- 【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。14
146 :110[sage]:2014/05/21(水) 20:51:12.95 ID:2cFT2quG - 有り難い言葉をいただいた上に>>114の素敵な話を見て俺の中の何かが目覚めたらしい
連投っぽくなってしまって申し訳ないんだが、投下させてもらいます クラッズとフェルパーの百合、エロまで遠い上にエロくない上に本番どころか前戯もほぼ無し 百合と思って書いたし今も百合だと思っているけど、世間一般の百合とはだいぶ違うんで注意してください
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147 :クラッズ♀×フェルパー♀ 1/12[sage]:2014/05/21(水) 20:53:29.24 ID:2cFT2quG - 小さい頃から、お前は女らしくないと言われ続けてきた。
家の中でお人形遊びをするよりも外でチャンバラや虫取りをする方が好きだったし、甘い恋愛物よりも危険な冒険譚に目を輝かせる子どもだった。 成長してからもその傾向は変わらず、それどころか、見方によっては更に悪化した。パーティの先頭に立ちどんな強敵にも怯まず、 相手が強ければ強いほど興奮し、唇は知らずのうちに獰猛な弧を描く。可愛らしい顔を凶悪な笑顔に歪め、愛嬌のある丸い目を爛々と 輝かせる彼女は、時が経つにつれ一部の生徒から”戦闘狂い”の呼称を押し付けられた。 もっとも、彼女を女らしくないと言わせる理由は戦闘時に依るものではない。むしろ、普段の生活の場面でそう言われる方がよっぽど多かった。 中性的な話し方や、動きやすいからと身に付けている男子用の制服などはまだ序の口だ。紳士的で丁寧な態度、朗らかな笑顔、 聞いているこちらが思わず赤面してしまうような言葉。しかも、性別種族関係無く大半の相手にそう接するのだ。 彼女からしてみれば、それは単純に、えてして浮きがちな自分を周囲の面々と馴染ませるためのある種の処世術であった。 しかし、そんな思惑とは関係無しに、彼女を知る相手はクラッズをこう呼んだ。曰く「イケメン少女」と―― そんなイケメン少女であるクラッズだが、例えば男になりたいとか、はては女の子にしか興味がないといったことは全くなかった。 変わっている自覚はありつつも自分の性別は紛れもなく女性だと認識し、女の子の複雑で面倒くさいところは可愛いと、男の子の単純で 直情的なところは楽しいと考えていたため、その気になればどちらでもいけた。もっとも、本気でないのにそういった付き合いをする気は 一切無かったので、こうしたアプローチをするのはフェルパーが初めてであるが。 フェルパーは入学してから初めてできた友人である。 入学式が終わり、新しいクラスで新しい生活への期待と不安で緊張していた同期の候補生の中でも、彼女は飛び抜けて緊張していた。 表情を強張らせ、瞳孔は膨らみ、耳をペタリと伏せ、落ち着きなく揺らされている尻尾の毛はぶわりと逆立っている。 彼女の種族は人見知りをすることは知っていたし、種族柄フェルパーに自分から話しかけるのは気が引けたのだが、なんとなく 緊張で今にも倒れそうになっている彼女を放っておくことはできなかったのでクラッズの方から声をかけたのだ。 「や、こんにちは。隣座ってもいいかな?」 「っ……?! ………………」 「…えっ? えっ、ちょ、君、大丈夫かいっ!? うわ、わ、まずい…も、モミジ先生ーっ!」 その結果、既に限界間近だった彼女に止めを刺してしまったのだが。 そんな、今考えるとわりと最悪な出会いを果たした二人は、意外にも一緒にいるようになるまでに時間はかからなかった。 初めの一件でフェルパーが極度の人見知りだということはよーく分かったので、クラッズは、まず彼女が怯えない位置を探すことから始めた。 個人が他者との間に必要とする空間、パーソナルスペースを掴み、徐々にでも縮めることで、自分に対する緊張を和らげようと考えたのだ。 最初は15mだったその距離も、毎日笑顔で話しかけるうちに13m、10m、7mと縮まっていき、二人がとあるパーティに所属する頃には 3mになっていた。快挙である。大事なことなのでもう一度。快挙である。
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148 :クラッズ♀×フェルパー♀ 2/12[sage]:2014/05/21(水) 20:56:23.22 ID:2cFT2quG - パーティ内では、クラッズはフェルパーの通訳者状態になっていた。彼女は決して悪い性格ではないし、ナースとしての技術も、それを更に
