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名無しさん@ピンキー
【田村・とらドラ!】竹宮ゆゆこ 37皿目【ゴールデンタイム】

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【田村・とらドラ!】竹宮ゆゆこ 37皿目【ゴールデンタイム】
433 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/05/01(木) 00:11:50.79 ID:XGqlnLfj
小ネタSS投下
【田村・とらドラ!】竹宮ゆゆこ 37皿目【ゴールデンタイム】
434 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/05/01(木) 00:12:48.72 ID:XGqlnLfj
職員会議が長引いたせいですっかり日が暮れてしまった家路を、私は一人寂しく歩いていた。
ただでさえ疲れた体を引きずって、しかも一人。
同僚は圧倒的に男性が多い職場ではあるけれど誰も彼も脂とセルライトが乗りに乗った中年のおじさんばかりで、
もはや女性を送っていこうなんていう気遣いすら失くしてしまった彼らは早々に駅前に消えていった。
きっと今頃はビール片手に愚痴の言い合いでもしている頃だろうか。
いえ、愚痴が言い合える相手がいるだけ、なんて幸せなんだろう。
話し相手の一人もいないまま夜道を急ぐ、どころかただいますら言う相手もいない私は人目もはばからずに深い、深ぁいため息をついた。
考えたくはないけれど、こんな人生がずっと続いてしまうのかもと考えると無性にたまらなくなる。
時折すれ違う通行人、それも見るからに付き合っていそうな雰囲気の二人組は大抵仲睦まじく並んで歩いてるっていうのに……。

「……あら?」

と、通りのむこう、車道を挟んで反対側からやってくる人影に私は見覚えがあった。
より正確に言うならば、人影そのものよりも、あの三白眼。
あれだけ強烈な目つきをしている人なんてそうはいないし、思い当たるのだって一人しかいない。

「高須くん、こんな時間になんの用事かしら」

近づいてくるにつれはっきりしてくる人影は、やっぱり思ったとおり高須くんだった。
意外だわ、見た目に反して真面目な高須くんが暗い時間に出歩いているなんて。

「買い物かしら? ……買い物……ああ、なるほど」

合点がいったと、一度、二度と私は一人頷いた。
そうよね、いくら真面目な性格してるって言っても、高須くんだってれっきとした高校生だもの。
そりゃあ他人の目を忍んで済ませたい買い物だってあるわよね。
大体の理由は察せられるし、これでも多感な時期の彼ら彼女らに対して一定の理解も持ち合わせているつもりだ。
かと言って、見つけてしまった以上はこのまま見過ごすわけにもいかないのが私の仕事でもある。
とはいえ私だってなにも鬼じゃあない。
ここは何食わぬ顔で声をかけて、夜遊びしないよう軽く注意だけして帰らせましょうか。
高須くんもまさか担任に見つかるなんて災難でしょうけど、大丈夫、先生優しいですから、素知らぬ振りしてあげますから。

「こんな時間になにしてるの、たか──」

と、話かけようとした私だったけれど、しかし途中で声が途絶えてしまう。
【田村・とらドラ!】竹宮ゆゆこ 37皿目【ゴールデンタイム】
435 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/05/01(木) 00:13:48.13 ID:XGqlnLfj
「ありがと〜竜ちゃん、わざわざお店まで送ってくれて」

誰だろう、あの妙に肌の露出が高い派手な格好の女性は。
暗がりで今までわからなかったけど、高須くんの傍らには最初からあの女性が寄り添っていたらしかった。
よくよく目を凝らせば腕まで組んじゃって、あれはもうどう見ても……。

「最近この辺も物騒だからな。ま、一人で出歩かせるよりは、な」

「うん。でも、竜ちゃんと一緒にいるとね、やっちゃんすっごく安心できるよ。こうしてるとね、すっごくあったかいし」

「だからってお前、あんまりひっ付くなよ。歩きづらいだろ」

「あれぇ? もしかして竜ちゃん照れてる? ねえ照れてる? 顔、ちょっと赤いよ」

「なわけあるかよ。気のせいだろ、気のせい」

「えへへ〜照れてる竜ちゃんか〜わ〜い〜い〜。もっと赤くさせちゃおーっと」

「あ、おい……たく、遅刻しても知らないからな」

「少しぐらいだったら大丈夫だよ〜。それにね? ……もすこしだけ、こうしてたいな」

ええ、そうでしょうよ、そうでしょうとも。
それだけ身を寄せ合ってというか抱き合って歩いていればさぞ体も火照ることでしょうよ。
いいわよねえ、そんな風にイッチャイチャできる相手がいて。
正反対に、独り身の私は身も心も冷え切っていく一方だった。
そしてこれ以上冷めようがなくなった心で固く誓いを立てる。

「ふふっ、見せつけてくれる高須くんム〜カ〜つ〜く〜。明日は青褪めさせてあげようっと」

一層冷え込みを厳しくさせたように思えてならない家路を、一人ぼっちで寂しい事この上ない私ではあるが、先ほどよりも軽やかな足取りで歩を進める。
さて、明日はいったいどんな理由で呼び出してあげようか。
夜遊びに不純異性交遊に他諸々、言い逃れなんて絶対させないんだから。
ああ、そうだわ、逢坂さんにも相談してみようかしら。
高須くんが関わっているとなればきっと手を貸してくれるはずよね。
他のことならいざ知らず、高須くんのこととなれば見境がなくなる逢坂さんのことだ、待ち受ける結末の凄惨さといったら想像に難くない。

「フッ、フフッ……ウフフフフフフフフ」

最後に一度だけ振り返れば、高須くんたちは寄り添いあったままネオンの中へと吸い込まれていった。
街灯に照らし出された私の影も、こらえきれない笑い声も、まるで夜の街に溶け込んでいくかのように、どこまでもどこまでも伸びていった。

                              〜おわり〜


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