- ロボット、アンドロイド萌えを語るスレ:α11
707 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/13(月) 17:31:15.20 ID:Uo0PtEtw - 投下します
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708 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:32:15.31 ID:Uo0PtEtw - どこをどうやって逃げてきたのか、自分でもよく覚えていない。
気がつけば森の中で仰向けに倒れていた。 完全に息が上がり、カラカラに乾いた喉の奥から苦いものが込み上げてくる。 「ゴホッ、ゴホッ……」 胃液にむせて咳き込んでしまう。 呼吸が止まり、余りの苦しさに涙が滲んでくる。 しばらく耐えていると、荒かった息もようやく鎮まってきた。 だが、涙は止まるどころか、かえって溢れてくる。 落ち着くにつれて、悔しさが蘇ってきたのだ。 目の前で相棒が陵辱されているのに、何もできなかった自分が不甲斐ない。 それどころか、触手に犯されているシズカを見てカチンカチンにさせるなんて、ぶざますぎて死にたくなるくらいだ。 いや、当のシズカもアヌスを責められて、いやらしく腰をくねらせていたから、少しは相殺されるかもしれないが。 それはそうと、今頃シズカはどんな目にあっているのか。 どうやって彼女を連中の手から救出するか。 今後の傾向と対策のため、僕が逃げてくるまでの状況を反芻してみる。 活動に必要なエネルギーを吸い取られたシズカは、完全に沈黙して行動不能に陥った。 もはや彼女の戦闘力を頼ることはできない。 今のシズカは自力で直立できない分、人形としてはマネキンにも劣るだろう。 旧型のダッチワイフとしてなら機能するだろうけど、電源が落ちているから安物のオナホにも劣る。 役立たずになったその部分を見て、ヒゲネズミはマーサに向かって言った。 「これ、まだ使えるぜ。なあ、俺っちが貰っていいだろ?」 どれだけ好きなんだ、あのオッサンは。 マーサは夫の無思慮な発言に対し、あからさまに不快感を示した。 「何を言っているのです。そんなことをしたらウーシュタイプは再起動して、我々の手に負えなくなるでしょうに」 アウトプットディバイスの件もそうだったけど、マーサはウーシュ型バトルドロイドについて詳しいらしい。 精漿に含まれるプロスタグランジンが、シズカの添加剤であることをよく知っている。 「けどよぉ……」 ヒゲネズミは諦めきれずに物欲しそうな視線をシズカに送った。 「お黙りなさいっ。あなたという人は、まだ懲りていないのですか」 どうやらヒゲネズミは無類の女好きで、前にも女で失敗したことがあるようだ。 「まったく、油断や隙だけでなく見境もないのだから。いつものようにこうしておきます」 マーサは用具庫から革と鎖でできた貞操帯を取り出すと、転がっているシズカの股間に装着してしまった。 察するに、どうやらこのスケベオヤジは、捕虜にした女に手を出す癖があるらしい。 妻としては貞操帯の一つも着けたくなるのだろう。 しかし、これでシズカを再起動させ、スーパーパワーを回復させるのが一段と困難になった。 「あぁ〜ああ、勿体ねぇの」 ヒゲネズミは未練たらしそうにシズカを見下ろしていたが、その視線を僕の方に向けてきた。 背筋に悪寒が走った僕は、思わず両手でお尻を覆い隠していた。
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709 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:32:59.39 ID:Uo0PtEtw - そこから先はよく覚えていない。
とにかく無我夢中で教会を飛び出し、森の中を全力で走った。 背後を確認する余裕などなかった。 警察学校の教練の時間でも、ここまで頑張った記憶はない。 限界を遥かに超えた、我ながら見事な走りっぷりだった。 そしてとうとう力尽き、この場所に倒れ込んでしまったというわけだ。 さて、泣いていても事態は改善されない。 シズカを取り戻すため、僕は反撃に転じなければならないのだ。 だが、どうやって戦うのか。 僕個人の戦闘力などたかが知れている。 手持ちの武器もないし、助けてくれる味方もいない。 それに、どう考えてもあの触手武器には勝てそうにない。 やはり無線を使って、警視庁に助けを求めるしか手はなさそうだ。 