洗練しようとする意思も努力する力も持っていたが、その人見知り癖はそれらの美点を覆って尚余りあるものだった。 そこで仲間たちはクラッズを頼ったのである。彼女はどんな種族ともそれなりに良好な関係を作れたし、フェルパーも、その頃には クラッズとなら、たどたどしくとも意思疎通をできるまでにはなっていたので、フェルパーのことはクラッズに一任されていた。 とはいえ、クラッズは、いつまでもその役割を果たすつもりはなかった。フェルパーは自分がいないとやっていけないような 依存心が強い性格ではないからだ。そして、その判断を裏付けるように、彼女は自分から他の仲間たちとも関わろうと努めていた。 しかし、そんな時に転科事件が起きた。 今でこそ、バハムーンとディアボロスという、世間一般で言われている種族の悪評をさらっとスルーしている仲間と出会えたが、 脱退した当時はそんな都合の良いことがあるとは思わなかったし、これからどうしたものかと二人揃って途方に暮れていたのだ。 特にフェルパーは、ようやく少し馴染めてきたパーティを抜けたことで大分参っていた。緊張しいな彼女にとって、これからまた 新しいパーティを探し、そこの仲間に慣れる努力をすることは相当な負担なのだろう。 「……ごめんよ、フェルパー」 自然と零れた声は、自分らしくない弱々しく震えた声だった。フェルパーは耳と尾を垂らしたまま、クラッズを見つめる。 「……どうして、クラッズが謝るの」 「こんなことになってしまって…」 「……後悔してる?」 「いや、まったく。…けど…もっとうまく立ち回るか、もう少し辛抱すれば良かった。新しい編入生が来るのはもう少し先だろうし… こんな中途半端な時期に新しいパーティを探さないといけないのは、大変だ」 自己嫌悪で顔が上げていられない。唇を噛み俯いたクラッズを、フェルパーは少しの間じっと眺めていたが、 なにを思ったか不意に彼女の前に膝をつく。まん丸の目に射止められたクラッズは目を瞬いた。 「別々に、探す?」 「いや…私は、そうしたくないな。その方が効率は良いかもしれないけれど、君と離れるのは寂しい」 火花が爆ぜるように飛び出してきた言葉はクラッズ自身を驚かせた。自分がフェルパーにここまで執着しているとは思っていなかった。 けれど、嘘偽りない正直な気持ちだ。そんな気持ちを込めて彼女を見つめ返すと、フェルパーは仄かに口元を緩める。 「…私も。大丈夫だよ。一緒に探そう? 私、ちゃんと、頑張る」 柔らかく微笑む彼女は、いつになくまっすぐで力強い、吸いこまれそうな目をしていた。少しだけその目をじっと見つめ、クラッズも笑う。 多分、きっと、この時に、クラッズは恋に落ちた。 普段とは違う芯の強さにやられたとか、初めて見た笑顔にやられたとか、健気な言葉にやられたとか、考えられる理由は幾つかあるけれども。 (わざわざ理由付けなんて、しなくていい) クラッズは、思う。 (一般的ではない恋だって、構わない) フェルパーに対して感じている、どうしようもないほど強い恋慕の情を抱えながら。 (何故好きになったかなんて些細な問題だ。障害なら頭と力と技を使って捩じ伏せる。…こんなことを本気で思う程度には、私は、あの子のことが――)
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149 :クラッズ♀×フェルパー♀ 3/12[sage]:2014/05/21(水) 20:58:37.93 ID:2cFT2quG - 「つまりね、私はフェルパーが大好きなんだよ、バハムーン」
「ああ。それはもう、よく分かっている」 どこかげんなりした表情を返されて、クラッズは頬を膨らませた。 「君の惚気をいつもいつもいつもいつも聞いているのに、その反応はあんまりじゃないかい?」 「あんたに対してじゃない。フェルパーの鈍感さに対しての溜め息だ」 「……ああ」 やれやれと首を振るバハムーンに苦笑を返す。本来ならば、精霊結晶を納め終えこれから楽しい夕食ということで胸が弾む場面だが、 それを補って余りある精神的な疲れが二人の肩を重くした。ちなみに、フェルパーとディアボロスには座席を確保するよう頼んだので 今この場に二人はいない。想い人の前でこんな話ができるような心臓は持ち合わせていない。 クラッズの「ありとあらゆる手段を駆使してフェルパーを落とそう大作戦」はどれもが不発に終わっていた。フェルパーは、高すぎる壁だった。 参考までにここ数日の作戦の経過を見ていただきたい。もっとも、作戦とはいえ、最近のクラッズはかなりしびれを切らしているので 巧妙というよりは直球ど真ん中一本勝負、もはや普通の告白になっていたりするのだが。 その一、「東方に学ぶ」 はるか東方にあるタカチホ大陸には、「俺のために毎朝味噌汁を作ってくれ!」というプロポーズの言葉があるらしい。 初めて聞いた時はなんだそりゃと思ったものだが、よくよく考えてみると「俺のために」「毎朝」と重要な部分は押さえている。 キザったらしくもないしこれは良いかもしれないと、早速自己流にアレンジした結果が、 「ねえ、フェルパー。