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◆fYihcWFZ.c
女装SS総合スレ 第10話
女装SS総合スレ 第9話

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女装SS総合スレ 第10話
12 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:12:27.06 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 1/10

「たっだいまぁ〜☆」「おじゃまします」「まーしゅ」「お邪魔いたします」
 聞き慣れた明るい甘い声に続いて、鈴を鳴らすような高く澄んだ声、幼い子供の声、男ら
しく低い声が届いてきた。
「アキちゃんお帰りなさい。いらっしゃいませ」

 “私”は勉強の手を止めて立ち上がり、部屋のドアを開けながら挨拶する。
「あれ? ママたちもう出かけちゃったの? パーティは夕方からって言ってたよね?」
「うん。ちょっと早めに出て、デートして来るって」
「そっか。いつもだけど、あつあつ夫婦だねっ☆」

「挨拶くらいは、って思ってたんですけど、すいません」
「いいえ、お構いなく。押しかけてしまってごめんなさい。それで済みません。洗面所をお
借りできますか?」
「どうぞどうぞっ☆ こっちです」

 白い短いコート、白いファー、白いタイツ、透明感あふれる白い肌。
 純白の雪の妖精のような姿のアキちゃんが、子ども用の3部屋の向いにある洗面所のドア
をくるりと回りながら開いて案内する。
 ふわりと広がる白いコットンのマイクロミニスカートから、ほっそりした長い脚が伸びる。
 駅からここまでご一行を案内する道中、さぞかし男たちの視線を集めたことだろう。

「すいません、使わせていただきます」
 爽やかな笑顔で挨拶しながら、洗面所に入っていく初見の男性。アキちゃんとお揃いのよ
うな白コートに桜色のスカート姿の、1歳くらいの乳児を宝物のように腕に抱えている。

 モデル業界に普通にいそうな背丈と容貌の人だった。
 たぶん180cmのパパと同じくらいだろう。
 少し感覚が麻痺してるけど、一般レベルで言えば充分背も高いしハンサムな部類。

 それから少し遅れて、こちらはモデル業界でもなかなかいないレベルの美人が会釈する。
 白いコートを手に取り、桜色のセーターとスカートに身を包んだ綺麗な女性。
 アキちゃんが雪の妖精とすると、こちらは桜の妖精。衣装だけでなく、透明感溢れる血色
の良い肌の色もそれを思わせる。冬の精と春の精、という考えが少し浮かんだ。

「ご無沙汰してます。えぇと、悠里さん? 愛里さん? ご免なさい、見分けが付かなくて」
「私たちを一目で分かるのって、世界でも5人しかいないから気にしないでいいですよ。
 私は愛里です。お久しぶりです、篠原さん」

 うがい手洗いを済ませた夫妻にタオルを手渡し、「愛里お姉さま、みんなをキッチンに案
内してあげてね」というアキちゃんのお願いに従って廊下を歩く。
「広い家なんですね」
「父が独立した時、SOHOの事務所として使ってたくらいですから。220平米、7LDKだそうです」

「うわ。……うちの2倍近いな。階段とかないから、住める場所は倍違うかも」
「1戸建てにお住まいですか? いいですねえ」
「義父が建てた家に、一緒に住んでるの。でもここお掃除とか大変じゃないですか?」
「うちの場合はもう、家政婦さんにほとんど全部お任せ、って感じですね」
女装SS総合スレ 第10話
13 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:14:14.38 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 2/10

 コートを脱いでエプロンをつけたアキちゃんと交替して、私は自分の机に戻る。
 以前は毎週あった土曜の補修もこの時期はもうなくて、皆は受験本番前の追い込み時期。
 自分は推薦に通ったので受験はないけど、高校最後の試験がもうすぐだ。お姉ちゃんはお
仕事で、私とアキちゃんは今日はお休み。でも明日は朝からお仕事。そんな一日。

 “僕”も雅明お義兄ちゃんも、今はほとんど全部の時間を女の子として生活している。
 お仕事の時はもとより、家での日常生活も、外出の時間も、寝る時も。
 例外なのは学校に行くときくらいで、なんだか『男装』している自分や義兄の姿に吹き出
したくなる時さえあるくらいだ。

