- 【友達≦】幼馴染み萌えスレ24章【<恋人】
559 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/06(月) 00:37:03.77 ID:0CDxOeDH - 「部活終わるのはほとんど一緒の時間じゃん。友だち甲斐がないなー」
若菜はこう言うものの、当然本気で責めているわけではない。 「お前だって、一人でさっさと帰る時あるだろ」 とはいえ、俺も何か反論しないと気が済まなかった。 「えー、だって観たいテレビとかあるし」 「俺もそうだとは考えんのか」 ここで沈黙が流れる。どうやら相手は返事に窮しているようだった。が、 「ふーん、雄二って、暗い夜道を女の子一人で歩かせられるほど冷酷な人なんだねー」 自分は勝手に一人で帰ることもあるくせに、そのことは棚に上げて、にやにやしながら俺を非難し始めた。 「はっ、誰が出てきても、逃げ足の速いお前なら平気だろ」 真面目に取り合うのも馬鹿らしいので、俺は適当にあしらう。 「ふふん、まあね」 自慢の足を褒められて嬉しいのか、若菜は急に上機嫌になり、なぜかその場で一回転した。謎の行動に俺は思わずドン引きする。 ただ回転した時に、若菜の肩の下辺りまで伸びている長い黒髪の先っぽが、俺の鼻に当たっていた。 そして、その甘くいい匂いを嗅げたのは、まあ、ラッキーであったかもしれない。 部活の時と違って髪を縛り上げてはいないため、今の若菜は深窓なお嬢様といった雰囲気がより強く出ていた。 男どもが狙うのも無理はない、と幼馴染みのひいき目なしでも思ってしまう。 こいつは本当に、その見かけ通りおしとやかな女であったなら――。 「とうっ!」 そんなことを考えていたら、いきなり若菜が俺の太ももを蹴りだした。 「痛……何すんだよ!」 「いま、『こいつは口を開かなければ最高の女なんだけどなー、ぐへへー』とか思ってたでしょ」 「か、考えてねえよ。つーか、自分で最高の女なんてよく言えるな」 こいつに告白して玉砕した男たちは何て幸せなんだと思った。こんなナルシスト、彼女としては最低だろう。 まあ、それにしたって、よく俺の考えていることが分かったな。俺ってそんなに顔に出るタイプだったのか。 とはいえ、 「仮に考えていたとしても、何でいきなり暴力なんか――」 「あーーもうこんな時間、早く帰らないとママに叱られちゃう」 わざとらしい口調で俺の抗議をさえぎった若菜は、急に俺の手をつかむと、そのまま引っ張るようにして歩き出した。 「ほら、早く早く」 「わ、分かったら、手ぇ放せよ、痛いって」 「あ、ごめん」 俺は解放された手をいたわるようにしてさする。すると、若菜が心配そうにこっちを見つめていた。 どうせなら手だけではなく、さっき自身が蹴った太もものほうも気にかけてほしかったが、あえて突っ込まないことにした。 「大丈夫だよ」 「そっか……悪い悪い」 「でもなんでいきなりつかんだんだよ。お前が歩けば俺も歩くって」 「うーん、昔の習性かな」 「だったら、すぐ直すことをおすすめするね」 そういえば、中学のときも同じことがあった。しかもその時は、運悪くその現場をクラスメイトに見られてしまっていた。 誤解はすぐに解けたのだが、それでもすでに広まっていた噂は完全に鎮めることなどできず、何人かは最後まで俺と若菜が付き合っていると勘違いしたままであった。 俺も、そして若菜も、お互いをそんなふうに見たことなどないというのに。 「そうだね、また前みたいに勘違いされたら困るし」 どうやら若菜も同じことを思っていたらしい。 「そうそう、ただでさえお前は、な・ぜ・か、男からモテるからな。誤解された日には、俺の身が危ないよ」 俺は冗談交じりにこう言った。しかし、若菜は押し黙ったままであった。 「おい、若菜……」 「えっ、あ、そう、そうだね」 明らかに俺の話を聞いていなかったらしく、若菜は適当に会話を流した。 どことなしか、さっきよりも沈んだ顔つきになった気がする。 「あっ、そうそう、それよりさ――」 若菜は笑顔で雑談を開始した。さっきの表情が見間違いであったとこちらが思うくらい、明るかった。 「じゃ、また明日」 家の前に着くなり、若菜はこう言って自宅に入っていった。 一人になった俺は、ここからわずか数分もかからない自宅に向かって、健康のために走ることにした。 何だかんだと言っても、やはり昔からの友達はいいものだ。
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