- 【スカトロ】排泄系妄想廃棄所13【汚物】
392 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/22(土) 19:36:25.14 ID:Qm7a3tKB - どこに投下していいかわからなかったのでここに。
VOCALOID小説「クワガタにチョップしたらタイムスリップした」の二次創作です。 小です。 我慢&シーンは途中のゆかりパートのみです。
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393 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:38:00.99 ID:Qm7a3tKB - 私の名前は淡路なつみ。
名前に「なつ」という字が入っているけれど「夏」のことは全身全霊をもってヘイトしている。暑いうえに中間テストに球技大会etc。 が、だからといって冬が好きなわけでは決してない。むしろ夏と同じく、いやそれ以上に冬をヘイトしていた。寒い。世間では地球温暖化だなんだと騒がれているけどそんなの1ミリも感じさせないくらい寒い。 トイレも近くなるし、それに夏には元気だったわが愛するペットも冬眠中で、そのかわいい姿が隠れてしまうのは辛い。ついでに羨ましい。人間も冬眠できたらいいのに。 あ、私の愛すべきペットのことは後で語ることにする。 寒さのことは置いといて、これから始まるのは恐怖の期末テスト。テストの点数という無機質な数字で人間を量るなんて冷酷かつ非人道的なことが全国の学校で行われるのだ。 しかし嘆いているだけでははじまらない。この日に向けて努力した結果、中間テストでは酷い点数を取ってしまった物理でも今回はそこそこ手ごたえを感じた。そして残すところはあと一教科。ラスボスのようにでんと構える数学だ。 そして私は今、家で勉強してもわからなかったところを、愛すべき友人であり学年トップのゆかり先生に数学を教わっていた。 「この数式をAに代入して…」 ゆかりはどんな教師よりもわかりやすく、私の頭脳にも理解できるように究極に噛み砕いて説明してくれる。 「あーもうわっかんねー!」 「何度も言ってるだろう、ここは……」 少し離れたところで男子二人の声が聞こえる。スポーツバカ悠介が中間テスト4位の雅司に教わっている最中だ。あいつが優しく教えてくれるわけがないのに。 「つまり、こう?」 「そうそう。すごいねなつみ、もうできた!」 その上私のモチベーションを保つべくほめて伸ばしてくれる。ゆかりは絶対に教師に向いてるよ。ろくでもない教師が多いけど、ゆかりならあるいは教育界を救ってくれる。この私が全身全霊をかけて保証する。こんな教師に教わる生徒は幸運だ。 可愛くて優しくてクラスの人気者で歯並びも美しくて。これでクワガタを怖がりさえしなければ完璧なのだけど。 そう。先ほど言った私の愛すべきペットというのはクワガタだ。とりわけ今飼っているヒラタクワガタのヘリウムは今年の夏に不思議な体験をさせてくれたのだけど、そのことについてもあとで触れることにしよう。 キーンコーンカーンコーン チャイムと共に担任がテスト用紙を持って教室に入ってきた。 「ほら席につけ―」 その声でクラスの皆は一斉に自分の席に戻る。私も戻らなきゃ。 「じゃあゆかり、教えてくれてありがとう」 「どういたしまして。テスト、がんばろうね!」 胸の前でガッツポーズをして見せるゆかり。その可愛らしい姿に見とれたまま移動したせいか、カバンにつまずいてこけてしまった。 「なつみ、大丈夫?」 ゆかりが心配して声をかけてくれた。とっくに自分の席に着いたクラスの皆が一斉に私の方を見ている。恥ずかしい。今の衝撃でゆかりの折角教えてくれた数式が頭から吹っ飛んでなければいいけど。 「二回目だな、淡路!」 悠介の騒がしい声。先生に「静かにしなさい」と言われこの時ばかりは口をつぐむが後で何とからかわれるかわからない。と言っても私もこんな風に笑ってくれるありがたさはわかっているので不満ではないが。 ちなみに二回目というのは物理のテストの時にも同じことをやらかしたからだ。 そう、私は絶望的にドジだ。 慌てて席に着き机の上をテスト用紙と筆記用具だけにし、来るべき時を待つ。 始めの合図と同時に机の上で一斉にテスト用紙がひっくり返され、シャーペンが踊る。 この戦いが終わったら私、録りだめしたドラマを見るんだ……!
