- 【ガスト総合】アトリエロSS・part7
699 : ◆V05sleryz2HV [sage]:2014/02/03(月) 05:00:13.51 ID:wGAeqREy - 『コルセイトの節分』
「エホーマキ?」 「エホウマキです」 ロジーが報告書の作成を終え、公私のパートナーであるエスカとの雑談でその言葉は出てきた。 スレイアが研究している前時代の文献によると、毎年二月三日に決まった方角を向きながら、炊いた米に様々な具材を海苔で巻いて食べる習慣だという。 その際、自分の願い事を思い浮かべながら最後まで口を離さずに食べきると、願いが成就するらしい。 「ちなみに今年は東北東がその方角らしいです」 「でも、米と海苔ってこの辺りでは手に入らないだろ」 コルセイトの街で酒場兼定食屋『竜の拳』を経営するデュークから、米はかなり生産出来る場所が限られていると聞いた覚えがある。 水や土壌が豊かでないと育たない上に、病気や害虫に弱い為、どうしても小麦などの農作物を優先する集落が多いらしい。 海苔も海が近くないと採取できないようで、かなり内陸に位置するコルセイトとは縁が遠い食物であろう。 「あ、それに関してはハリーさんが手配してくれたみたいです。新規に開拓した流通経路を使って、コルセイトへお米と海苔を届けるようにしてくれたとか」 「そういう面で凄いよな、ハリーさん」 探検家としての才覚はどうかと思うが、そういった商業面での手腕は、本当に確かなものを持っていると改めてロジーは認識させられる。 そして一つ、気になることがあったので何気なくそれを口に出した。 「エスカは何か、叶えたい願いがあるのか?」 「え!? わ、わたしは……その……」 急に顔を真っ赤にして、目を泳がせるエスカ。 何か変な質問をしてしまっただろうか、そんな風にロジーが考えていると、がっくりと項垂れながらエスカが答える。 「ま、まだ考えてないです。……ロジーさんはどうなんですか?」 「俺か? うーん……」 言われてみて言葉に詰まる。深く考えてみても、明確な答えが浮かんでこない。 飛行船の開発や未踏地への探索が一通り終わった現状では、尚更である。 強いて言うなら、眼前にいる彼女と一緒に居られる時間が今よりあればいい。 しかしそれを言葉にするのは野暮だし、それに何より、気恥ずかしいものだ。 「俺も実際、まだ願いは決まってないな。まぁ、当日まであと一週間はあるし、その間に決めておく」 「そ、そうですか……」 「それじゃ、仕事に戻ろうか」 安堵と不安が入り交じった表情を浮かべるエスカを背に、報告書を持って開発班オフィスへと向かうロジー。 何を願うかを考えながら、階下への階段をゆっくりと降りていく。 願い事を何にするのか思案しながら、一日、二日、三日と日が過ぎていき、そして二月三日を迎えた。
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700 : ◆V05sleryz2HV [sage]:2014/02/03(月) 05:06:02.23 ID:wGAeqREy - 「諸君! エホウマキに使う米と海苔を持ってきた! 存分に使ってくれたまえ!」
二月三日の朝、声高らかにハリーは米と海苔をコルセイトへと運んできた。 調理を任されたデュークは米炊きと海苔の切り分け、更に具材の選別と巻き加工に追われていたが、その表情には嬉々としたものが浮かんでいる。 「これだけの貴重な食材を、無償で提供してくれるなんて本当にありがてえ。それに応えてこそ、男ってもんだろうよ」 そんなデュークの手によって調理された恵方巻きは、昼を少し過ぎた頃にコルセイト支部の全員へと行き渡った。 だが、それを見たコルセイト支部の人間は大半が驚愕し、それは開発班の錬金術士二人も例外ではなかった。 「……思っていたより、長いな」 「そ、そうですね」 恵方巻きを初めて目にした二人の第一印象は、『恐ろしく長い』。 ハリーの持ち込んだ米と海苔が大量だった事と、デュークの豪快な性格が相乗効果を生んだのだろうか。 ロジーの武器である錬金剣よりは短いだろうが、それでも明らかに長い。 「大食い大会を開催する人だから、豪快なものだとは思っていたけど、これまでとは……」 「と、取りあえず、食べてみましょうよ」 「そ、そうだな」 恐る恐る、恵方巻きを手に取る二人。 型崩れが起きないのは流石といったところだが、果たしてこれを一気に食べられるのかという疑問もあった。 「東北東は……こっちか」 「じゃ、じゃあ願い事を思い浮かべて……」 意を決した二人は、東北東を向きながら口へと恵方巻きを運ぶ。 「……準備はいいか? エスカ」 「だ、大丈夫です。ロジーさん」 「よし、じゃあ……行くぞ!」 「は、はい!」 口にした恵方巻きの味は美味しいものだったが、いかんせん長すぎる。 それに、これを一気に食べないといけないので、水分補給が出来ないのが苦しい。 「もぐ……もぐ……」 「もぐっ……もぐっ……」 横目でエスカの方を伺うロジー。 若干涙目になりながらも、一生懸命に恵方巻きを頬張る様子はまるで……。 ――何を考えているんだ、こんな時に俺は! 心を落ち着かせながら、一心不乱に恵方巻きを食べ進める。 何とか二人が恵方巻きを食べ終わったのは、それから数分後の事だった。 最も本人達にすれば、十分単位の出来事であったと思われる。 「終わった……な」 「は……はいぃ……」 以前の大食い大会とまではいかないが、これはこれで腹が重たくなる。 苦しい中、喉の渇きを潤わせる為に水分が欲しいのも確かだった。 「エスカ、スカッシュティーでも飲もうか」 「そ、そうですね。水分が……欲しいです」 ロジーはアトリエに常備してあるスカッシュティーの蓋を開け、二人のカップに注ぐ。 味の自己主張が普通の紅茶に比べて激しいが、この際は文句を言っていられない。