この島で無線機がある場所となれば、教会を除けばあのフェリーだけだろう。 と言って、ホルジオーネの手下が、自由に無線を使わせてくれるとは思えない。 もう僕のことは手配されてるだろうし。 こっそり忍び込んで無断拝借しようにも、無線室には交替勤務の当番が詰めている。 となれば、やはり色仕掛けしかない。 僕は男なのに、女の武器を使わなければならないのか。 屈辱的だが、シズカは僕を逃がすために、もっと恥ずかしい責めを受けたんだ。 彼女を救い出すためなら、少しくらいの恥は我慢しなければならない。 しかし色仕掛けって言ったって、何をどうすればいいのか。 僕が使える武器は、ウッフンポーズとパンチラくらいしかないのだ。 漫画じゃあるまいし、そんなもので大の男をどうにかできるものでもないだろう。 手コキはまだしも、リップサービスなど死んでも御免だ。 つか、死ぬ気になったとしても、する方は勿論、される方も未経験の僕には技術的な問題もあるし。 ひとり悶々としながら森の道を歩いていると、次なる不幸が襲いかかってきた。 こんな時に、よりによって一番会いたくなかった相手とバッタリ出くわしたのだ。 「片割れでゴザルッ」 「ゴザルッ」 茂みを掻き分けて現れたのは、シズカに半殺しにされたサイボーグのクノイチ姉妹だった。 その時の記憶が蘇ったのか、シュガー姉妹は驚愕の表情を浮かべて固まった。 そして、我に返るや10メートルを一気に飛び下がる。 ねじりフンドシが食い込んだヒップが丸見えになるのもお構いなしだ。 なるほど、女の武器ってのは、こういう風に使うのか。 さり気なく、かつ大胆に。 大ピンチを迎えているにも関わらず、僕の目はかくも見事に釘付けにされている。 踵を返して逃げかけたシュガー姉妹だったが、はたとある事実に気付いて立ち止まった。 「メイドがロボットだということは……」 「……スクールガールは生身でゴザル」 いったん顔を見合わせてから、再度僕の方に向き直る。 その動作がピッタリとシンクロしているのが、双子のアイドルタレントっぽい。 ああ、一番気づいてもらいたくなかったことに気づかれてしまった。
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710 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:33:36.20 ID:Uo0PtEtw - 僕が扮している“マリオネット”は、殺人ロボットを操る幻の暗殺者として、この世界で名を馳せているのだ。
余りにも有名な事実らしくて、既に幻でも秘密でもなくなっているような気もするが。 ともかく僕が生身の人間であることが、姉妹にバレてしまったようだ。 「今のうちにマスターを始末してしまえば……」 「残るメイドは人形も同じでゴザル」 そこに勝機を見出したシュガー姉妹は、目を爛々と輝かせて僕に近寄ってきた。 そして太ももに巻いた革ベルトから、鉛筆みたいな棒手裏剣を何本も抜き取る。 「ちょっと待って、もうこの勝負は終わったんだ。誰が勝とうが意味はないんだ」 僕は両手を振ってシュガー姉妹を止めにかかる。 理由は知らないが、雇い主様は都知事の暗殺を中止したらしい。 だから募集していた殺し屋は、もう間に合ってらっしゃるようなのだ。 それどころか、僕たちが黒幕から消されそうになったことを伝え、なんとかシュガー姉妹を止めようとした。 「それは、単にお前たちが先方の意にそぐわなかっただけでゴザル」 「実力不足の未熟者にゴザル」 せっかく忠告してあげているのに、自信過剰な若い暗殺者たちは聞く耳を持たない。 シズカが失格だと言うのなら、彼女に負けた自分たちの評価はどんなものか。 少し考えれば分かりそうなものなのに。 こいつらって、かなり自己中な性格らしい。 って、これが中華思想というものか。 「うひゃっ」 銀色の輝きが光の筋と化して飛んできた。 反射的に身を投げ出すと、今まで背もたれにしていた木の幹にドス、ドス、ドスっと棒手裏剣が食い込んだ。 鉛筆ほどもある手裏剣の、根元近くまでが幹にめり込んでいる。 冗談ではない、こんなもの喰らったら確実にあの世行きだ。 僕は脱兎の如く逃げ出した。 もうこれ以上は走りたくないと思っていたところだったが、これは嫌でも走らざるを得ない。 「我らからは逃げられぬでゴザルッ」 「あきらめて待つでゴザルッ」 死にたくないから嫌でゴザル。 必死で逃げる僕の耳元を、風切り音をたてて手裏剣が掠めていく。 恐ろしさ満点だが、それでもギリギリで当たらない。 僕の姿が茂みに見え隠れして、シュガー姉妹は照準を付けきれないでいるようだ。 そのうち手裏剣が切れてくれるのを祈りたいが、こういう場面では何故か弾切れは望めない。 太もものベルトに差し込まれていたのは、左右それぞれ5本ずつだったように見えたが──。 理不尽にも、もうその倍は体を掠めている。 いったいどこに隠し持っているのか尋ねてみたいが、今はそんな雰囲気ではない。 などと余計なことを考えているうちに、僕はとうとう追い込まれてしまった。 目の前に切り立った崖が立ち塞がったのだ。
