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367 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:29:00.88 ID:E7eLOQz6 - 投稿する。
非エロ 8ifで
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368 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:30:19.35 ID:E7eLOQz6 - 今朝は外から響くしとしとという雨音で目を覚ました。
窓の外は太陽が欠片も見えない完璧な雨。 別に強く降っているわけではないが、この「特別な日」にはふさわしくないだろう。 朝、目が覚めたときに今日がその日だとはっきりとわかった。 足取りも軽く町を抜け、今日という日のために用意した場所へと向かおう。 今日の天気は雨。 正直なところ自分には似合わないと思う。 晴れが似合う男だと自惚れるつもりはないが、少なくとも曇りときどき晴れぐらいだと言ってもいいだろう。 だが、そんなちぐはぐさも自分らしいと笑みがこぼれた。 死ぬのが怖くないと言えば嘘になる。 死んだことなどないのだ、覚悟も何も出来るはずがない。 だが。 だがそれでも。 ただ、今日という日まで全力で生きてきたことを誇らしく思う。 軽やかな足取りでたどり着いたのは賑やかな繁華街を脇道へとそれた裏通り。 かつて自らが全力で走り続けた場所が見える。 ホッパーズでの三年間は正に嵐の様な日々であった。 はじめはついてないと思った、野球選手の真似事などまっぴらごめんだと。 けれでも、気がつけば虜となっていた。 結局ホッパーズからトレードされてからもう7年はプレーした。 気がつけば10年選手、チームの主軸、充実しているとしか言いようのない幸福な日々だった。 このまま一野球人として幸せに過ごすのだと、この幸福な日々が続くなのだと何の根拠もなしに信じ込んでいた。 だが、それはかなわなかった。 乾いた咳をする。 今朝は薬は飲んでいない。 背にした煉瓦造りの壁にもたれかかる。 「…おっ、と」 支えを得た背中はそこでとどまらず、身体がずるずると壁を滑り落ちる。
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369 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:30:54.48 ID:E7eLOQz6 - どうやら足が限界らしい。
自らの体重すらも支えられなくなるとは、新人の時の訓練以来、いや、一年目のキャンプ以来、か。 先日見た映画の様に、どうせなら最期はハードボイルドに決めよう、そう思って買った煙草を内ポケットから取り出して…。 「…ライターを忘れたな」 自分の抜け具合に思わず笑みがこぼれる。 最期まで我ながらどうしようもなく抜けている。 と、そこで頭上でカチリ、と音がした。 目線をあげた先には銀色のライターと、それにともった明かりと…。 「芙喜子」 「相変わらずあんた間抜けねえ、煙草買っておいて火がないなんて、煙草吸ったことないでしょ」 「お前だってないだろう?なんでライターなんか…」 「いろいろと便利なのよ、焼き切ったりなんかにね…それより…」 「…ああ」 芙喜子の言葉を遮って言う。 「今日だ」 「…そ」 返ってきた返事は素っ気ない一言。 「…私、自分が人間じゃないって気がついたとき結構焦ったのよね。今まで自分を構成して きたものが根本から崩れ落ちた感じがしてね」 「…俺もだ」
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370 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:31:41.78 ID:E7eLOQz6 - 俺たちは人間ではない。
人工的に作り出された「モノ」だった。 自らが歩んできた記憶。 親も、友人も、思い出が作り物の紛い物だと知ったときは正直かなりへこんだ。 だがそれでも俺は立ち直った、なぜなら…。 「でも二人なら生きていける、そうよね?」 自分には彼女が居たから、であろう。 自らと同じ境遇、とうてい勝ち目の見えない境遇に自ら飛び込み、彼女をも引っ張り込んだ。 世界に喧嘩を売る。 それは想像以上に辛く、しんどいものであった。 だが彼女とともに支え合って今日まで走り抜けることが出来た。 それだけは、その事実だけは紛れもなく俺のものだ。 俺自身を構成する真実だ。 唯一無二の宝物だ。 だが、それも今日までだ。 俺たちの寿命は「人間」に比べると比較的短い。 およそ四五分の一と言ったところか。 だからだいたい十代後半、よくて二十歳前後にはその生涯を閉じる。 俺はまだ生み出されてから十五年と経っていない、だがスポーツ選手は通常の人間よりも身体に負荷をかける、言わずもがな特殊部隊の訓練も、だ。 今年のペナントの最後の方は正に地獄の様な日々であった。 全身の関節という関節が悲鳴をあげ、思考能力もみるみる落ちていった。 手のひらが一杯になるほどの薬を毎日飲み続けてなんとかごまかしていた。 芙喜子にもらった火のついた煙草を深く吸い込んで、派手に咳き込む。 「映画の様には行かないな、これ、すごく不味いぞ」 思わず顔をしかめながら先端から立ち上る煙をぼんやりと眺める。
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371 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:32:22.03 ID:E7eLOQz6 - 「あんたがそんなかっこよく決められるわけないじゃない」
そう言った彼女は笑顔で思わずこちらも唇をゆがめる。 「どう考えてもC級映画の大根役者よ、あんた」 「上手くいかないもんだなあ」 大仰な嘆く様なジェスチャーで空を仰ぐ。 顔に当たる雨粒が、熱を持った様に感じるこの身には心地よい。 雨は止む気配を見せない 「ねえ、あんた言ったわよね」 「二人なら生きていける、って」 「あんだけこっぱずかしいセリフ言っておいて」 「…ほんと、こっちをたきつけるだけたきつけておいて」 「先に逝こうとするなんて…」 耳に届く言葉に力はない。 「…ほんとあんた、残酷よね」 俺は何かを言おうとして。 そして言葉は発せられる前に空に消える。 「しかも何?死に際は好きな人に看取られて、何か言い残して死ぬだなんて、私の夢の真似じゃない」 「まさに理想的ビターエンド、最高じゃない」 「でもね、それじゃあたしが困るの」 「そんな結末じゃあ、私にとってバッドエンドじゃない」 「だから私はあなたの最期を見ない」 「あなたにとってのビターエンド作りに協力する気なんてさらさらないの」
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372 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:33:25.79 ID:E7eLOQz6 - 唇にそっと触れる様な感触がした。
それははかない、消えてしまいそうな感触で…。 「…行くのか?」 見上げた姿は既に背中を見せていて。 「ええ、私はあなたがこれで死ぬなんて思わないわ。だから行くの」 「そしていつかあなたと再会することを待ち望みながら生きるの、正にビターエンドね」 「ロマンがあるでしょう?」 …ロマン、か。 確かにいい言葉だ。 「そうか、じゃあ俺もお前を探すよ。必ず、どれだけかかっても見つけ出してやる」 一息を入れて。 「それでお前にキスをするんだ。正にハッピーエンドだ」 返事はなかった。 あったのかもしれないが、今の俺の耳では聞き取れなかったろう。 路地裏には雨が降る以外の音がしなくなっていた。 もはや腕は地面にダラリと垂れ下がり、目を開いているのも辛い。 鉛の様な全身に鞭を打って、深く息を吸って、そして一気に立ち上がる。 「…は」 息を吐きながら前へと歩き出す。 なにせ約束しちまったからなあ。 前へ、前へと手を伸ばし、そして。 「…さて、行くかあ」 左手に残っていた煙草の、一口しか吸われずまるまる残っていた長い灰がこぼれ落ちた。 今日の天気は雨。 俺が過ごす、…の一日だ。
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373 : ◆FlIbQFcjKs [sage]:2014/02/17(月) 22:34:25.91 ID:E7eLOQz6 - 以上です。
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