鈴華ったら、信じてくれなくて」

なまあたたかい空気が両者の間を流れる。
バトルスーツの間に湿気や冷や汗がべとつき、なんとも心地が悪かった。
待ち伏せされていたのか。
灯はなんとか相手の表情から読み解こうとした。
が、清見は相変わらず起伏の乏しい口調で説明を続ける。

「この樹も、我々の寄生計画の一部だ。地上全て支配するため、
 いずれ強力な退魔機関と戦うことになる。一般人の寄生は簡単だとしても、
 格上の退魔士が現れると、妖眼蟲の戦闘力では対処できない場面も出てくる」
「そのために、オレ達を取り込もうってわけか」

「ええ。しかし、優秀な退魔士はいつでも確保できるとは限らない。
 この寄生樹の実験が成功すれば、我々はより速く、より多くの戦力を手に入れることができる」
「戦力、だと……?」

「人間には、もともと霊力の素質を持つ者が多く存在する。
 だがほとんどの人間は能力を開発することなく、そのまま一生を終える」
「素質だけあっても、引き出せた者はごくわずかだからな。
 オレ達だって先生と出会って修行してなかったら、今頃普通の高校生だった」

「そこでこの寄生樹の出番です。人間から採取した淫気を濃縮し与える。
 厳しい修行を一切行わなくても、上級妖魔に匹敵する者を生み出せるの」
「なに……っ?」
灯はハッとなって仰ぎ、枝の間に結んだいくつかの果実を見つめた。
一個一個の果実の中に、膝を抱きかかえる人間の輪郭がぼやけて見える。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
452 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(8/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:37:35.50 ID:xsJ58xTF
 
「まさか……あの中には?」
「そう、彼女達は選ばれた幸運な人間。そこで彼女達が生まれ変わるまで、
 ある人の寄生の記憶を見せられる。とても甘い夢としてね」

清見は寄生樹の根元に歩み寄ると、その表面に手を上から下へと滑らせる。
木質は柔らかい肉片のように開き、女性の陰部を連想させるような裂け目が現れる
むせ返るほど甘い蜜の香りが解き放たれる。
その中に囚われた人物を見つけると、灯は瞠目した。
まさしく彼女が探し求めた五行戦隊の仲間、翠であった。

少女の手足は、サーモンピンク色の樹肉に深く埋め込まれる。
ミミズのような触手が少女の体を束縛する。
口にはボールギャグを噛まされ、頭部にはヘッドホン型の触手が覆う。
顔の上半部は触肉の眼帯に遮られたため、その表情を知ることができない。
しかし、身につけている暗緑色の寄生服は確かに翠のものだった。

以前と少し違うのは、今の彼女の股間に貞操帯が装着されていた。
彼女がガクッと震えるたび、柔肌と貞操帯の隙間から愛液がトロリと溢れ出る。
五感を封じられた彼女は灯に気付くこともなく、ただ悶え続けることしか許されない。

「しばらくの間、彼女に寄生樹のコアを務めてもらってるの」
「寄生樹の……コアだと?」

「この樹はまだ生まれたばかりだから、いろいろ学習しないといけないの。
 そこで彼女がもたらす情報を分析し常時発情させることで、
 人間をコントロールする方法を知る。記憶を読み取り、退魔士の戦闘術を知る。
 そして翠が寄生された時の快感を何度も再生し、その映像をほかの娘達にも見せることで、
 集団的に奴隷へと洗脳していく」

清見はそこまで言うと、サッと後ろへかわした。
灼熱の大火珠が彼女の目の前をかすめ、水面にぶつかって火花を散らす。
灯の怒声が空気を震わせる。
「ひどい……酷すぎる! そんなことのために、翠をそんな酷い目にあわせるのか!」
再度手中に霊力を集め、灯は追撃の火炎弾を放つ。
だが清見はスケート選手のように水面を優雅に滑り、迫り来る攻撃を次々とかわす。

「勘違いしないで。今の彼女は、女として最高の幸せを味わっている。
 絶頂寸前のところで留まり、永遠の快楽に溺れる」
「そんな身勝手なことを!」

灯のコスチュームがパチパチと音を立てて燃え上がった。
五行戦隊の中で、灯の能力には一つの特徴があった。
彼女が怒りを覚えれば覚えるほど、その力は何倍にも増幅される。
その熱気を遠くから感じた清見は、小さくほくそ笑んだ。

「いいわよ、灯。その調子で、あなたの全力を私に見せて」
「言われなくたって!」
次の瞬間、灯は迅雷の勢いで空を切り裂いた。
赤い爪撃は灼熱の炎をまとい、一直線飛んでいく。
清見はすかさずしゃがんで水面を掴み、大きなテーブルクロスのように翻す。
火の熱気と水の波が相打つ。
熱気は一重の差で水幕を破り、その直後の位置に命中する。
だが蒸気が霧散した後、清見の姿はそこにはいなかった。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
453 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(9/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:39:48.38 ID:xsJ58xTF
 