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711 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:34:18.27 ID:Uo0PtEtw - 高さは約10メートル。
ゴツゴツとした岩肌が剥き出しになっているから、頑張ればよじ登ることは可能だ。 その間、シュガー姉妹が待っていてくれればの話であるが。 おそらく半ばまで登らないうちに、僕の背中はハリネズミみたいになってしまうだろう。 「観念するでゴザルッ」 「ゴザルッ」 僕が躊躇している間に、茂みを掻き分けてシュガー姉妹が姿を現せた。 いよいよ絶体絶命だ。 逃げようにも足がすくんで動かず、助けを乞おうにも声が出ない。 悔しいが、奇跡でも起きない限りどうにもならないようだ。 シュガー姉妹は棒手裏剣を構え直すと、勝ち誇ったように満面の笑みを浮かべる。 そして右腕をしならせて必殺の一撃を放った。 「死んだぁっ」 僕は身をすくめて目を固く閉じる。 ほぼ同時に鼻先でカキンという鋭い金属音が──。 「痛ぅっ」 頬にチクッとする傷みが走った。 痛いことは痛いが、想像していたより遥かに弱い、というか比べものにならない程度のものだった。 「あれっ……もしかして死んでない……?」 どういうわけか、シュガー姉妹の手裏剣は僕に当たらなかったのだ。 おそるおそる目を開けてみると、クノイチ姉妹が防御を固めるように身構えていた。 その顔からは最前までの笑みは消えている。 そして、彼女らの視線は僕の頭上に向けられていた。 誰かいるのか? と思うや否や、崖の上から直径1メートルはあろうかというボールが落ちてきた。 続いて、ボヨヨンと弾むボールの上に、持ち主と思われる人物が降り立った。 ピエロだ。 僕たちと一緒にフェリーに乗ってきた、あの殺人ピエロだ。 原色に彩られた衣装を着たピエロが、玉乗りをしながらナイフをジャグリングしている。 目にも止まらない速さで、ナイフが何本あるのかすら分からない。 シュールといえばあまりにシュールな光景だった。 「何者でゴザルッ」 「ゴザルッ」 シュガー姉妹は正体不明の敵を前にし、慎重に距離を取る。 その距離、20メートルほど。 「邪魔するなでゴザルッ」 クノイチたちはシンクロした動きで、手にした棒手裏剣を投擲する。 と、ピエロは宙に浮いていたナイフ2本を無造作に摘み、両手のスナップを利かせて投げつけた。 カキンという金属音が連続し、虚空の2箇所で激しい火花が散る。 ピエロはクノイチ姉妹が放った手裏剣を、投げナイフで叩き落としたのだ。 同時に、僕が先ほど頬に感じた痛みは、あの火花を浴びたものだったと理解する。 察するに、あの一投目はギリギリのタイミングだったのだろう。 今更ながらにヒヤッとする。 人間業とは思えない妙技を見せたのにも関わらず、ピエロはニコニコ微笑んだままジャグリングを続けていた。 どれだけ凄いんだ。 シュガー姉妹の手裏剣ですら、僕の目には捉えられない。 その手裏剣が投げられた一瞬の間に、弾道を見切った上で正確にナイフを投げて迎撃する。 それも、同時に2本を。 シズカが見切った通り、やはりこのピエロも生身の人間じゃなかったのだ。
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712 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:34:52.72 ID:Uo0PtEtw - しかし分からないことが一つ。
