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【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】

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【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
585 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:47:24.31 ID:UQ/2zM1F
大変お待たせいたしました。
続きを投下します。
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
586 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:48:13.58 ID:UQ/2zM1F
ページ16
1983年10月27日(昭和58年) 午後1時23分
北条沙都子 12歳
アサシン教団訓練生 (療養中)
日本国 野永県 鹿骨市興宮町
涼千会興宮病院5階 516号室

「まだ少し時間はあるはずですが」
知恵先生は首だけ90度回して、横目で吾郎さんを見るようにしながら言った。
「なぜもういらしたんです?」
喉の奥から舌の先まで凍てつききったような声で。
「・・・面会は終わりです」
しかし、対する吾郎さんの声も、負けず劣らず怖かった。
知恵先生と同じような調子ではあるが、温度が全く違う。
熱い。
声の隅々にこもったそれは憤怒か、それとも憎悪か。
普段から大人しくとても優しい人だから、吾郎さんが本気で怒ったところはあまり想像できなかったのだが。
「なぜです?」
だが、知恵先生の声はあくまで平坦だった。
「20分、という約束だったはずですが」
「確かに、そういう約束でした。でも、・・・もう違います」
「一方的に約束を反故にされると。そういうことですね?」
「原因を作ったのはあなたです」
一瞬驚いた。
当然『お前』と呼ぶものと思ったのだが。
「わたしが何かしましたか?」
「・・・まだ、わからないんですか?」
吾郎さんはもう爆発寸前だ。
「ええ」
「そうですか」
吾郎さんはゆっくりと知恵先生に近づく。
知恵先生は、依然として体を動かさない。近寄る吾郎さんを、ただ横目で見据える。
「あなたは、僕の家族を汚した」
吾郎さんの怒りに満ちた声。
どちらかといえば高めの、少年と青年の入り混じったような声。
「ただ殺すのみならず、兄弟を――自由のために命を賭して戦う同胞を侮辱したんだ」
右こぶしがぐっと握りしめられ、関節が鳴る。
「そして、今――あなたは沙都子ちゃんを言葉巧みに操ろうとしている」
「操る!?」
突沸。
知恵先生の大きな声が響く。
知恵先生はとうとう立ち上がり、吾郎さんを真っ向から見据えた。
「散々御託を並べた挙句、『操る』ですって!?
 一体どこの世界に、自分の生徒を洗脳するような教師がいるんですか!?」
「Я знаю все, Драгомиров!」(全部知ってるんだ、ドラゴミーロフ!)
突如として言葉が変わった。
意味は分からないが、アクセントは流暢な感じだ。
「Когда вы были шпионом, я знаю, что вы были хороши」(スパイだったころのあなたが、何を得意としていたか)
知恵先生は瞠目する。
ここで祖国の言葉が出てくるとは思わなかったからだろう。
「・・・あなた、なぜ」
知恵先生の声を遮り、吾郎さんはぴしゃりと言う。
「いずれにせよ、もう面会は終わりだ」
吾郎さんは羽織っていたカーディガンの懐から布袋を取り出し、乱暴に知恵先生の頭にかぶせ――ようとした、その瞬間。
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
587 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:49:03.71 ID:UQ/2zM1F
「山本、やめろ!」
真和さんの、大きくはないが鋭い声が飛んできた。
吾郎さんはびくっとして振り返る。よっぽど驚いたのだろう。
「え、・・・佐原さん!?どうしてここに・・・」
佐原?
あ、そうか。真和さんの偽名でしたわね。
吾郎さんの質問には答えず、真和さんは吾郎さんに近づき、布袋をむしり取った。
そして、一言。
「アホ」
「え」
あ。
前にも見た目ですわ。
私がセーフハウスに匿われた初日、吾郎さんがアサシンについて話しすぎた時見せた目。
ただあの時よりは、怒りの占める割合が勝っているようですが。
「一度約束したなら、きっちり守れ。20分は、沙都子と話させてやるんだ」
「佐原さん!?」
吾郎さんの怒りは、真和さんに向かう。
「佐原さん、この女の味方をするんですか!?この人は「こいつが何であろうと」」
真和さんは言葉を遮る。
「こいつが与えられた時間をどう使おうが、それはこいつの自由だ。もともとこいつが
 オレたちに悪印象を抱いてることは知ってただろう?」
吾郎さんが、怒った顔で真和さんを睨む。
だがその視線を叩き切り、真和さんは知恵先生の方を向いた。
「いや・・・悪印象、なんてものじゃないか」
知恵先生は能面のような無表情。
真和さんはしばらく視線を交錯させる。
沈黙を切ったのは真和さん。
「――何か、妙だなとは思ったんだ」
真和さんが、着ていたパーカー(緑色の無地)の内ポケットからクリアファイルを取り出す。
中に入っていたのは4枚のコピー用紙。
「アンタのことをもっと探ろうと、ソビエト支部に連絡を取った。・・・そしたら、これが渋る渋る。
 資料提供から聞き込みまでな。何度となく繰り返し電話して、やっと仕入れたのがこれだ」
一番上。
「まずはアンタ。ナジェーズダ・ヤロスラファ=ドラゴミーロフ。中身は日本支部のとそう変わらなかった。
 ・・・だが、一か所だけより細かく書かれていた箇所があった。何だと思う?」
一枚めくる。
「アキム・フォミン」
知恵先生が、おや?という表情になる。
砂漠にスポイトでたらした水のような薄さだが。
もう一枚。
「ブラート・フィンコ」
最後。
「レフ・コブリン」
そして、私の膝に紙を放る。
反射的に手に取ったが、ほぼロシア語。すぐ読むのをあきらめる。
一番上には、でかでかと赤ハンコ。
[погиб в бою]
どういう意味なのだろう?

