- 【朝ドラ】ごちそうさんでエロパロ2
394 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/05/07(水) 20:39:13.04 ID:cj9y1um0 - 以前出てたロミオお姉様妄想が形になったので投下してみる。
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395 :練習・本番1[sage]:2014/05/07(水) 20:39:53.66 ID:cj9y1um0 - 女三人寄れば姦しい、とはよく言ったものだが、ではこの喧騒は何だろう。
女学校という、およそ自分とは縁遠い中に放り込まれ、悠太郎は思わず嘆息する。 「悠太郎さん、こっち!」 婚約者殿の母上は慣れた様子で人混みをかきわけていく。 どうにか目当ての講堂にたどり着く頃には、席はあらかた埋まっていた。 め以子の通う女学校には、文学会という催しがあるらしい。 最高学年が演劇を上演するものだが、何でもめ以子もそれに出るという。 しかしその配役をめぐって、悠太郎とめ以子はちょっとした喧嘩をしていた。 ロミオとジュリエットのロミオに推挙されているらしい彼女が、 男役で主役なんて恥ずかしい、と言い出したのである。 渋る彼女を奮起させるべく、悠太郎がうっかりキツイことを言ってしまい、 め以子が怒って「西門さんより男前なロミオをやってみせます」と宣言したというわけだ。
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396 :練習・本番2[sage]:2014/05/07(水) 20:41:00.99 ID:cj9y1um0 - 大男が後ろの席の人に顰蹙を買うまでもないだろうと、
並びの席を確保してくれたイクに断って最後列に腰掛ける。 程なく、ぱたぱたとひよこのような少女達が悠太郎の隣に腰掛け、雑談を始めた。 聞くともなしに聞いていると、どうやらめ以子の話をしているらしい。 「あの子、結構人気あるみたいでね。まあ中身はあんなだけど」 そう、イクが苦笑していたことを思い出すうちに、舞台の幕が開いた。 所詮、女学生達の手遊び…そう思っていた悠太郎は、自分の甘さを思い知らされた。 舞台装置も衣装も俳優達も、かなり気合が入っている。 ジュリエットを演じる桜子はさすがの舞台度胸とでも言うべきか、 堂々たる佇まいでヒロインを熱演し、喝采を浴びていた。 しかし何よりこの場のスターだったのは、め以子のロミオだ。
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397 :練習・本番3[sage]:2014/05/07(水) 20:41:42.22 ID:cj9y1um0 - め以子が舞台に登場した瞬間、女学生たちの間からため息が漏れた。
男装に映える長身にすらりとした手足は、まさに洋書の挿絵の王子様のよう。 ひたとジュリエットを見つめる二重の大きな目は凛と美しい。 さぞ練習したのだろう、身のこなしも優雅なものだ。 彼女が微笑み、恋に煩悶し、ジュリエットに愛の言葉を投げかける。 その度、乙女達はさざ波のようにざわめいた。 ロミオとジュリエットのくちづけの場面などその最たるものだ。 ロミオの長い綺麗な指がジュリエットの頬をなぞり、長身に隠すように抱きすくめ、 くちづけを交わす…勿論「振り」だが…とき、会場は水を打ったように静まり返った。 ひとつに重なっていたふたりの姿が離れ、熱を持った眼差しが交差すると、 乙女達のため息交じりのざわめきは最高潮に達した。
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398 :練習・本番4[sage]:2014/05/07(水) 20:42:39.44 ID:cj9y1um0 - ふと隣を見ると、先ほどの少女達もうっとりと舞台を見つめている。
