- バーバパパでエロパロ
251 :バーバピカリの実験1/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:29:25.15 ID:TzxoVI9n - ・今更で、しかも長くて大変申し訳ないです。
・濡れ場は17〜22辺り 私は店の洗面所の鏡で自分の姿を点検していた。 白いブラウスにグレーのスーツ、バレッタでまとめた髪、眼鏡。 あまりに地味ではないだろうか。 相手は私が社会人だと知っているし、今日は会社帰りだということも承知している。 その上、私を異性として意識しているかも疑わしい。 だが目的を達成するには、出来る限り第一印象をよくする必要がある。 それから十数分、鏡の前で格闘してみたが、思うような効果は得られなかった。 あきらめて洗面所を出て、自分の席に戻る。 紙コップに入ったカフェラテは冷めかけていた。 タブレットに何度も見た資料を呼び出す。 現在私が待ち合わせしている相手の調査資料だ。 彼は若くして博士号を持ち、いくつもの特許を持ついわゆる天才だった。 彼がティーンエイジャーのころ、才能を発揮し始めたときは世界中が注目したものだ。 二十歳過ぎたら云々という意地悪な予測に反して彼は精力的に活動を続け、 今は誰もその才能を疑わない。 だが彼が注目を集めたのはその才能以上に―― 「待ちました?」 「え? いいえ 」 私の待ち合わせ相手は、小さなファーストフード店内すべての人間から注目を集めている。 全身は鮮やかで人工的なスカイブルー。 体格は私よりやや大柄な不定形。 彼の名前はバーバピカリ。 世界唯一の不思議な一家の一員だ。 「一応、はじめまして。ピカリです」 「は、はい、はじめまして、よろしく」 妙な挨拶をしているのは、私たちがずっとネット上でやり取りする仲で、 直接会うのは初めてだったからだ。 彼が私のブログに興味を示し、メールを送ってきたのがきっかけだった。 以来、掲示板やチャットで頻繁にやり取りする仲になり、こうして直接会うまでになった、のだが。 「そうだ、更新読みましたよ。面白い着眼点ですね」 「読んでくださったんですか? 正直、あれはまだ検証したいところがあって……」 笑顔で応じながらも、私の中には疑問があった。 なぜ彼は私と会おうと思ったんだろう? 私は彼の友人の一人に過ぎない。 有名人である彼にはたくさんの友人がいるし、その中には高名な研究者も含まれている。 にも関わらず、製薬会社の研究員にすぎない私に『意見を聞きたい』というのだ。 どういうことなんだろう。
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252 :バーバピカリの実験2/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:35:51.18 ID:TzxoVI9n - 「じゃあ本題に入りますね」
私の心を読んだかのように彼は話を切り出した。 「今、新しいプロジェクトを考えているんです。 でも一人では難しい面があって、パートナーを探しています。 それであなたはどうかな、と」 私はまじまじと彼を見つめてしまった。 あまりに都合が良すぎて罠なのかと思ってしまうくらいだ。 「どのような計画なんですか? 企業や大学の協力は……」 「個人的な研究なので公の機関の手を借りたくないんです。 内密にしておきたいから、関わる人間は最小限にしたいし」 「……内密」 人でごった返す店内を見回す私に、彼はいたずらっぽい笑みを向ける。 「そこまで気にすることないですよ。 アイディアを盗まれて困るタイプの研究じゃないし、 そもそもスパイみたいな人がいるわけないでしょう」 「まあ、そうですよね」 私はわずかに胸を痛めながら応じた。 「僕が研究したいと思っているのは、僕自身について、なんですよ」 「あなた自身、ですか」 「そう、つまり」 彼はフライドポテトをつまんだ手を振る。 「僕って、人間じゃないでしょう?」 私はなんと答えたものかと思いながら彼の手を眺めた。 彼の手には小さな口が形作られ、つまんだポテトを咀嚼している。 「……あの、手に」 「すいません、夕飯がまだなので腹減っちゃって」 「ど、どうぞ、食べてください」 「じゃあ遠慮なく」 彼は『手で』ポテトを食べながら話を続ける。 「僕みたいな生物は僕の家族しかいない。 父が若いころ、かなり長い間探し回ったけど、見つかなかったそうです」 それについては私も調査書類で知っている。 最終的に彼の父、バーバパパは自分の生まれ故郷の土の中から同じ種族の女性、バーバママを発見した。 二人は結ばれ、彼を含めた七人の子供をもうけた、と聞いている。 「僕の種族についてはわからないことだらけです。 なにから生まれたのか、 寿命は何歳なのか、 どんな病気にかかるのか、 老化はどのような変化をもたらすのか。 他の生物は経験によって自分がどこから来たか、どのような最後を迎えるか推測することができます。 でも、僕らはわからない」 彼は少し言葉を切り、窓の外に映る夜空を眺める。 「両親が生まれた土地に行き、土壌調査を行ったこともあります。 結論から言えば、なにもわからなかった。 土壌は普通の土地となにも変わりがなかったし、地面から新たな同族が生まれてくることもなかった」
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253 :バーバピカリの実験3/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:40:27.92 ID:TzxoVI9n - 私は彼の境遇に思いを馳せる。
ただ一人、これからどんな道を歩むのかもわからない彼。 夜の空みたいな、真っ暗な未来―― 「また、僕らはこの通り人間ではありませんが、人間の社会で暮らしています。 人権を保証されないと困りますし、一般的な人間と同程度の人生を送りたい。 わがままかも知れませんが、そう思っています」 「わがままなんて……当然の権利です」 彼はなぜか少し皮肉な目で私を見た。 どういう意味だろう? 「僕は七人兄弟ですが、皆それぞれ社会に溶けこんでいるようです。 才能を生かし、友人を持ち、そして恋人もいる」 才能に友人に恋人、か。なんだか私以上に恵まれているようで、ひがみっぽい気分になってしまう。 「でも、努力してもどうにもならないこともあります。 僕たちは人間じゃない。 人間との間に、子供をもうけることはできない」 私は自分を恥じた。 彼らはどうしても越えられないハンデがあり、それ故に努力して現在の地位を手にいれたのだろう。「僕は薄情だとか、人の気持ちがわからないと言われることが多いんです。 とくに、兄弟たちから見た僕はそういう性格らしくて。 でも、僕も人並に家族への情があるし、みんなに幸せな人生を送ってほしいと思っています」 私自身は彼を冷たい人間だと思ったことはなかった。 深い付き合いではないからかも知れないが、 ネット上の彼は細やかな気遣いができる人だったし、こうして目の当たりにしても印象は変わらない。 兄弟について語る彼は、柔らかな表情を浮かべているように感じられた。 「そして、一番家族のためになり、また僕自身のためにもなる研究とはなにか、考えたんです」 そのときには、私はどんな研究であろうと、彼の助けになろうと思っていた。 そのときには。 「だから、僕の実験体になって、卵を産んでくれませんか? あ、これは僕と同種族になる改造を受けてくれないか、という申し出も兼ねるんですが」
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254 :バーバピカリの実験4/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:45:24.22 ID:TzxoVI9n - 私はまじまじと彼を見る。