 今いる部屋も、お姉ちゃんの部屋よりもずっと女の子女の子した可愛らしい部屋。
 アキちゃんと相部屋というのもあるけど、内装もピンクでぬいぐるみが並んでる。アロマ
テラピーの香りが漂い、加湿器が静かに音を立てる、そんな空間。
 でも“俊也の部屋”にいる時より自然で落ち着くような気がする。

 横を見ると目に入る、等身大のスタンドミラー。その中にいる美少女と目があう。
 オフホワイトにブルーとピンクの花柄の入ったゆったりとしたセーターに、空色でミディ
丈のセミタイトスカートを合わせた飾りのない少ない衣装。
 それでもその“少女”の華やかさ美しさは群を抜いている。
 ぴんと張った背筋、綺麗に揃えた長い脚。小さな頭、細い首。

 僕が彼女に笑いかけると、鏡の中の少女は謎めいた笑みで見返してくる。
 ここにいる“僕”が自分なのか、鏡の中の“私”が自分なのか。──急に自信が揺らいで
きて、スカートごしにあるはずの、自分の股間にそっと手を差し伸べる。
 今日はタックをしてないので分かる、温かいお○んちんの手触りになぜかほっとする。

 一度大きく呼吸をして、机の上に再度視線を戻す。
 でも気になるのはキッチンでお菓子を作ってるはずの、アキちゃんと篠原ご一家のこと。
 あのブライダルショーのモデルたちの間では、ショーのあとも時折メールなどでのやり取
りが続いていた。
 特にアキちゃんと篠原さんの間では、お菓子のレシピとかのやり取りがあったみたいで、
それが今日の訪問に繋がったという話を聞いていた。


「愛里お姉さま、一息いれましょ? お菓子いーっぱい出来ましたよっ☆」
 いつの間にか勉強にかなり没頭してたみたい。アキちゃんの呼び声に少し驚きながら顔を
上げる。時計の針は2時半を指していた。
「あっ、アキちゃんごめんね。ダイニングで食べるの? うん、すぐ行く」

 食卓には色とりどりのお菓子が並んで、甘い匂いを漂わせていた。
「かぼちゃのタルト、ほうれん草のカップケーキ、にんじんのクッキーを作ってみました。
……ちょっとお野菜の旬を逃しちゃったのが残念だけど」

 白いコットンの上下に、ピンクのエプロンをつけた姿のアキちゃんが、お茶を注いでくれ
ながらそんなことを言う。
「これ皆さんで作ったんですか? とっても美味しそうですね。お菓子屋さんに並んでても
少しも変じゃないくらい。見た目にも華やかでいい感じです」
女装SS総合スレ 第10話
14 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:16:50.40 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 3/10

 全員席につき自己紹介を軽く済ませて、「頂きます」と、まだ熱いお菓子を頬張る。
 私の対面に座る、こげ茶色にクリーム色のセーター姿のまだ若い父親、篠原俊彰さん。
 スポーツをやりこんでいるのだろう。肩が広くて厚い。動きもキビキビしていて見ていて
心地よい。本職のアスリートと言われても驚かない感じ。

 モデルの動きじゃないのは分かるけど、男性モデルはピンキリだから、背丈的にも容姿的
にもモデルやっていても不思議ではない。
 でも、『としあき』か。
 ……『としや』と『まさあき』を足して2で割ったような名前だと、少しおかしな気分。

「でも本当に凄いキッチン。オーブンとか本格的だし、お砂糖だけで10種類あるのにびっ
くりしちゃった」
 その隣、アキちゃんの対面に座っているのが、奥さんの篠原玲央さん。桜色のセーターに
ワンピースの良く似合う、とても女らしい美人な人だ。この人と直接会うのはショー以来。

 若々しい印象の人だから最初に子どもがいると聞いた時はびっくりしたけど、こうして娘
を抱いている姿を見ると納得できる。
 優しくてしなやかで、それでいて母としての強さもあわせ持つ、神秘的なまでに完璧な、
『母性』の象徴のような美しい女性。

「はい、真弓ちゃん、あーん」
「あーん!」
 そのうっとりするくらい美人の母親が、綺麗に揃えた両脚の上に座る、愛くるしい娘相手
に出来たてのケーキを食べさせている。

