- 【戯言・リスカ】 西尾維新 vol.18 【物語・刀語】
607 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:17:32.05 ID:lx+cWp1o - いーちゃん×友で投下してみる。戯言らしさはあんまり無いかもしれんが。では投下。
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- 【戯言・リスカ】 西尾維新 vol.18 【物語・刀語】
608 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:37:33.20 ID:lx+cWp1o - 「いーちゃんいーちゃん」
年も明けた1月1日、僕の隣にくっついてコタツで暖まっていた友が夕飯の餅を頬張りながら喋り始めた。 喉に詰まると危ないと思っているのか、いつもの一気食いは餅ではやっていないようだった。 それでも口の中のスペースは結構埋まっているようで、若干声がくぐもっている。 「口の中を空にしてから喋れよ」 そんな状態で喋ることはあまり行儀が良いとは言えないのでそう注意する。 飲み込んでから喋れとは多くの人が子どもの頃によく言われたことだろう。が、 「んべっ」 と、目の前の皿に餅を吐き出したのだった。 「………」 行儀が良いとは言えないどころの話ではなかった。 「確かに口の中は空になってるけどさ…」 「だって早く喋りたかったんだもん。だったら飲み込むより吐き出す方が早いじゃん」 「なら最初から飲み込むのに時間がかかるほどの量の餅を口に入れるな」 「吐き出したの、いーちゃんいる?」 「…………いらねえよ」 ちょっと迷ったけど。 「でさ、いーちゃん」 「なんだ」 「いーちゃんさ、明日もお仕事入ってないでしょ?」 確かにそうだ。 年末年始くらいは友とゆっくり過ごすのもいいだろうと思って年末からしばらく仕事の予定は入れてなかったはずだ。 明日も、どころではなく、7日くらいまでは休みにしていただろうか。 その休みを利用して具体的に何をするという案があったわけではなかったが 「お正月の余韻が抜けるくらいまではいーちゃんとゆっくりしたいー」 という友の希望でそれくらいの休みを作っていたはずだ。 「たしかにそうだけど、どうした?どこか行きたい所でもあるのか?」 「んー、いやいや、別に行きたい所は無いけどー、やりたいことがあるってゆーかー」 「やりたいこと?」 「ほら、いーちゃんさー、大晦日前日までお仕事いっぱい詰め込んでたじゃん?」 「…ああ」 「しばらくお休み作るためには仕方なかったんだろうけどさー、そのせいでいーちゃん毎日お疲れだったじゃん?」 「…ああ」 「だからさー、僕様ちゃんもちょっとは気を遣っちゃうじゃん?」 「…ああ」 「だから今まではさー、ちょっと誘いづらかったんだよ」 「…ああ」 「でも今はお仕事しばらくお休みになったからさー、早く寝なくても大丈夫でしょ?」 「…ああ」 うん、何が言いたいのかもう見当はついた。次にこいつが何を言うのか、こいつが何をしたいのか、恐らくは僕の考えていることで正解だろう。けれど一応、答え合わせはしておこう。 「で、何がしたいんだ?」 「姫始めしようぜ?」 大正解だった。 「ほら、今日は僕様ちゃんもちゃんとお風呂入ったしさー」 そういえば風呂嫌いの友にしては今日は風呂に入れても随分とおとなしかった。なるほど、あれはそういうわけだったか。 「ほらほらいーちゃん、愛しい奥様が発情してるんだよ?返事は一つしか無いじゃん」 「…まあ、うん、そうだな」 そう、僕も奥さんとそういうことをしたいという欲求が無いでもない。そして友がご無沙汰だったということは僕もご無沙汰だったということだ。友の要求を受け入れる理由こそあれ、断る理由など一つもない。だからそれはいいのだが… 「友、その前にやることがあるぞ」 「うに?」 「吐き出した餅をどうにかしろ」
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609 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:41:34.44 ID:lx+cWp1o - 今でもたまに、あの時のことを思い出してしまう。ただ破壊衝動に身を任せて少女を押し倒し、壊してしまった時のことを。
僕が壊さなければ、少女は、少なくとも僕が引きずりこんでしまった所よりは良い所にいられたのではないかと。僕が壊さなかったところで少女がどうなっていたのかはわからないけれど、そう考えてしまうのだった。 「ぱちーん」 僕がベッド組み敷いている友が口で効果音を言いながら僕の頬をはたいてきた。それによって僕は動きを止めた。 「いーちゃん、今余計なこと考えたでしょ」 昔のことを思い出すと、こいつはいつもそれをすぐに察する。彼女が鋭いのか、それとも僕がわかりやすいのだろうか。 「…うん、ごめん」 「いーちゃんは僕様ちゃんを壊してなんかないんだよ」 そのたびに、こんな言葉をかけてくれる。数年間もの間、何回も。 「…うん」 「奥様とベッドの上にいる時にそんなこと考えちゃダメ。ううん、いつだって考えちゃダメ」 「…うん」 「いーちゃんは僕様ちゃんに悪いことはしてないんだよ」 「…うん」 こんなやりとりも、もう何回繰り返したことかわからない。友は僕に何回も何回も、同じようにこんなことを言ってくれる。 「…友」 「ん」 「…ありがとう」 このお礼の言葉も、同じように何回も繰り返している。 「うに、どーいたしまして」 それに対して友も、同じように何回もこう返事をしてくれるのだった。 「さ、いーちゃん、続き続きー」 一連のやりとりが終わると、友はそんなふうにねだりながら僕の首に腕をまわして抱きついてきた。 そうだ、僕は自分が組み敷いている妻と結合したままだった。あの時の破壊衝動とは違う、別の感情のもとに。 「ああ、悪いな…動くぞ」 僕はまた自分の体を動かし始めた。友の中に入った自身で、彼女の中をかき乱す。 「んぅっ…いーちゃん…いーちゃん…」 その感覚に反応するように、友は僕の首にまわした腕に力をこめる。友のなけなしの腕力で、僕に密着してくる。 「友っ…」 それに応えて僕も友の身体に腕をまわして抱きしめる。 友が僕を受け入れている。僕が友の中に入っている。段々と登りつめていく。 友の中で。 友の中で。 友の中で。 友の中で。 「いー…ちゃ…ん、んんんんっ!」 先に達したのは友の方だった。友の身体がビクンと一瞬震え、彼女の中の僕をきゅうっと締め付ける。 「っ…」 その締め付けによって僕も一気に限界を迎え、友の中に自分の熱を放出した。極上の快感を感じながら、僕は友と無言で抱き合う。