「もちろん、恒久的にそのままというわけではありませんよ。 実験の終了後は元に戻れます。 人間に試したことがないのは事実ですが、動物実験ではほぼ……」 絶句する私に気付かぬ様子で、彼は言葉を並べていく。 同時に卓上に並ぶのは資料や写真の数々だ。 白いハツカネズミの身体がとろけて餅のようになり、 またふかふかした毛並みを取り戻す流れを私は資料をめくりながら追った。 なにを言ったらいいかわからなかったからだ。 「あの」「なんですか?」 やっとのことで声を絞り出す。 「無理、です」 「? 無理とは?」 思えば彼が心底きょとんとした顔をしていたのがよくなかったのだろう。 どこか自説を披露して得意げな様子にもむかついた。 だから仕方がないと言うつもりはないが、それで私はあっさり沸点を越えてしまった。 「バカじゃないですか」 何年も人前で口にしなかった暴言が自然にこぼれる。 「そんな気持ち悪いことできるわけないでしょ常識ないんですか気持ち悪い」 一息で、しかも二回も気持ち悪いと言ってしまったが、まごうかたなき私の本音だった。 目の裏には先ほどの資料写真が焼きついている。 水槽の中にある、鏡餅みたいなもの。 二匹のとろけたネズミが重なり合い、 長く、自分の尻尾より長く伸びた性器をもう一匹の身体に差し込む姿。 無理。 どう考えても、無理。 「……ご協力、いただけないですか」 彼の声で我にかえった。 「も、申し訳ありません! で、です、けど……」 私より遥かに実績も人脈も財力もある相手に暴言を吐いたことに気づき、血の気が引く。 だが 「常識的、倫理的に考えて協力はできません。どうか、研究の見直しを……」 そうだ。 生理的嫌悪感を別にしても、彼の申し出はあんまりだ。 初対面の人間に被験体になるように言い出して、しかも、 しかも 『卵を生め』と言うことはつまり、セックスをする、ということだ。 初対面なのに。 「倫理に、常識」 彼のかわいた声に身体を硬くしながらも、私は目をそらさぬよう努力した。 もしも、もしも裁判になったらこう言おう。 彼は私にセクハラ紛いの発言をし、私は激昂して暴言を吐いてしまいました。 ですが、私のおかれた立場を考えていただけたらそれは当然のことだと―― 「僕の身体を刻んでデータを取ろうとしてる会社の人に言われても、ねえ」
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255 :バーバピカリの実験5/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:51:03.85 ID:TzxoVI9n - 頭の中で組み上げた言葉が崩れていく。
「違い、ます」 「ああ、今はまだ、僕の家のゴミを漁った程度でしたよね。 逮捕された男、あなたの同僚だったと思いますけど、なんでまだ退職してないんですか? 僕の姉妹に対するストーカーだと自白しているのに、有休と昇給までもらってるみたいですね」 そんなことは知らない。 だが……不思議ではないと思う。 「……正直に言います。 会社からは体組織の提供に合意していただけるよう、説得するようにと言われています。 ですが決して」 「それこそ、色仕掛けでもしてこい、とか?」 思わず黙りこんでしまった私を、彼はなぶるように眺めている。 言わなきゃ、否定しなくては もちろん、そんな命令される訳もなく、 『あなたには無理よねえ、色仕掛けとか』 そう嘲笑う上司の声が、喉を詰まらせる。 「まあこの申し出、半分くらいは本気なんですよ。 実験体に名乗りでてくれる人ってなかなか見つからなくて。 あなたみたいな立場なら、互いに得るものもありますし、いいんじゃないかと。 この実験で得たデータはあなたにも提供しますし、Win−Winの関係じゃないですか?」 気が変わったら連絡してくださいという彼の顔を私は見ていなかった。 テーブルと、冷めたカフェラテを見つめていただけだ。 彼がいなくなった後、私はカフェラテを全部飲み、席を立った。 店を出る前、トイレに入る。 用を足して、鏡を見る。 鏡の中には、似合わない化粧の顔。 慌てて整えた眉、今日買ったグロスをつけた唇、コンシーラーで隠れていない隈。 思わず笑ってしまう。何が色仕掛けだ。 こんなみすぼらしい女にひっかかるわけがないではないか。 『好意的』に思ってもらえるかも怪しい。 それでも、ちょっとだけ、夢を見ていた。 彼と個人的に親しくなり、友達になる夢。 都合のいい、夢を。 洗面所のドアを開けのぞきこんだ客が、気まずげな顔でドアを閉めるまで、私は鏡の前で涙を流し続けていた。
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256 :バーバピカリの実験6/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 00:56:44.97 ID:TzxoVI9n - 明けない夜はないというが、明けた朝が晴れているとは限らない。
空は私の気分をそのまま映したような曇り空だった。 布団に潜り込みたい気持ちを抑えて身支度を整える。 満員電車に揺られて会社に着いたときには、頭痛は最高潮に達していた。 挨拶を交わし席につく。隣に座る同僚は含みのある視線を向けていたが、気づかないふりをした。 だが上司の呼び出しは、無視するわけにはいかない。 「デートはどうだった?」 というのが上司の第一声だ。 言い淀む私を見て状況を察したようで、形の良い眉が不機嫌そうに歪む。 「うまく行かなかったみたいね」私の説明を上司は会議資料を眺めながら聞いていた。 「……彼は私たちのプロジェクトを察しているようです。 今のような形ではなく、正式に協力を依頼した方が」 「それで? 黙って引き下がってきたの?」 上司は資料から顔を上げ、くっきりアイラインを縁取られた目で私を見つめる。 「そこをうまく言うのがあなたの仕事でしょう? なんのためにチームにいると思ってるの?」 入社時の研修に『クライアントを色仕掛けで言いくるめる方法』が入っていればよかったのに、 と私は少し皮肉っぽく考えた。 一方で、上司が言うことに納得している自分もいる。 以前居たプロジェクトが解散し、途方に暮れていた私を拾ってくれたのが現在の上司だ。 入社当時から何かと目をかけてくれていて、はっきり言えば憧れの人だった。 一緒に働けると知ったときは本当に嬉しかったものだ。 拾われた理由が『バーバピカリの知人だから』と知るまで、私は幸せだった。 それからしばらく、いつもの言葉を聞き流す。 『チームのため、自分のできることをやる』 『あなたならできるはず』 『あなたにはその能力がある』 言葉だけなら思いやりにあふれ美しいのに、なぜこんなに心が重くなるのだろう。 十数分後、会議の時間が迫り上司が話を打ち切ると、私はため息を隠すのに苦労した。 「とにかく、もう一度彼と接触してみて。お詫びとかいくらでも口実はあるでしょう。 領収書を切ってくれれば通すから」 上司の目の下にも深い隈があったが、私よりは隠すのが上手かった。
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257 :バーバピカリの実験7/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:01:08.69 ID:TzxoVI9n - その日の仕事も深夜まで及んだ。全員が先の見えない仕事にいらいらしているのが感じられる。