 1歳1ヶ月になるという、この女の子は篠原真弓ちゃん。
 大人しくて賢くて気立てが良くて、黒い髪と瞳が色白肌によく映える。綺麗な母親の血を
色濃く引いて、将来凄い美人になる片鱗を早くも覗かせている。
 幼児モデルになれば引っ張りだこなことだろう。

 母親と同じ色同じデザイン、サイズだけが異なる桜色のワンピースとセーター姿の幼女。
 可愛いもの大好きなアキちゃんなんて、もうメロメロに魅了されちゃってる。
 そこだけ春を迎えたかのような、優しく柔らかな華やぎに溢れた桜色の空間。
 見守る父親の目線も暖かで、とても素敵で完璧な『一家の肖像』が目の前にあった。

「なんだか、すっとする、不思議な味のするお茶だね。ハーブティーかな?」
 私たちに視線を戻しつつ、俊彰さんが口にしていたカップを持ち上げながら言ってきた。
「ルイボスティーです。色々試してみて、これに落ち着いた感じですね」
「あ、名前だけは聞いたことある。本当、知らないことびっくりすること多いなあ」

 真弓ちゃんは母親の艶やかな黒い髪や素肌が殊のほかお気に入りのようで、素敵な笑顔で
ケーキを食べながらも、小さな小さな手でペタペタと撫でている。
 “女同士”の気安さを装ってお願いしたら、私も触らせてくれるんだろうか。……って。

「……あ、玲央さん。今化粧してないんですか」
「ん。この子が触るから、あんまり出来ないの。口紅塗ってるくらいかな」
「はー。それでこの肌ですか。凄いなあ。うらやましい」
女装SS総合スレ 第10話
15 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:17:57.15 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 4/10

 すぐ近くにある1歳児と、ほとんど変わらない肌の質。
 まるで天使絵を思わせる、赤ちゃんのような柔らかそうなお肌だった。
 赤ん坊のお気に入りになるのも良くわかる。

「でも、お二人ともすっごい肌綺麗じゃないですか。特にアキちゃんなんて、私より色が白
い人って初めて見るかも」
 「どうかな?」と首を傾げて、袖をまくって差し出すアキちゃん。
 玲央さんは少し悪戯っぽい笑顔で、華奢な腕をそれに並べてくる。

 両方とも『色白』だけど、『色白性』が違うのが何だか興味深かった。
 血の色を映して桃のような印象の玲央さんと、陶器みたいな白さのアキちゃんの肌。

 ──でも私は、エッチの時にはこの白いアキちゃんの肌がピンクに染るのを知っている。

 それを思い出すと、履いているベージュの女もののショーツ、水色のスカートの柔らかい
布地を持ち上げて、思わず前が充血して来るのを覚えた。
 アキちゃんがこちらを向いてにっこり笑ったのは、私の思考を見抜いたからなのかどうか。
 向かいに座る篠原一家にはばれてないようだけど。

「そういう愛里ちゃんも、今すっぴんだよね?」
 女同士(?)の会話に口を挟めずにいた俊彰さんが、そんなことを言ってくる。
「あっ、はい。私もリップ塗ってるだけですね。今日は一日オフなので」
「それでこんなに綺麗だもんなあ。芸能人の素顔を間近で見る機会あるとは思わなかった」

「こんな美人の奥さんを横にして、他の女性の容姿を褒めるのは感心しませんよ」
「いやでも、愛里さん綺麗だって、私も本当にそう思うもの」
「あたしもね。来るときに『こんな可愛い女の子の顔を近くに見ながら歩くのは、初めての
体験だ』って言われちゃった」

 今日アキちゃんが履いて出かけたのは8cmのヒール付きのブーツだったから、成程ちょうど
同じくらいの視線の位置だっただろう。
 モデルでは普通レベルでも、確かに一般ではなさそうな体験。……でも。

「まあ、俊彰のとこは、一族みんなでこんな感じだから。あのね、義父も義兄も、初対面で
こんな感じで私のこと褒めてたの。これはもう、そういう遺伝子なのかな」
 私の懸念を笑い飛ばしながら、玲央さんは言う。対する俊彰さんは少し居心地が悪そう。
「私はそこまで含めて好きだけど、でもいつか勘違いさせた女の子から刺されないか心配」