「素敵…!」 目を潤ませ、頬を赤らめて囁くような声で呟く少女に、悠太郎は思わず唇を噛んだ。 (子供のくせに) 食い気ばかりで色気のない、家族に甘えてばかりのお嬢ちゃんで、 まだ本当のくちづけなんかしたこともないくせに、随分とまあ。 婚約したとはいえ、まだ子供だから、焦って彼女を傷つけたくないから、 何度も奪いたいと思いながらもギリギリで思いとどまってきたというのに、 例え芝居とはいえ何故、こんなものを見せつけられているのだろう。 面白くない、と大人気なく悠太郎は思った。 そうしている間にも物語はどんどん進んでいく。 家の対立を乗り越えようと足掻く若い恋人達の行動は悉く裏目に出て、 運命は悲劇的な結末を迎え、ふたりの愛は天上のものとなる。 甘くせつないロマンスは乙女達の心を動かし、すすり泣きまで聞こえてくるほどだった。
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399 :練習・本番5[sage]:2014/05/07(水) 20:43:26.51 ID:cj9y1um0 - 客電がついてからも、悠太郎の隣の集団は座ったまま雑談に花を咲かせていた。
「お素敵だったわ、卯野様も堀之端様も」 「特に卯野様!私、卯野様みたいな方のもとにお嫁に行きたい! ああ、どうして神様は卯野様を女性にお造りなさったのかしら?」 「ねえ、勿体無い。それに卯野様はもうお嫁入りが決まっているらしいじゃない」 「悔しい!いつまでも私達のお姉様でいてほしいのに!」 「本当。卯野様のお相手は卯野様よりとびきり格好いい方じゃないと許せない」 少女達は顔を見合わせてくすくすと笑う。 「嫌ね、卯野様より素敵な殿方なんているはずないじゃない」 その殿方が隣で苦い顔をしているとは露知らず、乙女達は席を立つ。 やや遅れて、悠太郎も席を立った。 終演後すぐ店に戻るイクに代わって、差し入れを渡す役目は果たさねばなるまい。
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400 :練習・本番6[sage]:2014/05/07(水) 20:44:35.22 ID:cj9y1um0 - め以子を探すのは容易だった。長身に加え、今日は桜子と共に下級生達に囲まれている。
終演後の高揚感のためか満面の笑顔で、頬は染まり、髪がうなじにはりついていた。 「西門さん?」 声をかけてきたのは民子だった。これ幸いと差し入れを渡して立ち去ろうとする。 「何言ってるんですか!」 三人の中では一番おっとりして見える民子だが、なかなかどうして容赦ない。 悠太郎は乙女達に取り囲まれるように、男装のめ以子の前に立たされていた。 「西門さん!どうでした?私のロミオ」 胸を張ってめ以子が問いかける。 周りの後輩達はひそひそと何やら耳打ちしあっていた。 「ねえ、あの方が卯野様の…」 「帝大生なんですって」 「随分大きな方ね…」 値踏みするような容赦ない視線が突き刺さる。居心地の悪さに黙り込んでいると、 それを否定のように取ったらしいめ以子が深々とため息をついた。 「…もう、いいです。納得いただけなかったみたいで残念だわ」 そう言って後輩達との会話の続きに戻ろうとする彼女の腕を悠太郎は捕まえた。
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401 :練習・本番7[sage]:2014/05/07(水) 20:45:26.98 ID:cj9y1um0 - 「何怒ってはるんですか?僕まだ何も言ってないのに」
「感想聞かれて言わないって、そういうことでしょう」 「…違います」 「じゃあ何ですか」 突然始まった言い争いに、少女達は興味津々といった顔でこちらを見ている。 悠太郎は一瞬考えて、め以子の腕を引き講堂の裏に歩いて行った。 「何ですか!」 め以子の唇に人差し指を押し当てる。 「静かに。誰かに見られて誤解されたら厄介です」 周りを見回し、人目がないことを改めて確認して口を開く。 「正直、驚きました。皆さんよう頑張ってはって…勿論あなたも」 「あ…ありがとうございます」 「桜子さんと随分練習したんじゃないですか」 「ええ!桜子のお父様に少女歌劇の舞台に連れて行ってもらって! 身のこなしとか、剣術とか、参考にして頑張ったんですから」 そうですか、と悠太郎が小さく呟く。 「あのくちづけも?」 「ええ、できるだけそれっぽく見せるように民ちゃんと三人で練習したんです」 「…練習の成果は完璧でしたよ」 ぱっと顔を輝かせため以子を、悠太郎はすかさず彼女を抱きしめた。 「練習があれほど上手なんやったら…本番も上手いこといきますよね」 ぽかんとした表情の彼女の頬に手を添え、紅い唇に吸い付いた。