「・・・懐かしい名前ですね」
知恵先生が、初めてアサシン相手に小さく笑った。
「そうだろ?なんせ、アンタが殺した最初のアサシンなんだから」
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
588 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:50:05.41 ID:UQ/2zM1F

ということは――
知恵先生の資料を思い出す。
『アサシン教団ソビエト連邦支部のアサシン3名の殺害容疑(動機は不明)』
その3人が、それか。
真和さんは続ける。
「なんでこいつらの資料までわざわざ渡してくるのか、最初は理解できなかった。でも、すぐわかったよ」
「・・・」
「そりゃ、ソビエト支部も伏せたいだろうな。こんな事」
こんなこと、という真和さんの言い方に、知恵先生は一瞬驚いた顔をする。
「・・・あなたは、身内を――アサシンを庇わないんですか?」
「庇うさ。庇うに足る理由があればな」
「・・・驚きましたね。アサシンは、何が何でも非を認めないものと思っていましたが」
非?
「・・・正直、さ」
真和さんが知恵先生に一歩近づく。
「アンタはそんなの嫌なのかもしれないけど、同情した。アサシンを憎悪する気持ちも、よく分かった」
「・・・」
知恵先生が不可思議なものを見る目で真和さんを見る。
私は真和さんに訊く。
「真和さん、どういう・・・?」
「簡単ですよ」
質問には、知恵先生が答えた。

「私のお父さんとお母さんは、アサシンに殺されたんです」

衝撃。
吾郎さんは、驚いて口を半分開ける。
「それ、って・・・」
知恵先生の両親は、悪人だったのか?
でも、さっきの資料にはそんな事・・・
「真和さん・・・どういう事なんですの?」
私が訊くと、真和さんは逆に私に問うた。
「・・・沙都子、『三戒』覚えてるか?」
「え・・・ええ」
「言ってみろ」
「はい、・・・えっと」
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
589 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:50:45.12 ID:UQ/2zM1F
汝、己が刃、無垢なる羊に振るうことなかれ(罪のない人は傷つけるな)
闇に生き、光に奉仕する。そが我らなり(アサシンの存在を表にさらすな)
汝、いついかなる時も、友を陥れることなかれ(仲間を裏切るな、危険にさらすな)