 ひとしきり笑ったあと、俊彰さんがふと気づいたように尋ねてくる。
「そういえば、愛里ちゃんたちのお父さんはどんなお仕事なされてるかた?」
「ちなみに、会話の流れが悪くなると、こうやって話題を反らすのも遺伝ね」
「……えぇと、父は弁理士やってます」

「なるほど。特許事務所の所長さんか。それなら余裕あるだろうなあ。納得した」
「あら、ご存じなんですか。大抵『ベンリシやってます』『便利屋さん?』『まあ、そんな
もんです』『へえ。便利屋さんって儲かるのね? 知らなかった』までセットなのに」
「……ごめんなさい、私知らないです。本当にその反応するとこでした」
女装SS総合スレ 第10話
16 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:20:07.43 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 5/10

「ああ、特許とかを取得するときの申請を色々行ってくれる代理人、かな。僕も仕事でお世
話になってなかったら知らなかったと思う」
「へえ、パパってそんなことやってたんだ」
「なんでアキちゃんが知らないかな。事務所に顔出したことあるでしょ?」

「うん舞さんとか、色々よくしてもらった。でも何やってるかとか考えたこともなかったな」
「もう、この子は。共働きで私たちも稼いでるから収入はあるけど、出てくほうも大きくて。
 ……篠原さんの家はどんな感じですか?」

「俊彰は近所の小さな会社で新商品の開発とかもしてるの。知人が多いのと、あとうちから
徒歩5分で残業がほとんどないから、一緒にいれる時間が多いのがいい職場かな」
「サラリーマンなんですか。スポーツマンかモデルかな、って悩んでたんですが」

「僕は昔水泳やってたけど、肩痛めて以来スポーツは全然。体力維持するのがやっとって感
じかな。あとモデルなんてとてもとても……けど玲央はモデルもやってたよね?」
「モデル、っていうのかなぁ。友達の親御さんのエステで、寝そべって撮影しただけだし」
「エステですか。なるほど。この肌なら宣伝効果もばっちりじゃないですか」

「まあ、そこそこにはあったって聞いたかな。アキちゃんもエステの話とかないの?」
「はいっ。今度行きつけのエステで撮影があるんですって」
「へぇ。本当色々活躍中で凄い。……そういえば、この間コピー機のCM出てなかった?」
「あ、ありましたねえ。あの撮影はほんっとーに面白かったです」

「やっぱり。黄色いバレリーナの姿で踊ってるのアキちゃんだよね、ってびっくりしたもの」
 その言葉に、アキちゃんと顔を見合わせて、ぷっと吹き出す。
「あれ? 私間違った?」
「それ、正しいけど、間違いです。……食べ終わったら一緒にそのCM見ましょっか」

 食べながら会話していたとはいえ、まだまだ机の上にはお菓子が残っている。
 見た目的に一番見栄えの綺麗なタルトに手を伸ばし、口にしてみる。
「あら美味しい。でもアキちゃんの味じゃないな。玲央さんお菓子作り上手いんですねえ」

 私のコメントに、さっきの仕返しとばかりに顔を見合わせて吹き出すお似合い夫婦。
「うん、ありがとう、って言っておくべきなのかな?」
「愛里お姉さま、それ、俊彰さんの作品ですよぉ」
「あらら、ごめんなさい。そうなんですか。びっくりしました」

「道具も素材もとてもいいから、いい出来栄えにできたよ。口にあえば何より、かな」
「俊彰さんすっごいんですよ。玲央さんと真弓ちゃんのセーターも手編みですって」
「へぇっ。手編みだったんですか。尊敬です。このタルトも本当に美味しいですし」
 男1人に女子?4人いる食卓。何気に一番女子力高いのは、実はこの野郎だったのか。
 ……いや、こっちにいる『女子』2人も、本当は野郎だったりするわけだけど。

「ほら、このケーキも絶品だし。んー、おいしーよぅ。どうやったらこの味が出せるのかなぁ」
「アキちゃんって、本当に美味しそうな顔して食べるのねえ」
「そうそう。前『瀬野3姉妹で鎌倉旅行』って収録があって、私たち一生懸命コメント考え
て味の説明したのに、オンエアされたのはアキちゃんの美味しそうな顔だけって、ってのが」
女装SS総合スレ 第10話
17 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:21:44.21 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 6/10