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394 :クワガタチョップ(ゆかりパート)[sage]:2014/02/22(土) 19:41:43.38 ID:Qm7a3tKB - (まずいなあ……我慢できるかな……)
ゆかりは机の下でもぞもぞと足を動かす。なつみに勉強を教えていた辺りから尿意を感じていたのだ。 ゆかりは困っている人間を放っておけない性質であった。熱心にゆかりの言葉に耳を傾けるなつみにトイレに行かせてくれと言い出せず、 そうこうするうちにテストが始まってしまった。 数学のテストの時間はとりわけ長く、120分にもなる。それほどまで我慢できるか…。 (ううん、今はテスト、テストに集中!) 優等生のゆかりはこの日のテストも学年トップを狙っていた。 問題に取り掛かるゆかり。だがそんな彼女をあざ笑うかのように膨れた膀胱はチクチクと痛み、集中力を欠かせる。 (トイレに行かせてもらおうかな……) なんとか二、三問解き終わったところでそんな考えが頭をよぎる。 (先生に手を挙げて、トイレに行かせてくださいって言って、席を立つだけ……!) そうすればクラスの皆に見られてしまう。テスト中にトイレに行くのを見られてしまう。なつみにも。 (そんなの恥ずかしい……でも……) ゆかりは自分の人気を自覚していた。そしてそれを内心誇りに思っていた。そんな自分がみんなの前でトイレに行く。我慢できないのがばれてしまう。 (それに、なつみに教えてた間我慢してたのがばれちゃうかも。気を使わせたら悪いじゃない……。もう高校生なんだから、我慢できるはず……) 足をぎゅっと閉じ、時計を確かめる。迷っていた時間は自分が思っていたより長かったらしく、思わずあわてた。 (とにかく、全部解かなきゃ……) 震える手でシャーペンを握り、問題を解いてゆく。書かれる字は普段の彼女からは考えられないほど雑だったが、頓着してはいられない。読めればよかった。 (なんで……暖房の温度、もっと上げないのよ……) 教室の寒さが余計に尿意を増幅させる。ぶるりと震え、思わずゆかりは左手でスカートの上から抑えた。 (だ、誰も見てないよね……) 左手でぎゅうぎゅう押さえながらそのまま解いていく。もう尿意はそこまで来ていた。 やっとの思いで解き終わったときは、残り時間はあと数分であった。 (あとは我慢するだけだ……ここでトイレに行ったら、数分も我慢できないほどギリギリだって思われる……) そう、あと数分でこの地獄から解放されるのだ。しかし、安心したためかますます強く尿意が暴行の中で荒れ狂う。両手で押さえながら静かな教室で音は立てられず、なるべく静かに腰をゆすった。 水圧が下腹部へ寄せられていく。徐々に下半身の震えが止まらなくなる。 (もう少し。もう少し……うっ!) 試験終了まであと一分半に達したところで、足の付け根に熱さを感じた。 (だ、ダメこんなところで……) 思わず両手で押さえる。この時ゆかりの頭に誰か見ているかもということはすっかり抜け落ちていた。 じゅっ……じゅわ…… しかしゆかりの意思とは関係なしに徐々に下着は湿っていく。左手にその湿り気を感じた。ついにスカートまで侵食し始めたのだ。 (と、止まってよお! えーと、あ、あと三十秒……早く、早くぅっ) 両手で圧迫し、足を摺合せる。スカートが、椅子が少しずつ浸食されていく。床に一滴垂れたのを、ゆかりは気づかなかった。気づかないふりをした。 (ダメ……いやっ……) ぶるりとさっきより大きく震えるのを最後にゆかりは果てた。 じゅううううううう…… やがて自身から発せられるくぐもった排泄音に、ゆかりは思わず机に突っ伏した。
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395 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:44:03.27 ID:Qm7a3tKB - キーンコーンカーンコーン
