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らき☆すたの女の子でエロパロ64

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らき☆すたの女の子でエロパロ64
364 :64-285[sage]:2012/04/09(月) 01:11:59.98 ID:QpDzvU0R
「みずたまりのほとり ゆたか視点」(3日目・後編)を投下します。

・11レス前後使用予定
・時間軸でみなみ視点の3日目後半(エピローグ直前まで)に対応
・みなみ視点とクロスするシーンで、大きな流れは同じですが
 細かい言い回しなどを所々変えてます
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365 :みずたまりのほとり ゆたか視点 25[sage]:2012/04/09(月) 01:13:45.31 ID:QpDzvU0R
…でも、みなみちゃんの顔色はおしっこを我慢していたときと同じぐらい悪くて、
その上…どこか痛いのを我慢しているように見えました。

「みなみちゃん…どこか痛いの?」

「…う、うん。おなかが…ちょっと」

ちょっとには、見えませんでした。

「もしかして…膀胱、傷めちゃったのかも…」

私よりずっと意志の強いみなみちゃんが、歩けなくなるほど我慢したのです。
膀胱にかかった負担は私の場合とは比べ物にならなかったはずです。

「そうかもしれない…でも、どうでもいいから…」

「どうでもいいって、そんな…!」

「え…。あ…ごめん、大丈夫だから、って言いたかった」

そう言って微笑んで見せるみなみちゃんは、大丈夫になんて見えませんでした。
話をするのも辛そうで、本当に保健室に行って休んだ方がいいぐらい…
それどころか…今すぐ病院に行かなきゃいけない状態にだって見えました。

「…みなみちゃん」

なのに私は、みなみちゃんに本当のことを聞きたい気持ちを抑えられませんでした。

「教室から出た時、みんなが話してたの聞こえたんだけど…。
 5時間目から…もしかしたらもっと前からずっと我慢してたみたいだって。
 …本当なの?」

「…うん」

みなみちゃんは少しためらってから、肯定しました。

「どうして?」

「………」

みなみちゃんは何も言いませんでした。
それは、私の『どうして?』が聞こえなかったからじゃなくて、
理由がなかったからでもなくて、私が悲しむような理由だから言えないのです。

「みなみちゃん…みんなの前でおもらしするつもりだったんだね。
 私がしちゃったからって…同じようにって…」
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366 :みずたまりのほとり ゆたか視点 26[sage]:2012/04/09(月) 01:16:15.84 ID:QpDzvU0R
みなみちゃんは…さっきより長い間ためらって…そっと肯きました。
さっきの悲しみと、理不尽な怒りが心の中にまた燃え上がって…。

「……ばかあっ!」

気が付いたら叫んでいて、みなみちゃんがびくっと体を震わせました。

「みなみちゃんまでおもらししたって、何にもならない!
 私がしちゃったことは消えないよ!
 私と同じように傷付く人が、もう一人増えちゃうだけだよ!」

「でも……でも……」

弱々しいみなみちゃんの声。

「私は…ゆたかに…おもらしさせて…傷付けた…だから…。
 私も…同じように傷付けば…ゆたかが…少しは…」

「みなみちゃんが傷付いたらどうだっていうの?
 もっともっと悲しくなるだけだよ!
 みなみちゃんが傷付くのなんか見たくない!
 そんなの、想像するだけでも悲しくなっちゃうよ…!」

悲しみと理不尽な怒りに突き動かされ、一方的にまくし立てる私。

「………」

みなみちゃんはおびえたように黙り込んでしまいました。
私の中の怒りはしぼんで、悲しみだけが残りました。

「みなみちゃん…。みなみちゃんがおもらしして傷付いたら…
 仲間ができて嬉しいって、私が喜ぶと思ったの?
 みなみちゃんが、私と同じところまで落ちてきたらいいって…
 そんなこと考えてるって、思ってたの?」

それでも…声のトーンが落ちただけで、私は止まりませんでした。
残った悲しみだけでも、私を突き動かし続けるのには十分だったのです。

「………」

みなみちゃんは、何も言わないで黙っているだけでした。
でも、その追い詰められた表情は、言葉と同じようにはっきり告げていました。
『否定できない』…と。

そのとき…やっと分かりました。
教室で、私が立ち上がる前、みなみちゃんが視線で訴えていたことが何なのか。
あのときみなみちゃんが、私に何をしてほしかったのか。

「みなみちゃん…教室で私が立ち上がる前に伝えようとしてたことって…。
 一昨日の仕返しにおもらしさせて、ってことだったんだね?
 おもらしのことでみなみちゃんを恨んでて、仕返ししたがってるって…
 私のこと、そんな自分勝手で意地悪な人だって…思ってたの?」
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367 :みずたまりのほとり ゆたか視点 27[sage]:2012/04/09(月) 01:18:01.68 ID:QpDzvU0R
「………」

