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久遠ゆりか ◆Juli/dituo
【異能】黄昏の学園 47【異端】

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【異能】黄昏の学園 47【異端】
69 :久遠ゆりか ◆Juli/dituo [sage]:2014/03/21(金) 00:23:05.87 ID:YvmEpWzo
ん…だって……ほんとに胸が…
(言い訳をしかけて、抱きしめてもらえたから、黙って目を閉じ身を任せる。)
(背中を叩かれて、繰り返す呼吸は深くなり、鼓動が落ち着いてくる。)
(いつの間に、この場所は、こんなに安らげる場所になっていたのだろうか。)
(これだけは、もう、ずいぶんと前からのような気がするけれど…)
変わってない…ほんとう?
わたしたち、かわらないまま、一緒にいられる?
(恥かしさで隠すことも誤魔化すこともしないまま、まるで子供のように質問を繰り返す。)
(優しい言葉にこくんと頷き、もっと抱きしめていて欲しいと、身を摺り寄せた。)
だって…先輩のくれる愛の言葉って、すごく棘があるかすごく甘ったるいかのどっちかだもの。
……わたし、嫌いじゃないけれど…
楽しいこと…?
じゃあ…幼女密入国と思われないように、わたし、毎日パスポート持ってなきゃね…
ほんとに、夢みたいで……なんで、こんなに簡単なこと、今までできなかったのかな、って…
ううん、今だって、本当は簡単じゃないけれど…でも……
…でも、今は、ただ、幸せで……もう、なにも――


(―――なにかが、聞こえる。)
(甘い、甘い、シロップよりも、ジャムよりも、甘い。)
(耳から入って、身体の中を巡り、粘つくクモの糸のように絡みつく。)
(動けない…だけど、振り払えないわけではないことを、知っていた。)
(動かない…この優しさに包まれていたいという、願いは本物だから。)

わたしは…わたしは、ただ……この想いが………
(顔を上げる。)
(向けられた笑顔は、張り付いたまま。)
(もう一度手を伸ばし唇に触れてみると、それはまだ、柔らかかった。)
(見つめる…あんなに恐れていた気持ちなのに、今は、それが消えてしまうのが、怖い。)
(人間とは、なんて自分勝手なのだろうかと、思った。)
(だけど、人間だから抱ける、醜くくも美しい感情は、心地良いものだと、今なら思う。)
(この気持ちが目の前の幻とともに消えてしまったとしても、確かに自分の中にそれはあったのだと…)

―――未来は…
(そっと身体を押し返し、腕から離れる。)
未来はね、神様にだって閲覧できないのよっ
わたしはわたしのやり方で、紅裂拓兎の傍にいるわ。
あなたが、考えもつかなかったやり方でね。
そしてわたしは……いつか絶対に、あなたを殺すわ。
【異能】黄昏の学園 47【異端】
71 :久遠ゆりか ◆Juli/dituo [sage]:2014/03/21(金) 00:53:52.02 ID:YvmEpWzo
ん……ぅー…
(重い頭をふらつかせながら、起き上がる。)
(寝起きの視線が、いまいち定まらない。いや、寝起きだからだけではない感覚…)
(手首には濃青のシュシュが通されていて、金の髪が重たげにぱさりと胸元に落ちる。)
あれ…わたし、髪の毛結んでなかったっけ……?
……ここ、は?
(甘い匂いがする。おいしそうな匂い。)
(柔らかな空気、暖かい、気持ちいい。)
(適当な口調だけれど、だけど低くて優しい、好きな声。)
(きょろりと辺りを見渡すと、目に飛び込んできた、いつもの見慣れた顔と紅い髪。)

――――っ!!!
(とたんに頬が赤くなり、そのまま立ち上がる。)
いたっ!
(天板に膝をぶつけ、尻もち。)
(それでもありえないほどの素早い動きでズザザザッと、後ろまで下がり)
(ガツンといやな音を立て、後頭部を背後にあった棚にぶつけ)
(仕上げとばかりに、バサバサと文庫本が数冊、頭上に降り注いだ。)
…………
(そして、膝の上に文庫本を乗せて、髪の毛はボサボサ)
(真っ赤な顔をして涙目で呆然としながら、何故か自分の唇を指先で押さえる久遠ゆりかが残された。)
【異能】黄昏の学園 47【異端】
73 :久遠ゆりか ◆Juli/dituo [sage]:2014/03/21(金) 01:25:10.36 ID:YvmEpWzo
うー…いたたた……
(散らかしてしまった本を、積み重ねていく横顔を見ていると、徐々に正気に戻ってきた。)
(と、同時に痛み。)
(ぶつけた頭をさすり、髪の毛が余計にボサボサになっていく。)
(むき出しの膝は、見るからに赤くなっていた。明日には痣になっているかもしれない。)

えぇっと…偽造パスポートの話だっけ…?
わたしがお願いして行くからには、わたしのほうで手配しておきますわ、って…
それから、エルミタージュは押さえときたいねって…レンタカーでも……
それから……一生、ずっと二人で、一緒に…
……あれ?
(ぼーっと天井を見る。)
(気が付けば、布団を敷いている紅裂の背中が見えた。)
(そっと、自分の唇を指先で撫でてみた。)
……もう一度、すればよかったかな…

(のろのろと立ち上がり、洗面所で歯を磨き、ボサボサの髪にブラシを通し体裁を整える。)
(片付けや寝る準備を整えるために、手際よく働く紅裂を邪魔するように)
(ぽすんと、その大きな背中に飛びつき、首を絞めるようにして顔を無理やり引っ張り下げる。)
(今はもう滑らかな左の頬に、ぶつけるように唇を付け、笑った。)
ね?先輩、わたしとキスしたい?
わたしは、したくないけれどねっ
(まるで紅裂がするように、けらけらと笑ってから、寝室でごろごろしているドルゥークを抱き上げ)
(ぎゅーっと、抱っこしてやると、突然の抱擁に小さな身体がじたばたとした。)
……今はまだ、ね。
【異能】黄昏の学園 47【異端】
75 :久遠ゆりか ◆Juli/dituo [sage]:2014/03/21(金) 01:56:23.06 ID:YvmEpWzo
【よし、せっかく綺麗に〆ていただけたので、このままで】
【色々考えてみたのですが、これ以上わたしが入れると、なんだか勿体無い気もしますし…】
【ロシアネタへの布石も入れてくださって、大満足。】
【ぜひともオーロラ見に行きたいので、これは機会があれば季節無視の冬進行で】

【こちらこそ、楽しませていただきましたわ。お疲れさまです、えぇ、ほんとに…】
【人は恥かしさでは死ねないと知ったロールでしたの。】
【普段と違うので、いいリフレッシュも兼ねている感じでしたし、ロール自体も楽しかったのですわ。】

【それでは遅くまでありがとうございました。】
【よろしければ、またお付き合いくださいませ。】
【おやすみなさい、先輩によい夢と素敵な明日を。】


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