「素晴らしい一撃。でも、まだまだこんなものじゃないでしょ」
「っ!?」
耳元で唐突に囁かれる声。
灯は振り向くと同時に肘鉄を放った。
一瞬見えた清見の姿は葉のまわりにある水に溶け込むと、
今度は十歩より先の水面を割って現れる。
更に追撃しようとする灯。
だがそこで異変に気付く。

雨が降っていた。
室内にも関わらず、雨粒が降り注いでいた。
最初は気にも留まらなかった小雨が、次第に勢いを増して大粒な水滴となる。
それはプールの水と同じ白い液体で、頬を滴る水滴から芳醇な香りが漂う。
生ぬるい湿気や粘着質な肌触りは不快感以外にも、いやらしい気分にさせてくれる。

天井を仰ぐと、そこには小腸のような肉質がうねりを重ねていた。
しきりに分泌された粘液はプールに降りかかり、
無数の波紋を作っては、水の中に溶け込んでいく。
それを浴びた触手や、四方の乱交に耽る少女達は、まるで喜ぶかのように体をくねらせる。
一方の灯は、深海一万メートルに沈められたような息苦しさに襲われた。
妖気は空気中まで溢れ出るほど強まり、立っているだけでもつらい。

清見はまるで享受するよう両手を広げ、雨滴を受け止める。
暗い青色の触手スーツは一段と活発化し、ぬめぬめと宿主の体を愛撫する。

「なんと気持ちのいい雨かしら」
清見は白い雨を指先ですくい、何気ない仕草で舐め取った。
その官能的な動作を見ただけで、灯の体がピクンと跳ねる。
今すぐ変身を解除して雨を浴びたい。
その欲望と抗うだけで手一杯になる。

「このプールに触れようとしなかったのは利口だ。これもあなたの天性の勘からでしょう。
 でも、そんなの関係無いの。ここにいる時点で、あなたの敗北が決まっている」
「随分な言い草だな」
灯はなんとか踏ん張りながらも、強気な言葉を綴った。
体に重くのしかかるのは、妖力の圧力だけではない。
体内から沸き起こる欲情は今にも肉体への支配力を強める。

「この水妖陣の中にいる限り、魔に属するモノは増幅され、
 逆に霊的な存在は弱められる。特に火属性のあなたにしてみれば、最悪な感じだろう」
「ふん、回りくどい割りには大したこと無いな。
 こんな燃費の悪い術を張って、そっちこそ先に息切れしないか?」

「それには心配無用。この術陣の妖力を維持しているのは、私ではないから」
「なにっ?」
清見に言われて、灯は初めてまわりの少女達を見直した。
白液の中で情事に没頭する少女達。
こちらに対し攻撃する気配が無かったから、灯も放って置いていた。
しかしプールの香りに隠されているが、
彼女達の位置取りには確かに妖気の流れが感じられた。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
454 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(10/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:42:24.96 ID:xsJ58xTF
 
「術式は確かに私のものだが、彼女達の淫気こそがここの結界を構成するエネルギー。
 あなたも感じているでしょ? この淫雨の中にいると、
 身も心もどんどん淫らになっていくの」
「くっ、馬鹿な……!」
「人間の感情は、とても強力なものなの。それを今から、あなたに味わってもらうわ」
清見は一つの水晶珠を取り出すと、それをポトッと水の中に落とした。
邪悪な気配が集まり出す。

突如、水面に不気味な眼球がギョッと見開く。
プールの水が吸い寄せられるように波立つと、
水晶珠が落ちた位置に液体の巨体が立ち上がる。

「出でよ、水魔人!」
「ブシュルルル――!!」
清見の呼び声に呼応すると、一体の水の巨人が起き上がった。
青白い体の表面は絶えず波を打ち、その内側に無数の妖眼が浮遊する。
天井まで届く頭部の中央に、水晶珠が全体を支配する大目玉となって反転する。
その瞬間、凄まじい妖気の嵐が室内を吹き荒れる。

「っ……!」
灯は敵の巨体に、思わず息を呑んだ。
その肩に清見が乗り、巨人とともに灯を見下ろす。
半透明の巨躯に天井からの明かりが透き通り、上から薄い影を落とす。

「どう、この子。男達が私に捧げた淫気から作り出したものなの。
 気をつけたほうがいいわ。普通の蟲と違い、私の能力を受けた直系だから――」
清見が喋っている最中、灯は火の矢のように高々と飛んだ。
先手必勝が灯のスタイル。
だが彼女の火拳が清見に届く直前、
水魔人の腕が横から目にも止まらないスピードで薙ぎ払った。