みなみちゃんは、黙っているだけでした。

「みなみちゃん…どうして何も言ってくれないの?
 違うんだったら、違うって言ってよ…」

「………」

みなみちゃんは、それでも黙っていました。
『違う!そんなわけない…!』って言いたそうに見えました。
でも、声にして言わないのは…やっぱり否定できないということです。
みなみちゃんの中で…私はそういう子だったのです。

「そうなんだ…私のこと…そんな風に思ってたんだ…。
 ひどい…ひどいよ…みなみちゃん…」

涙が浮かんできて…下を向いた、一呼吸の後。

……ぽたっ。

足元で、涙の雫が弾けました。
…私の涙は、まだあふれていないのに。

「え…」

顔を上げると…同じように下を向いていたみなみちゃんの瞳から
二粒目の涙が落ちていって…。

……ぽたっ。

足元で、同じ音を立てて弾けました。

「みなみちゃん!?」

私の驚いた声に、みなみちゃんは顔を上げました。
顔を上げたことで、またあふれた涙は、すぐに落ちないで頬を伝いました。

「え…」

みなみちゃんは手でさっと目の辺りを拭って…。
また、涙が伝って…。

「……!」

みなみちゃんはそのとき初めて、自分が泣いているのに気付いたのでしょう。

目をぎゅっと閉じて…。
閉じた目から、また涙がこぼれて…。

「……っ!」

両手で顔を押さえて…。
それでも、押さえた手から涙がこぼれ落ちていきました…。
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368 :みずたまりのほとり ゆたか視点 28[sage]:2012/04/09(月) 01:19:44.33 ID:QpDzvU0R
「みなみちゃん…」

(泣かせちゃった…みなみちゃんが泣くなんて、どれだけ傷付いたんだろう…)

『私』の声で、みなみちゃんを泣かせてしまったことを今頃になって自覚しました。

「みなみちゃん…あ…あの…ご…ごめん…私…言い過ぎた…」

(今さら何言ってるの?口から出した言葉は戻せないよ)

『私』の声に同意したかのようなタイミングで、
みなみちゃんが顔を押さえたまま、無言で首を横に振りました…。

(ほら、『今さら謝っても遅いよ!』って言いたいんだよ、きっと)

「みなみちゃん…そんなつもりじゃなかったんだよぉ…」

(どういうつもりだったの!言ってみてよ!)

『私』の声が今までで一番冷たく、そして強く頭の中に響きました。

「………」

何も…言えませんでした。

(…どうして言えないか、教えてあげる。
 私がしたのはただのいじめだって、認めたくないからだよ。
 みなみちゃんが弱ってて抵抗できないから、調子に乗って泣くまでいじめただけ。
 学校でいじめられるっておびえてずる休みまでしたくせに、
 抵抗できない相手がいたらいじめっ子に早変わり…勝手すぎだよ)

そんな…そんなつもりじゃなかったんだってば…。
みなみちゃんが無茶なことしたのが悲しかったから…。
みなみちゃんに変な風に思われてたのが悲しかったから…。

(無茶なことさせたのも、変な風に思わせたのも、私じゃないの?
 もっと早くみなみちゃんに本当のこと教えてたら、
 みなみちゃん、おもらししようとなんてしなかったんじゃないの?
 支えようとした手を振り払われて、顔見たくないって言われて、
 待ってて話しかけようとしても口もきかずに逃げられて、
 それでも恨まれてるって思わない方が変じゃないの?)