なんだってこのピエロは僕を助けてくれるんだ。 僕はサーカスに知り合いはいないし、スカウトされるほど運動神経もよくない。 そんなことを考えている間にも鋭い金属音が連続し、虚空に幾つもの火花が散る。 クノイチたちが手裏剣を投げるたび、ピエロは投げナイフで迎撃してしまうのだ。 パーフェクトなディフェンスに、シュガー姉妹は焦れ始めた。 「なんで邪魔するでゴザルかっ」 リンかレイか分からないが、クノイチが激怒する。 無理もあるまい。 必殺のはずの手裏剣を、あたかもゲームの道具であるように利用されているのだ。 そう、ピエロにとって、これは自分の能力を誇示するためのゲームなのだ。 クノイチを倒すのが目的なら、手裏剣を打ち落とす必要などあるまい。 その技量をもって、投げてる本人を狙えば事足りる。 相手の技量を無効化してみせることで、ピエロは自分の能力を誇っているのである。 余裕というか、稚気というか、敵をおちょくってキレさせるのも計算の内なのかも知れない。 コケにされて激昂するクノイチであったが、そこはさすが忍びの者。 怒りが自分のスペックを低下させることを思い出した。 冷静さを取り戻した姉妹がとった手段は──。 「これでも迎撃できるでゴザルかな?」 姉妹はそれぞれ両手に手裏剣を持ち、見せつけるように高々と掲げた。 ピエロがしてる両手投げを、自分たちも採用したのである。 「都合4本でゴザル。2本は防げても……」 「残る2本が、背後のスクールガールを貫くでゴザル」 シュガー姉妹が僕の方を一瞥し、にっこりと笑う。 4−2=2って単純な引き算ならその通りなんだけど──大丈夫っすよね、ピエロの旦那。 手裏剣の4本程度、迎撃するのは朝飯前でござんしょ? 頼まれもしないのに、他人のピンチに駆け付けるような奇特なお方なんだし。 余程の自信がなければ、こういう場面でしゃしゃり出て来やしないだろう。 僕はそう信じて疑わなかった。 しかし、ピエロはずっと続けていた玉乗りを止めて、地面に降り立ったではないか。 えぇっ、これって遊んでる余裕がなくなったって解釈でよろしいのですか? さっきからニコニコ笑ってらっしゃるように見えるのは、単にメイクによる目の錯覚だったんでしょうか? ピエロは宙を舞っていたナイフから4本を選び取り、両手の人差し指、中指、そして薬指の間に刃体を挟み込む。 彼は一度に4本のナイフを投げて、同数の手裏剣を弾き落とそうというのだ。 確かに数では同じだが、果たしてそんな離れ業が可能なのか。 シュガー姉妹も半信半疑なのか、なかなか投擲のタイミングを掴めないでいる。 初めて会うピエロの技量を図りきれないのだ。 それに、もしピエロが赤の他人の僕を見捨て、狙いをクノイチたちに変えるとしたら。 ピエロのナイフが手裏剣を迎撃せず、クノイチたちの心臓に向かうとしたら。 姉妹にすれば、ピエロが僕を助ける動機が分からない。 ピエロの次の行動を保証するものは何もないのだ。 それが分かっているからシュガー姉妹は両手を振りかぶったまま、次の行動に移れないでいた。
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713 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:36:01.52 ID:Uo0PtEtw - 膠着状態を破ったのは一発の銃声だった。
同時に金属音がして、クノイチの手から棒手裏剣が弾き飛ばされる。 「何奴でゴザルッ」 返事の代わりに銃声が続けざまに上がり、残る3本の棒手裏剣が宙を舞う。 「飛び道具とは卑怯でゴザル」 シュガー姉妹が非難の声を上げる。 「いやぁ、手裏剣も立派な飛び道具だと思うぜ」 もっともな正論を吐きながら薮を割って現れたのは──。 「ダブルオー」 それは僕たちと同じくバトルロイヤルに参加した、元英国情報部員の肩書きを持つスパイ崩れだった。 如何にも軽薄そうな男は、ワルターの銃口から立ち上る煙をフッと吹き飛ばして見せた。 「投げた後ならともかく、手にあるうちなら僕にでもどうにかなるからね」 いやいや、大したものだ。 50メートル離れたところから、鉛筆大の的を連続で撃ち抜くなんてのは人間業じゃない。 「やっぱりバカでゴザル」 「我らを撃てる唯一のチャンスでゴザったのに」 シュガー姉妹が憎まれ口を叩く。 いや、むしろダブルオーは、君たちに当たらないよう細心の注意を払ったと思うのだが。 それを理解しているからか、シュガー姉妹も毒気を抜かれたようになった。 「こんなバカを相手にしている暇はないでゴザル」 「我らの優勢勝ちにゴザル」 姉妹は自分勝手な判定を下すと、煙玉の炸裂に紛れて姿を消した。 多分、バトルロイヤル優勝者を自認して、あの教会に向かうのだろう。 マーサに対面してどんな結果になるか知らないが、僕は一応忠告しておいたから。 「遅くなって申し訳ない」 いつの間にか近づいてきてきたダブルオーが、僕の手を取って甲にキスをする。 