- 【朝ドラ】ごちそうさんでエロパロ2
284 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/04/20(日) 15:33:52.44 ID:EpX2mlsY - 泰介が子供の頃の話でひとつ
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285 :とても大きな、一切れの愛 1/4[sage]:2014/04/20(日) 15:34:50.16 ID:EpX2mlsY - それは泰介が七歳の春の頃であった。
夜中にふと目を覚まし、何となく催したので厠に行こうと真っ暗な廊下を歩いていた。その時に両親が 寝入っているはずの部屋の前を通りかかった時のことだ。 二人ともすっかり寝付いていると思い込んでいたのに、引き戸の奥から妙な声がする。 丑三つ時とも言うし悪い夢でも見ているのかな、とついつい気になって引き戸を開けかけた泰介の目に 飛び込んできたのは、布団の中で二人が互いに腕を回して囁き合い、身体を重ねている様子だった。 仄かなランプの灯りの中、二人は完全に行為に没頭している。 「…悠太郎さん、も、うっ…」 「何ですか、はっきり言わんと分かりませんよ」 「そ、んなこと…」 「ホンマに可愛ええですね、あなたは。だからいけずしとうなるんですよ」 一体何をしているのか全く分からなかったが、布団の中で二人の身体はしきりに蠢いている。こんな 夜中に、お父さんとお母さんはどうしてあんなに夢中になっているのだろう。どうしてとても幸せそうな のだろう。 引き戸の隙間から覗き見る幼い泰介にとっては、行為が一体何かということよりも二人の満ち足りた 様子の方に心を惹かれた。 朝、いつものように起きてみると、両親の様子は普段見るものと何一つ変わっていなかった。元気に 家族の朝食を作って配膳する母と食卓に着いても新聞に目を通したままの父。何もかもがいつもの 光景で、夜に見たあの姿はまるで夢の中のことのようだった。 「泰介、おつい零しとるで」 そんなことをぼんやり考えていると、きびきびとした母の声が飛んできた。つい汁椀を傾け過ぎていた らしい。 「あ…」 「そないぼーっとしとるなんて、えらい珍しなあ。泰介」 「…うん、ごめん…」 あれからほとんど眠れなかったせいでやや寝不足になっている息子の気持ちなど露知らず、め以子は からからと笑いながら台拭きでさっさと零れている汁を拭いた。 あんなことは、とても人に言えない。 妙に気まずい気分で黙ったまま卵焼きを頬張る泰介は、それからしばらく心の中にもやもやしたものを 抱えることになった。
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286 :とても大きな、一切れの愛 2/4[sage]:2014/04/20(日) 15:35:37.16 ID:EpX2mlsY - 一週間ほど考えても、分からないものはやっぱり分からない。
その間にもまた夜中に同じ光景を見たりもしたので悩みは深くなるばかりだ。 ということで誰に相談して良いのか見当もつかなかったが、学校帰りに家族以外の最も身近な大人の いるところに駆けて行った。 「それで何でワシに聞くねん」 市場の肉屋の店先で、一通り話を聞かされる羽目になった源太はぼやいた。 「んー…こんなのお父さんやお母さんには聞けないし…」 もじもじしながらも胸の中に溜まっていたものをようやく全部吐き出した泰介は、ようやくほっと息を ついた。 「さよか」 乱暴にがりがりと頭を掻きながら、しばらく宙を見上げていた源太は唐突に泰介の頭をぽんぽんと 軽く叩いた。 「お前のお父ちゃんとお母ちゃん、ごっつ仲良うしとったやろ」 「…うん」 「それでええやん、なんも悩むことあれへんがな。夫婦ちゅうモンはみんなそんなんやで」 と、何やら適当にいいことを言って、内容が内容だけに一体どう答えていいのか分からないこの話を 無理矢理終わらせようとした源太の前掛けをがっちりと掴んだ。 「おい離せや」 「やだ」 こうなったからにはどうしても納得のいく答えが欲しかったのだ。 店先でぐずぐす言う子供はさすがに目立つのか、ひっきりなしに行き交う買い物客の女性たちが ちらちらとこちらを見ている。 「お父さんとお母さん、なんか僕の知らない人みたいやった。夜になったら二人とも僕らのこと忘れ てしまうんかな」 やや半泣きになりながらそう言った途端、面倒な子供のお守りに困り果てていた源太が声を荒げて 怒鳴った。 「アホなこと言いなや!」 いきなりのことで萎縮した泰介の手を引いて、店の奥にいる夫婦にさっさと店番を頼むと源太は大股で 市場を抜けて行った。一体どこへ行こうとしているのか全く分からないまま、泰介はきょろきょろしながら ついて行くしかなかった。 戸惑いながらも、それが何だか冒険の一つのように思えているのが不思議だった。