チャイムと共に私は机に突っ伏した。視界の端で解答用紙が回収されていく。 思い残すことはなかった。名前もちゃんと書いたし、解答欄がずれてもいない。ケアレスミスもしていない、たぶん。ゆかり先生のおかげでいい手ごたえだった。あとでたっぷりお礼をさせていただこう。 だがその前に少しばかりの休息をとりたい。戦った自分へのご褒美というやつだ。 周りが何やらざわざわしているが、私は興味がなかった。テストの出来の良しあしを話し合っているのだろうが私には今それを語る元気もない。うるさいな。お願いだから静かに寝かせて。 「おい淡路、起きろよ」 雅司の声だ。この安らぎのひと時を妨害してまでも「二回目」の話題を持ち出そうというのか。あとにしてほしい。 「起きろって」 今度は悠介。しぶしぶ顔を上げると悠介も雅司も私ではなく、ある一定の方向を見つめていた。二人だけでなくよく見るとほかの生徒もそちらを見ながら何やら話していて、そしてその方向にはゆかりの席があったはず。 とりあえず視線をたどってみるとそこには先ほどの私のように机に突っ伏したゆかりがいた。今回のテストはゆかりのような学年トップの秀才をもってしても燃え尽きるほど難しかったのだろうか。 そしてゆかりのスカートからはぽたぽたと黄金水が落ち、床に水たまりを作っていた。さすがゆかり、水も滴るいい女ってそうじゃなく。 ゆかりが、おもらしをしていた。 ……えーと、私だって経験がないわけじゃない。幼稚園の頃お遊戯中にやらかしたことを幼馴染の雅司にはしっかりと覚えられているし、そういう私も雅司が小学一年の時にお化け屋敷の中で漏らしたことをこれまたしっかりと覚えている。 でもそういうのって普通はせいぜい小学校で卒業するもので、いま私たちは義務教育を終えた高校生なわけで、しかも漏らしていらっしゃる(こんな敬語ありか?)のは天から二物も三物も与えられた我らがアイドルゆかり様で……。 「ウソだろ……」 「あのゆかりちゃんが……」 「俺ら、高校生だろ?」 ざわめきの内容が今度はしっかりと私の頭にも届く。胸がギュッと締め付けられた。 そうだ、何をやっているんだ。私はゆかりの友達なんだから、助けてあげなきゃ。ゆかりは私がどんな失敗をしても優しくフォローしてくれたんだから、今度は私がゆかりのフォローを……って何をやっていいのかわからないけれど。 でもとにかく傍に行かなきゃ。頑張れ、私! 「ゆかり!」 名前を呼びながら駆け寄ろうとした時、さっきのように誰かの鞄につまずいて転んでしまった。 バッシャ――ン! ……擬音がおかしい。これで「三度目」だと思う暇もなく、まずそこに疑問を持った。 ええと、まず私は転んだ時にはでに床に顔を打ち付けてしまった。これだけなら初めてではない。せいぜい鼻血を出したり額をすりむいたりしてでもこの汚い歯並びは変わらなくて、悠介と雅司にはからかわれてゆかりには心配されるくらいだ。 でもそれなら「ドタッ」とか「バッターン」とかのはずだ。「バッシャ―ン」というのは小学校の頃学校近くの池に落ちた時と同じ音で、つまり通常は水がないと発生しないはずなんだけどここは教室だし。 「うわっ、淡路がゆかりの小便をかぶった!」 ……子供のころ大好きだったどこぞのアンパンじゃないけれど顔が濡れて力が出ない。しかも生暖かい。アンモニアの刺激臭がダイレクトに鼻を指す。あのゆかりのでもこんな臭いがするんだと妙なことに感心する。まあ、とある警官の足の臭いよりはマシだけど。 そう。私は転んだ結果大きく広がったゆかりのオシッコに顔を突っ込んでしまったのだ。打ち付けた顔がじんじんと痛いからこれは夢じゃないんだろう。はは……は……。なんだか笑えてくる。これは球技大会でゆかりの顔面をぶち抜いた私への罰ですか? でも私の顔のことは誰一人心配してはくれないのね。まあゆかり様のご尊顔と私の歯並びが汚い顔では一緒にするものおこがましいというものですが。 などと考えながら尿まみれの顔でゆかりの方を見上げる。 「なつみ……!」 ゆかりが寄ってきて、ハンカチで顔を拭ってくれる。ゆかりは泣いていた。こんなに絶望的な表情を私は見たことがない。ああ、それはそうなるよね。高校生にもなってもらして、しかも友達が自分のオシッコをかぶったとなれば私だったら死にたくなってしまう。 最悪だ。私のドジが色んな意味で最悪な方向に作動した。 この騒ぎは先生によって収集され、ゆかりは保健室に連れていかれた。
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396 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:45:21.31 ID:Qm7a3tKB - 「ごめんね、なつみごめんね」