と言っても「プロジェクト・バーバ」は十年以上停滞してきたらしい。 始めのバーバ(今で言うバーバパパ)が出現した時から、数多の研究機関が進めてきたプロジェクト。 当のバーバファミリーの不快感を無視して続けられてきた研究。 バーバを、人工的に再現し発生させるという、マッドサイエンティストの夢。 私の所属する職場も、そういう夢を捨てきれない会社の一つだったらしい。 といって大々的に広められるわけもなく、業務内容にも書かれていない。 おおやけにも出来ず進展も見込めない、 そんな部署に配属されることを、多くの社員は『左遷』と受けとっているらしかった。 重い頭を振り、客の少ない電車内を見回す。 席に着いたらとたんに睡魔に襲われ、記憶が途切れている。 車内アナウンスによれば、自宅の最寄駅を通り過ぎているらしい。 落ち込みそうになる気持ちを立て直すため、窓の外に意識を移す。 外は暗く、通り過ぎていく街灯の光を追っているとまた眠ってしまいそうだった。 街灯、電線、住宅、街灯、電線、住宅、街灯、電線、 白くてでこぼこした泡のかたまりみたいなもの。 なにあれ 私は記憶を掘りかえして合致するものを見つける。 あれは確か、バーバファミリーの家、だ。 バーバパパが自分でデザインし、自分で工事した『バーバにとってもっとも快適な家』 例のピカリ氏もあの『実家』で暮らしているらしい。 資料で知ってはいたが、実物を見るのは初めてだった。 その次の駅で下り、バーバの家に向かって歩き始めた私は、あまり正常ではなかったのだろう。 半分寝ぼけていたし、疲れてまともな判断力を失っていた。 そうでなければ、知らない町の夜道を三十分以上歩き続けたりはしなかったと思う。 やがて暗い家々の間に、白い泡でできた小山が顔をのぞかせた。 材質はコンクリートだと聞いているが、ふわふわしたメレンゲ菓子のような外観の家だ。 遅い時間帯だったが家人はまだ起きているらしく、点々と明かりがついている。 家族の大半はピカリ氏と同年代の若者であるので、そう早寝はしないのだろう。 白い壁に柔らかな色で光る窓は、バースデーケーキの上に揺れるロウソクを連想させた。 窓明かりが、歪んでにじむ。
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258 :バーバピカリの実験8/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:07:13.86 ID:TzxoVI9n - 「何やってるんですか」
背後から聞こえた声に私は飛び上がり、目をぬぐってから振り向いた。 はたしてそこには空色の身体を持つ彼、バーバピカリがいる。 「ストーカーでもしに来ました?」 彼は軽くため息をついて続ける。 「冗談ですよ。会社に言われて来たんでしょう?」 「ち、違います」 なにも違わなかったはずだ。 だが、動転した私の口から出たのは、こんな言葉だった。 「実験体に、なりにきました」 「は?」 「私で、実験してください。そ、そのあなたと同じ種族になって卵を産む実験です」 暗くて彼の表情はよく見えなかったが、 身体が一瞬で大きくふくらみ、そのまま凍りついたことはわかった。 そのまま、二人でにらみあう。 やがて彼の身体は空気がぬけた風船のように元の大きさに戻った。 同時にふっ、とため息が吐き出される。 「ついてきてください。路上で話すことでもないでしょう」 空色の背中を見ながら、今ならまだ引き返せると考えてみた。 やっぱりやめると弁明してもいいし、なにも言わず逃げてしまってもいい。彼は追ってこないだろう。 私はそうしなかった。 なぜか、このまま彼に実験されるのは私の中で決定事項になっていて、 パニックや嫌悪は浮かんでこなかった。 まあそれも、疲れていたからかもしれない。 目的地はそう遠くなかった。 郊外にそびえ立つ場違いな建物、というか、お城だ。 白く塗られた塔、とがった屋根、「シャトー」の「ト」の字だけ落ちた看板。まぎれもなく 「ラブ、ホテル?」 「元、ホテルです。家から近くて大きさが手頃だったので買いました。 外見は古いですが、セキュリティはしっかりしてますし中は改装してますよ」 それにしても、ほかに選択肢があるだろうにと呆れる私の前で彼は指紋認証と網膜認証で鍵を開ける。
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259 :バーバピカリの実験9/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:11:19.11 ID:TzxoVI9n - 外見からどうしても廃ホテルを連想してしまっていたが、
中はシンプルなオフィスビル風の内装になっていた。 掃除機ロボットが床を横切っていくほかは動くものはない。 私は元フロントとおぼしき小窓に目をやったが、監視カメラがあるだけのようだった。 「誰もいませんよ。一人で考えごとをするときの建物なので」 お金持ちは考えごと用の建物を持ってるのかあ、とちょっとやっかみたくなる。 「下の階は倉庫とサーバ室。上は実験室、と言っていいのかな。まあ何かするのなら上の階です」 言いながら彼はエレベーターのボタンを押す。すぐに扉が開き、軋んだ音を立てた。 どうもエレベーターは『当時』のままらしい。 「上の階も改装しているので、当時の面影はないと思いますよ」 彼は嫌味っぽく付け加える。 「回転ベッドとか、残しておいた方がよかったですか?」 私はなにも答えず、「閉」ボタンを押した。扉がゆっくりと閉まる。 上がった先は、確かに『当時の面影』がないフロアだった。 壁はすべてとりはらわれ、無数の工具と無数のジャンクが散らばっている。 機械いじり好きの子供が夢見る理想の部屋、という感じだ。 私もこういうのは嫌いじゃない。 でも、理知的なイメージがある彼の部屋、としては意外だ。 もっと整理整頓された、無駄なもののない部屋に住んでいると思っていた。 フロアの中央付近にパイプベッドが据えられていて、横に白い布が張られたついたてが置かれている。 保健室のおもむきだ。 そこだけ当時のものを使い回しているんじゃないかという気がする。趣味なんだろうか。 「まあ、まずは投薬ですね。取ってくるのでそのへんに座っててください」 そう言って彼はエレベーターに戻っていく。 私はどこに座るか……フロアのあちこちにクッションや座椅子が点在していた……少し考えたあと、 あえてベッドに腰掛けた。 行儀の悪い奴と思われるかもしれないが、構うものか。 そもそもあんなことを持ちかけてくる人に遠慮する必要なんてない。 それに、これからすることを恥ずかしがっている、なんて思われるのはむかつく。とてもむかつく。
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260 :バーバピカリの実験10/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:16:39.27 ID:TzxoVI9n - そうはいっても、スプリングがきしむ音や他人のにおいがするシーツを前にすると、
意識しないわけにもいかず、私は部屋を眺めて気を紛らわせることにした。 大中小陸海空そろった無数のラジコンたち、大型液晶TVの周りで編隊を組むゲーム機たち、 壁にすえつけられたパイプオルガンに無数のコードがついた謎の機械、 大型淡水魚を飼えそうな水槽。 やっぱり子供部屋という感じで、彼に対する印象が変わりそうになる。 ここを買い取ったの、研究や仕事のためじゃなくて、秘密基地が欲しかっただけじゃないのかしら。 ここが友達の家で、遊びに来ただけだったらよかったのに。 「お待たせしました」 彼の乾いた声で現実に引き戻された。 彼はベッドサイドテーブルに錠剤が乗った小さな皿と、 注射器、ゴムチューブ、脱脂綿、アルコール、水のペットボトル等を並べていく。 注射器の中の液体はわずかに白く濁っていた。 「じゃあ、横になって」 上着を脱いでベッドに身体をあずけると、また大きくきしんだ。 「腕を出してください」 シャツの袖をまくりあげる。服がしわになるかな、と今更ながら気になった。 彼は私の腕をゴムチューブで縛りアルコールで消毒した後、両手で血管をさぐり始める。 無数の小さくて冷たい手に腕をさぐられるのはくすぐったく、余計に緊張する。 「リラックスして」 無理だ。 「血管を浮き出させるのに集中してください」 もっと無理だ。 考えてみれば彼は医療従事者ではないわけで、人間に注射した経験があるんだろうか、と心配になる。 そう思っているうちに彼は血管を見つけだしたらしく、前触れなく針を突き刺された。 やる前に言ってほしい。 鋭い痛みに一瞬顔をしかめた。 大人げないかもしれないが、注射はどうも苦手だ。 手元を見ていたら貧血を起こしそうで、天井に目を向ける。 そして気づいた。 天井は改装前のままなんだろう。 鏡張りだ。 「終わりましたよ。自分で押さえて」 彼は素っ気なく言いながら傷跡に脱脂綿を当てる。 「起きられますか」 「ええ」 「こっちの錠剤を飲んでから、もう一度横になってください」 彼が差し出した薬をあまり考えずに口に入れた。不自然な甘さが舌に広がる。 次に手渡されたペットボトルのふたをひねって、口に流し込んだ。 横になる前に、やっぱり着替えたいとかすかに思ったが、強い眠気が意識を押し流した。