お願いがあるんだ」 「どうしたの?」 「私のために毎朝ホットケーキを作ってほしいんだ!」 「ホットケーキは美味しいけど…毎朝じゃ体悪くしちゃうよ? 食事は三食バランス良く。特に、私たちのパーティは成長期なんだから、 好きなものだけじゃなくって嫌いなものも、きちんと栄養を考えて食べなきゃ」 「あ、はい…仰るとおりです」 真剣な顔で、幼子に言い聞かせるように丁寧な、食事指導であった。 その二、「もう直球勝負でいいじゃん」 「フェルパーの鈍感さはよく分かった。だがな、その言葉はあまりにも遠回しすぎたのかも分からんぞ。 こうなったらいっそ、直接、好きだー! って言ったらどうだ? …しかし…あいつそんなに長く喋ることあるんだな…」 クラッズの報告を聞いたバハムーンに言われた言葉である。直情的でまっすぐな彼らしい提案だが、たしかに、東方の言葉はいささか 慎み深すぎたのかもしれない。それに、思い返してみればいきなりプロポーズというのも先走りすぎた感がある。 前回の反省を踏まえたクラッズは、ようし今度こそと意気込む。 「フェルパー。私、君のことがとても好きだよ」 「ありがとう…私も、クラッズ、好きだよ」 優しく目を細められ、 「…うん、ありがとう! これからもよろしくね」 そう言うしかできなかった。 その三、の前に。 「――なんでだよ!? そこはもっと押すところだろう! もっとグイグイいかんといけないところだろう!?」 「っ、君は、あの時の彼女を見ていないからそんなことが言えるんだよ! 私のことを仲の良い友達だと信頼しきっている、あの目を! 私の好意を友情だと信じきっている、あの笑顔を! あんな嬉しそうなあの子にグイグイなんていけるわけないだろう!?」 「…す、すまん」 その三、「もういっそ」 「強硬手段に出るってのはどうよ?」 「無理矢理、ダメ、絶対」 「そうだよなぁ…。だが、あいつの鈍感さをどうにかするには行動で示すしかない気がするぞ」 「だからって、今までこつこつと築き上げてきた信頼をぶち壊すような真似、したくないね。あの子を傷つけるなんて論外だし……待てよ」 「おい一秒前に自分がなに言ったか思い出せ」 「違う違う。スキンシップを図ってみるのはどうかと思って。よく考えたら私、自分から彼女に触ったこと無いし」 「そうなのか?」 「ああ。だって、あれだけ人見知りが強い子に触るなんて、余計な緊張を与え…あ、ダメだこの案」 「…そうだな」
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150 :クラッズ♀×フェルパー♀ 4/12[sage]:2014/05/21(水) 21:02:35.28 ID:2cFT2quG - 他にも色々と試してはみたが、大体こんな具合で全て見事に気付かれないのである。狙った獲物に刃が届くなら、硬かろうと素早かろうと
その対策を取れば良いが、今回はそも刃が届かない空気を斬ろうとしているようなものなのだ。流石のバハムーンも溜め息をつきたかった。 「……女を口説くのって、難しいな」 「…そうだね…」「まったくだよなー。デートに誘っても断られるし」 「ああ、君も苦労しているんだ…ね?」 突然聞こえてきた声に後ろを振り返ると、懐っこい笑みを浮かべるヒューマンの男子生徒がいた。クラッズの表情は柔らかくなり、 バハムーンの口元は若干引きつる。 「ああ、悪い悪い。話が聞こえてつい」 「構わないさ。デートに誘っても断られるなんて、君の相手も手強そうだね」 「んー、時々相手してくれるヤツもいるんだけどなー。昨日の子は、」 「ヒューマンさん!!!」 彼の言葉を大音量が遮った。思わず肩をすくめてそちらを見た三人は、温和な顔立ちを怒りに染めたセレスティアの女子生徒を見つける。 「セレスティアか。どうしたー?」 「どうしたー? じゃないですよ! あれだけ言ったのに、貴方また、女子生徒の部屋に遊びに行きましたね!?」 「……なんだ?」 「痴話喧嘩かな?」 顔を見合わせるバハムーンとクラッズは目にも入らないようで、セレスティアはつかつかと歩み寄りヒューマンの胸倉を掴んだ。 「朝からわたくしの所に訴えに来られたんですよ! 今月に入ってから何度目ですか!? いい加減にしなさいな!」 「ま、待てセレスティア、落ち着け。僕はただ、誘われたから」 「だから! 誘われたからって何も考えずにほいほいついていくのを止めなさいと言っているんです!!」 「お、おいおいちょっと待てお嬢さん。落ち着け。そいつ離してやれ」 胸倉を掴んだままがくがく揺らすセレスティアを、見かねたバハムーンが止めにかかる。 「…どちら様ですか」 「いや、今までコイツと世間話をしてた者だが、」 「まさかっ…ヒューマンさん、貴方、殿方にまで相手をしていただきたいのですか!?」 「へっ?」「は?」 「だぁーもう君はちょっと落ち着きたまえ! セレスティア、私たちは君たちの事情を知らないし、余計なことをするつもりはないけれど、 ここは食堂のど真ん中だ。お願いだから少し落ち着いて…せめて端っこで話をしないかい?」 なんだかとても面倒くさいことになりそうな雰囲気を察してクラッズも間に入る。セレスティアは一瞬眉根をひそめたが、すぐに 自分たちがかなりの注目を浴びていることに気が付いたようで顔を赤らめた。 「…も、申し訳ありません…つい、我を忘れてしまいました…」 「うん、まあ、そういう時もあるよね。えーと…私たちの仲間が席を取っていてくれるから、ご飯取ったら行こうか」
