- 【ダークソウル】エロパロソウル2【デモンズソウル】
491 :名無しさん@ピンキー[]:2014/02/19(水) 23:11:56.32 ID:RgBGt+MG - オスカーさんのお話最後の投稿です。
ほぼ一年がかりでしたが、なんとか2発売前に完結できました。 長々とお付き合いありがとうございます。
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- 【ダークソウル】エロパロソウル2【デモンズソウル】
492 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:12:58.09 ID:RgBGt+MG - 物語はどこから始まって、どこで終わりを迎えるのだろう。
錆付いた思考はばらばらに砕けた言葉を幾つも蒼穹に浮かべては、ちぐはぐに繋ぎ合わされた電気信号の一瞬の煌きの向こうへと押しやってしまうだけだ。 オスカーは小さな金属音をたて、崩れた天井から差し込む光を見上げた。 精巧だが派手過ぎない金の刺繍の施された青いサーコートは、どれほどの時の間此処に淀んでいたのか判らぬ緑色の水に裾を濡らし、不死人の灰や埃にまみれ所々が黄土色に変色している。 荒い呼吸が傷だらけの銀色の兜の隙間から漏れる音だけが、朽ちかけた石造りの建物の古い空気の中に溶けていく。 小さく身じろぎをして、全身に走る激痛にオスカーは眉根を寄せてくぐもった声を上げる。 既に纏った鎧の重みですら命を削り取っていく枷となっていたが、それでも握り締めた剣と盾を手放せないのは騎士としてのプライドなのか、それとも散々彼が味わった世界の悪意に毒されたためか、生憎オスカーにそれを知る手段などない。 例え知ることが出来たとして、恐らくそれは無意味でしかないだろう、オスカーはふん、と鼻を鳴らす。 三度目の世界、しかし初めてのようにまっさらな世界、あの時と同じ重く弱い身体で、オスカーは此処に居る。 取り込んだソウルも手に入れた物も、何もかもを火にくべて始まりの場所へ舞い戻り、そうして紡がれる運命に刃を突き立てる為に。 ただ、どうしても手放せないものが一つだけ。 そっと脇腹に手を添える、癒着したソウルが剥がれ落ち、優美な剣の形を成す。 「結局、使うことはなかったな。」 ぽつりと呟いた、女に手渡された銀騎士の剣はずしりと重く、全てを捨てたオスカーには手に余るものに戻っていた。 それでもこれを捨てられないのは、きっとまだ何処かで女と共に生きることを諦められないでいるからだろう。 ひたりと冷たい刃を首筋に当ててみる、岩山の頂上の凍った空気と同じ温度の刃は氷のように白いもやを放っている。 くつくつとオスカーは笑い剣をソウルへと変える、 肋骨が揺れる度に酷く痛んだが、それすらも今は愛おしく思えた。 弾んだ息が詰まり咳き込む、痛みに肩が攣り思わず呻いた、残された時間は短い。 恐らくここがオスカーの物語の終わりで、あの女の物語の始まりなのだろう、繰り返される悲劇をここで押し留めることができるのならば、この苦痛も悪くはない。 オスカーは深く溜息を吐く、そうだ、君は何も知らないままでいい。 愛剣の柄を握り締める、ぼやける視界には燃える火の赤い光だけが映る、霞んでいく思考と裏腹に研ぎ澄まされる耳に、聞き慣れた足音が水を蹴り近付いてくる。 遠くでデーモンの吼える声がする、ああ、世界が動き出す。 オスカーは知っていた、これから起こるであろう事、自らの運命と成すべき事を。 足音が近付く、誰かが壁を叩いている。 鉄球が転がった、誰かが不機嫌そうに歩いている。 ああ、ああ、一つの物語が始まり、一つの物語が終わる。 壁の向こうから現れた存在に、オスカーは重い口を開いた。
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- 【ダークソウル】エロパロソウル2【デモンズソウル】
493 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:13:44.46 ID:RgBGt+MG - 痛みを感じる程に冷たい不死院の空気は酷く埃っぽく、呼吸を必要としない亡者の肺をこんな時だけは幸運に思いながら、女はゆらゆらとふらつく足で歩き出す。
四角く切取られた薄暗い空に現れた騎士はまるで幻のようで、しかし確かにこの世界に息づく存在であると女は知っていた。 知っているのはそれだけではない、大扉をこじ開け、真っ直ぐに進む、頭上に現れた巨大な影の主が女を捉える前に小さな通路に逃げ込んだ。 化け物の咆哮を聞きながら篝火を点す、座り込めば自然と小さく溜息が出た。 勿論折れて柄だけになった剣で勝とうとするのは聊か無謀であることは承知していた、だが溜息の原因はそれではない。 からんと女の半開きのポーチから小さな金属製のアクセサリーが落ちる、それを拾い上げ、女は炎に照らされながらじっと見つめる。 金色の、なんの効果もない傷だらけな安物のペンダント、しかし女が手放すことの出来なかった唯一のもの。 お守りがわりに、と、優しい騎士のくれた思い出の名残が存在する、唯一のもの。 