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261 :バーバピカリの実験11/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:21:22.96 ID:TzxoVI9n - 目が覚める直前、がくん、と落ちる感覚があった。
これは錯覚だ、と寝ぼけた頭で考える。 四肢のけいれんから生まれる錯覚、本当に落ちたわけでは―― 視線を横に向けるとそろえられた自分の靴とベッドの足があった。 本当に床に落ちたらしい。 ベッドから落ちるなんて子供のころ以来だ。 薬のせいだろうか、身体が異常に重く、足が動かない。 大した高さでもないベッドが高い壁のように感じられる。 やっと上半身をひきずりあげると、めくれあがった毛布と、私の服があった。 無意識のうちに服を脱いでしまったのか、と赤面する。 それにしても、と疑問が生じた。 どういう脱ぎ方をしたんだろう? ベッドには私のシャツがぺらっと置かれ、ご丁寧に一番上のボタン以外はすべてはめられている。 その中には私のブラジャーがかすかなふくらみを作っていた。 下半身があった場所には私のタイトスカートが置かれ、 その下からストッキングがだらんと足をのばしている。 寝ぼけていたとはいえ、意味不明だ。 あの薬には幻覚剤とか、酔っぱらうようなものが入っていたんだろうか。 そう考えながら服を畳もうとする。 畳めなかった。 私の指は、シャツの上にびちゃっと広がり、流れて水たまりとなる。 水たまりの縁で、爪がかすかにふるえた。 悲鳴はあげられなかった。 天井の鏡には、私の服の上で肌色の不定形の怪物がぷるぷる揺れているのが映っていた。 「ふぁ」 身体にあいた穴に空気が通る。 「あ、あー」 よし、やっと声が出た。 これで悲鳴が上げられるというものだ。 「きゃー」 棒読み。 そう、さんざん声が出ない悲鳴を上げて泣きわめいているうちに、私は冷静さを取り戻してしまった。 時間が経つにつれ、身体の色が肌色から水色に、それも透明な水色に変わったのも幸いしたと思う。 身体が溶けてしまったという生々しさが消えて、非現実的な夢を見ている気分だ。 相変わらず身体はゲル状で重たいが、だんだん手や顔を作るのには成功するようになってきた。 最初は鏡を見るのも怖かったというかグロかったが、 「不定形の怪物」から「私の顔がついた不定形の怪物」にランクアップしてきている。 余計グロテスクだろうか。 それにしても、今は何時だろう。もう朝といってもいい時間帯のはずだ。 ブラインドから差し込む光がまぶしい。 あれ、私、寝坊した? というか、無断欠勤してる?
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262 :バーバピカリの実験12/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:26:29.04 ID:TzxoVI9n - 私はサイドテーブルに置かれていた自分のかばんを開けようとして、中身を床にぶちまけた。
床に落ちたとたんに携帯が鳴りはじめる。きゅっと無い胃が痛むが、出ないわけにもいかない。 だが、手が届かない。 どうしようどうしよう、と思っていると、携帯が拾い上げられる。 「はい、もしもし……いえ、代理の者です」 勝手に出られた。 「体調不良で、起きあがれないようなので……声もあまり出ないみたいです。二、三日休ませます」 勝手に話が進んでいく。 また少しやりとりがあったあと、携帯を目の前に突き出された。 「なにかしゃべれますか。疑われているようなので」 それはそうだろう。 一人暮らし男っ気なしの私の電話に謎の男が受け答えしていたら、警察沙汰になってもおかしくない。 「あ、あの、事後れれんらくにらってしいません」 噛んだ。やっぱり口がうまく回らない。 「体調不良はほんとみたいね。仮病かと思ったわ」 スピーカーから流れる上司の声に顔がこわばる。 だがそれと反対に身体はゆるゆると溶け、流れ出していくのを感じる。 だめ、ちゃんと言わなきゃ。明日からは出られますとかそういうこと すっと、携帯が視界の上に持ち上げられた。 「本人の調子が悪そうなので切ります」 勝手に切られる。 ちょっとほっとする自分が嫌だった。 しかし、それ以上に問題なのは 「あの、ピカリさん」 携帯を手にする彼に呼びかける。 「身体が、溶けちゃったんですけど」 返事はない。 彼は表情がうかがえない目で私を眺めたあと、ぼそっと口を開く。 「どこか痛いところや、不快感はありますか」 痛くは、ない。こんなに急激な変化があったのに、なにも感じていないというのが逆に不安だった。 「大丈夫、です。でも身体が重くて」 「マウスのときは身体を自由に動かせるまで数時間かかりました。それと同じかもしれません」 「慣れれば動けるようになるってことでしょうか」 私は手を……現時点では水色のゼリー塊としか言えないものを持ち上げてみる。 集中すると一本、二本、三本と指を形作ることができたが、ふよふよと揺れてあぶなっかしい。 物を持ったら崩れるだろう。
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263 :バーバピカリの実験13/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:31:07.89 ID:TzxoVI9n - 「……なにか食べたい物ありますか。買ってきます」
「いえ、なんでも。あまり食欲ないですし」 「食べた方がいいですよ。今は寝ててください」 そう言って彼は私の上に毛布をかけた。 微妙に会話が噛み合っていない気がするな、と思ううちに彼は遠ざかっていく。 なんだか、今朝の彼は昨日までと雰囲気が違う。 どこか上の空、空気が抜けた風船みたいな雰囲気。 考えてみれば実験は成功し、私は彼と同じ身体になった。 もっと喜んだり、興奮していてもおかしくない。 でも今は元気がないというか……落胆しているような印象だ。 落胆。 失敗、という単語が頭に浮かんだ。 失敗? 今こうして「人間じゃなくなってる」のに? 私はその考えをしまいこみ、身体を丸める。 考えたくない。私が「失敗作」かもしれないなんて。 それに「失敗」ということは、元の身体に戻れるかどうか ……考えないでおこう。 考えてもどうにもならないのだから。
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264 :バーバピカリの実験14/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:36:08.99 ID:TzxoVI9n - 「あの、自分で食べられます」
「食べられないじゃないですか」 「もう少しがんばれば、スプーンくらい持てます」 数十分後 私とピカリ氏はおかゆをすくったスプーンの前で押し問答をしていた。 ゼリー状の手を伸ばす私、スプーンを突きつける彼。 一触即発だ。 「べつに恥ずかしがることじゃないでしょう」 「そうかも、しれないですけど」 いや、やっぱり恥ずかしい。 大人になってから、ほぼ経験がないことなのだ。 大体、彼がすぐ目の前にいるという時点でもう意識する。 「いいから、口あけて」 「だから、自分でやりますって! リハビリも」 兼ねて、と言おうとする私の身体に、彼が突き出したスプーンが刺さる。 そのまま何の抵抗も痛みもなく、スプーンは飲み込まれていった。 二人そろって悲鳴をあげたが、彼の悲鳴の方が大きかった。 「わ、わざとじゃ、わざとじゃないですよ? いや責任逃れでは、なくて、きゅ、救急箱がありますから、まず手当して」 「いえ、大丈夫、痛くはないです」 「感覚が麻痺してるんですよ!」 「本当に、大丈夫なんですけど」 人がパニックになっているのを見ると、冷静さは取り戻せるものだな、と思う。 第一、スプーンを飲みこんだ私の身体がもう一つの口を作り、 もぐもぐとお粥を食べているのを見たら、驚くのがバカバカしくなってきた。 透明な身体の中で食べ物がゲル状になり食道へ運ばれていくのを見ていると、 食欲が急激になくなっていく。 この食べ物、このあとどうなるんだろう。 食道、胃、小腸ときて、『そのあと』に運ばれた様子も外からわかってしまう、ということにならないか。 最悪だ。