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151 :クラッズ♀×フェルパー♀ 5/12[sage]:2014/05/21(水) 21:06:11.41 ID:2cFT2quG - 聞いた話をまとめると――ディアボロスは顔をひきつらせフェルパーは彼女の影に隠れたが、話はできた――大体ヒューマンが悪かった。
ガンナーとマニアを学んでいる彼は、可愛らしい存在が好きであり、ひいてはそれが女好きに繋がった。今まで男所帯で過ごしてきた彼は 必死にそれを我慢してきたが――モーディアル学園に入り、我慢の必要がなくなったことでその欲求は解放されたとのこと。 元々相性が良い種族は勿論、相性がそれほど良くない種族、果ては相性最悪のバハムーンであろうとも、自分が「可愛い!」と思った相手は 「とりあえず、デートに誘う」 「なんでそうなるんだい!?」 「だってほら、可愛いヤツと一緒にいると和むだろ? それをゆっくり味わいたいだろ? 二人で話せりゃ最高じゃないか!」 「…一瞬納得しかけたけどそれはおかしいよ!」 そんな軟派な彼だが、意外にも申し出に応じる女子生徒はそれなりにいるらしい。 元々他種族から好かれやすいことに加えて、ヒューマンは、子犬を思わせる妙な魅力がある。まあ少し話すだけなら…と了承し、 何となく気分が乗ってしまって彼を部屋に招き入れた女子生徒も、信じられないことに存在した。 ここまで聞くとふざけんなリア充爆発しろ、と呪詛を吐きたいところだが、事態は更に複雑だった。 「…何と申しますか…その……お話をして、寝るだけなんだそうです」 セレスティアが訴えてきた女子生徒から聞くところによると、遅くなったから泊まっていけばとの言葉にヒューマンは笑顔を返し、 そのまま寝てしまうのだそうだ。それはもう、見事なまでに、ぐっすりと。 「……お前さん、本当に男か?」 「当たり前だ。僕が女の子に見える?」 「いや…その…。…………婚前交渉はしない派か?」 「…へぁっ?! なっ、ばかっ、あ、当たり前だろそんなことは! そういうのは将来を約束した相手とするものだ! ていうか食事中だってのにんな話するんじゃねえ!」 「あんた初心なのか女タラシなのかはっきりしろよ!!」 ともかく。ヒューマンのこうした言動に振り回された女性陣は、弄ばれたと感じるそうだ。恥ずかしさとも怒りともつかない感情を抱えた 彼女らは、何故か直接の相手であるヒューマンにではなく、彼ののチームメイトであるセレスティアに訴えに行くらしい。そしてその度、 セレスティアは、朝っぱらからパジャマのままで、愚痴とも惚気とも文句ともつかない話を相手の気が済むまで延々聞かされるのだとか。 「……聞いてもいいか」 「……なんでしょう」 「その…どうしてそんなことに…? 別の方法を取ろうとは、思わなかったのか?」 「…わたくし…彼の可愛いレーダーにはかからなかったものの…何故か懐かれてしまって…」 「それで、なし崩しに?」 「……貴女は、無邪気にじゃれてくる子犬を無碍に出来ますか……?」 「…よく、分かった」 ヒューマン以外の四人から同情と労りが混ざった眼差しを向けられ、セレスティアは荒んだ心が少しだけ癒されるのを感じた。 そんな彼女を、ヒューマンは不思議そうな表情で眺めている。自分の言動がこの混乱を引き起こしている自覚はないようだ。
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152 :クラッズ♀×フェルパー♀ 6/12[sage]:2014/05/21(水) 21:09:38.20 ID:2cFT2quG - 微妙に噛み合っていない二人を見て、残る四人は顔を見合わせた。ちょっと試しに乗ってみようか、と軽い気持ちで乗り込んだ船が