私が『三戒』を諳んずると、真和さんは言った。
「さっき読み上げたこの3人は、そのうちの1つ・・・『罪のない人は傷つけるな』を破った」
「ということは」
『三戒』――アサシンの、最も重要な掟。
吾郎さん曰く、その罰は死。
「粛清されるはずだった奴らが、どういうわけかは分からないが生き延びた。で、この先生に殺られた」
「でも・・・それっておかしくありませんの?だって、何もしていない人は傷つけてはならないって」
破る=死という掟を、なぜ自分から破るのか。私には理解できない。
知恵先生が言う。
「沙都子さん。人間は、自分の欲望のためなら、大概のことは出来てしまうものです。
 欲望、というのは、何もお金に限った話ではありません。
 神の教えを広めたい――あるいは、神に敵対するものを滅したい。
 自由を守りたい――つまりは、不自由を強いるものを滅したい。
 そういう感情も、立派な『欲望』です」
二つ目の例は、明らかにアサシンへの皮肉だ。
吾郎さんが口を開く。
「その三人は、どうしてあなたの家族を襲ったんだ?」
「・・・」
知恵先生は答えない。
「あなたの家族に、何か恨みでも?」
「違います」
「では、なぜ?」
知恵先生はしばらく黙ってから、吐き捨てるように言った。
「・・・お金ですよ」
「え・・・!?」
アサシン寄りの立場に立っていた、吾郎さんも絶句。
「お金って・・・そんな」
「あなた方が支給する活動費を懐にしまうだけでは物足りなくなったんでしょう。あいつらは。で、物足りない分は
 赤の他人の財布で補填することにした。まずは恐喝、次に空き巣。そして――強盗」
知恵先生の表情が憎悪に満ちる。
怒りに打ち震えた声で、知恵先生は言った。
「あいつらは、私たち家族の家に押し入り、まず一階の居間にいたお母さんに金のありかを聞いた。お母さんは、きっと答えなかったんでしょう。
で、騒ぎを聞きつけて二階の書斎から降りてきたお父さんも脅した。ところがお父さんは答えず――逆に反撃しようとした。冷静さを失った誰かが、
最初にお父さんを撃ち殺した。叫び声をあげたお母さんも、その直後に射殺。その後、詰められるだけ金品を詰め込んで、逃げた」
真和さんが無神経ともいえるほど直球で訊く。
「なぜアンタは生き残った?偶然出かけてたのか?」
おそらく、これが着火したのだろう。
「ええ・・・出かけてましたよ?」
知恵先生の冷静さもここまでだった。
「お父さんの誕生日プレゼントを買うために!!!」
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
590 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:51:30.28 ID:UQ/2zM1F
「人間にもいろいろいるように、アサシンにも色々といる。
 無論、忠実に掟を守り、自由を守るためにのみ自らの力を使うという者が大半だが、
 中にはそうじゃない奴もいる。己の技を、己の欲のためだけに使う輩もいる。
 そういう奴らにとって、掟なんてのはただのお飾り。気になんてしない。
 ・・・そういう奴らを抑止するためのものが、掟だっていうのにな」
消灯時間はもう間近。
外はもう真っ暗だ。
知恵先生はもう帰った。
『今日は、見苦しい姿を見せてしまいましたね』
いえ、そんな・・・お気になさらないでくださいまし。
『あの、沙都子さん・・・』
はい?
『また、会いに来ても良いでしょうか?』
・・・もちろんですのことよ。知恵先生。
帰り際、吾郎さんは知恵先生に手錠もせず、袋を被せようともしなかった。
あの、吾郎さん。
『・・・何?沙都子ちゃん』
あの・・・本当に、ごめんなさい。
何が?
真和さんに、迷惑をかけてしまったこと?
そうかもしれない。でも、確信できない。
はっきりとは分からなかったが、とにかく私は、吾郎さんに謝らなければと思ったのだ。
『・・・いいよ。僕も、ごめんね』
何が?
きっと、吾郎さんも分からなかったと思う。
吾郎さんには、謝る理由なんてもともとないのだから。
でも、きっと吾郎さんも謝らなければと思ったのだ。
・・・いいですわ。