咄嗟に受け止める灯。
正面から機関車とぶつかったような衝撃がバトルスーツへ分散し、体に響き渡る。
「――だから、力もスピードも一般の蟲よりずっと上なの」
「ぐはっ……!」
灯の体はプールサイドへと弾き飛ばされ、床のタイルを何枚も剥がした。
だが灯はその場で立ち上がることなく、ただちに飛び退いた。
一瞬遅れて、巨大な魔手がその場を握り潰す。

(ぐっ……体が、うまく動かない!)
イメージしたほど、距離が稼げなかった。
次に近付く巨人の手に、灯はとうとう捕まってしまった。
降り注ぐ雨の中、身につけた護霊服は鉛のように重い。
逆に敵は巨体にも関わらず、思ったよりもはるかに俊敏だった。
水魔人は灯を掴んだまま手を胴体に突っ込むと、灯はなんと敵の体内に含まれてしまった。

肌が露出した部分から、毒々しい妖液が浸っていく。
大量の水が鼻や口から入り、灯の自由を封じる。
だが、灯が最も恐怖を覚えるのはこれからだった。
(霊力が……吸収されてる!?)
もがき苦しむ間、灯はその異変に驚愕する。
なんと体から霊力がどんどん溶け出ているのだ。
かわりに心地良い倦怠感が体に染み渡り、抵抗しようとする意思を静める。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
455 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(11/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:44:27.56 ID:xsJ58xTF
 
妖魔にとって、霊力は致命的弱点のはずだ。
それが今、水の妖眼巨人はまるで飴玉のように、自分をしゃぶっているのだ。
溶け出した霊力をなんの隔たりも無く、直接妖液の中へ取り込まれる。

ふと水魔人の胴体の一部が赤く変色し、大きな音を立てて破裂した。
中から突き破って出た灯は、ありったけの霊力を両腕から解き放つ。
「クロスファイア!」
左右から放たれた二本の火柱が、水魔人の体上を交差する。
X字の火炎斬は頭部と胴体を貫き、背中側から飛び出る。
技を放った反動とともに、灯はなんとか力を振り絞ってプール際へ飛び退いた。

「ハァ、ハァ……!」
灯はひざまずいたまま、しばらく動けずにいた。
粘液まみれな体を拭くこともできず、ただ荒々しい呼吸を繰り返す。
その視線の先に、徐々に元の形へ再生する水魔人の姿があった。

一度気化したはずの液体はすぐ元に戻り、体の部位を形成する。
破壊された妖眼はプールから汲み上げた水流とともに補充される。
額の妖眼も二三度まばたきすると、元通りに見開く。
とりわけ最後の事実が灯にとってショックだった。
(そんな……あれが妖眼蟲の弱点じゃなかったのか!?)

こちらを見下ろしたままゆっくり近付く水魔人。
脱出する際、爆砕したはずの右腕もいつの間にか再生が終わり、
損傷した痕跡さえ見つけられない。
胸裏に生まれつつある恐怖を、灯は必死に抑えた。
全力で繰り出したつもりの攻撃が、敵に傷一つ与えられていない。

「無様なものね」
水魔人の肩の上で傍観する清見。
ふと彼女は体液の中へ沈むと、次の瞬間、灯の背後に涌き出た水溜りから現れる。
彼女は疲れきった灯に近付き、優しく囁いた。
「今のあなたが勝つ方法は、一つだけある」
「なに?――うっん!」

耳たぶをついばむ清見の唇。
その感触に、灯は思わず喘ぎ声に近い吐息をあげた。
欲情が一気にたぎり出す。
恍惚とした心地の中、耳側で奏でる言葉は一字一句妖しい音色となって心を絡め取る。

「思い出してごらん。あなたの体には、私が植えつけたモノがあるはずでしょ?」
ドクン、と灯の心が高鳴った。
忘れようとすればするほど、心の奥を巣食う黒い記憶が思い浮かぶ。
清見が優しく撫で下ろす手つきが、その封印を剥がし始める。

「その力を使いなさい」
ドクン、と灯の心が更に高鳴った。
低いトーンの囁き声は、催眠術のように脳内に留まる。
消耗しきった気力の隙を埋めるように、黒い力が沸き起こる。

妖眼の巨人がゆっくり接近すると、おもむろに腕を振り下ろした。
迫り来る攻撃に、灯は本能的に拳で受け止める。
黒い炎をまとった拳が、一瞬にして敵の片腕を焼き飛ばす。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
456 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(12/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:46:31.36 ID:xsJ58xTF
 
「ブシュウゥゥ――!」
妖眼獣は驚愕したように全身から摩擦音を放ち、後ろへずり下がった。
黒炎に焼かれた部分は時間が経ても治らず、それどころかじわじわ上部へと延焼する。
だが敵以上に驚いたのは灯自身だった。
我に返って自分の腕を見ると、バトルコスチュームの手袋がなんと漆黒に変色した。