いつの間にかだだっ広い海の真ん中まで流されていた気分だった。 「…ええと…話はよく分かったよ。それで、そのー…君たちって、他の誰かとパーティ組んでるのかい?」 「うんにゃ。なんでかすぐに抜けてっちまうんだよなー」 十中八九お前のせいだ、とその場にいる全員が思ったが、言わなかった。 「ヒューマン、念のため確認させておくれ。君は単純に、可愛い子と一緒に話ができたら嬉しいなーって思っているだけなんだよね?」 「ああ!」 ここで、どこか虚ろだったセレスティアの瞳に光が戻ってくる。その光には期待と戸惑いが半々になって混ざっていた。 「…よし、分かった。お前さんたち、俺たちのパーティに入れ」 「……ふぇ?」「おっ、いいのか!」 バハムーンの言葉に、セレスティアは信じられないと目を瞬かせ、ヒューマンは嬉しそうな笑顔を見せる。 「君たちさえ良かったら。ただ、条件がある。パーティの一員になったからには、他のパーティの子をむやみやたらとデートに誘わないこと。 これまでみたいに君たち二人の問題じゃあなくなるんだから、下手したらパーティ同士の抗争の火種になり兼ねないからね」 「えっ…あー…んー…でも、そうだよな…。分かった。気をつける」 「あと、ディアボロスに手ぇ出したら男の楽しみを一生味わえない体にするからな」 「おまっ、バハムーン!?」 「胆に命じとく」 あれよあれよという間に話が進み、セレスティアは置いていかれたような心地になった。が、このままではなんか色々納得がいかないと どうにか思考を立てなおし、口を開こうとして――ディアボロスの肩から顔を覗かせているフェルパーと目が合う。 「……よろしく、おねがいします……!」 緊張と羞恥で瞳を潤ませ、耳をべたりと伏せ、怯えや不安を必死に押さえながらそんなことを言われ、 「…あ…はい、こちらこそ、よろしくお願い致します」 セレスティアには、深々と頭を下げる以外の選択肢は無くなっていた。
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153 :クラッズ♀×フェルパー♀ 7/12[sage]:2014/05/21(水) 21:12:39.97 ID:2cFT2quG - 早速明日の探索から始めようと取り決め、一行は寮の入口で別れた。
当然のように同じ部屋に戻っていくバハムーンとディアボロスを見送り、ぶんぶんと手を振るヒューマンと丁寧に頭を下げるセレスティアを 見送ったクラッズは、全員の姿が見えなくなったところで大きく息をつく。新しい仲間が増え、これで六人全員が揃ったことは喜ばしいが、 それにしても今日は疲れた。もう今日はとにかく早く部屋に戻って今すぐ寝よう、と踵を返したクラッズは、 「……フェルパー?」 「………………」 袖口を遠慮がちな手に掴まれる。首を傾げる彼女を見て、フェルパーは困ったように尻尾を揺らした。 「どうしたんだい? 何か、やってほしいことがあるのかな?」 「………………」 「教えてほしいな。私にできることなら何でもやる。できないことでも、できる限りやるよ」 あくまで優しく言い聞かせると、フェルパーはともすれば聞き逃してしまうほど小さな声で呟く。 「……今日……」 「今日?」 「……一緒に寝ても、いい?」 「もちろんさ! 私が部屋に行こうか? それとも、来る?」 「…行く…」 「分かったよ。なら、ホットミルク準備して待ってるね」 笑顔でそう言ったクラッズに、フェルパーは安心したように目を細めた。フェルパーとも一旦別れ、自室に戻ったクラッズはしっかり戸を閉める。 (うわぁぁぁああああどういうこと!? どういうことこれっ!? フェルパーが自分から一緒に寝るお誘いってこれ襲っていいの?! 襲っていいのかなこれ!? いや駄目だよねどう考えてもっ!? どうしようどうすればいいのか全然わからない! そうだこういう時はバハム…駄目だ馬に蹴られて死んでしまう!!) 大混乱であった。 その後も、暫くうわぁうわぁと悶えていたクラッズだが、ようやくこんなことをしている間にフェルパーがやってきてしまうと気付く。 慌てて刀をしまい、大急ぎで風呂を済ませ、彼女と親しくなってから常備するようになった牛乳を簡易キッチンで温めている時に扉が叩かれた。 「…クラッズ?」 「フェルパー、いらっしゃぃむぁ!?」 ――扉を開けたら、そこは桃源郷でした。 限りなく頭の悪いフレーズを思いついたクラッズだったが、彼女にそんな自分を笑う余裕は残っていなかった。 「……っ……っ……?!」 「……クラッズの匂い……」 「ふぇっ、ふぇむぅあ!?」 「…くすぐったい。そこで喋っちゃダメ」 (そんなこと仰られましても!?) クラッズをしっかり抱きしめたフェルパーは、満足げに頬を擦り寄せてきた。彼女の仕草は普段のクラッズであれば心の中で のたうちまわるくらい可愛らしいものだったが、今のクラッズにはそんな理由はない。 重ねて言おう。クラッズは、フェルパーに、正面から抱きしめられていた。フェルパーに一切の他意はないだろうが、彼女よりも頭一つ程 小さいクラッズは、そうされると埋まるのである。口が、谷間に。
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154 :クラッズ♀×フェルパー♀ 8/12[sage]:2014/05/21(水) 21:16:17.51 ID:2cFT2quG - (フェルパーって着やせするタイプだったのかーっ!)