そこまで言って、不意に『私』は、言葉を切りました。
聞こえるのは、みなみちゃんのかすかな嗚咽と、涙が足元で弾ける音だけ。
私は…自分でそうさせたことなのに、みなみちゃんを責めて泣かせてしまった。
そのことを噛み締め、絶望が心を覆い始めて…、
それを待っていたように『私』は言葉を続けます…。

(…最後に残ってた希望、自分で壊しちゃった。
 ずっと見捨てないでくれてたみなみちゃんの心まで踏みにじって…
 もう味方になってくれる人なんていない。本当に一人ぼっち。
 あの夢、やっぱり本当になった…というより、自分で本当にしたんだよ)
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369 :みずたまりのほとり ゆたか視点 29[sage]:2012/04/09(月) 01:21:36.10 ID:QpDzvU0R
もう…もういいよ…わかった…わかったから……。

絶望に呑み込まれて…私自身のこと、消したいぐらい嫌になって…
みんなの前から消えてしまおうって…駆け出そうとした、そのとき。
みなみちゃんが顔から手を離して…涙できらきら輝く瞳と視線が合いました。

「違う…違うの…」

え…?

「ゆたかのせいで…泣いたんじゃないの…」

みなみちゃんは、涙が止まらないまま喋り始めました。

「どうして…泣いてるのか…自分でも…分からないの…。
 私…泣きたいなんて思ってない…。
 頭…真っ白になって…気が付いたら…涙が出てて…止まって…くれないの…」

その声は震えて途切れ途切れだけど、涙声じゃなくてはっきり聞き取れました。
泣いていても、完全には自制を失っていないのです。

「ゆたかの…言う通りだよ…おもらしさせたこと…もう…消せない…。
 せめて…ゆたかが…立ち直るきっかけ…作りたかった…。
 そうできたら…私は…どうなってもよかった…。
 なのに…私のしたことは…ゆたかの気持ち…考えないで…また悲しませただけで…、
 今度は…泣き出して…困らせてる…。ばかだよね…訳…分からないよね…。
 全部…私が自分でまいた種で…泣く資格なんか…ないのに…」

みなみちゃんが、喋れば喋るほど辛くなっているのが分かりました。
涙がもっといっぱい出てきて…体が小刻みに震えて…。
それでも感情を懸命に抑えて、喋り続けるみなみちゃん。

「私……本当に……ばかだ……。
 どんどん……頭……真っ白になって……何も……考えられない……。
 もう……どうしたらいいのか……分からない……分からないよぉ……!」

『分からないよぉ……!』でとうとう涙声になって…、
みなみちゃんはそれっきり何も喋れなくなりました。

みなみちゃんを泣かせたのは…やっぱり、私でした。
みなみちゃんはあのときからずっと、
どうしたらいいのか分からなくて泣きたいのを抑え付けてきて、
今、とうとう抑え切れなくなったのです。
そして…どうしたらいいか分からなくさせていたのは、私なのだから。

みなみちゃんが今言ったことは、みんな逆。
みなみちゃんの気持ちを考えないで、ずっと悲しませ、困らせ続けたのは私。
ばかで、訳が分からないことばかりしてたのは私。
全部の種をまいたのも、私だったのです…。
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370 :みずたまりのほとり ゆたか視点 30[sage]:2012/04/09(月) 01:25:21.68 ID:QpDzvU0R
みなみちゃんへの罪悪感はさらに大きくなって、胸がずきずき痛みました。
なのに、さっきのような駆け出したい衝動はもう起きませんでした。
心が落ち着いて…というより、目の前のみなみちゃんに心を奪われてしまって
余計なことが考えられませんでした。

泣いているみなみちゃんは…そのぐらい綺麗だったのです。
きらきら輝く涙は、流れ落ちて宝石に変わってる…。
足元に視線を向けたとき、半分ぐらい本気でそう思っていました。

…もちろん、足元にあったのは、小さな水たまりだけでした。
でも、それはただの水たまりじゃなく、みなみちゃんの心が溶け込んでいて、
私の嫌な心も優しく溶かしていく、魔法の水たまりでした。

みなみちゃんに言葉をかけることも、涙を拭いてあげることも忘れて、
私は、少しずつ大きくなり続ける水たまりのほとりで立ち尽くしていました…。

どのぐらいの時間が経ったのか…。
みなみちゃんの涙が止まって…私はようやく我に返りました。
すぐにハンカチを出して、みなみちゃんの涙を拭きました。

「みなみちゃん…ごめんね。ずっと誤解させたままでいて…」

言わなきゃいけなかったこと、ようやく言えました。

「あのとき…おもらししたの、みなみちゃんが触ったからじゃない。
 あの時にはもう、少しもれてて、スカート濡れちゃってた。
 あのとき、私が言ってたのは、動いたらもれちゃうって意味じゃなく、
 動いたらもらしたおしっこが見られちゃう、って意味だった…。
 みなみちゃんが来なくたって、あのまま全部もらしてた。
 みなみちゃんが責任を感じる必要なんて、全然なかったんだよ…」