ともかく、吾郎さんも許してくれた。
それだけで十分だった。

「・・・知恵先生は、どうなってしまうんですの?」
『聖務執行』『細心の注意』『東西両陣営からの激しい追跡』
きっと、ただでは済ますまい。
訊きたいことを一通り聞いたら、殺してしまうのか。
それとも、知恵先生の身柄が欲しい組織に引き渡してしまうのか。
もし、そうなら。
・・・そうなら、私はどうするんだろう。
知恵先生には、絶対に行ってほしくない。これ以上、親しい人が消えるのはごめんだ。
でも、もし知恵先生を助けるために行動すれば、私が『東京』に復讐する機会はなくなる。
「順当にいけば、徹底的に尋問した後葬ることになる」
あまりにあっさり言うので、私は思わず抗議の声を上げようとした。
「そんな「やれるだけのことはやってみる」」
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
591 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:52:03.79 ID:UQ/2zM1F
!!
「やれることって・・・」
言って、改めて思い出す。
そうだ。真和さんは、第1級アサシンなのだ。
「真和さん」
「言っとくが、いくらオレが第1級アサシンだからって、聖務執行を止めるのは厳しいぞ」
そう言い、真和さんは壁にもたれた。
「最初の三人に関しては、原因が当人とそういう奴らを管理しきれなかったソビエト支部の責任ってことになるかもしれない。
 だが、その後の七人は完全に知恵先生の責任ってことになるだろう。
 仮に執行を止めたとしても、何らかのダメージは覚悟してもらわなきゃならん」
「何らかって?」
「指七本切断、とか、幽閉700年、とか」
若干伸びをしながら怠そうに言う。
「そんな!!」
「何が『そんな』だ。日本だって、三人殺せばまず死刑だろ?」
考えれば当然の話。
だが、受け入れられるわけがなかった。
「それに、谷内が協力してくれるか・・・」
「吾郎さん?吾郎さんが、どうして?」
「・・・お前の懲罰査問会の時、オレの台本作ったのは谷内なんだよ」
「えっ?」
びっくりして、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「オレは実戦は得意だが、どうもデスクワーク系には疎くてな。あいつ、そういうの得意なんだ」
意外や意外・・・と思いかけて、思い出す。
そういえば真和さんは、支部への定例報告書を全部吾郎さんにやってもらっていた。
弟の宿題を代わりにやってあげるお兄ちゃん、みたいな光景ですわね。
そう言ったら、真和さんにちびた消しゴムを投げられた。
「査問会の連中は見事に言いくるめられた。おかげでオレとお前の首はつながったって訳だ。
 ただ今回は・・・」
「・・・谷内さん、やっぱり怒ってらっしゃるんですの?」
「さっき見た感じだと、最初ほど怒っちゃいなかったようだ。でも、まだアサシンを侮辱したことは許せない
 って感じだったな」
「そうですか・・・」
私は肩を落とす。
「オレがにできること――それは谷内が作った言葉を、立場を利用して上にたたきつける。
そしてそのために、何とか吾郎を説得する。それだけだ」
そういうと、真和さんは壁から離れ、私の横まで来る。
「まあ、何もすぐに行動しなきゃならないって訳じゃない。時間はある。多少な。
 とにかくお前はもう休め。今日は、病人にとってはきつすぎる一日だったんじゃないか?」
「ぜんぜんですわ」
半分は本心。半分は強がり。
色々なことが分かって、《外》のことがどうのという不安はほぼ払拭された。
だが――
こんなに人の激情に一日で触れたのは、生まれて初めてだ。
かつて、雛見沢で詩音さんに滅多打ちにされた時よりずっと濃かった。
濃密な感情は心の緊張を呼び、心の緊張は心臓のだるさを導く。
そして心臓が怠くなると、体の血の巡りが悪くなる。
なんだか、急に眠くなってきた。
その様子を見てとったか、真和さんは私から離れていく。
そして。
私がまさに眠りに落ちようとしていた、その時。
「ああ、そうだ」
理解はできる。でも反応は無理。
「言っておかないといけないことがある」
狙ったか、それとも偶然か、そんな絶妙なタイミングで。

「日本支部が、興宮支所の閉鎖を決めた」

脳がその情報を記録すると同時に、私は眠りに落ちた。
【ひぐらし】07th総合part24【うみねこ】
592 :417[sage]:2012/12/01(土) 22:53:03.74 ID:UQ/2zM1F
今回はここまで。


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