- 立場だけの交換・変化 7交換目?
88 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/04/10(木) 23:41:06.57 ID:2IGDC7fR - 【小ネタ】
「ほら、お兄ちゃん、早くしないと遅刻しちゃうよ?」 「待って、まだうまくリボンが結べなくて……」 玄関で靴を履きながら、妹が早く準備を済ませろと急かしてくる。 そのせいか、今日のために準備しておいた淡い水色のリボンがうまく結べず、 鏡の前で何度もほどいては結び直し、またほどいては結び直すという作業を繰り返す。 「もう、なにやってんのよ!」 玄関にいたはずの妹は苛立ちを隠し切れない様子で後ろに立つと、 俺の手からリボンをひったくった。そして慣れた手つきで俺の髪を頭の横で束ねてゴムで留め、 その上からリボンを結んで飾っていく。片方が終わったら、もう片方。結局、俺が10分近く悪戦苦闘していたリボンは、 妹の手によって1分ほどで片付いてしまった。 「はい、できたよ」 背中の中ほどまで伸ばした髪は頭の左右で可愛くまとめられ、いわゆるツインテールになった。 「待たせてるんだから、早く靴を履いて玄関の外に出てね!」 言われるがまま靴を履き、玄関の外に出る。外では、三脚つきのカメラを用意した隣のおじさんがにこやかな顔で待っていた。 「せっかくの入学式なんだから、記念撮影しないとね」 さぁ並んで並んでと、促されるまま、妹と2人仲良く並ぶ。 細身のジャケットに折り目がしっかりついたスラックス。短く刈られた髪は綺麗に整えられ、いかにも「サラリーマン」といった感じの妹。 一方、俺はというと、チェックのプリーツスカートに丸衿のブラウス、そして胸ポケットに校章のエンブレムがあしらわれた濃緑色の上着と、 名門女子小学校の制服を身にまとっていた。この日のために背中の中ほどまで伸ばした髪は、 水色のリボンをアクセントにしたツインテールにまとめてみた。もちろん、背中にはピカピカに光る真っ赤なランドセル。 どこからどうみても「これから小学校の入学式に向かう新入生そのもの」だ。 「まさか、真美ちゃんが小学校卒業したと思ったら、お兄ちゃんのほうがまた小学校に通うことになるなんてねぇ」 ついこの間までは、サラリーマンであり保護者でもある兄と、小学校に通う妹。 しかし、今日からは新入生として女子小学校に通う兄と、その保護者であり会社勤めをする妹。 春。人間関係が一新される季節。この季節に人間関係を改めた俺たち兄妹の、 そして俺の小学校入学式の記録を残すため、隣のおじさんはデジカメのシャッターを切るのだった。
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