「見事なまでに綺麗な色になったね」
「くっ……オレに何をした!?」
灯のパンチを避けると、清見は唐突に灯のスカートの下に手を潜らせる。

「下着に滲みこんだこの匂い……ふふ。灯、あなたは自慰したでしょ」
それも何度も、と清見は付け加える。
「な……っ!」
いきなり図星を突かれて、灯は攻撃も忘れ顔を真っ赤にさせた。

「気付いていないの? 今のあなたは、私達と同じ匂いがするの。
男女問わず発情させる、格別淫らな匂いをね」
「ふ、ふざけるな! 誰がお前と同じなんか……」
「あらあら。その正体こそ、ついさっきあなたを助けた力なのに」
「どういう……こと!?」

灯は言葉を失った。
漆黒に変色したバトルスーツの布地が、なんと触肉化し始めたのだ。
陰雨が朽木を腐らせるようにじわじわと侵蝕する。
一度触手化した布地は、更にまわりの部分を感染させる。
肌にべっとり吸い付く感触は、まるで生き物のようだ。

手袋の甲に一筋の割れ目が浮かび上がる。
その割れ目が拡がるにつれ、ゾクリとするような甘い痺れが腕を支配する。
邪悪な衝動が心に流れ込む。

何が起こっているか、考える暇も無かった。
灯はすぐさまもう片方の手でその割れ目を抑え、持てる限りの霊力で浄化した。
裂け目の広がりはなんとか抑えられたが、
そこに発現しつつある邪念に、心がドクンドクン鼓動する。

「抗うだけ無駄よ。一度妖眼に魅入られた者は、二度とその誘惑を振り切れない。
 あなたも私と同じ、妖眼蟲の奴隷になる運命なのよ」
『妖眼蟲の奴隷』というフレーズを聴いた途端、灯は脳天までじんと熱くなった。

ふと、水魔人の体から十本の触手が矢のように射出される。
灯はなんとか避けようとしたが、体を少し逸らしただけで甘い痺れが溢れかえった。
その隙に、全ての触手が彼女の体を縛り取る。

「ぐうぅぅ……!」
灯は首を締め付ける触手に手をそえ、必死にもがいた。
浄化が中断されたため、侵蝕された腕から全身へと妖力が溢れ出る。
「難しく考える必要は無い。霊力と同じイメージで、その力を放出すればいいよ」
「ぐああああ……!」

灯は無我夢中になって、腕に宿る毒々しい力を解放した。
黒い炎は毒ミズチのごとく触手を燃やす。
その火の先にかすめただけで水中の妖眼までが枯れ死んでいく。
毒火は更に水魔人の本体まで辿り着き、
黒く爛れた肉塊は腐臭を放ちながら剥がれ落ちる。
「シュルルル!?」
水巨人はひるんだようにおののきながら引き下がった。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
457 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(13/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:48:37.60 ID:xsJ58xTF
 
「うっ……ぐぅ……!」
灯は攻撃を放った腕を押さえながら、地面に膝をついた。
身のあちこちに邪悪な気が漂い始めているのが分かる。

妖力のエネルギーは確かに強力だった。
自分でも恐怖を覚えるくらいに。
寄生化したスーツの裏側はべっとりと肌に吸い付き、更なる欲望を呼び覚ます。

「あなたの子宮に寄生させた妖眼蟲、思ったよりずっと順調に成長できたわね」
「オレの……子宮だと?」
灯は自分の下腹部を意識した。
その時、清見に犯された記憶の全貌がフラッシュバックする。

「あの時……!」
「でも勘違いしないで。蟲がここまで成長できたのも、全てあなたのおかげよ」
「なん……だと!?」
「宿主が絶頂を迎える度、寄生している妖眼蟲に淫気を与える。
 ここまで健やかに育っていたということは、
 あなたがよっぽどいやらしい気持ちでオナニーしたでしょう」

「そんな……そんな……!」
あまりにもショッキングな事実だった。
灯の打ちのめされた表情を鑑賞しながら、清見は更に蠱惑的な声でささやく。

「我慢しないで。全てを妖眼蟲に委ねなさい」
「――っ!?」
清見の優しい手つきが、灯をゾクリとさせる。
その指先に誘導されるように腕の寄生化が加速し、
とうとう肩口までが触肉によって覆われた。
柔らかい唇が灯の手の甲に口付けをする。
たったそれだけのことで、灯の全身に衝撃が走った。

「あああっ……!」
触肉化した手の甲、割れ目はついに完全に開き、一つの妖眼として開眼してしまった。
それは清見とは違う、赤く燃えるような瞳だった。
初めて妖眼と視界を共有する感覚。
灯は軽いめまいを覚えながらも、その甘美な快感に混乱する。

