- ドラマ『boss』でエロパロ5
274 :味噌汁[sage]:2014/01/15(水) 22:39:58.44 ID:ejj0hGS9 - 「好きだな、好きだ。」
ついに言ってしまった。 今までも遠まわしにあいつへの思いを伝えたことなど数えきれないほどある。だが、相手は絵里子だ。 気づかれずにスルーされた。別にそれに不満を感じていたわけではない。 むしろそうすることで20年も変わらず悪友でいられたんだ。感謝すらしている。 互いに軽口をたたきあい、酒を飲み、仕事の相談を受ける。そんな関係が心地よかった。 それがどういうわけかぽろっと、まさにその言葉がぴったりなほどあっけなく、 20年言えずにいた「好き」の言葉が、俺の口から零れ落ちた。 あいつの反応に思わずごまかしてしまったが、そのせいなのか、なんだかずっとフラれた気分だ。 絵里子とは仕事でいくらでも顔を合わせる。二人きりになることもざらだ。 なんてこともなかったその時間が今はどこか気まずい。我ながら中学生かと言いたくなる。 今日も今日とて参事官室で絵里子と二人仕事の話をしていた。 ひと段落して、静寂が二人の間を流れる。 そろそろ、「じゃ、そういうことで。」と絵里子が退出するはずだ。 名残惜しいようなほっとするような複雑な思いが野立の胸を支配するが、そのことにまた自分の幼さを感じる。 どうしたんだ、俺。男の中の男の名が廃れるじゃないか。 「ねえ。」 脳内で明るいチャラ男を復活させつつあった野立に絵里子は振り向きつついつもとは違う声をかけた。どこか悩ましげだ。 「ずっと考えてたんだけど、あんたほんとに私のこと好きなんじゃない?」 思考停止。 何を言ってるんだこの女は。今更気づいたのか。 というかそれを聞いてどうすんだ。もう茶化す気はないぞ。お前はそれでいいのか。 微妙にまとまらない頭で今後のセリフを考える。 まーた、それかよ。どんだけ俺のこと好きなんだ、絵里子ちゃんは? まず頭に浮かんできたのは今までと変わらない軟派男野立のセリフだ。 もう自分の好意を抑え込む必要もない。現についさっきまできちんと答えることにしたじゃないか。 それでもやはり俺は臆病らしい。今までの関係が恋愛関係というある意味陳腐なものに成り下がるのが怖い。 いや、それ以上に恋愛関係にすらならず、ただの上司と部下という関係になるのがもっと恐ろしい。 女々しい思考を振り払い、ひと思いに野立は言った。 「ああ、好きだよ。悪いか。」 「ふーん。いつから?」 絵里子は腕を組んで俺のいない、明後日の方向に顔を向けている。呼気が若干荒く、怒りをたずさえているようにも思える。 絵里子らしい高圧的な態度、物言いながらその顔に若干の照れが含まれているのを見逃す野立ではなかった。 勝利を確信したのか男は女を背後から抱き寄せた。 「出会った時から。」 若い子たちはもういいの?ああ、十二分に味わった。ま、行きつく先は味噌汁ってことだな。はあ?何それ。私味噌汁なの? 毎日飲んだって飽きない。まだ一杯も飲んだことないくせに。そうだなー。ちょうど今飲みたくなってきたな。 ここでお初ってのもなかなかそそるな。ちょっ馬鹿言ってんじゃないわよ。仕事中でしょうが! そんなこたあ分かってる。けどな、考えてもみろ。 たとえこの状況が見つかったとしても絵里子が迫ってきたって言えば俺の出世が危ぶまれることはない。 ほんっと、気持ちいいほど自己本位ねー。呆れた。 日常的な会話がひとしきり続いたかと思えば、男女は短く笑いあい、20年の思いであふれた濃厚なキスを交わした。
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