こいつはいつだってこの調子なんだ。 「言っとくけど……」 「全て承知のことさ」 ダブルオーがさわやかにウインクしてみせる。 「相手が他人からレディとして見られることを望んでいる限り、レディとして扱うのが僕の流儀なんでね」 いや、僕はそんなことこれっぽっちも望んでいない。 しかし、この格好でそんなこと言ってみても、まったくもって説得力ないなあ。 まあ、レディとして扱われている限りは安全、と考えれば得しているのかもしれないが。 「えっと、クロー様……ですよね?」 そんなタイミングで、いきなり本名を呼ばれたんで、僕はびびって飛び上がった。 ピエロがニコニコ顔で僕を見ている。 メイクと衣装のせいで素顔もボディラインも分からないが、声は若い女のものだ。 「ど、どうして……」 僕の上擦った声が、自動的に相手の質問を肯定していた。 「あなたのことはコリーン様から……私、ティラーノ宗家の総本部に所属する親衛隊員なんです」 ピエロは自分の身分を明かし、ジィナ・アノワールと名乗った。 「そんな扮装をしてらっしゃるからクロー様とは気付きませんでしたが、お連れ様に覚えがありましたので」 ああ、シズカのことか。 そういやシズカには変装させていなかったが、ちょっと迂闊だったかも。 彼女は警視庁初のロボコップだし、そこそこ顔が売れてても不思議じゃない。 ちょくちょく市街戦をやらかして、新聞ネタにもなってるし。
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714 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:36:57.04 ID:Uo0PtEtw - 「いえ、私はコリーン様から直接お聞きしていましたから。私はお嬢さまのボディーガードと侍女を兼任していますの」
ならば、ティラーノ版のシズカってところか。 あのクノイチ姉妹を一人であしらうくらいだから、戦闘サイボーグとしても一級品なんだろうな。 もしかしてシズカみたいに超高性能アンドロイドなのかも。 いや待てっ、侍女兼任ってことは、コリーン嬢のそばにあって、話し相手にもなるのか。 改めて自分がミニスカ女学生になっていることを思い出す。 「お願いだから、コリーンには黙っててっ」 僕は両手を合わせて拝みこんだ。 ただでさえロリコン容疑が掛かってるんだから、これ以上嫌われるネタを与えたくない。 「い、言えるわけないでしょうがっ。こんなこと知ったら、コリーン様が悲しまれますっ」 ジィナ嬢は白い目で僕を見て、厳しい口調で非難した。 「あぁ、嘆かわしい。これと見込んだ男友達が、実は女装癖の持ち主だったなんて……コリーン様が余りにも不憫です。 あなたに危害が及べば、お嬢さまがお嘆きになると思えばこそ助けたのですよっ。ああもうっ、止めておけばよかった」 ジィナ嬢は好き勝手に僕を罵った。 散々な言われようだけど、嘆きたいのはこっちだって。 こんな情けない目にあったと知れば、あの嘘つき都知事もさぞかし大満足するだろう。 「助けてもらっておいてなんだけど、これってティラーノの計画に対する造反じゃないの?」 僕は非力だが、一応は全力で都知事暗殺計画を阻止するために派遣されてるんだから。 後でジィナ嬢が上役から怒られることになったら気まずくなる。 「計画って? ティラーノグループはそんな計画など立てていませんよ」 ジィナ嬢は何を言ってるんだと訝しがった。 「首謀者のホルジオーネ一家って、ティラーノの戦闘部隊なんでしょ? 宗家が考えた計画を奴らが実行してるんじゃ?」 そのくらいの知識は僕にだってある。 「いや、それは違うな」 黙って成り行きを見守っていたダブルオーが割り込んできた。 「ホルジオーネは確かにティラーノ一族の傍流だけど、宗家から独立しているマフィア集団だからね」 そういえば、コリーン嬢もそんなこと言ってたかも。 既に両者は袂を分かち、何の友誼もないとか。 今をときめく国際貴族がマフィアと同根なんてのは、確かに洒落にもならないだろう。 「今じゃ、むしろ敵対関係に近くなってるんじゃないかな。ねぇ、君」 ダブルオーに尋ねられ、ジィナ嬢は頷いた。 それを見て、僕は少しホッとした。 今回の任務が元で、コリーン嬢と敵味方の関係になってしまうことを危惧していたのだ。 どうやら、それは避けられたようだ。 「実は先だって、うちの情報部が白河都知事の暗殺計画を掴んだのです」 そりゃ大々的に殺し屋を募集していたのだから、噂として情報も入ってくるだろう。 「その計画を主導しているのが、どうもホルジオーネらしいということで、現地調査のため私が派遣されたのです」 バトルロイヤルの時、ジィナ嬢の姿が見えなかったのは、その任務があったからなのか。 僕たちの戦闘を尻目に、彼女はあの教会に向かっていたのだ。