「気にしないでゆかり、私が勝手にこけたのが悪いんだから」 何度も何度も謝るゆかりに私は必死でフォローした。それでもゆかりは申し訳なさそうな顔をして、先生によって保健室に連れられて行く。 一人になった私は幸いにも誰もいない女子トイレに飛び込み、水道で頭と顔を洗った。もし人がいたら手を洗う場所に頭を突っ込んで洗う女子生徒を見て何事かと目を見張ることだろう。冬の水道は究極に冷たく、それを頭から浴びるということはとてつもなく寒い。 どうして冬なのにこんな思いをしなければならないんだろう。それにこんなにびしょびしょじゃハンカチではとても拭き取れない。つくづく最悪だ。 そう思った時、女子トイレの入り口からタイミングよくタオルが投げ入れられた。 「それ、使えよ」 悠介だ。サッカー部での汗拭き用に用意したものだろう。つまりあいつの汗を何度となく拭ったタオルだということだが、背に腹は代えられない。ありがたく使わせていただくことにした。スポーツバカもたまには役に立つ。 「ありがとう!」 ……あれ、私は今、悠介の汗拭き用タオルで頭をふいているわけで……なんだか妙に意識してしまう。 悠介はいいやつだ。バカで騒がしいけど転んだら笑ってくれるし、カーテンをはがしたら直してくれる。それにクワガタを語れる数少ない仲間でもある。悠介と雅司のどちらかを選ぶとしたら悠介だ、そんな話をゆかりにしたこともある。 だけどそれは幼馴染の雅司と今更恋愛に発展するとは思えないという意味での消去法であって……。 そんなことを考えているうちにふき終わる。このタオルはちゃんと選択して返そう。トイレを出ると悠介はそこで待っていてくれた。雅司もいる。 「……女子だけで掃除するから男子は帰れと」 言われてみれば二人以外のクラスの男子の姿は見えない。もう帰ったのだろう。その時掃除し終えたのか雑巾とバケツとモップを持った女子が教室から出てくる。私の方をチラチラとみていた。 「ま、消火器の掃除よりは楽そうだったぜ」 ……過去の失敗を持ち出さないでほしい。 「……これで三度目、だね」 「まったくだ。転ぶだけでよく最悪の状況からさらに最悪な状況を引き起こせるものだな」 呆れた声の雅司。自分でもつくづく、そう思います。 いつもならここで騒がしいやり取りの応酬になるのだけど、今は三人とも心が重苦しく、すぐに無言になる。 「……私のせいだ」 沈黙の中、ポツリとつぶやく私を悠介も雅司も見つめた。 「私が休み時間にゆかりに教えてもらってたから、ゆかりはトイレに行く時間もなくて……どうして、どうして我慢してるって、気づいてあげられなかったんだろう……」 そう。教えてもらうのをほどほどでやめておけばゆかりはトイレに行けたのに、ゆかりがわかりやすく教えてくれるのに甘えてあれも、これもと次々質問して、休み時間の終わりまで引っ張るなんて。 私のせいだ。ゆかりは私を何度も助けてくれたのに、私は満足にフォローもできないばかりかゆかりに最悪の恥をかかせてしまった。 「お、おい泣くなよ。別に淡路のせいじゃ……」 泣き出した私を悠介は必死に慰めてくれようとする。 「淡路のせいじゃない」 きっぱりと響く、低くて冷静な雅司の声。 「淡路の頼みを断ることもできたし、試験を中座することもできた。それをしなかったあいつの責任だ」 ……それはそうかもしれないけど、でも今の私には、その言葉はゆかりに対してあまりに冷たく聞こえた。 「俺たちにできるのはあいつの立ち直りを見守ることだけだ」 「そ、そうだよ。あいつは大丈夫だって」 ゆかりに冷たいわけじゃない。二人とも、私が罪悪感を感じないよう慰めてくれてるんだ。 私は今まで失敗には二種類あると思っていた。一つは人に迷惑がかからない、困るのは私だけという失敗。もう一つは人を巻き込んでしまう失敗。そしてそのどちらも私はやらかしたことがある。 だが今度の失敗はそのどちらでもない。誰からも責められない代わりに人に罪悪感を抱かせてしまう失敗だ。 とりあえず三人でゆかりを迎えに行こうという話になり保健室を訪れたが、保険の島津先生曰くゆかりはもう帰ってしまったらしい。私たちも帰ることにする。
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397 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:46:59.20 ID:Qm7a3tKB - 「今日は、ありがとう悠介。明日、タオル洗って返すよ」