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287 :とても大きな、一切れの愛 3/4[sage]:2014/04/20(日) 15:36:30.93 ID:EpX2mlsY - 「食べ」
市場の近くの河川敷に並んで座ると、源太が途中で買った焼き団子を半分分けてくれた。 「ありがとう…」 「お前も難儀やなあ」 またおどけたように頭をぽんぽんと叩いてくると、ふっと正面を向いた源太がぼそりと呟く。そして今度は びっくりするような真顔で向き直った。 「泰介、お前お父ちゃんとお母ちゃんのこと好きか」 「うん」 もぐもぐと焼き団子を頬張りながらも、しっかりと答えた。 「ほな、どっちが一番好きなんや」 「…そんなん分からん。お父さんは僕ら家族の為に頑張って働いてくれるし、お母さんは毎日僕らの 為にご飯作って洗濯して…どっちも一番や」 「せやろ」 それが待ちに待った答えだ、とでも言うように、源太は今日の青空のように晴れやかに笑った。訳が 分からずにいる泰介の肩を抱いて引き寄せると、すとんと落とした声が耳元で聞こえてくる。 「お父ちゃんとお母ちゃんかて同じや。互いにアホかちゅうぐらい惚れ合ってるやろ。それは子供の お前らにも同じ気持ちなんやで。優劣なんかこれっぽっちもあれへんがな。『好き』にそんな無粋な モンあったらかなわんやん。せやからな」 この先はまた悪戯っぽい口調になった。 「お前らが寝てる夜ぐらいな、二人にようさん仲良うさしやってもええやろ」 「うん、分かった」 焼き団子を食べ終えた泰介は、何故だか妙にすっきりした気分だった。いまだに両親が何をしていた のかは分からないが、あまり子供が口に出すべきものではないこと、けれど決して悪いことではなく むしろ夫婦としては当たり前の行為だったのだとようやく実感した。 そういえば、と思い出すことがある。 母は毎日のご飯以外だけでなくお菓子を作るのがとても上手で、特にカステラなどの焼き菓子が 絶品だった。お菓子を作った時は最初に家族の人数分きっかり切り分けるのだが、三人の子供たち には必ずおまけがついていた。 カステラなら隅の切れ端、アイスクリンなら容器に残ったひと掬い、というように。小さい弟の活男などは いつも余計に食べたがっているのをいつも母に窘められている。けれど子供というものはそういうものが 好きなのだ。
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288 :とても大きな、一切れの愛 4/4[sage]:2014/04/20(日) 15:37:04.10 ID:EpX2mlsY - 父もそう。いつも自分用のお菓子を少しだけ、『これ食べ』と自分たちに分けてくれる。父も母が作った
お菓子は大好きな筈なのに、どうして分けてくれるのだろうと今までずっと感じていた。だけどいつも 分けてくれるその一かけら、一匙、一口が殊の外美味しかった。 今の泰介なら分かる。それは両親の優しい思い遣りの味なのだ。 「なあんだ」 わざと声に出して叫んでみる。 「お父さんとお母さんは僕らのこと、めっちゃ大好きやったんや」 黙ってひたすら焼き団子を食べていた源太が、にたあっと笑ってまた抱き寄せてきた。 「せやな。当たり前やけど、なかなか気付けんことや。せいぜいお父ちゃんとお母ちゃんに感謝し」 「うん!」 元気に返事をして空を見上げると、そろそろ青い空に夕焼けの色が混じり始めていてそれが不思議と 心に残る。こんな綺麗な空は初めてなので余計に。 ささやかだがそれなりに深刻だった泰介の悩みはそうして無事に解決したのだった。 「ただ今戻りました」 父と同じようにいつもの挨拶をして家に入ると、今日も母は忙しく夕食の準備をしていて、鍋からは 温かで美味しそうな匂いが漂っていた。途端にぐうぐうと腹が鳴る。 「泰介、手え洗い。すぐご飯にするよって」 「はい」 普段と変わらない母の優しい声が今日は特に嬉しい。今日の晩御飯は何だろうとうきうきしながら 帽子を脱ぐ泰介の表情には、もう何の戸惑いも悩みもなかった。 終
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