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610 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:44:22.08 ID:lx+cWp1o - 「………」
「………」 そうしていると僕の胸には、人間らしい感情が湧き上がってくる。空っぽだった昔の自分には到底あり得なかった、とても人間らしい感情だった。なんとなくそれを口に出してみる。 「…友」 「うに?」 友の顔を見ながら。 「…好きだよ」 空っぽだった頃にも友に言った台詞。その時のように言葉までも空っぽにならないように感情を込めて言ったつもりだが、上手くそれができていたかどうかはわからない。しかし彼女は 「知ってるよん。僕様ちゃんも大好きだぜ、いーちゃん」 と、昔以上の笑顔で、そう返してくれたのだった。 「だからさ、もう一回しようぜ?」 「………」 どうやら長いことご無沙汰して溜まった性欲はまだ尽きないらしい。 「…ああ、いいよ」 しかし僕もそこそこに歳を重ねているとはいえ、まだまだ一回だけでダウンするほどの歳ではない。 そんなわけで、夜はまだ長くなりそうだった。 二人揃って、少し起きるのが遅くなってしまった。まあなんというか、昨夜は結構激しかったので当然だろう。 体が若干重いが朝食(時間が遅いので昼食と言うべきか)は作らねばならないので、気だるげな友と一緒に服を着て台所へ向かった。 友を椅子に座らせて待たせて適当なおかずをいくつか作っていると、玄関のチャイムが鳴った。 来客の予定は無かったはずだが、誰だろうか?味噌汁の火を一旦止めて玄関に向かう。玄関の扉を開けると、そこにいたのは真っ赤な服を着た女性。 「よういーたん、あけおめ」 我らが哀川潤さんだった。 「なにか御用ですか、潤さん」 「おいおいなんだよいーたん、つれねーなー。新年の挨拶に来てやっただけじゃねーかよ。ほら、手土産だ」 そう言って潤さんが渡してきたのはいかにもコンビニで買いましたというような急なお土産用の煎餅の詰め合わせだった。 「…包装すらされてないって、気遣いゼロですか」 哀川さんらしいと言えばそうなのかもしれないけど。 「あん?買ってきてやったことがもう立派な気遣いだろーがよ。ところでなんかいい匂いがするんだけど今昼飯?あたし今日はまだ昼飯は食ってないんだよな。上がっていい?」 「………」 新年の挨拶、と言う割にはかなり図々しかった。これもまあ、哀川さんらしいと言えば哀川さんらしいのだけれど。予定外の来客だが、多めに作ってあるので三人で食べても問題ないだろう。 「ちょうど出来上がるところです。どうぞ」 「サンキュー」 哀川さんを連れて戻ると、友はテーブルにうつ伏せに突っ伏していた。体力のないやつだから、昨夜のアレで僕よりも疲れたのだろう。哀川にはそんなこと言えないけど。 「友、潤さんが来たぞ」 「うーす、玖渚ちん。お昼ご一緒させてもらうぜー」 潤さんが呼びかけると友はゆっくりと顔を上げて 「あー、潤ちゃん、いらっしゃーい…」 と、若干疲れた声で返事をした。 「んー?どうしたんだよ玖渚ちん、元気ねーじゃねーの」 あ、やばい、友が疲れてる理由をなんて説明しようか。本当のことを言うと間違いなく食事中にいじられることに… 「旦那様との姫始めがそーんな疲れたか?」 どうやら説明する必要は無かったようだ。 「…なにを言ってるんですか潤さん」 一応誤魔化してみたものの哀川さんは 「いーたんの体から玖渚ちんの匂いがすりゃあそんくらいわかるっつの」 と、想像通りの嫌な笑みを浮かべて返してきたのだった。 …犬かよあんた。 「んー、いーちゃんってば激しいんだもん…」 そして哀川さんの言葉に続いて友がそんなことを呟く。なにを言ってくれてやがりますかこいつは。 「へーえ、いーたんってば見かけによらず…」 そして哀川さんはその呟きに嬉しそうに食いつくのだった。ああ、さすがにもう逃げられないな…。 「はっはっは、こりゃあ楽しい食事になりそうだぜ」 そんなことを言いながら哀川さんは席に着く。その言葉は僕の料理を楽しみにしての言葉ではないのだろう。食事中の会話も、食事の楽しみの一つ。 「…やれやれ」 新年早々…戯言、ではないけれど… 「幸せだぜ」 哀川さんや友には聞こえないように小さな声でそう呟いて、僕は食事の用意をするのだった。
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611 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:45:46.20 ID:lx+cWp1o - 以上。いやー、上手く書き込めなくてちょっと焦ったわ。
読んでくれた人、ありがとう。
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612 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/04(土) 21:49:20.70 ID:lx+cWp1o - あ、 >610 に一箇所、地の文が「哀川さん」じゃなくて「哀川」になってた…
…脳内で修正しといて…
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