「最初は敏感かもしれないけど、すぐに慣れるよ。
もっとも、これからもっと増えていくが」
清見の言った通り、触肉化が定着した部位には新たな筋目が浮かび上がった。
絶望的な状況とは裏腹に、灯の心にどんどん淫美な感情が増えていく。
同時に、胸中を巣食う邪念が急速に拡大する。

「さあ灯、私に見せて。あなたが邪悪の力に染まっていく瞬間を」
清見はそう言いながら、奴隷へと生まれ変わる少女の首筋にキスをした。
だが次の瞬間、彼女は顔色を変えて灯から離れる。
青い寄生スーツの脇腹の部分に、炎が燃えていた。
だが清見は自身の傷に顧みることなく、灯を凝視する。
灯は手の甲に開いた妖眼を、自分の手で燃やし潰した。

「一度開眼した妖眼に、支配されない人間はいない。
それを自分の意志で傷つけた……だと?」
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
458 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(14/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:50:50.08 ID:xsJ58xTF
 
清見は未知の生物を見るような目で灯を見つめた。
今の彼女にとって、それは自分の肉体を傷つけるのと同じくらい精神的苦痛があるはず。
だがその顔立ちは、最後まで凛然としていた。

「なぜだ……なぜそこまで抗える」
「蟲ケラごときが……人間の心を操れると思うな!」
痛みにも関わらず、灯は清見を睨みつける。
無感情だった清見の目つきに暗澹の色が滲む。

「無意味な。妖眼はあなたを守るために自己修復をする。
 それに、寄生化はすぐにもあなたの全身に伝わる」
「ならば、こうしてやるまでだ」
灯は左手を手刀にして燃やすと、右腕を付け根ごと焼き斬ろうとした。
その直前、清見の放った水触手がそれを絡める。

「クソっ……離せ!」
「あなたの体はすでに百眼様のもの。勝手に傷付けられては困る」
清見はいつも以上に冷たい目線を灯に注いだ。

「失望したわ、灯。潜在能力だけなら、あなたは間違いなく私達の中で最高だった……
 その力を引き出し、最強の妖眼蟲に仕立てるために、
 私がどれほど期待したと思っている」
「そいつは残念だった。だがな、例え死んでも妖魔の手下なんかにならないわ!」
「あなたの正義は所詮その程度なのか。興醒めだわ」

清見は指示を下すと、側に控えていた水魔人は灯を押し包み、彼女を再び取り込んだ。
(ぐううぅ……だめだ!)
今度こそ完全に捕えられた。
左へ右へともがいたが、水中では力がまるで発揮できない。
液体の中、苦しむ少女の周りに目玉が集まる。
あるいは観察するかのように、あるいは嘲笑するかのように、ただじっと見つめ続く。

粘液がすぐにバトルスーツを浸透した。
今までの妖眼蟲とは比べ物にならないほど高い侵食性。
元から触肉化したこともあって、霊力の繊維がいとも簡単に溶解、同化していく。
口から入った溶液は五臓六腑へと染み渡り、体内を魔に染め変える。
だが、その過程には苦痛はまったく無かった。
ただ霊力が徐々に妖力へ変換されていく脱力感に、灯の意識が闇へと堕ちる。

(オレの力じゃ、結局誰も救えないのか……)
焦点も定まらないまま、灯は外を見つめた。
水魔人の半透明の液体を越えて、清見の姿が遠ざかっていく。
二度と取り戻せない遠いところ場所へ。
これまでなんとか保ってきた戦意が崩れて、ただ諦観だけが胸を占める。

(ごめんなさい、陽子先生……あなたから、正義の大切さを教わってもらったのに)
懺悔の念を浮かびながら、灯は静かにまぶたを閉じた。
ゆらゆら浮かぶ水がほどよい微醺をもたらし、なんとも気持ちいい。
何もかも、この液体に溶かされていくようだ。
意志も、力も、心に宿る正義の炎までも。

(最後に一目でもいいから、あの人に会いたかった――)
灯はぼんやりと眠った。
その時、清見は何か思い出したのか、ふと灯に話しかける。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
459 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(15/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:53:01.81 ID:xsJ58xTF
 
「そういえば……万が一のためとびっきりの切り札を用意したが。
 灯がギブアップしたせいで、使い道が無くなったわね。
 残しても面倒だし、処分してくるわ」
(…………)
「三年C組の沖田先輩」
(……ッ!?)
唐突な言葉に、灯の意識が一気に覚醒する。

「サッカー部のエース。爽やかな見た目と優しい態度から、
 女子の間で高い人気を博す。灯もその一人で、陸上部の活動の傍ら彼のことが気になり、
 淡い恋心を抱くようになる。ただ恋愛が人一倍奥手な灯はそれ以上踏み出せるはずもなく、
 片思いの日々が続く」