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265 :バーバピカリの実験15/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:41:48.22 ID:TzxoVI9n - 「……ずいぶん順応してるんですね」
気づけば彼もまじまじと、私の身体を眺めている。 このままだと私の身体の中に発生する、すごくはずかしいものを見られてしまうのか、 と考えると頭に血が上った。 「み、見ないでください!」 思った以上に大きな声が出てしまった。 彼は眉をひそめ、こめかみを押さえる。 「不躾でしたね。すいません」 そう言いつつ、彼の眉間に寄ったしわは消えない。 考えてみれば、これは彼の実験なのだ。 彼が被験体である私を観察したいと思っても責められはしないだろう。 私が逆の立場だったら、やはり好奇心を押さえられないはずだ。 だとしたら、少しくらいはがまんするべきかもしれない。 そう、覚悟を決める。 「あの、み、見てもいいですよ。 恥ずかしくなってしまったけど、これは実験なわけですし、見られるのは仕方ないですよね?」 突然、視界が暗くなった。 毛布を頭からかぶせられたのだ。 「見たりしませんから」 「でも」 「無理なことはしなくていいです」 毛布の向こうから響く声は、少しずつ遠ざかっていく。 「下の階にいます。なにかあったら、枕元のブザーで呼んでください」 捨てられるような気分になり手を伸ばしたが、 手の形にもならずぶらりとベッドから垂れ下がっただけだった。 エレベーターが動き、彼が部屋から去った気配がした。 それから更に数時間後。 相変わらず身体は重かったが、手はだいぶ動くようになった。 自分の手で残りの食事を終えることも出来たし (食事の結果発生するものについては考えないことにした) ある程度は腕を伸ばすこともできる。 だがそうすると、ベッドの上で出来ることはなにもなくなってしまった。 ぼんやりと天井を眺める。 鏡張りの天井には、青く透き通った私の顔と、毛布に覆われた不定形の身体が映っていた。 眺めて楽しいとは言いがたい光景だ。 彼も、そう思ったからここに来てくれないのだろうか。
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266 :バーバピカリの実験16/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:46:34.40 ID:TzxoVI9n - 今日で何百回目かのため息をつく。
この数時間考えてたどりついた結論はそれだった。 『彼は、この実験を失敗だと思っている』 『私は実際人間ではなくなっているのに、なにが失敗なのか』 『まだ実験開始から十時間も経ってないのに、彼は何に対して失敗だと思っているのか』 そして、 『私の外見が想定以上に気持ち悪く、これとセックスするのは無理だと思っている』 これが、一番ありそうだ。 また何百回と一回目のため息。 そんなの、やる前に無理だって気づきそうなものじゃない、と私はゆがんだ笑みを浮かべる。 そもそもハツカネズミの時点でR18ではなくR18G的な光景だったのだ。 人間でやったらどんな有様になるかわかりそうなものなのに。 それって私のせい? いざ私をこうしてからどんびきするなんて、人としてどうかと思う。 だいたい素体の時点で若くもかわいくもない私だ。 どう考えてもそんな気分にならない、性別が女ってだけの生き物なのに。 どうせなら、AVでも見ながら私をコンニャク代わりに使えばよかったのだ。 自分で考えておいて傷ついた。 手で顔を覆っても、透けた手のひらは光を青く通す。 手から流れる粘液が、涙をごまかしてくれるのだけが救いだ。 顔を覆っていた手を上げて眺めた。 今はなんとか指を五本作り、人間の手に近い形に持っていけている。 だが色は相変わらず水色だし、ぬらぬらした粘液に覆われていた。 とろりとした液が、指先から垂れる。 初めてのはずなのに、どこかで見た光景に似ているような。 ああ、そうか。 自分で『した』あと、愛液にまみれた手を眺めているのに似ている―― なしなし今のなし! なんにも似てなかった! もし私を観察している人がいたら、不定形生物が触手を振り回して暴れ出した、 と思うような勢いで私は手を振り、粘液を払い落とした。 また手を顔の上に置く。 顔がすごく熱くなっている。 ああもう、つまんないこと考えた。 これも彼が卵を産めとか言ったせいだ。
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267 :バーバピカリの実験17/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:51:23.13 ID:TzxoVI9n - とろり、と身体の表面を汁が流れる感覚がある。
胸がしこり、先端が硬くとぎすまされる、なじみのある感覚も。 こんなときに、なんで無駄にさかりがついているんだろう、と自分がいやになる。 そう思って目をあけてぎょっとする。 身体に二つの丘が突き出しているのだ。 そっと毛布をめくると、まぎれもなく乳房だった。 私は「人間の顔を持つ不定形の生き物」から 「人間の顔と乳房を持つ不定形の生き物」にランクアップしたらしい。 ……うれしくない。 とにかく早急にこの胸をひっこめなくては。 両手で乳房を押さえつけてみる。 「んぁっ」 変な声が出てしまった。 いつもの、自分の胸とは違う。 粘液のぬめりがあるだけではなない。 ゴムのように張りつめた弾力は薄い皮の下に性感の塊を詰めているかのようだ。 しかも、一回りくらいは大きくなっている気がして、なんだか腹立たしい。 内心色の悪さを気にしていた乳首は透明な水色で、まるまると膨らんでいた。 今、この乳首に触ったらどうなるんだろう? なにを馬鹿なと思いながも、その欲は私の中にしみこんでいく。 胸を触っただけであんなに気持ちよかったのだから、もっと敏感なところをいじったら? いや、乳首だけではない。 もっと、もっと気持ちよくなれる場所を、私は作れるのではないか―― 考えただけで息が荒くなる。 こんなのはいけない、 同じ建物に、彼がいるのだ。 彼はいつこの部屋にくるかもしれない。 彼が私を、こんな私を見たら。 そう言い聞かせても、身体には熱い血がかよっていく。 天井の鏡には、顔と、胸と、腹と、腰と、ふともも、ほとんどいつも通りの、 いや、いつもよりずっと美しくなまめかしい姿を持つ私が浮かんでいる。 こんなのうそじゃないか、と私は笑おうとした。 これは本当の私じゃない。 もし仮に、この姿を見て彼がその気になったとしても、みじめな気分になるだけだ。 ぐちゃぐちゃに溶けた醜い姿の方がずっと私らしい。 元に戻ろう。戻らなければいけない、のだが。 戻れない。 いくら自分に言い聞かせてみても、身体が不定形に戻る気配はない。 それに少し身をよじるだけで、敏感になった肌の上を粘液が流れていく。
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268 :バーバピカリの実験18/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 01:57:14.94 ID:TzxoVI9n - 「あっ」