 お菓子を食べ終わって、残りはご近所さんに配るために包んで、篠原一行をダイニングの
向かいにあるリビングに招き入れる。
 魔改造が進みすぎたせいで最近家族以外を入れていなかった場所だ。
「あ、ベランダから外、眺めてみます?」

 あちこちに備え付けたカメラをキョロキョロ眺めている一家を、そのまま外に招く。
「うわ、凄いいい眺め。足元に緑の公園があるのっていいなあ。海も見える」
 10年以上ずっと慣れ親しんできた14階からの眺め。それを新鮮に喜んでくれる人を見
るのは、割と好きだったりする。

 外を眺めてもらってる間にCMのディスクを探し、一番大きなモニタに電源を入れる。
「ありがとう。こんな高いところからの景色見たのは生まれて初めてかも」
「マリンタワーのほうがもっと眺めいいですよ? 気に入ったら寄って行ってください……
ただこれから遊園地に行くなら、ちょっと寄りにくいかな」

「……このカメラでポーズの練習とかしてるの? はぁ。やっぱりプロは凄いのねえ」
「ここまでしてる人は普通いないと思います。うちは凝り性が揃ってるから」
 20帖分の広いリビングの八方向+斜め上に取り付けられたカメラと、壁の一面をほぼ埋
め尽くす勢いで鎮座する9個のモニタ。

 不安感を覚える人もいるみたいけれども、この夫婦は興味深そうにしているだけだった。
 モニタの反対側の壁にあるソファにかけてもらって、再生を開始する。

 真紅のドレス姿の妖艶な黒人美女、オレンジ色のサリーを着たインド人美人、ひまわりの
花のような黄色いチュチュ姿の国籍不明の幼い美少女、緑色の瞳とそれにあう姫ドレスを纏っ
た白人の美少女、青いサンバ衣装姿のブラジル人美女、藍色のアオザイ姿のベトナム人の美
少女、紫の大振袖の日本美人。

 虹の七色の衣装に身を包んだ7人の美女・美少女たちが、日舞やワルツ、衣装にあったダ
ンスをくるくると優美に舞い踊る。そんなコピー機のCM。それを何回かリピートする。
「うーん、『正しいけど、間違い』ってなんだろう……?」
「……なるほど。『正しいけど、間違い』か。アキちゃん、君、ほんっとーに凄いね」

 気付いたのは俊彰さんのほうが先だった。感心したような声が漏れる。
「え? 何、何?」
「教えちゃっていい? ……黄色いバレリーナの子がアキちゃん、ってのは正しいけど、他
の6人も全員、アキちゃんなんだ」

「はいはーい。大正解。色んな衣装が着れて、とっても素敵なお仕事でしたっ☆」
「ふぇっ? えっ? ぇぇえっ? どう見ても別人じゃない」
 再度リピートすると、混乱していた玲央さんもようやく納得してくれたようだった。
「わぁ……気付かなかったって結構ショック。でも本当に魂からその人に成り切ってる感じ」

 してやったり、という顔で満面の笑顔になるアキちゃん。
 メイクや特殊メイクの力を借りて色々な女性に完璧に成り切って、それぞれ数秒間ずつと
はいえ十分『画になる』レベルの舞踏を演じる、大変な仕事。
 それを“面白かった”の一言で済ませるアキちゃんって、やっぱりすごいと思う。
女装SS総合スレ 第10話
18 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:22:39.46 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 7/10

「姉も、これ見て『完・敗』って言ってましたからねえ。女優として格が違いすぎるって」
「姉って悠里さん? 私もドラマ見させてもらったけど、凄い演技力だったと思うよ。周り
の人にも聞いてみたけど、かなり評判良かったし」

 夏に撮影した大正の探偵ものドラマはオンエアされて、それなりの評判を得ていた。
「私も満足していいと思うんだけど、でも本人は不満たらたらでしたよ。
『初出演にしては良かった』『モデル出身でここまで演技力があるとは』『凄い熱演だった』
 ……全部本人にはグサグサきてたそうで」

「そんなものなのかあ。高みを目指す人って、やっぱり凄いのね」
「でもでも、あたしお姉さま尊敬しますよっ。……だってあたし、10行以上の台詞を覚え
られないですもん」
 唐突な告白に、周囲の空気が一気に弛緩した。