灯の顔色が幾度となく変わっていく。
自分ですら意識しなかったことを、清見がすらすらとまとめていく。
その動揺ぶりを楽しみながら、清見の言葉は更に続く。

「灯のことなら、私はなんでも知っている。灯は寝るときいつも熊のぬいぐるみを抱いていること。
 いまだに白馬の王子様を夢見ていること」
まるで友達をからかうように、清見の口調はどこか楽しげだった。
だが次のセリフを発する時、彼女の表情は氷河のごとく凍えた。

「灯、友人として忠告するわ。あんなクズは、あなたにはふさわしくない。
 彼のことを諦めないと、あなたはいずれ後悔する」
脳内まで響く黒い声。
その中に込められた憎悪の念に、灯は血の気が引いた。

「それでも嫌と言うなら、私が『始末』してあげる」
言葉に込められた明確な殺意。
それは灯が今まで聞いたこともない清見の声だった。

「実はあなたがここに来るまで、三年C組の男子生徒を全て捕えているの。
 あなたがここで眠る間、私がこれから一人ずつ魂の残滓まで吸い尽くしてやるわ」

なんのためにそんなことを、と灯は力一杯叫んだが、
口から漏れ出るのは気泡だけだった。
だが、清見はまるで予測したように答える。

「だって、私の灯を奪おうとしたもの。そんな人とクラスメートの男達なら、
 地獄の苦痛を味わいながら死んでも当然よね? 
 それを息切れの間際まで極上の快楽を味わえるなら、男としては至高の幸せだわ」
「……ッ!」

「想像してごらん? あなたが好きな男が、これから卑屈な体勢で私の陰部に口付けをし、
 何度も私への愛を誓いながら、私に全ての精気を捧げるの。
 その魂は輪廻することも許されず、私の胎内で快楽の咽び声をあげる。
 何年も何十年も、永遠に」

水の中に閉じ込められた灯は、怒り狂うように清見を睨んだ。
だが彼女がいくら暴れても、水魔人の体内から脱出することができない。
ふと、清見は陰湿な笑みを浮かべた。
この表情を作った時の清見は、本当に可愛かった。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
460 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(16/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:55:03.34 ID:xsJ58xTF
 
「灯、嬉しかったのよ。あなたの処女があんな男に取られる前に奪えたことを。
 あの時、あなたがどれほど悔しい気持ちでいたか、
 想像しただけでゾクゾクが止まらなかったわ」
清見は言い捨てながら、出口のほうへ歩み出た。
「そこで正義の無力さを噛み締めるがいいわ」

その時。
水魔人の表面が激しく波打った。
溶液は半透明の白色からオレンジ、赤へと変色していく。
異変に気付いた水魔人はジュルルルと唸り声をあげ、
体内にある少女に目玉が集まる。

清見が振り返ったとき、水魔人の体はすでに沸騰し始めた。
灯が身にまとったバトルスーツは、それまでより数倍もの速さで侵蝕化する。
ベースだった白地は混沌とした黒に反転し、赤だった部分は暗い紅に染まる。
バトルスーツの表面に縦割りの線が走ると、触手の帯のように枝分かれる。

それと同時に、コスチュームの形状が扇情的なものに変化していく。
胸の部位は乳房の勾配にぴったり張り付き、少女の魅力的な膨らみを浮き彫りにする。
下半身もカットを施され、面積が減った布地は健康的な太ももを露出させる。
四肢には触手がらせん状に絡みつき、
それぞれロンググローブやブーツに変形して覆う。

「シュルルル!」
寄生される少女とは対照的に、妖眼魔人は苦しそうに震えた。
赤く変色した体液は滾りきった血のように、灯の触手スーツに吸収されていく。
引き寄せられる妖眼。
その一つ一つスーツと接触すると、小さくしぼんで、スーツの表面に取り込まれる。

清見は素早く自身の寄生スーツの一部を触手に変化させ、
水魔人の額にある一番大きい妖眼を摘み出す。
目玉から元に戻った水晶珠は、まるで熱湯から拾い上げたように熱かった。
だが清見をさらに驚かしたのは、自分が繰り出した水触手さえも赤い液体に同化され、
灯の寄生服に吸収されたことだった。

「逆寄生……だと?」
清見は驚喜の混じった目線で変化を見届けた。
大量にあった水魔人の体積は、あっという間に吸い尽くされる。
そこの妖眼は逐一灯の寄生スーツに組み込まれ、赤い眼光が輝くようになる。
灯の胸元にあった霊玉は、完全なる妖玉として転生した。
その瞬間、彼女の全身からおびただしい妖気が漂う。

全ての寄生が終息する。
赤と黒に構成された新しい触手スーツ。
肉質の触装は新生の初々しさを帯び、淫らに蠢く。
鈴華や翠、清見に次いで、ついに四人目の五行戦隊が悪に堕ちた。