声が出てしまった。 びくっとはねた身体の上で乳房がゆれ、それがまた新たな刺激となって理性を痺れさせていく。 ここで一度達してしまえば、元に戻れるんじゃないか、とさえ考えた。 再び鏡に目をやってぎょっとする。 へそのあたりに、小さな突起が何本も生えている。 「んぐ、ん、ああっ」 下腹部に熱となにかが吐き出される感覚があった。 鏡を見て、目を疑う。 突起物は指だった。私の下腹部に手のひらが生えている。 腹の上でひらひらとゆれる手という異様な光景に恐怖する前に、私は新たな刺激に跳ね上がった。 手のひらが私のももを割り、あいだに指を差し入れようとしている。 「だっだめ! そこはだめっ」 自分相手に『だめ』もなにもないとわかっているのだが、 手のひらは私の制止を無視してふとももをもみほぐしている。 それだけで快感が走り、私は声を出してあえいでしまった。 どうしようどうしようと気持ちばかりあせっていても指は止まらない。 指だけでなく腰も胸も快楽をむさぼるように弾み、 だらしなく開いたままの口からよだれと声を垂れ流している。 もとから生えていた腕だけは、かたくなにシーツを握りしめていたが、 それが何の言い訳になるのだろう。 こうしているのはきっと、自分の意志なのだ。 気持ちよくなりたい、きれいになりたい、これらは私の奥底にある願望だ。 この状態は、私の深層心理のままに身体を作り替えてしまう。 だからもし、彼が目の前にいたら いた。 布のついたてのすきまに、空色の身体と、見開いた彼の目が見えた。 「わざとでは、ないです」 言いながら、彼はついたてから遠ざかる。 「盗み見ていたわけではなくて、つ、ついさっき来たばかりですし」 恥ずかしさで死にそうな気分と同時に、身体に力がみなぎる。 獲物を前にした肉食動物が、動きを溜めるように。 「生理現象ですし、それで、どうとは、僕は、席を外しますから」 跳ぶ。 私はベッドから跳び上がり、ついたてをなぎ倒し、その向こうにいる彼を押し倒す。
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269 :バーバピカリの実験19/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:02:43.19 ID:TzxoVI9n - じゅっじゅっと口に入るものをすすり、これはなんだろうとしばらく考えてから、
ようやく彼の口に舌を突き入れていたことに気づいた。 手順をいろいろとばしてしまい、申し訳ない気分になる。 まさかとは思うが、彼がファーストキスを大事に取っておく人だった場合、 とても悪いことをしたことになる。 ちなみに私はファーストキスではない。 飲み会の席でよっぱらった同級生にキスされたことがあるので初めてではない。 ちなみに同級生がキスしたのは純然たる酒の結果であり、 翌日以降も私と彼の間に何一つ始まらなかったことで少々傷ついたが、それはどうでもいいことだ。 少し冷たい感触の彼の舌をいつまでもしゃぶっていたかったが、がまんして口をはなす。 彼は荒い息をつきながら、ぼんやりと私を見上げている。 彼の目にたまっている涙や、口からこぼれたよだれを見ていると、 嗜虐的な気持ちが沸き上がってきた。 私がこうなったのは彼が原因なのだ。 ちょっとくらい、責任をとってくれてもいいのではないだろうか。 ちょっと。 そう、セックスするくらい。 頭の隅ではそんなことはいけない、 女性からだろうとレイプはレイプで犯罪であると警告が鳴り響いているのだが、身体を止められない。 「ピカリさん」 私は彼の口を手でふさぐ。 「ちょっとがまんしててくださいね。できるだけ早くすませます」 そうしておいて、もう二本、手を生やして彼の手首をつかみ、床に押しつける。 「痛かったら言ってください」 言ってから、痛くても言えそうにないなと気づいたが、訂正はしなかった。 まあ、できるだけ気持ちよくしてあげればいいか、と自己中に考える。 さて、彼の身体は普段「上半身が人間、下半身が足がない球状」をしているが、 こうして押し倒している現在、彼はつぶれたゴムボールのような形をしている。 正直上で弾むと、いやらしい気分ではなく気持ちいい。 弾力があるマットやトランポリンの上にいるみたいだ。 なにかこういうエアマットの上でローションを塗ってやるものがあったような気がするな、 と考えながら、私は彼の上でうごめいた。
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270 :バーバピカリの実験20/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:07:41.34 ID:TzxoVI9n - 自分の身体から流れる粘液を入念に塗り広げる。
正直に言うと初めての経験なので、なにからやったらいいのかわからなかった、というのもあった。 男の人の気持ちいいところ、と言えば『アレ』しかないが、 そもそも彼の『アレ』はどこにあるんだろう? 彼は普段服を着ていないが、『アレ』がぶらぶらしていることはないし、どこにしまっているんだろうか? それとも、ない、とか? いやいやまさかそんな。 彼も兄弟には恋人がいるとか言ってたし、いやもしプラトニックな関係だったらどうしよう。 粘液ごしに感じる彼の身体はとても熱くて、私は思わず胸をすりつけた。 自分で拘束していながら、彼が胸を愛撫してくれたらいいのに、と都合のいいことを考える。 そう思っていると乳首の先に彼の身体がじゅっと吸いついた。 鋭い痛みとそれ以上の快感が身体を突き抜ける。 「あの、ピカリさん、これ」 たずねても口をふさがれている彼は答えられない。 涙目で首を横にぶんぶん振ってるだけだ。 「これもピカリさんの、生理現象ですか?」 多少は彼も気持ちよくなってくれているのかもしれない。 互いに乳首の先がつながっているみたいだ、と考えるとよけいに身体が熱くなった。 「気持ちいいです、ピカリさんに、おっぱい吸われるの」 そう言うときゅっとまた乳首がしまり、彼が顔をしかめた。 はずかしいんだろうな、とは思う。 見るからにプライドが高そうな人なのだ。 これが私なんかにいいようにされてがまんならないのだろう。 申し訳ないという気持ちと、かわいそうという気持ちと、 そしてもっともっと彼を恥ずかしい目にあわせたいという気持ちで、彼の首にくちづける。 身体の下で彼がもだえ、びくびくと震えるのが感じられた。 「は、あぅ」 声が出てしまう。彼の胸が私の胸を「もむ」感触のせいだ。 二人の上半身はほぼ溶け合い、一つの生き物のようにうごめいている。 しかし、困ったことがあった。 この体勢では身動き取れない。 そして、いまだに彼の性器がどこにあるのかよくわからない。 「あー、あのピカリさん、そろそろ離してくれないとっ、あっひゃうっ」
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271 :バーバピカリの実験21/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:12:49.20 ID:TzxoVI9n - 思わぬ感覚に身体がはねる。
見れば私のわきの下あたりに彼の身体が吸いつき、べろべろとなめまわしていた。 ずっと彼を押し倒した体勢の私に対して、非常に有効な反撃だ。 くすぐりで私から逃れようと言うのか。 私は彼の下半身にからむ力を強くした。 そのままぬちゃぬちゃと腰を押しつける。 「そ、そういうことすると私、このままピカリさんをレ、レイプしちゃいますからね! ほんとは、フェ、フェラチオとかして、き、気持ちいい感じにしてからしようと思ってたけど、 省略しますから! いいんですか?」 実際、口で言うと照れる。 正直、正直に言うと男性経験はない。あとフェラチオの経験もない。 だが無理矢理押し倒した以上、できるだけ丁寧に、 彼が気持ちよくなりそうなことは全部するべきだと思ったのに。 それに多分、 今挿れたらいく。 挿れたとたん、頭が真っ白になってしまう。 身体の中心から、ぷつぷつと泡立った汁があふれ、全身がびりびりしびれる。 身体すべてが炭酸水に変わってしまったみたいだ。 もう理性も働かず、手当たり次第ならぬ腰当たり次第に彼の下半身をなめまわし、 ついに硬く盛り上がった突起を見つけたときは泣きそうだった。 どこを探してもないし、もし彼が女の子だったらどうしよう、と考え始めたころだったからだ。 指でなぞると、ぷにぷにした果実のような感触のものが熱く脈打っているのがわかる。 「ピカリさん、あの、挿れても、いいですか」 答えられないことは知っていても、つい聞いてしまう。 そして、返事を待てるほどの忍耐は、私に残されていない。 「挿れ、ます、ごめんなさい」 私は自分の腰を押し進める。 「ひぃあっ、あっあっあっあっ」 口から意味をなさない叫びがほとばしる。 気持ちいい。気持ちいい気持ちいい気持ちいい 身体が中心にむけてねじれ、彼のものにまきついていくのが感じられる。 正直、絶対痛いはずだと覚悟していたのに、なにもわからない。 初めてのセックスで挿れたとたんイっちゃうくらいの淫乱、という言葉が浮かび、 とても恥ずかしくて悲しい気持ちになったが、腰の動きが止められなかった。 ずりゅずりゅと彼のものが上下に動かされるたびに多幸感が沸き上がってくる。