 優しい旋律が空間を満たす。
 最近の芸能界では聞いたこともない、人間の喉から出てるとも信じられないような天使の
歌声。神秘的なくらいに澄み切った子守唄。
 お菓子を食べた後少しウトウトしていた真弓ちゃんが、心地よさそうに寝息を立て始める。

 会話の流れで彼女を抱っこしていたアキちゃんも、同じようにうっとりと目を閉じる……
と思ってたら、そのまま眠りに入ったよう。
 縦に並ぶ、無垢で無邪気な愛くるしい寝顔。まるで幼い仲の良い姉妹のようなシーンに、
思わず口許がほころぶ。

 白いタイツに包まれた細い長い脚と、ふんわりとした白いコットンスカート。フリルとリ
ボンのついた可愛いデザインの白いブラウスの姿の愛くるしい“私”の妹。
 でも本当は、これはこの間成人式も済ませた“僕”の兄で。
 何が『本当』なのか、自分にはもう、すっかり分からなくなってしまっている。

 その膝の上でまどろむ桜色の幼女。
 それを愛しそうな視線で見つめる、魂同士で固く結びついたような一対の夫婦の姿、一家
の肖像。『本当』の家族。
 その前で偽りの姉妹を演じる、自分たちが何故か恥ずかしくなる。

「綺麗な歌声ですね……魂が洗われるようです」
「お粗末さまでした」
 一礼のあと沈黙。何か言いにくそうにしてるので、思い切って切り出すことにした。

「……ところで、ご相談って何でしょう?」
「あれ? 俊彰。何か言ってたの?」
 半分当てずっぽうだったけど、正解だったらしい。

「いえ、お菓子作りのためだけに、1家3人で来るって変だな、って少し思っただけです。
真弓ちゃんのことですか?」
「……テレビ見てる時も思ってたけど、愛里さんって本当に頭の回転早いのね」
 そう言って言葉を探す様子の玲央さん。しばらくして切り出したのは意外な言葉だった。
女装SS総合スレ 第10話
19 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:23:54.19 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 8/10

「間違ってたらごめんなさい。愛里さんって、性同一性障碍のかたなんですか?」
 私も少し考えたあと、言葉を返す。
「私の心が男なのか、ってことですか? 姉はよく男勝りって言われますけど……私はそん
なこと考えたこともないです」

「そっちじゃなくて……うん、やっぱりそうですよね。ごめんなさい、私の思い違いでした」
「どうしてそんなことを思ったのか、うかがってもいいですか?」
「……本当のこと全部打ち明けないと、相談にもならないと思うんだ」
 みたび沈黙に入る玲央さんに、それまで彼女を見守っていた俊彰さんがそっと言う。

「そう……ですね。ちゃんと全部説明します。
 まず、私自身がGID──性同一性障碍、心は女だけど、身体は男なんです」
 思わず上げそうになった悲鳴を、真弓ちゃんとアキちゃんの寝てる前だと気づいて咄嗟に
手で口を塞いで押しとめる。

 だって、だって!
 自分が生まれてきて多くの女性に会って、その中で一番『女らしい』人と思っていた相手。

 小さくて綺麗な手も足も、卵型の顔も、丸い額も、描いてもないのに優しいラインの眉も、
思わず触りたくなるような細くて豊かな黒髪も、高く澄んだ声も、柔らかそうな肌も……胸
と腰はやや小さめだけど、それを入れてもまだ充分女らしい女性。
 仕草も、物腰も、“我が子”を扱う優しい気遣いも、びっくりするくらい女らしい人。

 それがまさか女装した男だなんて……
 いや、ごく身近に近いレベルの女装した男がいるし、何より自分自身が女装男子なのだ。
 信じない、というのもそれは変な話だろう。

「じゃあ真弓ちゃんは? もしかして俊彰さんが実は女で、俊彰さんが生んだ子どもとか?」
 私の質問に、音を立てずに大笑いしている俊彰さん。流石に違ったのか。
「真弓は、私の姉の子どもで、血筋的には甥にあたる子です。俊彰さんの子ども、ってとこ
ろは正しいんですが」

