- 【獣人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト】
726 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/02(日) 06:07:19.83 ID:fH3mtqlU - 連投すみません。 カジキ♀×オスヒト短編 非エロ 投下逃げ。
|
- 【獣人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト】
727 :中古奴隷の人 ◆47BLRcU4Ek [sage]:2014/02/02(日) 06:09:30.23 ID:fH3mtqlU - 俺は口下手だと思う。ついでに言えば気が弱い方だ。
もうずいぶんと長いこと『これじゃ駄目だ』と自覚しながらも、その性分を変えられずにいる。 他人のお願い事を断る事も出来ない性質で、安請け合いが原因で自分の首を締めることもしばしばだ。 いつだったか、大学時代の友人にこんなことを言われたことがある。 『お前はいつか他人の借金を背負いこんで破滅しそうなタイプだな』と。 奴の言葉は、なるほど確かに的を射ていたのかもしれない。 俺はどうしてもと頼み込まれれば無碍に断れない性格だし、おまけに口下手だから逃げの口実も口に出来ず結局首肯するしかない。 良く言えば『親切で堅実』悪くいえば『主体性を待たない、根暗で地味な奴』 それが俺、佐々木正宏(ササキ マサヒロ)という男なんだろう。 25歳、地方の中小企業に務める営業サラリーマン。 到底営業職には向いていないと思える俺だけど、どうしても人数が足りないからと課長に頼み込まれて、何故か事務から営業へと回された。 人と関わるのが苦手だから事務を希望したのに、どうしてこうなった。 当然営業成績なんて伸びる筈もなく、いつも掲示板に張り出されている俺を示す縦に伸びる棒線は『今月の達成目標』と名の付く横棒線と交わることがない。 それどころか俺の名前が書かれた名札と近接していて、月毎の成績を棒線で繋げば地の底を這っているような惨憺たる有様だ。 クライアントに頭を下げ、営業部長に頭を下げ、親にまで実家に住んでいながら給料が低くて家に金を入れられないことを謝る日々。 生活の全てが、俺の胃に電動ドリルでも使ってゴリゴリと全力で穴を開けにかかってるとしか思えない。 こんな性格の俺に外回りの営業なんて無理に決まってるじゃないかと愚痴をこぼすのは既に日課になってすらいた。 しかし、わかっている。こんな状況に追い込まれているのはひとえに自業自得なのだと。 他人の『どうしても』を断れない自分自身が蒔いた種なのだということを。 俺はもし生まれ変わりというのがあったら、今度は自分の意思はハッキリと言える男になりたい。 『NO』と言える日本人。それだ! それこそが俺に足りないものだ。 その決意を胸に。 では、いま……。俺はどうしたらいいだろうか。
|
- 【獣人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト】
728 :中古奴隷の人 ◆47BLRcU4Ek [sage]:2014/02/02(日) 06:13:43.30 ID:fH3mtqlU - 「ねぇ、だからマサヒロぉ……。おねがい?」
「…………」 さぁ、どうした。俺は生まれ変わったら自分の意思をハッキリと言える男になるんだろう。 ここで己の信念を曲げるのか。あれほど自分の心に訓戒として刻み込んだ言葉を、何故、言わない? いまだ、今ここで己の真価を発揮するんだ。そのタイミングは今しかない! 「お、俺は……」 そうだ、いいぞ。その調子だ! 乾いた唇を開けば引きつるような痛みが走ったが、俺の唇事情なんぞ相手にはわからないだろう。 俺のカサカサな唇とは違ってぷっくりと赤く色づいた柔らかそうな唇が困ったようにへの字に曲げられていたとしても、俺は言うべきことを言う。 ただそれだけの簡単なお仕事だ。 「俺は……」 「うん?」 サンゴ礁が美しく見える海のようなエメラルドグリーンの艶髪が、俺の言葉を待つようにサラリと揺れた。 その瞳は懇願するように俺を見上げてきて、手元は恥ずかしそうにもじもじとしていて忙しない。 なんとも庇護欲を掻き立てられるその少女は俺のご主人様だ。カジキという種族らしい。 何の因果か、獣人が人間で人が奴隷というこの世界に落ちてきてしまった俺はこのカジキの少女に拾われた。以来、この少女の家でお世話になっている。 今俺たちがいるのは家のバルコニーだ。