解放された灯は床に両膝をつく。
その姿は生まれたばかりの赤子のように弱々しかった。
だが清見にははっきりと見えた。
灯の両目には、以前にはなかった情欲という感情がしっかりと刻まれていることを。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
461 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(17/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:57:12.75 ID:xsJ58xTF
 
「おめでとう、灯。これであなたも妖眼蟲のしもべ」
「オレが……妖眼蟲に?」
「ええ。驚いたわ。本来妖眼を製造するのに、
 宿主の霊力でじっくりと作らなければいけないのに。
 まさか、あんな強引な方法で終わらすなんて」

まだ戸惑う灯に、清見は手を貸してその身を起こす。
その瞬間だった。
灯の手は電光石火のごとく清見の小腹に触れた。
それが攻撃だと認識できたのは、強烈な熱気が体を貫いた直後だった。

清見は激しい痛みを耐えながら、即座に足取りを変えて距離を取る。
だが灯の追撃が、すぐそこまで迫ってきた。
妖気に満ちた重厚な掌破が、矢継ぎ早に三度も続けて同じ位置に直撃する。

清見は更に十歩ほど飛び離れた後、膝を曲げた。
触手服の胴体部が赤黒く焼き爛れ、下にある素肌が外気に晒される。
くっきりと刻印された手のひらの形が、その傷の深さを表す。
不意打ちだったため、清見は妖気で防御することがほとんどできなかった。
邪炎の燃焼は更にまわりの触肉へと広がる。

清見は改めて灯を見つめた。
その瞳には、確かに情欲が孕んでいた。
だがそれ以外にも、灯が以前から持っているものも存在していた。
天地の闇を凌駕する勇気の炎が。

「馬鹿な……あなたの身も心も、完全に妖魔のものになったはず」
「ハァ、ハァ……それが、どうした!」
清見は驚いた。
ゆっくりと身を起こす灯。
その肢体は美しくも淫らで、凄まじいほどの妖気を放つ。
だがゆっくりと上げた灯の顔には、不屈の闘志が健在だった。

「要するに……蟲に憑り付かれると、ちょっとエッチになるってだけだろ」
「簡単に言ってくれる。今のあなたに宿っているのは、
 大勢の人間を一瞬にして染めてしまうほどの淫気だぞ」

灯は短時間のうちに、大量の淫気を吸収している。
これほどの量の淫気が一箇所に集めれば、一般人なら廃人になってもおかしくない。
そうならないのは、彼女達五行戦隊が一流の退魔士だからである。
だが灯はその上で妖眼蟲の支配を退け、寄生前の意思を持ち続けている。
そんなこと、できるはずが無い。

「くっ……!」
灯は苦しそうに自分の胸倉を掴んだ。
新生したばかりの寄生スーツは、とりわけ人間の精液を欲する。
それも抵抗すればするほど、大きな欲望となって跳ね返ってくる。

「やはりな。この淫気に感応しない人間などいない。
 今は抵抗できても、あなたの心はすぐ淫らに染まっていく」
「……先生はオレに、正義の本当の意味を教えてくれた」
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
462 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(18/19)』[sage]:2014/06/01(日) 07:59:42.78 ID:xsJ58xTF
 
「笑えるわね。そんな姿になって、まだ正義を主張できるのか」
「馬鹿だな、清見は」
「なにっ?」
「姿形なんか、正義とは関係無いんだよ。
 たとえこの身が外道に堕ちようと、オレの志に一片の変わりは無いんだから!」

灯は一喝すると、寄生スーツの妖眼が一斉に赤い光を放った。
漆黒の気焔が空中に舞い上がり、火の鳥の形をかたどり始める。
それは今まで灯が召喚する聖鳥とは違う、邪炎の妖鳥だった。

「すまない、相棒……オレが力不足のせいで、お前までこんな惨めな姿にさせちまって」
灯は背後の守護霊に謝罪の言葉を申した。
本来は聖なる炎に包まれるはずの鳳凰が、今では黒い炎をまとった両翼を広げ、
天に向かってつらそうな鳴き声をあげる。
体に浮かぶ優美な妖紋は、美しいとともに禍々しかった。

「だけど、今だけは力を貸してくれ。どうしても、倒さなきゃいけない奴がいるんだ!」
灯はそう言って飛び上がり、妖鳥の邪炎を全身で受け止めた。
黒翼がはばたく熱風は空中で逆巻き、水面にさざなみを作る。
突如、灯は邪鳳凰の妖気をまとったまま清見に向かって突進する。
「喰らいやがれ!」

その妖気を向けられただけで、清見は体中の水分が干からびるように感じた。
熱気に煽られた体は汗が滝のように噴き出る。
おぞましいほど溢れるエネルギーの気配に、清見の体は自ずとわななく。