馬鹿馬鹿しくも切実な悲鳴を上げる。柔らかく張りがある二つの山は、クラッズから冷静さを奪っていった。 (…柔らか…やわらか…そういえばディアボロスも胸あるっけ…今日のセレスティアも…あれもしかして私以外皆豊かだったりする…? まぁいいや…そんなことより不届き者から狙われないよう…気をつけ……やわらか……) 段々とぼんやりしてきたクラッズには気付かずに、フェルパーはさかんに彼女の匂いを嗅ぎ、自分の匂いを擦りつけていた。 為されるがまま流されること十数分。やっと落ち着いたのか、フェルパーは満足げにクラッズを解放する。 「…ずいぶんと甘えたさんだね…?」 「……嫌だった?」 「私は侍。例え体格差があろうとも、本気で嫌ならこんなに可愛らしいナースさんに後れをとったりはしないよ」 少々気取って笑ってみせるとフェルパーは嬉しそうに微笑んだ。 「まぁ、驚いたけどさ。一体どうしたんだい。君がこんなことするなんて、珍しいね?」 言いながら、ある程度温まったホットミルクをカップに移し、フェルパーのものには蜂蜜をたっぷり入れる。ちょうど人肌程のそれを 手渡すと、フェルパーは尻尾を揺らした。 「…ヒューマンと、セレスティアと…香水のにおいが…」 「あー…いきなりだったもんね。びっくりしちゃったかな」 恐らく、事前に何も言わず心の準備をさせずに引き合わせてしまったので、普段以上に緊張してしまったのだろう。さっきやたらと クラッズのにおいを嗅いだのも緊張を落ち着かせる手段だったのかもしれない。悪いことをしてしまった、と目尻を下げるクラッズを見て フェルパーはベッドに座る彼女にそっとしがみつく。首に息がかかって少しくすぐったい。 「…フェルパー?」 すんすんと鼻を鳴らす彼女を撫でながら、クラッズは自分の理性が音を立てて崩れていくのを感じていた。先ほどの抱擁で既に大分 参っていたのに加え、このしがみつきである。優しい石鹸の香りに混じったフェルパー自身の甘い匂い。親しげに擦り寄せられる暖かい体。 どんどん明確になっていく思考の中心は、どのようにして理性を練り直すかではなく、どうやってこの愛らしい猫を怖がらせないよう 可愛がるか、その方法を考えることに終始していた。 「……クラッズの匂い……」 「うん?」 「……落ち着く……好き……」 甘えるような柔らかい声で囁かれ、もうダメだ、とクラッズは思った。
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155 :クラッズ♀×フェルパー♀ 9/12[sage]:2014/05/21(水) 21:20:18.23 ID:2cFT2quG - 「…なら、私のにおいでいっぱいにしてあげようか」
「…え…? んむっ!?」 不思議そうなフェルパーに素早く口付ける。まん丸の目が更に大きく開かれるのを見て、クラッズは自然と笑顔を浮かべていた。 深いものを交わしたい気持ちを堪え、すぐに解放して頭を撫でてやると、フェルパーは今何が起こったのか分からない様子で瞳を瞬く。 そんな彼女ににっこりと笑ってみせ、 「ちょっとごめんね」 「にゃっ!?」 ひょいと抱き上げベッドに座らせる。フェルパーの混乱がより酷くなった。 「仮にも侍学科だもの。そこらのクラッズよりは力も体力もあるさ」 「…す、すごい…ね…?」 「お褒めにあずかり光栄です」 言って、もう一度口付ける。口だけでなく、頬に、鼻の頭に、瞼にと唇を寄せるとフェルパーはくすぐったそうな声を漏らした。 その反応に気を良くして舌を唇の間から侵入させると、流石に驚いたのか肩が跳ねた。それを押さえることはしないで、できる限り 優しく撫でながら柔らかい唇を舌先でくすぐる。彼女の口内は甘い蜂蜜の味がした。 「ふぅ…ん…にぅ…」 フェルパーは、自身の声が段々と甘えを帯びていっていることに気付いているだろうか。心の中で笑い、頭を撫でていた手をずらして 艶々した毛並みの耳をそっと撫でる。 「んにゃっ!」 「おっと。…ここ、撫でるの嫌?」 尋ねながらも耳の縁をなぞっていると、フェルパーは恥ずかしそうに目を伏せた。拒絶の言葉はない。 「…君をいじめたいわけじゃあないんだ。嫌だったら、すぐに言って」 耳元で囁いてそのまま耳の先端を食む。途端、フェルパーの体がびくりと跳ねた。敢えてそれを無視して毛繕いをするように舌を這わせ、 反対の耳も手で愛撫する。耳の付け根の辺りをこりこりとさすってやると落ち着きなく振られていた尻尾がぴんと伸びた。 「んにゃっ!? ぁ…クラッズ、それ…やぁ…」 「嫌なの? …気持ちよさそうだけど?」 「にゃぁ…ぅ…やぁ、なのぉ…」 蕩けきった声や表情を見ると嫌だとは思えないが、ここで強引に進めてもフェルパーを怖がらせることにしかならないだろう。 そう判断したクラッズは、最後に一度ぴくぴくと動いている耳に口付けて、次いでぼんやりと開かれている唇にキスを落とす。 