美しく輝く青い海に面したバルコニーで俺は……窮地に立たされていた。 「その、えっと……。そういうことは、お互いに好き合ってるというか、愛し合っている者同士でするべきだと思うんだ。だから……」 俺が勇気を振り絞ってそこまで言った時だった。 晴れ渡った夏の空のような青い瞳が、途端に雲行き怪しい雨模様へと移り変わっていく。 「なにそれ……じゃぁ、マサヒロは私のこと好きじゃないってこと……?」 「え、いや。ちが……」 しまった、言葉選びを間違えた。まずい、このままじゃ小雨では済まない。 夏の夕立は予想がつきにくいとはいえ、これは俺にだって予報できたことだっていうのに! 「マサヒロは私のこと嫌いなんだ?だから私じゃなくってお姉ちゃんとだけエッチなことするんだ!? なによそれ、酷いよ!! 私たち双子なのに、お姉ちゃんと私、なんで差別するのよ! 私だって……マサヒロのことがっ……マサヒロのことが……う、ひっく……」 「ち、ちがう! ミリア! 俺とマリアとはそういう関係じゃ……」 少女の目に溜まった涙がポロポロと滑らかな頬を滑り落ちていく。 それを見て俺は心の中で「嗚呼……」と嘆いた。 既に自分が失敗したことを悟ってしまったからだ。 「じゃあなんで毎日毎日、お姉ちゃんの部屋に行ってるのよ!」 「あれは部屋に来てくんなきゃ話聞かないってマリアがわがままを言うから……」 「うそ! 絶対エッチなことしてるに決まってる!! マサヒロを最初に見つけたのは私なのに。どうしてお姉ちゃんとばっかりエッチするのよぉぅ……!!」 「だからそんなことしてな……!」 今更悟ったところで、もう逃げることも弁解することも遅すぎる。かくなるわが身の上は、一つ……だ。 「もう知らない! ばかっ! マサヒロなんて……っ、マサヒロなんてっ! …………っ、大好きだぁぁぁぁぁぁぁーーーーー!!!」 「くぁwせdrftgyふじこlp!!??」 どっかーんとばかりに突撃をかましてきたカジキ娘の体当たりを避けられる訳もなく、俺は身体中の空気という空気の全てを排出しながら 背後に広がっていた青い青い海に身を沈めることとなった。
|
- 【獣人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト】
729 :中古奴隷の人 ◆47BLRcU4Ek [sage]:2014/02/02(日) 06:14:52.48 ID:fH3mtqlU - あぁ、不味い。俺、ツンダかもしれん。
ほらキラキラ輝く水面がどんどん離れていくよ。こうしてみると世界って本当に綺麗だな。 地球は青かった……なんてことを今しみじみ思わなくたっていいのに。いやここ地球じゃなかったか。 『マサヒロのお嫁さんになるのは私なんだもん! お姉ちゃんなんかに譲らないもん! マサヒロとエッチなことするのは私だけなんだからぁぁ!』 水の中でもどういう訳か喋ることができるミリアが俺を抱きしめながら何か叫び続けているけど、その声すらも遠くなってきた。 もう俺は何も言えずに、ただミリアの長くて美しい髪が水のうねりとともに靡く様をただ見つめるばかり。 短い人生だった……そうしみじみ思いながら。 次に生まれ変わったら、俺は自分の意思をハッキリと言える男になろう。 うん、次こそは必ず。 決して、恋の悩みを本人の双子の姉に相談するようなヘタレ男にはならないと誓おう。 ぐだぐだ悩んでないでさっさと告白していれば良かったんだバカタレめ。 相手はオツムが足りないアホの子だということを失念していたのか。 でもそんなアホで泣き虫で放っておけないような危なっかしさに惚れただなんて本人に直接言う機会はもうないんだろうな……。 あぁもう後悔したって遅い。遅いんだ。俺の思考はこの広大な海よりも深く沈んでいくんだ。 ふっ、潮水がしょっぱい……ぜ…… 『お姉ちゃんよりも私の方が気持ち良いってことわからせてあげるんだから! わかんないんだったら私たち一緒に比べて……って、マサヒロ!? マサヒロ!! やだ、私ったらついうっかり!』 ついうっかりで殺されてたまるか、と。 俺は深淵よりも暗い思考の渦に引き込まれながらアホの子にツッコミを入れるのだった。
|
- 【獣人】猫耳少女と召使いの物語18【ヒト】
730 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/02/02(日) 06:17:52.68 ID:fH3mtqlU - 以上です。空気読まず直貼り失礼しました。
ロダ動くといいですねぇ……。
|