思い出に縋るように握り締める、手にしたもの全てを火にくべ、再び始まりの場所へ、ただ思い出だけを道連れにして、そうして女は此処に居る。 下腹部がつきりと痛んだ、女はふうと息を吐く、暗い森での情事を思い出す度、あの甘い熱と心を掻き毟る激痛が女の背骨を伝い流れる。 それで傷付くのは君だと彼は言った、その通りだと女は肩を震わせ嗤った、情事の熱が冷めた後女に残された物は、一層増した寂しさと虚しさだけだったのだから。 決して乱暴ではないが、しかし想いの宿らない情事は、彼と女の関係を痛いほど突き付けた。 気遣いが無い訳ではないが決して心は通わない、そんな関係が酷く歯がゆくて、優しさに縋りつくだけの自分が酷く惨めで堪らなかった。 ずきりと胸が痛んだ、板金の上からそっと撫で、女は干からびた唇を噛み締める。 最初の邂逅で、最後に彼の残したもの、火の炉で対峙した時に彼の刃が貫いた傷がそこにある。 情事の際、彼が鎧を脱ぐことを拒んだのは幸いだった、女は思う、懇願したのは自分だが、刻まれた愚かさの証を何も知らない彼に見せたくは無かった。 軋む身体を億劫そうに立ち上がらせ尻の灰を払う、悲しみは癒えないが、それでも女は進まなければならなかった。 今度こそ、今度こそ二人で世界を。 三度目の世界、だけどまっさらな振り出しの世界、僅かでも希望があるのなら、前へ。 遠くに壊れた鉄格子が見える、陽に照らされて座る誰かが見える、ああ、幻のような騎士の姿だ。 僅かな歓喜の奥で沸きあがる悲しみに肩を震わせる、ああ、ああ、ここからまた物語が始まる。 ペンダントを握り締める、埃に塗れた冷たい空気が肌を突く感覚が酷く懐かしかった。
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- 【ダークソウル】エロパロソウル2【デモンズソウル】
494 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:14:43.78 ID:RgBGt+MG - 鉄球に跳ね飛ばされぶつけた背中が酷く痛い、犯人の亡者を階段の下に蹴落としながらろくに動かない口の中で悪態を吐く。
毎回忘れて引っ掛かる自分が余計に腹立たしいが、ともかくお陰で大穴の開いた壁の向こうへとゆっくりと歩を進める。 止まったはずの心臓が痛い、そんなはずはないとわかってはいても、やはり何処かで期待してしまっている自分がいる。 ぱしゃりと水を蹴り、閉ざされた空間へ。 そこに佇む騎士は嘗ての記憶と変わらない姿で存在している、悲しくて寂しくて、儚くて美しい、孤独な姿で。 女の近付く気配に騎士が首を此方に向ける、屈みこんでその胸に手を当てれば、こほ、と咽の奥から空気の漏れる音がする、無意識に女は身を強張らせる、次に呟かれる言葉などわかっている筈なのに。 「君は…、亡者じゃあないんだな…。」 びくりと肩が震える、落胆と諦めが胸の中でもぞもぞと震えた、やはり、彼は女の知る彼ではないのだと。 「…私は、もうダメだ。…もうすぐ死ぬ。」 死ねばもう、正気を保てない、続けざまに呟かれた言葉に息を呑む、何時になく弱弱しい騎士の様子に居た堪れなくなり、思わず背に腕を回し抱き起こそうとしたが、全てを捨てた今の身体では甲冑を着た成人男性を助け起す事などできなかった。 代わりに励ますように優しく背中を叩いてやる、大丈夫だと伝えてやりたかったが、長年使われていなかった亡者の咽からはひゅうひゅうと空気の漏れる音しか出なかった。 以前の彼は此処まで弱っていただろうか、そう思考を巡らす女の前で、騎士が首を横に振り制止する、まるで無駄なのだと言わんばかりに。 頼みがある、騎士が搾り出した言葉にそれでも女は頷くしかなかった、ここで伝えられる使命こそが物語の始まりであり、女が全てを捨ててでも戻らねばならない理由だった。
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495 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:16:18.21 ID:RgBGt+MG - 伝え終えた騎士が力なく笑う、始まりの世界の最初の火の炉での彼の最後を思い出させて、それは酷く女の胸を締め付けた、よく見れば彼自身の血で青いサーコートが汚れている。
途切れ途切れの荒い呼吸も、力なく寄りかかる身体も、何もかもがあの時と似ている、忘れることなどできはしない、あの戦いの後の悲しい景色に。 「…よく、聞いてくれた…これで、希望をもって、死ねるよ…。」 死ぬなんて言わないで、吐き出そうとした言葉を呑み込み唇をきつく結ぶ、元から干からびた咽では言葉を紡ぎようがないが。 分かっているのだ、女が彼の絶望を取り払わない限り、無責任に生きてくれなどと言う資格はないのだと。 これも託しておこう、騎士が緑色の瓶と鍵を差し出す、震える手で渡された瓶にはまだ十分なエストが残っていた。 どうして、そんな疑問が湧いたがすぐに思いつく、ああ、騎士は最早生きるつもりがないのだと。 拾ったばかりのブロードソードを握り締め騎士に背を向ける、優しい彼は死後に女を襲うことを恐れていた。 大丈夫だ、そう言ってやれない亡者のこの身が恨めしかった、私が貴方の絶望を払うから。 