「………」

みなみちゃんは私の顔を見て、嘘じゃないことを分かってくれたようでした。
でも、みなみちゃんは首を横に振って…、

「私は保健委員なのに、ゆたかの事、注意してなかった。
 ちゃんと休み時間にトイレ行ってるかな、おしっこしたくないかな、って
 いつも注意してなきゃいけなかった。
 授業中におしっこしたそうな素振りを見せたら、すぐに気付いて
 連れ出してあげなきゃいけなかった…」

…真顔で、そう言ったのです。
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371 :みずたまりのほとり ゆたか視点 31[sage]:2012/04/09(月) 01:27:41.43 ID:QpDzvU0R
☆☆☆☆☆☆☆

休み時間に、みなみちゃんが来て…。

「ゆたか…おしっこない?」

「ないよぉ。お昼休みに行ったもん」

「でも、お昼にカフェオレ飲んだし…行っておいた方がいいと思う」

「大丈夫だよぉ」

そして、授業中…

「…んっ」

ぎゅっ。

「…んん…」

もじもじ…。

私がそわそわし出すと、みなみちゃんがすぐに立ち上がって…。

「ゆたか、行こう」

「うん…」

私はみなみちゃんに連れられて教室を出て、小走りにお手洗いに向かいます…。
すっきりしてお手洗いから出ると、みなみちゃんが待っていました。

「…ほら、さっき休み時間に行っておいた方がよかった」

「うん…ありがとう、連れ出してくれて…」

みなみちゃんは微笑みました。

「私がいつも注意してる。ゆたかは、おしっこの心配なんかしなくていい…」

☆☆☆☆☆☆☆

……ぼんっ。

頭から煙が出て、そんな想像を振り払いました…。

「う〜〜……」

私は、真っ赤になって、変な声を出してしまいました。
ちょっとだけいいかもと思ってしまった自分が、すごく恥ずかしいです。
でも、みなみちゃんに真顔で言われたら、何だか心がほわほわして、
怒ろうとしても、ぷーってふくれるだけになっちゃって…。

「あのね〜、みなみちゃん…。
 私、おしっこしたくても言えない赤ちゃんじゃないんだよ…?
 そこまでいつも注意されてたら、すごく恥ずかしいんだけど…」
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372 :みずたまりのほとり ゆたか視点 32[sage]:2012/04/09(月) 01:30:01.87 ID:QpDzvU0R
「そ…そうかな…?」

みなみちゃんの声の調子も、何だか和らいでいました。

(一昨日『おしっこしたい』って言えないでおもらししたのは誰だっけ…)

『私』がそうつぶやいた気がしましたが、スルーできました。
そのぐらい、ほわほわしていたのです…。

「そうだよっ!もうっ!今回のことだって、
 私が自分で言ってトイレ行かせてもらえばよかっただけだよっ!
 みなみちゃんに責任なんか全然ない!
 みなみちゃん、私のこと、子ども扱いしすぎだよぉ!」

「ご、ごめん…」

何だか雰囲気が和んでしまって…。
このまま笑い合って終われたらって、思いました。
でも、そんなわけにもいきません。

「昨日の夜、お姉ちゃんから聞いた…。
 みなみちゃんが自分のせいだって誤解して思い詰めてたってこと」

私は話を戻しました。

「違うんだよ、って伝えなきゃって思って、今日、学校に来たのに…
 みなみちゃんを見たとたんに逃げて…もっと誤解させちゃった。
 その後だって…みなみちゃんのところにいけば話せたのに、
 夢と同じようにいじめられるのが怖くて、休み時間は誰もいない所に逃げて…
 先生がいればいじめられないと思って、授業の時だけ戻って…
 そんなこと、繰り返してた…」

「夢?」

「一昨日の夜、見たの…。
 おもらしのことでみんなにいじめられて…
 最後にみなみちゃんにも嫌われて…一人ぼっちになっちゃう夢。
 きっとほんとになるんだって…ずっとおびえてた…」