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402 :練習・本番8[sage]:2014/05/07(水) 20:46:22.49 ID:cj9y1um0 - 最初は軽く触れるだけ、一旦離れてから更に強く唇同士を重ねて。
「ちょっと西門さ…!」 「目、閉じて」 強い調子で命じ、今度は舌先で唇をこじ開ける。 抗議の声も、呼吸まで奪うように激しくくちづけた。 め以子の唇は熱く柔らかく、差し入れの菓子でも食べていたせいかほの甘い。 衣装が皺になるほど強く抱きしめ、舌を絡めて貪った。 唇を甘噛みし、角度を変えて舌に吸い付く。ぴちゃぴちゃとふたりの間で水音が響く。 め以子の身体から力が抜けかけたところで、ようやく唇を離した。 「何、するんですか!」 真っ赤な顔で目に涙を浮かべ、め以子が悠太郎を睨みつける。 「練習と比べてどうでした?」 「…意地悪!」 「意地悪で結構」 そう言うと悠太郎は再びめ以子を抱き寄せ、耳元で囁いた。 「あなたにこういうことを教えてええのは、ほんまは僕だけですから」 それだけ告げ、紅く腫れた唇に指で触れると、彼はくるりと踵を返した。
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403 :練習・本番9[sage]:2014/05/07(水) 20:47:48.91 ID:cj9y1um0 - 数日後。
「なんか最近、下級生達から電停で見られてる気がするのよ」 弁当をぱくぱく食べながらめ以子がぼやく。 電停で弁当を悠太郎に渡すのが、別々に暮らすふたりの日課になっていたが、 それを遠巻きに見ている下級生達が増えているのだ。 め以子のぼやきに桜子と民子は視線を合わせる。 「あのね、め以子。文学会のとき、通天閣来てたでしょ。 下級生の間で噂らしいわよ。あんたが婚約者と逢引してたって」 「あ、逢引…!!」 「声が大きい!」 慌てて声を抑え、弁当で動悸を抑え込む。 あのとき、悠太郎からされたくちづけは、想像していたものと全く違った。 子供の頃に食べた苺みたいに、甘酸っぱいものだと思っていたのに、 あんなに熱くて激しくて、言葉も呼吸も全部奪われるみたいなものだなんて。 …それを誰かに見られたかもしれないなんて、死ぬほど恥ずかしい。 「まあ、通天閣とあんたが話してたの皆見てたし、それに尾鰭がついただけよ」 安心なさい、毎年文学会の後にはそういう噂が立つもんだから、と宥める桜子に、 ようやくめ以子は大きなため息をついた。 「でも、それが何で私と西門さんを見に来るって話になるわけ?」 桜子と民子が再び目線を交わした。 「め以ちゃん、文学会のとき格好よかったでしょ? 男装のめ以ちゃんと、それより背の高い西門さんが並んでいたのが凄く素敵だったって、 下級生達でふたりを見た子達が自慢してるんですって」 さながらオスカルとアンドレ…という例えは大正向きではないが、 男装の麗人とその恋人たる騎士は古今東西の乙女の憧れであるものの、 その機微を理解するめ以子ではなく。 「…よくわかんないけど、そういう趣味もあるのねえ」 理解不能だという顔で弁当を頬張る彼女は相変わらずの子供っぽさで。 こんな子と朴念仁の通天閣の逢引なんてね、とくすくす笑う桜子と民子は、 め以子があの日講堂の裏で手にした大人の経験をまだ知らず。 そしてめ以子もまた、余裕綽々でくちづけを奪ったような悠太郎が、 自身にとっても初のくちづけをあんな場面で交わしたことに度を失い、 路面電車の乗降口に額を強かにぶつけたことを知らない、そんな秋の日であった。 (了)
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