だから、どうか生きて、私と一緒に。 「…ありがとうな。」 背中に投げかけられた言葉に肩が跳ねる、水を蹴り振り返るが、騎士は天井から差し込む陽の光に照らされながら、ぼんやりと空を見上げて佇むだけだ。 そう、騎士は女を見ていない、衰弱し目が見えないのか、それとも使命を伝えたことで興味が失せたか、それとも伝えた安堵故か、何れかは判断のしようもなかった。 分かっている、彼は女の知る彼ではない、口付けも情事も火の炉での対峙もなかったことなのだ。 祈るように死を受け入れた騎士の姿は美しかった、だが、故に余りにも悲しい情景だった、希望は、死の訪れるその時だけ存在するものではない筈なのに。 こうして使命を受け入れるのも、彼を奮い立たせる為にデーモンに立ち向かうのも、最早三度目の出来事である筈なのに、胸騒ぎが収まらないのは何故だろう。 だが、やるしかないのだ、水を吸った革のブーツを蹴って再び歩き出す、亡者の横たわる階段がそこにある。 待っていて、何度でも私が貴方の絶望を払うから、あのデーモンを倒して、巡礼者の道を拓いて見せるから。 女は歩く、三度目の世界、もう一度彼と生きる為に、今度こそ二人で生きる為に。 かつりと石ころを蹴飛ばし階段に足を掛ける。
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496 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:17:09.00 ID:RgBGt+MG - どつん
背後で鈍い音がした。
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497 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:17:54.38 ID:RgBGt+MG - 黒い森の篝火に手を翳す、ぼうと燃える火に何の感慨も湧かないままに女は冷たい地面に腰を降ろす。
壁に凭れて空を見ていた騎士の姿を思い出す、冷たい風を遮るようにそっと背後に立ってくれていた優しさも。 世界は記憶と何一つ変わらない、物語は何一つ変わらない、ただ一人の存在を除いて。 左腕の青い盾をついと撫でる、唯一つの希望も与えることの出来ぬまま、騎士は逝ってしまった。 亡者となった彼の姿を思い浮かべた、灰となり消えていく彼の、最後に女の背に回された腕の優しさがずきずきと痛む心の奥を優しく撫でてくれた。 運命に抗おうと全てを捨てた結果が、何も出来ぬまま彼を失うしかないという結末に、女はただ嗤うしかなかった。 騎士の存在を、この世界の誰も知りはしない、恐らくはこの女を除いて、誰も。 きっと、彼を失うことが女の物語の根幹にあるのだろう、それが早いか遅いかなど、きっと世界にとってはどうでもいい事なのだ。 重い腰を上げ、ゆるりと歩き出す、苔生した地面を踏み、月明かりに照らされながら谷の風の歌を聴く。 夜の湖は暗く冷たく、静かで鏡のように星の光を岩肌に映している、古い亡国の姫君と出逢ったこの場所は、いつだって女の心を湖面のように凪いでくれる。 そっとポーチに手を伸ばす、この森に咲く淡く光る花が、花の部分だけ摘み取られて乱雑に詰め込まれていた。 女は勢いよくポーチを振る、花は広く湖面にばら撒かれ、星座を描くように瞬いた。 花は不死院で手向けるつもりだったが、できなかった、二人の物語の墓標はあの牢獄ではないと、亡者となった彼が教えてくれた。 消え行く彼の亡骸を抱え思い浮かんだのは、冷たい牢獄ではなくこの森だったから。 きっと、女も騎士も、最後に意識が眠るのはこの森の中なのだろう、例え亡骸が何処で朽ちようとも。 「さよなら、オスカー。」 ポツリと呟き、女は湖に背を向けた、四つの王のソウルが女の手の中で燃えるように赤い光を放っている。 女は空を見上げた、蒼白い月の光が今はもう居ない騎士の鮮やかなサーコートを思い出させて、酷く愛おしく見えた。 物語は何処から始まって、何処で終わりを迎えるのだろう。 答える者は居ない、暗く冷たい世界に女だけが残されたまま、世界は滅びへと向かっていくだけだ。 その左腕の青い紋章の盾だけが、騎士の存在を刻んだまま。
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498 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/19(水) 23:25:58.48 ID:RgBGt+MG - 以上です。
自分でも驚くくらい長くなってしまいましたが、それでも最後まで読んでいただけた方、感想を下さった方々、本当にありがとうございました。 本当は救済ルートも考えていたのですが2までに間に合わないのと、やはりダークソウルの世界観的にこれでよかったなかなと、こういう結末にさせていただきました。 そのうちにまた何か作品を投稿するかもしれません、その時はまたよろしく御願い致します。 ありがとうございました。
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