「………」

みなみちゃんは少しの間の後、安心したように微笑みました。

「夢は…夢だよ。本当になる場合もあるけど…間違っている場合だってある。
 その夢で、絶対に間違ってる所、一つ、すぐに言える。
 …私は、ゆたかの事、嫌いになったりなんかしない。
 ゆたかの事、ずっと好きなままだよ。今も、これからも」
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373 :みずたまりのほとり ゆたか視点 33[sage]:2012/04/09(月) 01:32:08.68 ID:QpDzvU0R
「あ……」

一瞬だけ、幸せに包まれそうになりましたが…。
その幸せは、すぐに悲しみへとひっくり返りました。

自分勝手で、弱虫で、みなみちゃんの優しさも踏みにじった私。
みなみちゃんに好きって言ってもらう資格なんかないから…。

……でも。
みなみちゃんの微笑みは、私の勝手さ、弱さ、それに今したこと、
全てを受け入れてくれていて…
『これ以上、何も悲しまなくていいんだよ』と告げてくれていたのです。

悲しみが…幸せにまたひっくり返って…。
今度こそ、幸せに包み込まれて…また涙が浮かんできました。
一昨日から何度も流してきた涙とは、違う涙。
あの時からずっと忘れていた笑顔が、戻ってくるのを感じました。

「みなみちゃん…ありがとう…。
 私…どんなにいじめられたって、負けないで頑張っていける…。
 みなみちゃんが見捨てないでいてくれる…それだけでいい…」

「…ゆたか」

みなみちゃんは、首を横に振りました。

「私だけじゃない。ひよりだって、他の人だって、みんなゆたかの事を心配してる。
 ゆたかをいじめるのは…ゆたかだけだよ」

「え…」

「おもらしのことで自分を責めたり、自分がいじめられるって想像したり…、
 そうやって、自分で自分のこと、いじめてる。
 もし他の誰かがおもらししたって、ゆたかはそんな風にいじめたりしないよね。
 それと同じように…ゆたか自身のこともいじめないであげて。
 私や他の人に優しいのと同じように…自分にも優しくしてあげたらいい…。
 それで、もう、ゆたかをいじめる人はいない…」

「………」

みなみちゃんの言葉が、胸に染み込んできました。

(…みなみちゃんの言いたいこと、分かるね?
 みなみちゃんが言ってるのは、今、このときだけの話じゃないよ)
 
『私』が言いました。
その声は、みなみちゃんの声と変わらないぐらい温かくなっていました。
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374 :みずたまりのほとり ゆたか視点 34[sage]:2012/04/09(月) 01:34:36.08 ID:QpDzvU0R
『私』は、私自身。
『私』があの夜からずっと冷たかったのは、
私が自分のことを嫌になっていたのに呼応していただけ。

今は、もう違います。

(みんなから今回のことの記憶を消せるわけじゃない。
 だから、これから先、今回のことを話題にされることはきっとある。
 軽い気持ちでからかわれることだってあるかもしれない。
 だからって、またすぐさっきまでの私に戻っちゃだめ…ってことだよ)

「…うん。分かった」

私は、はっきりと言いました。
それは、みなみちゃんへの言葉でもあり、『私』への言葉でもありました。

(…よし。もう大丈夫。元通りの私に戻ったよ)

『私』が、去った…いえ、私の中に戻っていったのを感じました。

元に戻れたっていうのを実感して…、
みなみちゃんがくれた幸せが、今は包むだけじゃなく
心の中までいっぱいに染み込んでいました。

「ありがとう…みなみちゃん。本当に…」

私はみなみちゃんの手を取って、ありったけの想いを込めて言いました。
本当はぎゅ〜って抱きつきたかったけど…自重しました。

しばらくそうしていて…
ふと、みなみちゃんの顔色がさっきより良くなっているのに気付きました。

「みなみちゃん…おなか痛いの、大丈夫?」

「…うん。本当は、さっきまで破れてるみたいに痛かったけど…。
 今はもう和らいだ。ゆたかが…治してくれた」

「私が…?」

「ゆたかが本当の笑顔になってくれて…手を取ってくれて…
 すごく幸せで…痛いのが飛んで行っちゃった…」

照れたようにそう言うみなみちゃんは、こぼれるような笑顔でした。
今の私も、こんな素敵な笑顔になれてるのかな…。
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375 :64-285[sage]:2012/04/09(月) 01:37:08.87 ID:QpDzvU0R
ゆたか視点の三日目後半は以上です。
後はエピローグだけですが今回はここまで…。


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