「おう」 帰り道が分かれるまで悠介も雅司も無言だった。私に気を使ってくれているのだろう。 一人になった私は河川敷の橋に差し掛かった。かつてなら落ち込んだときは橋の下に行って気が済むまでしょぼくれていたが、「あの日」以来随分とあそこには行っていない。久しぶりに行こうかと考え、結局やめて橋の上を通る。一番落ち込んでいるのは私じゃない。 家に帰るとタオルを洗濯機に放り込み、自室のベッドに飛び込んだ。 鞄の中から携帯を取り出すと、絵文字のチョイスに気を使いながらゆかりに、大まかに言うと「今日のことは気にしないでね」みたいなメールを書いて送った。 やることがない。 私はヘリウムの住むゆったりサイズのケージを開けると手を入れた。ヘリウムは冬眠中であるにもかかわらず木くずからのそのそと這い出して私の手のひらに乗る。この子は私のためならそんなクワガタの本能が拒否しそうなことをあっさりとなしてみせる。 ありがたい。もっとも部屋には暖房が利かせてあるけど。 私はヘリウムに今日あったことを話した。ゆかりが漏らしたことを誰かに話すのは気が引けたけど、相手はクワガタだし。 「ゆかり、大丈夫かな……。悠介も雅司も私のせいじゃないって言ってくれたけど……」 ヘリウムは答えない。 「ね、もしよかったら……またタイムスリップさせてくれない?」 ダメ元で頼んでみた。 何のことやらとお思いの方もいるだろう。ただのクワガタとタイムスリップにいったい何の関係があるのかと。信じられないだろうが、ヒラタクワガタにはタイムスリップ能力がある。私だって実際に経験しなければ信じられなかった。つまり。 私は、クワガタにチョップしたらタイムスリップしました。 ……百発百中、「こいつ頭おかしい」とお思いのことでしょうが、本当です。 いろいろあったんですよ。粘着質な生花頭の警官やら自分の子供と孫やら未来の自分やらに会ったり。まあ、詳しくは家の裏でマンボウが死んでるPの著作『クワガタにチョップしたらタイムスリップした』をお読みください。曲もあります。あれ、これって宣伝? ともかく、もしもう一度、今度は未来ではなく過去にタイムスリップできるのなら、できれば今日の朝辺りがいい。過去の自分にあまりゆかりに頼るなと言っておけば、今日の悲劇は回避することができる。 「駄目……かなあ」 ヘリウムは私の指をガジガジ挟んで遊ぶだけだ。そうだよね。ヘリウムがあの日私に教えてくれたことに逆らうことになるもんね。だけど、ゆかりのためなんだよ。 未来の私はこれから起こることを今の私に教えて失敗を回避することができたのに、それをしなかった。今ではみな大切な思い出だからと。ということは今日のことだってそれに含まれているはずだ。それなのに、今日のことだけは教えてほしかったなと考えてしまう。 今一番後悔しているのも、落ち込んでいるのも、私ではなくゆかりなのだ。 私だったら、これまでやらかした失敗など目ではないというくらい後悔して、死にたくなるだろう。 それともゆかりも、今日のことをいい思い出だと言える日が来るのだろうか。 もしもう一度未来の私に会えるなら、せめて未来のゆかりは大丈夫なのかを教えてほしい。 これから冬休みまでは補講期間となる。明日は無理かもしれないけど、冬休み明けからでもゆかりは学校に来れるのだろうか。クラス中にひそひそと噂され、ポツリと一人席に着くゆかりを思い描いて胸が締め付けられた。考えるだけで寒気がする。 寒気がする。これは心理的な意味だけではなく身体的な意味でもだ。ひゅーと窓から隙間風が入り込む。おかしいな、閉めたはずだったのに。 私はヘリウムをケージの中に返すと窓をきちんと締めようと手をかけた。あれ、立てつけが悪いのか何か挟まっているのか、なかなか閉まらない。原因を追究しようといったん窓をがらりと開けた。 一瞬の間だった。 「ヘリウム!」 窓から飛び出した黒い影。一瞬しか見ていないけど見間違えるはずがない。ヘリウムだ。冬が苦手で冬眠していたはずのヘリウムが、いつも私の傍にいてくれたヘリウムが、自分から寒空に飛び出していって、そして見えなくなった。 慌ててコートをひっつかんで外に飛び出す。どこを探しても、ヘリウムの姿は見えなかった。探しているうちに門限が近づいたので、あきらめて帰る。 未来の私は多分クワガタを飼っていた。ヘリウムは戻ってくる。どこの時代に行っちゃったのかわからないけれどきっと戻ってくる。そう信じて待つことにした。 ヘリウムがいつでも帰ってこれるように部屋の窓はヘリウムの通れる隙間の分だけ開けておくことにした。ちくしょう、隙間風が寒いぞ、ヘリウムの奴!