人間には、ピンチになればなるほど強くなるタイプがいる。
灯はそういう人間である。
いざ敵として相対するとその恐ろしさを改めて感じ取る。

「やはり、あなたのことは理解できそうにないわ」
清見はぶっきらぼうに、しかしどこか楽しそうに呟いた。
汗珠が頬から垂れ落ちる中、彼女は体の正面に水晶珠を構える。
灯の全力の一撃を受け止めるには、彼女も全力を出すほかない。
だが妖気を練り上げようとした途端、灼熱の苦痛が体内を蹂躙する。

「くっ……!」
清見のこめかみが引きつる。
さきほど受けたダメージはいまだに体を焼き続け、
少しでも力を使うと痛みが暴発する。
本来なら致命傷にも等しかった直撃。
それをなんとか失神せず持ちこたえたのも、清見の並外れた精神力のおかげだった。
だが戦闘力が著しく削られたことに変わりはない。

「ブラックバーニングバード!」
「ミストウォーム!」
火の鳥が直前まで迫り来る最善なタイミングに、清見は迎撃した。
水晶珠の周囲に無数の水珠が集まり、次の瞬間空間全体を包み込んだ。
妖気と妖気が激しくにぶつかり合う。
相殺しきれないエネルギーは余波となってまわりへ伝搬される。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
463 :五行戦隊 第八話『黒炎の羽ばたき(19/19)』[sage]:2014/06/01(日) 08:01:56.57 ID:xsJ58xTF
 
「素晴らしい……素晴らしいよ、灯。でも、ここまでのようね」
両手で水の幕を受け止める清見は、冷静な口調で語りかける。
「どれほど瞬発力に優れても、私とあなたとでは 根本的に属性の優位差がある。
 たとえこの場をやり過ごしても、この結界の中であなたは消耗して敗北する。
 それが灯、あなたの限界なのよ」

「オレの限界を決めるのは、オレだぁああああ!」
灯が腹の底から叫んだ。
その妖力は更に強まり、拳が見る見るうちに水バリアの中にめり込んでいく。
止め処なく漲るエネルギーに、清見は呆然と見張る。
黒鳳凰の炎が水幕を完全に跳ね返すと、一秒も立たずに全てを焼却した。
その中から突き抜けた灯はなおも勢い衰えず、清見の頬を思いっきり殴った。
妖鳥の熱気がその場で激しい爆発を引き起こす。

攻撃をまともに受けた清見は、猛烈な勢いで後方の壁に叩き付けられる。
彼女が身に着ていた触手スーツは、ついに全てがボロボロとなって剥がれ落ちる。
「みごと……だわ」
最後に賞賛の言葉を切り出すと、清見はその場で倒れた。

相手が意識を失ったことを確認してから、灯はハァ、ハァと息を乱した。
「うぐ……っ!」
限界以上力を使用した反動が全身を襲う。
激しい消耗のせいで、今にも意識を失いそうだ。
触手化したスーツはもぞもぞと蠢き、精気を補充するよう宿主にサインを送る。
灯は歯を食いしばって耐えながら、ゆっくりと寄生樹の根元に近付く。

翠は相変わらず幹の中に囚われている。
その両肩を掴むと、灯は疲労困憊な体を後ろへ向かって目一杯倒した。
少女に巻きついていた蔓触手が次々と引きちぎられ、
失った宿主を取り戻そうとうねうね浮遊する。
灯は更にぎこちない動きで翠の体を外へ引きずった。

あとはこの樹さえ倒せば。
空洞となった根元部に向かって、灯は両手を重ねた。
枯渇寸前の妖気を少しずつかき集める。
ここまで無抵抗だった様子を見ると、寄生樹はどうやら戦闘向けに作られていないようだ。
強力な一撃を叩き込めば、難なく破壊できるだろう。
妖眼蟲に授けられた妖力で妖眼蟲を倒すなど、なんとも皮肉なことだ。

そんなことを思い浮かべながら、灯は寄生樹を見上げた。
同じタイミングに、幹の中央にある妖眼も灯を見下ろす。
意外と綺麗な瞳だった。
赤ん坊を思わせる澄んだ目だ、と灯は思った。

暗紅色の触手スーツの隙間から、クチュネチュといういやらしい水音が漏れる。
不気味なモノに寄生されて虜になる娘!!Part19
464 :五行戦隊[sage]:2014/06/01(日) 08:04:16.25 ID:xsJ58xTF
 
以上です。
途中支援下さった方ありがとうございます。
次回は大エロ回


※このページは、『2ちゃんねる』の書き込みを基に自動生成したものです。オリジナルはリンク先の2ちゃんねるの書き込みです。
※このサイトでオリジナルの書き込みについては対応できません。
※何か問題のある場合はメールをしてください。対応します。