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272 :バーバピカリの実験22/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:17:31.77 ID:TzxoVI9n - 「気持ひいぃっ、すきぃっ、ピカリさんだいしゅきぃっ」
どさくさでなにを言ってるんだろう。 だめだめ、いくらあえぎ声でも言っていいことと悪いことがある、と思っているのに 「好き」という言葉がこぼれていく。 好きなんて、言えば言うほど信じてもらえないのに。 言う資格なんてないのに。 でも、好き 大好き 一昨日からひどいことばかり言われ、ひどいことばかりされたのに、好き このまま一生戻れなくても、ピカリさんの子供を産んでもかまわないくらい、好き 好き 好き 大好き 「ピカリさん、好き、です、好き、ですから、だから、あっあああっ」 弾けた感覚があった。 ぎゅっとつぶっていた目をあけると、突き立てられた彼のペニスから白いものが吹き出し、 透明な私の身体全体に染み渡っていくのが見えた。
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273 :バーバピカリの実験23/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:22:34.82 ID:TzxoVI9n - やっとのことで息を整えたころ、私は心配になった。
私がこの身体になったのは彼との交配実験のためだったわけだが 「今のって、受精できたんでしょうか?」 そもそも、今の私の身体に子宮や卵管はあるのだろうか。 透明な身体のどこにもそれらしいものはないし、 実は朝食べたものも身体のどこかに消え去ってしまっている。 今更ながらこの身体、どうなっているんだろう。 いや、それよりも彼を拘束したままだったことに気づき、あわてて手を離す。 「あの、痛くしてごめんなさい」 彼の手首には、私が握りしめたあとが残っていた。 彼はなにも言わず、にらむような目で私を見るばかりだ。 許してもらえるわけなかった、という思いが胸を刺した。 「落ち着かないので、上からどいてもらっていいですか」 「は、はい、いま、すぐに」 彼の乾いた声に、あわてて腰を持ち上げようとする。 「ようとする」というのはすっかり腰から力が抜けて持ち上がらないという意味であり、 刺さったままの彼のものを抜こうとすると、 身体がめくれ上がるような快感がまた襲ってくるという意味だった。 やっとのことで抜くと、白く濁った汁があふれ、透明な私のふとももに幾筋もの模様をつくる。 その場にしりもちをつきそうになると、ぐいっと身体を引き寄せられる。 なぜか後ろから彼に抱きしめられるような体勢になった。 背後から感じる体温や汗のにおいに動悸が早くなる。
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274 :バーバピカリの実験24/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:27:42.55 ID:TzxoVI9n - 「一応言っておくけど」
身体ごしに、彼の声が響く。 「僕は、あなたのことが嫌いです」 わかっていた。だから平気だ。 「単純で卑屈で、怒るべきときにも怒らなくて、へらへらしているあなたが、嫌い」 彼の言葉に傷つくよりも、首筋にかかる吐息にどきどきしてしまうような私が、私も嫌いだった。 「だいたい、なんで怒らないんですか」 彼の腕の力が強くなる。 「人体実験ですよ。常識で考えてありえないじゃないですか。一昨日はあなただってキレてたでしょ」 怒りながら首に甘噛みするのやめてほしい。 話に集中できない。 「あんなブラック企業でへいこらして。辞めちゃえばいいじゃないですか。 どうせなにかあったらとかげの尻尾切りで終わりですよ」 なんで私の会社の話になってるんだろう 「僕と、知り合いだったってだけであんな面倒くさい部署にとばされて、 だから辞めたり部署を抜ける口実になるかな、と思って僕はああ言ったんですよ、 本気で人体実験なんかやるわけないでしょ」 え? やっていますよね、実験? 思わず振り返ると、彼はまさに頭に血がのぼったという顔をしていた。 「間違えたんですよ! 栄養剤と変異剤のアンプルを! 最初はちょっとおどして、一眠りしてから帰ってもらうつもりだったんです!」 あ、あー 「ピカリさん、危険がある薬品の管理はきちんとしないと」 「わかってます、わかってますよ? 今回はたまたま……」 「相手が私じゃなかったら警察沙汰です」 「あなただって警察沙汰ですよ!」 彼は私の後頭部に顔を埋める。私の腹に回した手が細かく震えているのがわかった。 「も、元に戻らなかったらどうしようとか、賠償金はいくらぐらいになるのかとか、 一生あなたを養うことができるかとか、一日中考えてたんですよ、 なのに、なんか無駄にエロいし、襲ってくるし、気持ちいいし、ぼ、僕のことが好きとか言うし」
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275 :バーバピカリの実験25/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:33:19.96 ID:TzxoVI9n - 私は震える彼の手に、自分の手を重ねた。
「ピカリさん」 こういうとき、私は人間の身体じゃなくてよかったと思う。 新たに二本の腕を生やし、彼の頭を抱きしめた。 「ごめんなさい」 なんで謝る、とつぶやく彼の頬ををぬぐう。 「もっと、私がしっかりしていれば、よかったんですよね」 嫌なことは嫌で、間違っていることは間違っていると、 彼にも上司にも会社にも言えば済むことだった。 「でも、大丈夫です」 根拠ないこと言うな、と彼がまた呟く。 「これからは、ちゃんとしますから。もし元に戻れなくても平気ですよ。自分で選んだことだから」 ばか、と嗚咽する彼の唇をふさいだ。 「だからもう、泣かないで。一緒にどうしたらいいか、考えましょう」 それは別に、奇跡ではなかったと思う。 試薬は元々、長時間の効果はないものだったと、動物実験では裏付けられていた。 でも、この直後、人の身体をとりもどしていった私は、 これが自分の選択の結果であると、密かに思っている。 と言っても、戻るまでは一時間ほどかかった。 よけいに生やしていた手が消え、不定型の身体が硬くなり、 肌の色が透明から不透明、不透明から肌色にもどっていく。 その経過を私は元のベッドの上で過ごした。 横には彼がいる。 「マウスのときも、こんな感じだったんですか?」 「おおむね、そうかな。今のところ、元に戻った後障害が出た個体はない」 お互い、なんとなく目をそらしあい、とりとめのない会話を打ち合う。 会話のキャッチボールというなら、ふわふわした風船をよそみしながら打ち合っているような感じだ。 たまに目が合うと、顔が赤くなる。 「念のため、しばらくはうちにいた方がいいでしょう」 「でも一度、家に帰りたいです。服もないし」 その会話を携帯の着信がさえぎった。 彼の携帯だ。 「ごめん、ちょっと出てくる」 彼の身体が視界の外に出る。 もっとも、壁のないフロアなので声はまる聞こえだ。
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276 :バーバピカリの実験26/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:38:39.14 ID:TzxoVI9n - 「なに、ブラボー? 後ででいい?