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715 :雲流れる果てに…17 ◆lK4rtSVAfk [sage]:2014/01/13(月) 17:40:09.20 ID:Uo0PtEtw - 「あなたがマーサから都知事暗殺を請け負うところをこの目で確認しました。彼女は“有罪”です」
マーサの名を口にする時、ジィナ嬢の表情がはっきりと険しくなった。 「僕は当の都知事の命令で動いてるんだからね。本当に暗殺を引き受けたわけじゃない」 こんなことで僕まで有罪にされたらたまったもんじゃない。 つか、このピエロはあの時、教会のどこかに潜んで僕たちを監視していたのか。 邪魔が入らなければ、ロボメイドとやってるところを見られているところだった。 ああ、今回はどれだけ恥ずかしい目をすれば許してもらえるんだ。 「ともかく、我々としてはホルジオーネに都知事を殺させるわけにはいかないのです。直ぐに情報を送らないと」 帝都の覇権を狙うティラーノにしても、白河都知事の圧倒的な支持率は無視できない。 手早く帝都をものにするには、むしろ都知事の人気を利用した方がいいに決まってる。 連中は彼女の地位はそのままにして、実権だけを奪ってしまおうという腹なのだ。 だからホルジオーネがやろうとしていることは、ティラーノにとって許し難い敵対行為に他ならない。 事実確認が済めば、直ぐにでも強烈な鉄槌を下してやろうと準備していたのだろう。 これは、近くに機動歩兵の大部隊を待機させていると考えた方がいいかもしれない。 「けど、どんな法的根拠で? ここはお嬢さんの本国じゃないんだぜ」 ダブルオーがいいことを言った。 この島でティラーノの私設軍隊が武力行使をすれば、間違いなく国際法規違反になる。 コリーン嬢が町中で二丁拳銃をぶっ放すのとは規模が違いすぎて、幾ら彼らでも誤魔化しようがない。 「それより、僕に協力してシズカを奪還する方が上策だよ。警視庁職員の僕に協力することで大義名分も立つし」 僕はシズカを取り返せるし、ジィナ嬢は暗殺計画阻止の手柄を独り占めできる。 双方にとって悪い話じゃないだろう。 だが、予想に反してジィナ嬢は賛同してくれなかった。 ただ、フッと唇の端を歪めただけであったのだ。 「クロー様。お嬢さまのためにも、死なないよう努力してくださいね」 それだけ言うと、ジィナ嬢はくるりと踵を返した。 「連中にとっては、むしろこの国に兵力を持ち込む絶好の機会だってことじゃないのかな」 ダブルオーは、去っていくジィナ嬢の背中に向けてそっと呟いた。 「天下御免のティラーノグループなんだし。人道上の理由とかなんとか理屈をこねて、自分たちを正当化してしまうよ」 確かにそうだ。 都知事の暗殺計画を未然に防ぎました、時間的余裕がなかったので自分たちが直接やりました、なんて言われれば──。 都民から感謝されることはあっても、非難されることはないだろう。 「それを機に、帝都にある支局防衛のためとか理由をつけて、都内に兵力を常駐させるつもりなのかもしれないね」 しかも、自作自演の爆破テロを行って、どんどん兵力を増強させるつもりだとすれば。 そんなことを許せば、都知事や議会の発言権は低下し、帝都はティラーノグループに乗っ取られてしまう。 相手の狙いが分かった以上、好きにさせとくわけにはいかない。 なんとかジィナ嬢が仲間を連れて戻ってくる前にシズカを取り戻し、黒幕たちを逮捕するのだ。 もはや援軍を待っている時間はない。 今から応援要請しても、ティラーノの私設軍隊が先に上陸してしまう。 果たして、僕はこの未曾有の危機をどうやって乗り越えればいいのか。
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716 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/13(月) 17:44:07.68 ID:Uo0PtEtw - 投下終了
構想は最終回まで出来ているのですが、休みが全く取れなくて書く暇がありませんでした ようやく正月休みを貰えたので、どうにか続きを書けました またよろしくお願いします
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