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398 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:49:06.81 ID:Qm7a3tKB - ゆかり、ヘリウム、隙間風。そんな三コンボが私の睡眠を妨害したにもかかわらずいつのまにか寝てしまったらしい。目覚めるとケージにヘリウムがずっとそこにいたかのような顔をして戻ってて、のんびり木片を挟んで遊んでいた。人の苦労も知らないで。
「おはようヘリウム、どこ行ってたの?」 話しかけながらケージを開けるとヘリウムは自分から出てきて私の手のひらに乗った。急に出て行ってごめんね、そういっている気がする。 「今日、学校休もうかな……」 どうせ補講期間だし行かなくても文句は言われない。ゆかりもいないだろうし。そう考えて悠介にタオルを借りていたことを思い出した。返さなきゃいけないんだった。 仕方なく学校の支度をするべくヘリウムを虫かごに帰そうとすると、あろうことが彼は飛んで、鞄に入る小さなサイズの虫かごにとまった。冬眠中で外に出るのは嫌なんじゃなかったのかい? 一人にさせたお詫びに久しぶりに二人で散歩したいってことかな? こんな時に限って遅刻せず悠々と登校する。寒空の中考えた。もしかしたらゆかりは学校に来ているかもしれない。そうなるとクラスメートのひそひそ話や視線を浴びるのは避けられないだろう。 悠介と雅司がフォローしてくれるだろうがフォローする人数は多いほどいい。 それに昨日のことは気にしてないよと伝える必要だってある。今日こそ頑張れ、私! 「おは、よ、うぉあああ!」 ガラッと教室の扉を開け、元気にあいさつをしつつもゆかりの姿を探そうとした私は入ろうとした瞬間に引き戸のレールに足を引っ掛けてすっ転んだ。うう、恥ずかしい。今のはヘリウムにとっても結構な衝撃だったはずだ。ごめんよヘリウム。 「大丈夫? なつみ」 上から聞きなれた優しい、天使のような声が降ってくる。この声の持ち主を私は一人しか知らない。 「ゆかり……?」 いつも通りの心配そうな顔。いや、いつも通りじゃない。私と目が合うと気まずそうにそらした。そんな微妙な空気を察せないバカはゆかりの背後から顔を出して「さっそく一つ目だな!」と笑う。 でも今は、私のドジなんかどうでもいい。 「ゆかり! ゆかり来てくれたんだ!」 「あ、うん……その」 「よかったあ! うわああああんっ!」 私は身も蓋もなくゆかりに抱き付いて泣き出した。「おいおい……」と雅司が呆れている。 ゆかりが学校に来た。立ち直ってくれた。よかった。 「ありがとう、なつみ」 私の背中を撫でながら礼を言ってくれるゆかりに、また泣いた。 朝礼が始まる。いつも通り日直のあいさつと冬休みの知らせだけで終わると考えていたら、なんと日直がゆかりからクラス全員に話があると言い出した。 私は驚いた。ただでさえ昨日のことで注目されているのに、そんな目立つような真似をしてまでいったい何を言うつもりなんだろう。頭の中をクエスチョンマークで埋め尽くす私の目の前でゆかりは教卓に上がり、頭を下げた。 「昨日は、本当に迷惑かけてごめんなさい。とくに淡路さんには、本当に悪いことをしました」 クラスの皆が一斉に私を見た。何人かはくすくすと笑っている。何もこのタイミングで言わなくても……。 「それから、みんなありがとう。掃除をしてくれた人も、慰めてくれた人も。先生も、保健室に連れて行ってくださってありがとうございました」 教室中がわっと湧いた。 「気にしなくていいよ」 という意味のことを訴える女子が数名。 「いえいえそんな! あー俺もゆかり様の聖水を掃除したかった! 淡路が羨ましい!」 という意味のことを訴える男子が数名。こんな変態どもと一緒の空間で授業を受けていたなんて。羨ましいというなら私のドジウイルスでよければいくらでもあげてやろう。 その代り遅刻したり忘れ物したり所構わずすっ転ぶ羽目になりますけど。 先生がどこかの青春ドラマみたいなことを言って収集し、ゆかりは笑顔で席に戻った。 心配することなかったのかもしれない。ゆかりは、やっぱりクラスの人気者だ。
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399 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:52:43.19 ID:Qm7a3tKB - 今日は冬にしては日差しも強く風も少ない。