いまちょっと忙しくて……いや、帰れないよ。本当に忙しいの。二、三日は無理」 ご兄弟かな、と私はぬすみ聞きしながら思う。 「だから! 本当に忙しいんだって! 秘密基地って言うのやめてよ。研究所だから」 やっぱりここ、彼の秘密基地なんじゃないかしら。 「そりゃ、近いけど、抜けてくるわけにはいかないの! 悪いけどパパとママにもそう伝えて」 しばらく言葉がとぎれる。 「卵?」 また長い沈黙。 「卵って、え、誰の? いや、うそでしょ」 なんの話をしてるんだろう。 話の流れからして『帰りにスーパーで卵買ってきて』で済む話ではなさそうだ。 「あ、ああ、うん、わかってる。理解できてるよ。そ、そりゃあパパも怒るしママもショックだよね」 思った以上に深刻なことが彼の一家に起きているらしい。 「で、でも、今は本当に帰れない。僕だけの問題じゃなくて……」 「ピカリさん」 私はそっと声をかけた。 「帰ってください。なにか問題が起きたんでしょう?」 「でも」 「ピカリさんが戻るまで、待ってますから。本当にまずいことがあったら連絡します」 「……勝手に帰ったりしない?」 「勝手に帰ったりしません」 彼を送り出したあと、私は自分の携帯を手にとってみた。 電源は彼に切られたときのままだ。 大きく息をついて、電源を入れる。 覚悟はしていたが、思った以上に着信があり、胃が痛くなった。 とりあえず一件ずつ確認してみないと、と思った矢先に電話は鳴り出した。 「はい」 「○○警察ですが」 「警察!?」 「……あなたが犯罪に巻き込まれたのではないか、という通報がありまして」 それから十数分、私は誘拐されたわけではなく自由意志で姿を消したのだと、 説明に苦心することになった。 警察はあきれたような声色でこう答えた。 「とにかくご両親と会社に連絡なさってください。ずいぶん心配していましたよ」
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277 :バーバピカリの実験27/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:44:02.84 ID:TzxoVI9n - ヒステリックに泣き出す母親の相手をするのも気が重かったが、
もう一つの番号にかけるのはそれ以上だった。 私の声を聞くとスピーカーの向こうから息をのむ気配があり、一拍置いて笑い声がもれる。 「余計なお世話だった?」 「いいえ。ありがとうございます。本当に心配してくださっていることは、わかっていますから」 心の底からの言葉だった。上司は本当に心配して、家族や警察に連絡をとったのだろう。 かつてはそういう人だった。 「でも、今の仕事は納得できません。会社のためにもならないと思います」 「そう」 「あと、明日も、会社休みます」 「わかったわ」 電話を切って、私はベッドにねころんだ。 粘液まみれで気持ち悪いはずのシーツが、とても心地よく感じる。 それ位疲れているのだ。 一眠りしてから、この建物に洗濯機があるかどうか探そう。 そのころには彼も帰ってきているだろう。 おなかが空いたが、彼はごはんを食べて帰ってくるだろうか。 一緒にご飯を食べられたら、ちょっとうれしい。 私が寝る前に考えていたのは、そんなことだった。 彼が帰ってきたのは翌日の昼過ぎだった。 私の方はこの建物に洗濯機も乾燥機もないことが判明し、 服も毛布もシーツも粘液まみれで人間として限界な気分だったが、 彼の方もげっそり頬がこけ隅も深かった。 彼は私の顔を見るなり涙ぐむ。 「あなたに、謝らなくてはいけないことが、あって」 昨日のことならもういいんですよ、と言っても彼は首を振る。 「僕があの研究をしていたのは、子孫を作るためだったけど」 「はい」 「昨日、さ」 彼は私が入れたカフェオレをすすってから続ける。 「僕の姉妹が、恋人との間に卵を作って」 「卵?」 「……子供、ってこと」 「えっ」 私は自分のカフェオレを吹きそうになる。 「子供、できるんですか?」 「知らなかったんだよ! 人間との間に子供ができるなんて!」 「……」 「な、なにを言われても仕方ないってわかってるよ。 あなたが僕の……僕の子供を妊娠してたら責任とるし、いやそうじゃなくても」 彼はまっすぐに私の目をのぞきこむ。 「責任とる。どんなことでもする。言ってくれ」 「どんなことでも、ですか」 ちらりと、頭に欲がよぎった。 「じゃあ私、ピカリさんの……」
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278 :バーバピカリの実験28/28 ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 02:49:32.95 ID:TzxoVI9n - 恋人になりたい、という言葉をのみこむ。
一回セックスしただけで、彼の弱みをにぎって恋人になる。 本当にそれでいいんだろうか? 私が彼に望むことって、本当にそれ? 「あの、だめだったらいいんですけど」 私は彼の目をまっすぐに見つめる。 「私、ピカリさんの友達になりたいです」 「友達?」 驚いた彼の様子に不安になるが、言葉を続ける。 「一緒にご飯を食べたり、一緒に遊んだり、一緒にいろんなことを話したりする友達です。 ずっと、ピカリさんとそんな風になれたらな、と思っていたので……」 そうだ。私はずっと、彼と友達になりたかった。 彼の取り巻きの一人ではなく、個人として見てもらえる友達に。 ずうずうしい願いだとは思う。 だが、どんな手を使っても叶えたい願いだ。 もっとずうずうしいことを言うなら、 私は彼の恋人にふさわしい人間になりたい。 あんな勢いまかせではなく、正面から彼に告白したい。 だからこれは、それまでの猶予がほしいという、非常にあつかましい願いだった。 彼はなぜかとても不機嫌そうな目を私に向けた。 「友達、ね」 「はい」 「だめですか」 彼はばりばりと頭をかいたあと、口を開く。 「一応、もう一度言うけどぼくはあなたのことが嫌いなんですよ。 無神経でずうずうしくて鈍感なところが嫌いです」 そして大きく息をついた。 「まあ、でも、とりあえずは、とりあえず今は友達ってことでもいいですよ」 「本当にいいんですか」 自分で言い出しておきながら不安になる。 「そういう卑屈なところも嫌いです。直してください」 「……気をつけます」 「あと、友達なんだから敬語を使うのは変です」 「それはそうですよね、いや、それは、そうだ、ね」 慣れない。 「あと、僕はとてもしつこくて、絶対にあきらめない性格なので」 「? はい」 「覚悟しててくださいね」 彼はそう言って笑う。 なにかを間違えたような気もするが、彼の笑顔を見ているとどうでもいいような気がして、 私はまた、カフェオレに口をつけた。
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280 : ◆vpePLp7Z/o [sage]:2014/05/21(水) 03:01:54.88 ID:TzxoVI9n - とりあえずこれで全バーバ兄弟を書いたということで、完結です。
(バーバテンテンは無理です……すみません) 長らくスレを占有して申し訳ありませんでした。 感想いただいた方、本当にありがとうございました。 余談ですが、今回のバーバピカリの秘密基地は アニメ「バーバパパ」の「バーバピカリの魔術師」回に出てきたお城がモデルです。 観ると「ピカリ……この子もうだめだ」という気分になること請け合いの回でおススメ。
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