今度はすんなり受け入れられたことに喜びを感じつつ、怯えたように縮こまる彼女の口内に触れていく。形の良い歯や鋭い犬歯をなぞり、 ぬるぬるした舌先と、猫らしく細かい棘が敷き詰められている舌の腹に触れる。時折棘が擦れて僅かな痛みが生じるものの、それを はるかに上回る興奮でさほど気にはならなかった。フェルパーは、最初のうちこそかちこちに固まっていたが、やがて遠慮がちに舌を 絡めてくる。自身の棘でクラッズを傷つけないようとの配慮なのか動きは小さく控え目だったが、なによりも彼女が応じてくれたことが たまらなく嬉しかった。 ちゅうちゅうと口を吸いながら手を服に寄せる。寝る前だというのにきちんと閉じられていたボタンを開き、服の隙間から手を差し込むと、 「んにゃっ!? にゃっ、あぅ…」 「……ブラジャー、付けてないんだ?」 「…だ、だって…すぐ寝るから…」 頬を染めたフェルパーは困ったように視線を落とす。が、そうすると、丁度自分の胸がクラッズに触られているところをばっちり見てしまい 余計に顔を赤らめる羽目になった。目をつぶる彼女をそっと押し倒し制服とシャツの前をはだけさせる。灯りの下に陶磁器のように白く 滑らかな身体が晒されて、クラッズは思わず唾を飲み込んだ。美しい半円を描く乳房に触れ、優しく指を押し込むとフェルパーは声を殺す。 切り傷や胼胝がある小さい手に触れられると、何故か、フェルパーの胸の奥は熱くなった。
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156 :クラッズ♀×フェルパー♀ 10/12[sage]:2014/05/21(水) 21:28:18.90 ID:2cFT2quG - ゆっくりと肌を撫で、時々少し強めにこすったり、押し込んだりする。それだけでも声を我慢するので精一杯なのに、クラッズは徐々に
硬くなっている胸の頂にも触れるのだ。もどかしいくらい優しい刺激を与えられ、フェルパーの胸は熱くなり、腹の奥には 今まで感じたことの無い疼きが溜まっていく。もっと強く、自分のことを滅茶苦茶にしてほしい衝動が湧きあがってくるが、 それ以上に未知の感覚への恐れや、これ以上続けられると自分が無くなりそうな恐怖がフェルパーを支配した。 嬉しいのと、驚きと、怖いのと、不安なのが混じりあって、フェルパーの思考は限界だった。 「…ぁ…クラッズ…」 「…ん?」 「も…だめ…んぅ…終わりに、して…」 なんとか絞り出した言葉を聞いたクラッズは、戸惑った様子で手を止めた。そっと目を開けると、寂しそうな、悲しそうな、申し訳なさそうな 様々な感情が入り混じった複雑な笑顔を浮かべている。それを見たフェルパーは後悔した。胸の奥が、もっともっと熱くなってしまう。 「ん……そう、だね。やっぱり、嫌だよね」 「嫌じゃないっ!」 思っていた以上の大声が出て、クラッズはもちろん、フェルパーも驚いたように動きを止めた。戸惑ったように口に触れる彼女を見て、 クラッズはいつもと変わらない優しい苦笑を浮かべる。その表情に、また、心が疼いた。 「嫌じゃないって、言ってくれるのかい?」 「…ぅ…だって…ぁぅ…」 「でも、終わりにしてほしいんだよね?」 「それはっ! その…だって…ヘンなんだもん…」 「ヘン? なにが?」 言いながら、クラッズはフェルパーに毛布を掛ける。体が冷えて、風邪でもひいてしまったら大変だ。 「……頭の中、ぼうっとなって…からだ、あつくなっちゃうんだもん……」 恥ずかしそうな呟きを拾ったクラッズは、その表情とも相まって、今すぐ押し倒したくなる衝動を抑えるのに苦労した。肩にかけた毛布を ぐるぐる巻きにして、その上からフェルパーを抱きしめる。そっと頭を撫でていると、フェルパーは少し落ち着いてきたのか クラッズに頬を寄せ、ぐりぐりと頭を押し付けた。
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- 【ととモノ。】剣と魔法と学園モノ。14
157 :クラッズ♀×フェルパー♀ 11/12[sage]:2014/05/21(水) 21:30:31.76 ID:2cFT2quG - 「…私としては、君がヘンになっちゃうとこ、とっても見たいんだけど」
