- 年の差カップルにエロ萌え 5歳差
772 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:13:50.92 ID:KTmJgXUT - みなさん、お久しぶりでございます。
はじめましての人もいるでしょうか。 色々あって間が空いてしまってもうホントすいませんという感じですが、 続きを投下したいと思います。 覚えてない人も居るかと思いますが… 今回は遠子の視点のみの話です。
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773 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:17:39.69 ID:KTmJgXUT - 六月。湿っぽい空気に梅雨の気配を感じながら、わたしは今日も、英介君の家を訪れた。
「ああ遠子ちゃん、いらっしゃい」 いつものように、おばさんが玄関で出迎える。 「こんばんは、お邪魔します」 わたしもいつも通り、靴を脱ぎ、揃えてお邪魔する。 「英介ー、遠子ちゃん来たよー!降りてきな」 おばさんは二階に向かって大きな声で呼んだ。 しばらくそのままで待つ。 すると、返事の代わりに扉を開ける音が聞こえた。 そのすぐあと、少し乱暴に閉める音がして、それから階段を降りる音に変わった。 英介君が、降りてきた。「こんばんは」 わたしは英介君を見上げながら言った。 「………」 英介君は何も言わず、代わりにちょっとだけ会釈した。 「じゃ、あたしお茶淹れてくるから、ちょっと待っててね」 そう言うとおばさんは台所へと消えていった。 「はーい…じゃ、早速始めよっか」 英介君にそう言うと、わたしは居間のソファに腰を下ろした。 「じゃ、まず英語からやろうか」 わたしと英介君が再会してから、1ヶ月ほど経とうとしていた。 あれから英介君は更に二、三度ほどサボろうとしたことがあったけれど、 わたしがその度に、根性と気合いで連れ戻していた。
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774 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:20:42.92 ID:KTmJgXUT - それ以来、さすがに諦めたのか、英介君はわりと大人しく授業を受けてくれるようになった。
努力の成果が実ったのか、今もこうして、自分から教科書やワークなどを持ってきている。 「っと、その前に、こないだ言ったところ、予習しといてくれた? ワークの三十二ページから…」 「いや、全然」 まだまだ、積極的に勉強、という風には程遠い。 予習ぐらい、やってて欲しいんだけどな…。 「…そう。じゃあいいや、教科書の五十六ページから…」 肩を落としたのを英介君に悟られないようにわたしは言った。 その時。 「お待たせー。ほい、どうぞ遠子ちゃん」 おばさんがコーヒーの二つ乗ったお盆を手に居間の扉を開けた。 そのまま手際良くわたしと英介君の前にカップを置く。 「はい、砂糖とミルクは好きに入れてね。 あとこれ、遠子ちゃんの口に合うかどうかわかんないけど」 そう言いながら、おばさんは砂糖などと一緒にあるものを置いた。 「あっ、これ…!」 それはクリーム色の丸い小さなケーキだった。 最近有名になったらしく、わたしも先日テレビで知ったばかり。 「これ最近有名な奴ですよね! わぁ、ちょうど食べてみたいなって思ってた! ありがとうございます!」
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775 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:24:07.25 ID:KTmJgXUT - 甘いものに目がないわたしは、良い年こいてはしゃいでいた。
が、ふと思い出す。 「あれ、でもこれって、確か函館のお菓子でしたよね?旅行にでも行ったんですか?」 わたしが聞くと、おばさんは何だか嬉しそうな、それでいて恥ずかしそうな表情を浮かべた。 「ん、いやね、うちの人、仕事だなんだってけっこうあちこち飛び回ってて、たまにこうしたもの送ってくんのよ。 こないだは長崎行ってカステラ送ってきたのよ、あ、なんならそっちも食べる?まだとってあるから。 こっちもまた美味しいのよ〜なんか蜂蜜入ってて…」 は、始まった。 おばさんも甘いもの大好きな上に、しかも今回は旦那さんの自慢話まで入ってる。 普段からお喋り好きなおばさんのマシンガントークが始まってしまった。 なかなか遮るタイミングがつかめない。 ふと英介君の方を見ると、なにやら英和辞書を取り出している。 あれ、自習?わたしがそう思った次の瞬間、 英介君は、その分厚い塊を、テーブルの上に思いっきり打ち付けた。 張り裂けるような音が、おばさんの話を遮った。 わたしは突然のことに身動ぎも出来ないでいたが、 おばさんは流石母親と言ったところか、すぐにその行為の意図を読み取り、 「…あ、じゃあ、あたし上に行ってるから…。遠子ちゃん、あとよろしく」 と言って、そそくさと居間をあとにした。
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776 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:26:48.75 ID:KTmJgXUT - 「あっ…はーい」
