- 立場だけの交換・変化 7交換目?
16 :名無しさん@ピンキー[sage]:2014/01/01(水) 02:24:51.73 ID:KB8dFn1y - 除夜の鐘も鳴りやみ、境内は新年独特の喜びに包まれていた。
二年参りでにぎわう神社には、ふるまい酒や甘酒などを求める人や、おみくじの結果で一喜一憂する顔、 受験に向けて最後の神頼みをする受験生など、さまざまな人々が詰めかけていた。 「もーやだー! なんでこんなに混んでるの?」 「なんでって、そりゃ新年だからなぁ」 「理由になってない!」 ピンクに濡れたかわいらしい唇をとんがらせて、春香は不満をぶつけてくる。 そのかわいらしい横顔を見ながら、彼女の手を握りなおす。 少し目を伏せながら握り返してくる春香の存在に微笑みながら、さい銭箱の前へと歩みを進める。 おさい銭を投げ入れてから鈴を鳴らし、2回お辞儀をした後に2回大きく柏手を打つ。 これからも春香とずっといっしょにいられますように…… 神さまへ願い事をして、最後に深く礼。 そして静々とさい銭箱の前から立ち去り、春香の方を見やる。 「ねぇどんな願い事したの?」 「んー……願い事って人に話すと叶わなくなるっていうからなぁ……」 「えー、ケチー」 またも唇をとがらせる春香。 などと他愛のない話をしながら参道を歩いていると、人ごみの中にいるひとりの女性が、俺の目を強烈に惹きつけた。 薄い青の色留袖をまとい、長い髪をアップにまとめた女性。 すらりと背が高く、きりりとした表情はまるでトップモデルのようだった。 小脇にバッグを抱え、眠そうに眼をこする5歳ぐらいの子供の手を引いている。 そばにいる男性は旦那さんだろうか、早く帰ろうとぐずる子供を抱きかかえようと足を止めていた。 その様子を少し困ったような、それでいて楽しそうに眺める女性が視線を上げたとき俺と視線が交わった。 微笑みを浮かべながら、軽く会釈してくる女性。 「ねぇ、いまの奥さん、知ってる人?」 「近所に住んでる人。それだけだよ」 「ふぅん……本当にそれだけ?」 彼氏が綺麗な女性に挨拶されたのが気になるのか、春香は露骨に不満そうな顔をする。 今すれ違った女性は本当に近所に住んでいるだけだが、「それだけ」の関係ではない。 彼女と彼女が築いている小さな家庭は、本来ならば俺のもので、 あそこで留袖をまとって微笑んでいるのは俺のはずだったのだから。 数年前、育児ノイローゼになった俺と、高校受験のプレッシャーでノイローゼになった彼は、 医者の勧めからお互いの立場を交換して暮らすことに決めたのだ。 あれから俺は男子中学生として、そして今は大学生として青春を謳歌し、こうしてかわいい恋人とともに初詣をするまでになっていた。 彼のほうも幸せそうな笑顔を浮かべていたところをみると、 恐らく母としてそして妻として素晴らしい人生を歩んでいたのだろう。 「……やっぱ選択は正しかったんだな」 「ん? なんか言った?」 「いや、早くあったまりたいなって言ったのさ」 「……んもう」 春香は顔を真っ赤にして俺のコートの裾をぎゅっと握ってくる。 体は30手前の女性だが、いまや性欲に満ちあふれた男子大学生。 これから春香と2人で楽しむ姫初めを想像して、新年から股間を熱くする俺だった。
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