「にゃっ…?!」 「でも、怖いんだよね。それならいいや。完全に理性飛んじゃってたし…いきなりごめんね。変なことして」 そう言ってフェルパーを撫でる彼女は普段通りのクラッズだ。フェルパーが知らない顔で、知らない声で、彼女を求める人ではない。 そのことにとても安心するのと同時に、何故か、少しだけ残念になった。あのまま先に進むのはとても怖かったけれど、だからといって、 今までと全く変わらないのも嫌だった。いつも落ち着いているクラッズが不意に見せた熱量は、驚いたし、怖かったし、びっくりしたけれど 同時にとても心地の良いものだったから。 けれど、フェルパーがそう思っていることを、この人はきっと気付いていない。申し訳なさそうに自身を撫でるクラッズは、 少しでも刺激したらすぐに泣いてしまいそうなほど心細そうな顔をしていた。だから―― 「……ね、クラッズ。こっち向いて?」 「ん? どうしたんだい、フェル」 言い終わるよりも早く口付ける。ぱっちりした可愛らしい瞳がフェルパーだけを映しているのは思ったよりも嬉しいことだった。 一瞬とも永遠ともつかない時間が終わる。自分でしたこととはいえとても恥ずかしくて、フェルパーは真っ赤になって俯いた。 そんな彼女を、クラッズは少々呆気にとられて見ている。 「……フェルパー?」 「こっ、これくらいならっ!」 「…うん?」 「さ、さっきみたいなのは、怖いけど…今くらいなら、その…へいき、だから…」 「……うん」 「…もうちょっとだけ、待ってて、ください」 毛布にくるまったフェルパーは、耳をべたりと伏せ、視線を落とし、真っ赤な顔で今にも泣きそうなほど目を潤ませている。 だけど、それでも、待っててほしいと言ってくれた。 「…ねえ、フェルパー」 「…………」 「私は、君のことが、大好きだよ」 「……うんっ」 蕾が綻んだような笑顔を見て、ようやく自分の気持ちがきちんと伝わったことを感じたクラッズは、満面の笑みでフェルパーを抱きしめた。
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158 :クラッズ♀×フェルパー♀ 12/12[sage]:2014/05/21(水) 21:33:42.02 ID:2cFT2quG - 翌日の朝。
クラッズの匂いいっぱいで恥ずかしい…! と大急ぎでシャワーを浴びるフェルパーを置いて、クラッズは一足先に待ち合わせ場所に向かった。 恥ずかしいとくるかそうか…とか、可愛いなあもう本当にもう可愛いなあとか、まぁ、まだ待ち合わせ時間までには余裕があるから 大丈夫だねとか。内心頬をでれでれに緩ませたクラッズは、 「あ、早いね。おはよ……う……」 非常に気まずい雰囲気を醸し出すディアボロスとセレスティアを見て、やっぱりフェルパーと一緒に来ればよかったと後悔した。 敵意とまではいかないが親しげでもない、非常に複雑かつ気まずい空気は当の二人にとっても苦痛だったらしい。クラッズの声を聞いた 二人は、救い主が現れたとばかりにホッとした顔で後ろを振り向き、 「おまっ…クラッズ!? いったいどうした!?」「な、なにがあったんですか!?」 ほとんど同時に似たようなことを叫んだ。もしかしたら意外と気が合うんじゃないかこの二人、とクラッズは思う。 しかし、ディアボロスとセレスティアが驚愕するのも当然で、今のクラッズは、目の下に濃い隈があり、顔つきはどことなくやつれ、 いつもはきちんと整えられている髪も寝癖が立っており、そのくせ気持ち悪いくらい良い笑顔をしているのだ。イケメン少女の名折れである。 「大したことはないさ。それよりディアボロス、バハムーンは?」 「寝坊したから置いてきた。しかし、大したことないっておまえ…」 「セレスティア、ヒューマンは? まさか昨日の今日ってことはないだろうけれど」 「だ、大丈夫です。弾の補充を忘れていたそうで、今購買部に行っています。そんなことより、本当にどうなさったんですか…?」 「んー、ちょっとねー」 ちょっと昨夜、いちゃいちゃちゅっちゅしてる内にフェルパーが寝ちゃって、この絶妙な寸止め具合にMの道に目覚めそうになったとか、 むしろ目覚めないとやってられないというか、ゴロゴロ喉を鳴らしながら幸せそうに寝ているフェルパー見てると嬉しい半面 この心の内に燻っている欲望をどうすればいいんだと結局ほとんど徹夜状態になったとか。 そんなことをまさか言えるはずもなく、クラッズは魂の抜けたような顔で笑う。 「クラッズ…あの…おまえ、そんな状態で探索とか行って大丈夫か…?」 「無理はなさらない方が良いのでは…あ、ヒールかけましょうか…?」 「いや、大丈夫さ。むしろ、八つ当たり相手…もとい、この力を存分に発揮できる相手と戦いたいからね。 …ふふっ、今の私ならこれまで超えられなかった限界を軽々と越えられそうだよ…はははっ…」 虚ろな笑みを浮かべにこやかに物騒な台詞を並べ立てるクラッズに、ディアボロスとセレスティアは心の底から思う。 (頼むから…)(お願いですから…) ((早く誰か来て……!!)) 少し前と同じことを、少し前よりももっと切実な気持ちで願う二人は、どことなく似通った表情をしていた。
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159 :110[sage]:2014/05/21(水) 21:35:25.04 ID:2cFT2quG - 以上です
前回以上に申し訳なさ過ぎて頭が上げられません お目汚し失礼しました
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