わたしは居間の扉を閉めるおばさんの後ろ姿を見送った。 おばさんが階段を上る音が、どこか寂しげに聞こえた。 この前から、居間におばさんがいると気が散ると言って、英介君が上に追いやっていた。 「…じゃ、やろっか」 「…ん」 わたしが言うと、英介君はシャーペンを手に取り、カチカチ、と二回ならした。 「…それでね、この文の場合のitが指してるのはKeiko's shoesになるの」 「…ふーん」 英介君は特に興味もないと言った感じで、適当な相づちをうった。 ちゃんと理解したかどうかも怪しい。 自分から教科書を用意するようになったと言っても、やっぱりその態度からはまだ “嫌々やってる” という感じがひしひしと伝わってくる。 今から二年の遅れを取り戻すというだけでも大変なのに、 その上本人にやる気がないのでは、この先が思いやられる。 そう言えば、前に英介君は、“高校に行かなくても生きていける”と言っていた。 まさか本当に高校に行く気、ないのかな。
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777 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:29:59.10 ID:KTmJgXUT - 「ねぇ、英介君」
わたしはぼんやりと頬杖をつきながら教科書を眺める英介君に言った。 英介君は目だけを動かしてこちらを見る。 「…やっぱり、高校行く気、ないの?」 「…なんで?」 「あ、あるの?」 「いや」 ど、どっちなのよ…。 「じ…じゃあ、なんで行きたくないの?めんどくさいから?」 「…まあそれもあるけど…」 英介君はそう言うと、教科書に目を落とした。 なにか考えているようだ。 まさか、“なんとなく”なんて、言わないよねえ…。 そんなふうに返されたら、わたしだってどう返せば良いかわからない。 わたしは不安になった。 けれど英介君が返した答えはわたしにとってはちょっと意外なものだった。 「…高校行ったって、やりたいこともわかんねえし」 「やりたいこと?ないの?英介君」 「うん…」 てっきり、勉強したくないとか、そう言う理由だと思ってた。 やりたいことがわからない、か…。 「部活とかやりたくないの?将来の夢とかは?」 「…部活」 わたしがその単語を口にしたとき、英介君の目が、ちょっとだけ変わった。 そのまま何か言いかけたが、すぐに顔を伏せて口ごもってしまった。 その微妙な態度がなんだか気になったが、とりあえず話を先に進める。
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778 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:32:14.75 ID:KTmJgXUT - 「…やりたいことなんてさぁ、みんなすぐにはわからないよ。
たぶん…それを見つけるために、高校に行くんだと思うよ」 「見つけるために?」 「うん。現にわたしも、そうだったしね」 これは本当のことだ。 わたしだって、高校に入ろうと思った理由はそんなに立派なモンじゃなかった。 ただなんとなくとか、そんなものだったと思う。 でも最初はそれで良いんだ。 その後の三年間で、じっくり決めていけば良い。 高校を卒業した今なら、そう思う。 「…ふーん…。それで?やりてーこと、見つかったの?」 「…うん、まあね。でも…なんかこういうの、ちょっと恥ずかしいね。 んじゃ、続きやるよ」 わたしがそう言うと、英介君はまた教科書に目を落とした。 けどその表情は、さっきまでのぼんやりとしたものじゃなく、何かについて考えているようだった。 わたしの言葉、きいたかな。 わたしはちょっぴり嬉しくなった。 「じゃあ、今日はここまでにするね。 次は…んーと、数学のここからやるから、ワークのここ、 二十六ページの“基礎”ってとこ、やっといて」
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779 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:34:54.30 ID:KTmJgXUT - わたしは英介君にそう言った。
一応、ワークを開いて蛍光ペンで印を付ける。 「…んー」 英介君はその様子を見つつも、やる気のない返事を返した。 うーん、まだ勉強やる!って感じには遠いか。 「…わかった?英介君」 わたしは英介君の顔を覗き込みながら確認する。 英介君はちょっとうざったいという風な目でわたしを見ながら 「…わかったって」 と言った。 一応、嫌われているわけじゃないっていうのは、この間わかったけど… それでもこういう態度を取られるとやっぱり不安になる。 態度と言えば。 わたしはこの前から気になっていた事があった。 ちょっとためらいながらも、英介君に聞いてみた。 「…ねぇ、英介君」 「…ん?」 「わたしは英介君のこと、“英介君”って呼んでるけど… 英介君、久しぶりに会ったときから…わたしのこと、全然名前で呼んでくれないよね」 「…」 わたしがそう言うと、英介君は目をそらした。 「昔はよく、“遠子おねえちゃん”って呼んでくれたじゃない。 せっかくまたこうやって会えたんだからさ…ちゃんと名前で呼んでほしいんだけど…」 …ダメ?わたしは心の中でそうお願いしてみる。 「…嫌だ」