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701 : ◆V05sleryz2HV [sage]:2014/02/03(月) 05:16:23.29 ID:wGAeqREy - 「あ、ありがとうございます。ロジーさん」
「気にするな。……しかし、これで願いが叶う、か。どんな習慣なんだ……」 そう呟きながら、ロジーがスカッシュティーを飲もうとカップに口を近づけた瞬間、 「……あーっ!!」 「!? エスカ、どうした!」 唐突に大声を上げたエスカに目を向けると、彼女は頭を抱えて震えていた。 「ね、願い事……」 「?」 「願い事を思い浮かべるの、すっかり忘れてしまいました……。食べるのに、夢中で……」 「……そ、そうか」 あの恵方巻きの強烈なインパクトに、ロジー自身も願い事を思い浮かべながら食べるというのを最初は忘れかけていた。 しかし口にする瞬間、その事を思い出してかぶりついたのをロジーは思い返していた。 「ちなみに、なんて願い事だったんだ?」 「……じゃあ、ロジーさんも言ってくれますか?」 「分かった。……それで?」 「……ロジーさんと、一緒にいたいなって……」 うっすらと頬を上気させ、少し涙目になりながら呟くエスカの独白は、ロジーの理性にヒビを入れるくらいの破壊力があった。 静かにスカッシュティーを飲み干すと、彼はエスカを抱き寄せ、強引に唇を重ねる。 目を見開いて戸惑うエスカだったが、舌を絡めると段々、その表情も蕩けていく。 二人の唇が離れ、唾液のアーチが二人の間に懸かる。 息を荒くしながら、ロジーはエスカの耳元で囁く。
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702 : ◆V05sleryz2HV [sage]:2014/02/03(月) 05:20:18.47 ID:wGAeqREy - 「……俺も、そんな事を願っていたんだ。エスカ」
「……!」 一瞬、驚いた表情を浮かべたエスカは、歓喜の表情を浮かべて、今度は自らロジーの唇と自分の唇を重ねる。 互いの舌と舌が絡み合い、そのまま舌が蕩けてしまいそうな感覚に陥る。 唇と唇が離れると、ロジーの方を見上げながらエスカが話す。 「願い事を思い浮かべながら……もう一度、エホウマキを食べたいんです」 「……多分、デュークさんの所にももう残っていないんじゃ……」 「ち、違います。その……ここ……」 白い絹を思わせる色合いのエスカの手が、ロジーの股間部へと伸びる。 そんな彼女の様子を、ロジーは苦笑しながら見ていた。 「すっかり、エッチになったな。エスカ」 「こ、こうしたのはロジーさんですよぉ……」 露わになったロジーの肉棒の前に屈むと、両手で優しく竿の部分を包む。 「……願い事は思い浮かべたか?」 「こ、今度こそ大丈夫です」 そう言うと、エスカはロジーの肉棒を口へと含む。 舌先で亀頭を刺激しつつ、緩急をつけて肉棒全体を絶え間なく蹂躙する。 そんなエスカの奉仕に、ロジーの本能もやがて限界を迎えた。 「……っ! え、エスカ……出る!」 「んっ……! んっ……んっ……」 最後の一滴まで絞り取らんとする如く、肉棒に吸い付いていたエスカが離れる。 そして、ロジーに向けて笑顔を浮かべながら呟いた。 「……これで、願い事は叶いそうですね」 「そうだな」 余談ではあるがこの日、独身の男性職員が、前屈みになっていたり、トイレに入ったまま十分以上出て来なかったりもしていたらしい。 何が理由なのか、何をしていたのかは……本人達のみぞ、知るところである。
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703 : ◆V05sleryz2HV [sage]:2014/02/03(月) 05:24:27.95 ID:wGAeqREy - 以上、時事の節分ネタでした。
例によって勢いだけのSS、エロ少なめですが……楽しめていただければ、何よりです。 鬼退治は思い付かなかったので、恵方巻きにしてみました。 米は大食い大会のイベントCGでもあった気がしますが、海苔はこの世界でどうなんでしょうかね。 バレンタインネタは……思ったより苦戦しそうですが、頑張ってSSにしたいです。 それと、>>697さんのような短編エロも書ければなぁ……。
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