- 【シスター・尼僧】聖なる女の小説3【巫女・神官】
467 :ひつまぶし[sage]:2012/11/07(水) 10:24:41.38 ID:l9oTGK6q - 僕の住む街にある、小さな教会。
たまに司祭さんやシスターが出入りする以外に人の気配がないソコに、僕は入っていた。 理由は簡単。 数年越しの片想いが実らずに、しかし一人で静かでいられる場所などそう多くはなくて。 まるで迷い猫のようだった、と語るシスターさんに導かれたのだ。 「初恋が叶わなかった、ですか」 修道服に身を包む美女の言葉に、僕は首を縦に振る。 喋ることすら億劫な僕を、シスターさんはじぃっと見つめて。 「初恋は叶わぬもの、と俗説はあります。が、そのような俗説では慰めにもならないでしょうし、ね」 優しく、僕の頭を撫でてくれた。 「確かに辛いでしょう。しかし、これは糧なのです。恋に敗れることも、貴方の成長のための糧。貴方にはより素晴らしい恋があり、そして選べる択が増えた。それが、神の思し召しなのです」 とてもとても、残酷な言葉だった。 神の不在を語ったのは誰だったか。 神が本当に僕の糧にしたいと思っていたのなら、それは大きな間違いだ。 僕は、本当に彼女が好きだった。 なのに、こんな結末を寄越すなんて。 「明日も当教会に来て戴けますか?」 「……え」 「私が残酷なことを言ったのは、疑いようのない事実です。しかし貴方は、それを責めずに、自ら一人で背負おうとしている。ならば、私はそのような貴方を救いたい。我が儘なようですけれど、ね」 頬を薄く染めて、シスターさんが目配せをしてくる。 成る程、重荷を与えるだけでは救われない、故にその重荷を共に背負おうと言うのか。 ならば、僕はそれに甘えるとしよう。 「はい、ではまた明日の……夕方に」 「お待ちしております」 僕はシスターさんに見送られ、教会を後にする。 それから、僕は毎日教会に通った。 シスターさんに慰められ、シスターさんに癒され、シスターさんの本名を知り、シスターさんが司祭とシスターを兼ねていること……僕とシスターさんは、日に日に仲良くなっていった。 ――そして。
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