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780 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:37:10.96 ID:KTmJgXUT - くっ、ダメか。わたしの要望はいともあっさり棄却された。
でもここで引き下がるわたしではない。 「じ…じゃあ、“遠子ちゃん”とか、 なんならそのまま呼び捨てでも良いんだけど…」 確かに、中学三年生の男の子に“遠子おねえちゃん”は厳しいかもしれないけど、でもこれなら…。 「………」 こっ、これもダメか…! せっかくの妥協案も棄却されたわたしには、もうこれ以上代替案は出せなかった。 望みの終えたわたしは、しょんぼりうなだれるしかなかった。 だがそのとき、ふと英介君が口を開いた。 「…なんかさあ、アダ名とかねえの」 「…え?アダ名…?そりゃあ、まぁ、あるにはあるけど…」 でも、わたし自身はあのアダ名、あんまり好きじゃないんだけどなあ…。 別に、いじめとかじゃないけど。 「あ、あんじゃん。何だよ?」 「う…えーと」 えー…言うの? わたしは心の中でしぶったが、でも英介君がせっかく興味を持ってくれたのだ。 言わないわけにはいかない。 わたしはしぶしぶ言った。 「…トロ」 トロ。それがわたしが小、中、高と呼ばれ続けたアダ名だった。
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781 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:40:18.49 ID:KTmJgXUT - 「トロ!?え、何で」
何でこういう話題に限って英介君は食いついてくるのか。 出来れば理由は喋りたくないんだけど、まぁこうなったら仕方ない。 「えー…ただ単純に、トロいからでしょ」 「へー…でもあんま、トロい感じしねえけどな」 「え…あ、そう…?」 “トロい”と言われるのが大嫌いだったわたしにとって、 英介君のこの一言はちょっと、いやかなり嬉しい。 たぶん英介君にとっては、何気ない一言なんだろうけど。 「うーん、でもまあ、わたしも家のこととか、自分のこと、 ちゃんとしっかりできるようになったのって、高校入ってからだったんだよね。 それまでのわたしって言ったら、ホントにもう、ダメ人間だったよ」 遅刻とか、忘れ物なんてしょっちゅうで、何か得意なことなんて特になかった。 何をやっても中途半端で、家事なんてやったこともなかった。 だからあの頃は、しょっちゅうお母さんに怒られてたっけ。 「ふーん…」 「あ、あとね、もう一つ理由があるんだよね、これ」 「何?」 …うーん、英介君にわかるかな。 ていうか、知ってるかな。 「あの、なんか昔のゲームのキャラクターで、 なんかネコのキャラクター、いたじゃない?」 「…ネコ…?ああ、なんかあったな。 ていうか、今もあるけど」
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782 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:42:20.82 ID:KTmJgXUT - 「あ、知ってる?うん、なんかねえ、
あれに似てるからなんだって」 わたしが言うと、英介君はちょっとワンテンポ遅れて吹き出して、 そのまま笑い出した。 「なっ…なんかちょっと…わかる気がする…」 「えー、どこが!?」 「えっと…いや、何て言うか…まゆげ、とか」 ま…まゆげ!? 「えぇー!わ、わたしあんなまゆげじゃないー!」 思わず両手でまゆげを覆い隠す。 「…いや、まあ、でも、いいな、トロってアダ名」 わたしは正直、嫌なんですけど…。 そう言おうと思ったが、英介君が、そう呼んでくれるなら…それもまぁ良いか。 そう思った。 「…じゃあ、今度からトロって呼んで良いよ。 …ん?あれ?」 今何時だっけ。 わたしは時計を見上げた。 …九時…四十五分!? 「え、わ、うそもうこんな時間!? 帰ってレポートやんないと…。 じゃあ、さっき言ったところ、ちゃんとやっといてね」 わたしは数学のワークを英介君に渡すと、急いで自分の荷物をまとめた。 「…じゃあ、また来週ね」 「…おお」 英介君がそう返すと、わたしは慌ただしく英介君ちをあとにした。
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783 :遠子と英介[sage]:2011/05/13(金) 18:46:27.17 ID:KTmJgXUT - …まさか、英介君にトロって呼ばれる日が来るなんて、思わなかったなぁ…。
そんなに似てるかなあ、うーん。 わたしはさっきの英介君のことを思い出した。 そう言えば、大きくなった英介君の笑うところを見るのは、初めてだったかもしれない。 不良になっても、笑うところはなんだか無邪気で、昔の英介君に似てた。 それだけでも、ちょっとほっとする。 今日は何だかいつもより、サクサクできそう、レポート。 今回はここまでです。 遠子のアダ名が判明したので、次からはタイトルも 「トロと英介」にしようと思います。 次はもうちょっと早く…できるかな?
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