 ……『甥』?
 ということは、気持ちよさそうに寝息を立てる、母親の手作りという桜色のワンピースと
父親の手作りの同色のセーターを着た愛くるしい幼女は、実は男の子ということか。
 信じていた『本当』が、すべて崩壊していく感覚に悩まされつつ、ひとまず先を促す。

「あのブライダルショーは、最初に話が来たとき、『GIDの人だけのショー』ということだっ
たんです。私は男ということを隠して生活してるので『GIDと公表するなら参加できません』
と断ったんですが……
 そのあと『GIDなことは徹底して誰にも明かさないことにしたから、その条件で出てくれ
ないか』って再度勧誘があって、断り切れなくなって」

「それで私も隠しているだけで、実はGIDじゃないかと疑ったと」
「ええ。……愛里さんは本当にGIDじゃないんですよね?」
「はい。違います」
 それなら断言できる。僕の基本のメンタリティは完全に男性のものだ。
女装SS総合スレ 第10話
20 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:25:27.98 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 9/10

「玲央さんのところにそのショーの話を持ってきた人って、誰だったんですか?」
「……うーん、それも話してしまいますね。私の実の父です。この人も実はGIDで……変な
話なんですけど、うちの家系はどうも先天的にそういう人が生まれやすいみたいで」
「……なんとも想像も付かない世界ですね」

「朝島慶子って名前で、『美人すぎるおネエ系メイクさん』として一度だけテレビにも出た
んですが……流石に知らないですよね」
 『GIDの人』を集めていた誰かがその人に白羽の矢を立てて、でも『彼女』は参加を辞退
して。自分の代わりの参加者として『娘』を紹介した。──そんな流れだとのこと。

「まあ『GIDの人だけのショー』って企画が没になっても玲央さんをモデルにしたい気持ち
は分かります。女性モデルに混じってもトップレベルですもの」
 『瀬野愛里=男』ということを知る人間は最小限にする必要がある。こうも信頼して打ち
明けた相手を騙すのは嫌だけど、しょうがない。内心言い訳しつつ、誤魔化す言葉を探す。

「ん? 何、雅明? ……へ? あ、そうなの?」
 なのに、それまで寝入っていたアキちゃんが、唐突に寝言を言いながら目を覚ました。
「ええとですね、玲央さん。『GIDの人だけのブライダルショー』ってコンセプト、別にな
くなったわけじゃないですよ」

 起きたばかりの寝ぼけ眼のまま会話に入ってくるアキちゃんに、3人の視線が集まる。
「あたしは心のことは分かんないけど、あの時の花嫁さんって、お姉さま1人以外はみんな
男の人だったし、花婿さんは全員女でしたもん」
「……もうどこから驚いたら分からないんだけど、まずアキちゃん、あなた男なの?」

「お恥ずかしながら、そうなんです」
「一人だけ女な『お姉さま』って、愛里さんのことでいいのよね? じゃあ悠里さんも男?」
「いえ、男の子は愛里お姉さまのほうですよ?」

「私の場合、心も体も男なので『GIDじゃない』って言葉に嘘はないんですが……ごめんなさ
い。誤魔化すつもりでした。でも少なくとも4月まで他の人に言わないでくださいね?
 男だとばれちゃうと、高校中退になって大学にも入れなくなっちゃうので」

「わ。思ってたより凄い状態なんだ。……ん。約束する。お墓に入るまで絶対に言わないか
ら安心してね。で……ほかの花嫁役モデルの残り2人も男の人ってことでいいの?」
「それで花婿さんが女の人で。そんなショーなのに、普通に心も体も女なお姉さまがなんで
花嫁してたのかは、前々から不思議なんですが」

 あのときのメンバーを思い出そうとしてみる。
 花嫁役の他の2人が性別男だというのは、玲央さんが男ということを受け入れたあとだと
まだ幾らかは受け入れやすかった。それでも十分ショッキングだけど。
 それに加えて、花婿役のあの2人が女とか。

「でもなんでアキちゃんは、そのことを知ってるのかな?」
 直接本人たちに立ちあってないからだろう。
 混乱しまくってる私と玲央さんより一足早く立ち直った俊彰さんが質問する。
「いえ……だって普通、男か女かくらい分かりません?」
女装SS総合スレ 第10話
21 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:26:28.19 ID:ov+qToF7
『瀬野家の人々』 篠原家の人々-1 2014/1/25(土) 10/10