昼休み、私は鞄をもってゆかりと一緒に屋上で食べていた。 なぜ鞄を持っているのかというと、ゆかりに誘われた時ヘリウムがガリガリと木片を噛んで連れて行ってほしいアピールをしていたからだ。ゆかりはクワガタを怖がっているのにな。 いや、もしかしてこれはゆかりをクワガタの世界に引き込むチャンスなのかもしれない。 ちなみにバカ二人も一緒に食おうと言ってきたが断った。今日ばかりは二人で話したい。 「……昨日は、本当にごめんね」 食べ終わって休んでいるとき、ゆかりがそう切り出した。食事中にする話ではないと判断しての配慮だろう。 「……実はあの時私、なつみはもう友達でいてくれないと思ってたの」 「気にしないでって。私がドジなのが悪いんだし、ゆかりもハンカチで顔ふいてくれたし、むしろこっちが悪かったなーっていうか…」 「それもあるけど、その前に私、高校生にもなってお漏らししちゃったでしょ。きっと軽蔑されて嫌われて、友達でいてくれなくなるだろうなって思ったよ。 クラスのみんなに白い目で見られるのも嫌だったけど、それよりなつみが話しかけてくれなくなる方がずっと怖かった……」 「そ、そんなわけないよ! 私がゆかりを嫌いになるなんて……」 昨日の失敗を相殺して有り余るほど、ゆかりは私にはもったいないくらい素敵な友達だ。ドジな私をいつもフォローしてくれて、勉強も教えてくれて、おまけに歯並びもよくて。 そんなゆかりが、どうしてそこまで私のことを考えてくれるんだろう。 「メールありがとう。あとね、悠介と雅司がメールで言ってくれたの。なつみはあんな目にあったのに、私が漏らしたのは自分のせいだって言って泣いてたって。試験を中座しなかった私がバカで、自業自得で、悪いのに」 そうか、悠介と雅司はゆかりにそんなメールを送ったんだ。ゆかりはふふっと笑う。 「だからねなつみ、私がなつみを好きなのはなつみのドジがおもしろいからだけじゃない。前になつみは私を優しいって言ってくれたけど、私に言わせればなつみのほうがずっと優しいんだよ。こんな私でよければ、これからも友達でいてくれる、かな」 「こ、こちらこそ!」 そこまでかしこまられたらこっちが恐縮してしまう。 私が、優しい? そんな風に思ったことはなかった。確かにクワガタに対する優しさは日本一、いや世界一だと自負できるけど。噂をすれば鞄の中でガリガリと木片をかじる音。 ヘリウムもお昼ご飯欲しいよね。ごめんね、帰ったらおいしいゼリーを作ってあげるから。 「それ、クワガタ?」 ゆかりが尋ねる。やっぱりいい顔をしないかと思っていたら次の瞬間意外なことを言った。 「なつみ、クワガタ好きなんだよね」 「う、うん」 ええ、そりゃもう大好きですとも! 散々語ってきたからわかっているはずだ。でも、なんで今更? 「お詫びと言っちゃなんだけど……私も触っていいかな? 今なら好きになれそうな気がするの」 なんと! あれほどクワガタを怖がっていたゆかりの口からそんな言葉を聞く日が来ようとは。夢みたいだ。今年は大雪が降るだろうか。 私は鞄から虫かごを取り出して開ける。大の苦手であるはずの冬なのにヘリウムは素直に出てきて、私の手からゆかりの手へと移った。 「わぁっ」 あれほどクワガタを気味悪がっていたゆかりが、ヘリウムを手に載せて草原で子犬と戯れる少女のように笑った。ヘリウムも歯並びがきれいな美少女を目の前にして心なしか楽しそうだ。
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400 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:54:30.06 ID:Qm7a3tKB - 「この子なんて言うんだっけ」
「ヘリウム!」 「ヘリウムちゃん、昨日はありがとうね」 ゆかりがヘリウムにお礼を言う。その瞬間、私は昨日ヘリウムがどこに行っていたかわかった気がした。 ゆかりに聞いてみたい。ヘリウムと一緒に何があったのかを。きっと昨日の失敗から立ち直って学校に行こうと思えるような何かがあったのだろう。私のように未来の自分が死ぬ瞬間に立ち会ったんだろうか。ゆかりには私より長生きしてほしいけど。 きっとゆかりに聞けば、私もあちらであったことや出会った人たちの話をできるんだろうし、友達同士秘密を共有した気分になれるんだろう。だから聞きたい。 クワガタにチョップしたらタイムスリップしましたか? ……聞こうとして、やめた。茂森さんの言う通り未来のことはむやみに知ってはいけないと思うから。ゆかりの知った情報が私の未来を変えかねないし、逆も起こり得る。 私が知ったのは、ヘリウムはとても賢い子だということだ。あの日の私のように、いや、それ以上に後悔し落ち込むゆかりのもとに来て、タイムスリップを通して立ち直りのきっかけを作ってあげるほど、賢くて優しい子。 「ふふ、かわいいねヘリウムちゃん」 ……それより、そろそろ戻ってきてくれませんでしょうか。 「あ、長くなっちゃってごめんね」 ゆかりは言って、私にヘリウムを返そうとするが、いつもなら大人しく私の手のひらに乗るヘリウムがなかなか動かない。