「いや全然。僕もさっきまで、アキちゃんたちのことすっかり女の子だと思い込んでたもの」
「むー。そんなものなのかなあ」
 しばらくそんな会話を聞き流して、ようやくまともに考えられる状態になってくる。

「ほら僕、前からお姉ちゃんの代わりで『瀬野悠里』としてよく雑誌の撮影とか出てたし。
 もしアキちゃんみたいに鋭い人がそれを見てたら、『瀬野悠里=女の子の振りをしてる男
の子』と認識してても不思議じゃなかなと」
「おぉ、なるほど。その通りですね。やっぱり愛里お姉さま鋭い。頭いい」

 いや、僕は『アキちゃん』ほど鋭くもなんともなかったわけなんだけども。
「本題まだでしたよね? 真弓ちゃんがGIDだから相談に乗って欲しいってことですか?」
「ん。鋭いなあ。でもその一歩前で、真弓がGIDかどうか確信が持てないから、どうなのかを
知るための相談に乗ってほしい、っていうところなの」

「真弓の双子の姉の忍は、ちょっと男勝りでやんちゃでも普通に女の子なんだけどね。
 でも真弓のほうが、父親としては情けない限りだけど判断が付きかねる状態で」
「こんなピンクの服着せてるのは、この子が男の服着るのを嫌がるからなんだけど、でも女
の子の服が好きなのか、私の真似をするのが好きなのも分からなくて」

「でも、もしこの子の心が本当に女なら、女の子として育てるんですか?」
「「もちろん」」
 思いっきりハモって断言されてしまった。
「言ったように、うちは元々そういう家系だから。それは生まれる前から話して決めてたの」

「男・女どっちでも通用する名前を探して、それで『真弓』『忍』って名付けたわけだしね」
「あと真弓の場合はもう一つ由来があって、私の大学の1年後輩の麻由美ちゃん、って子に
対する感謝の意味もあるけど」

「でもそういうことなら……そうですね。まずは玲央さんが、ちょっとだけ男っぽい格好し
て反応を見たらどうでしょうか。
 ジーンズ姿のママさんとか結構居ますし、あんな感じの服で」

「私の場合どうしてもヒップラインが男だから、パンツを履くとばれないか心配で。実は前
に1度ヒップラインで見破られたことがあって。
 ……真弓のためなら、そのくらいのリスク、乗り越えないといけないのかな」

「ヒップラインを誤魔化すアイテムやテクニックは色々ありますから、そこが不安でしたら
教えます。まあ、玲央さんならそんなのなくても大丈夫だと思うんですが」
「けど男か女かだなんて、そんな重要なことなのかな? 男とか女とか関係なく、『あたし
はあたし』だし、『真弓ちゃんは真弓ちゃん』だもの。それでいいと思うんだけどなあ」

「それは……うん、そうだね。2人とも、素敵なアドバイスありがとう。あなたたちから2
人からの言葉だものね。重みが違うわ」

 他にも思いつく限り、色々アイデアを出し合ってみる。
 半分以上しょうもない案だったと思うけど、それでも自分の浅はかな考えが、真弓ちゃん
の一生に少しでも助けになればと、半ば祈るように。
女装SS総合スレ 第10話
22 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:30:55.73 ID:ov+qToF7
随分長い間投下できずにすいません。久々の新作です。

他の作品を書いてはストップしたりとか繰り返していたりしたのですが、やっぱりこのメンバーは
動かしやすくてありがたいです。

とはいえ、説明ぶちまけるばかりであまり萌える描写も乏しくてすいません。
後半部分は近いうちに。
女装SS総合スレ 第9話
421 : ◆fYihcWFZ.c [sage]:2014/01/25(土) 08:59:16.72 ID:ov+qToF7
「シゾのお薬」がシリーズタイトルなのか章タイトルか不明でしたので、とりあえずシリーズタイトル扱いで
登録しなおしました。ダークでズブズブはまっていきそうな感覚がいい感じです。

>>417
どっちの作者さんか(それともスレ誤爆か)特定不能ですが、なかなかいい感じだと思うんですけどね。
続きを読みたいです。


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