お前を卵の頃から大事に大事に育ててきた飼い主はこっちだ! 歯並びがそんなに大事か! 「……もうゼリー作ってあげないよ」 ぼそっと言うとヘリウムはしぶしぶといった感じで私の手に乗った。誰に似たんだ、食い意地が張ったクワガタめ。 「ペットが飼い主に似るって本当だね」 くすくす笑いながら言うゆかり。それは遠まわしに私が食い意地張っているとおっしゃっているのでしょうか。確かに成長期だけど。 「優しいところが」 ……さいですか。 こんなことを言った人がいるらしい。世界はつながっている。幸福や不幸は連鎖すると。だとしたら、優しさというものも連鎖するんじゃないだろうか。 私がそそっかしくてあほでドジで歯並びが悪くても、もしゆかりの言う通り「優しい」のならば、優しさの連鎖を引き起こすことができて、未来の自分の言った通り優周りの優しい人たちが許してくれたり励ましたり、そんな風に生きていくことができるんだろうか。
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- 【スカトロ】排泄系妄想廃棄所13【汚物】
401 :クワガタチョップ[sage]:2014/02/22(土) 19:56:10.82 ID:Qm7a3tKB - いよいよ冬も本番で、校舎を出たとき位はもう日が暮れている。寒い。私は「夏」のことは全身全霊を持ってヘイトしているけれど、だからと言って冬が好きなわけではない。
ゆかりのお漏らしの話は周りの気遣いの結果かすっかり流れて、それはいいのだけれどその代りクリスマスイブの予定などといった話題にとって代わっている。 良くも悪くもお祭り好きなのが日本人。聖なる日が恋人たちのためのラブラブイベントになるなんて、イエス=キリストが知ったらひっくり返るかもしれない。クリスマスといいバレンタインといい誰が一体なんのためにこんな日にしたんだろう。 その人はきっと幸せゆえに人を思いやることのできないリア充だったんだろうな。 ああ、子供のころはよかった。ケーキとプレゼントが楽しみでクリスマスまで指折り数えた日。サンタさんを一目見ようと布団の中で待ち構え、結局寝てしまった夜。お店のマークをそのままにしたお父さんのうっかりミスで夢破られた日…。 まあいい、彼氏いない歴イコール年齢の私は愛しの彼氏ヘリウムと家でのんびり過ごすことにしよう。ゆかりを誘うのもいいかも。 そういえば、と思う。ゆかりはあれだけモテるのになぜ彼氏を作らないんだろう。雅司だって、認めたくないけど運動も勉強もできて顔もそこそこいいので、腹立たしいことに結構モテる。悠介は…バカだけど背が高いし運動できるし、顔も悪くないしもしかしたら……。 あ、あれ。悠介のこと考えたら急にもやもやしてきた。なんでだろ。 そういえば、悠介にタオル返すの忘れてしまった。私はサッカー部がまだ練習しているはずの校庭へ急ぐ。 悠介は…あ、いたいた。汗まみれ土まみれでボールを奪い合うサッカー部員たちの中でも特に張り切って見える。こんな寒いのにあんな恰好でよくあそこまで動き回れるものだ。 「ゴール!」 派手なアクションでゴールを決める悠介にわっと湧き上がるコート。私も思わず手に汗を握っていた。 普段バカだけど、騒がしいけど、こうしてみるとほんのちょっとだけかっこいいといえるかもしれない…といえなくもない。 その日は寒いためか、サッカー部の活動はいつもより早く終わりになった。私は悠介に近づこうと走り出す。 「ど、わあああああっ!?」 走り出し、ボールにつまずいてまたもや転んでしまった。制服がグラウンドの土で汚れる。コート中の人が私を見て笑う。誰だこんな所にボールを出しっぱなしにしたのは。 「おいおい、二回目かよ」 笑いながら悠介は私を起こしてくれる。こんなことならもっと早く返せばよかった。そしたら新記録・一回で済んだのに。 「悠介、タオルありがと。はい」 「おお、お前のことだから忘れてるかと思ってあきらめてたぜ」 失礼な。確かについさっきまで忘れてはいたけど、さ。 「じゃ、じゃあさよならっ」 「待てよ。もう暗いし、送ってく」 お? 珍しく紳士的? 「淡路のことだから、こんなに暗くちゃ迷子になりそうだしな」 ……重ね重ね失礼な奴。いくらなんでも自分の家までの道を迷うわけない。もう二度と、ほんの一瞬、ほんのちょっとだけでもかっこいいと思ってやるもんか! 「待ってろよ、今着替えっから」 「おーい悠介。彼女待たせるなよ」 ほかのサッカー部員の声。彼女? 彼女って私か? いやいや彼女は彼女でもシーのほうですよね、ですよね!? 「う、うるせえ!」 否定しない悠介。背けられた顔の色は暗くてよく見えない。
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