- 園芸民が異世界転生したらどうするよ?
118 :花咲か名無しさん[sage]:2018/07/17(火) 21:35:29.00 ID:PsqSHS70 - それからしばらくの間、山田はひどく機嫌が悪かった。
普段は山田の部屋に入り込んで仕事の邪魔をしているナナ&ナナ・ツーも遠慮して近寄らず、 家令のエンガワの頭に登って仕事を邪魔していた。 そんなある日、王国環境庁から山田に書状が届いた。 野生動植物を保護するための新しい法律が創設され、保護指定種を決定する科学委員会が 発足することになった。その委員に山田を任命するというのである。 その法律の名は、「特定第二種王国内希少野生動植物種」制度という。 この法律は従来の「王国内の絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」 通称「王国種の保存法」を補完するもので、簡単に言うとオークションでの希少な生物の 販売を禁止することに特化したかのような法律である。 この法律の指定種となった場合、第一種の希少動植物種のように捕獲・採集が規制 されることは無いのだが、販売することは許されない。そのため衆人環視で行われる オークション取引には、出品することがほぼ不可能になる。 昨年度に実施は閣議決定済だったが、まだ施行されてはおらず、具体的な規制種の指定は 今後時間をかけて順次決定されていく予定であった。 その決定内容について討議・検討するのが山田の仕事というわけである。 次回「その24」 *この物語はフィクションであり、実在する人物・組織・法律などとは以下略
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119 :花咲か名無しさん[sage]:2018/07/17(火) 23:03:35.74 ID:PsqSHS70 - 厳密に言うと「特定第二種」の場合、人工増殖個体であれば販売は可能である。
だが、増殖方法が確立されておらず、野生採取のみが流通している動植物の場合は 事実上販売はできなくなる。一方で野生からの採取個体が捨て値で大量販売されることが 無くなるため、本当に人工増殖されている動植物の場合は販売価格が安定し 増殖業者の利益につながる。そういう想定がなされていた。 山田は、この法律の指定種にフセイランを加えようと考えた。 人工増殖できないフセイランの場合、指定イコール販売禁止になるというわけである。 しかし、この提案は他の委員からは難色を示された。 というのも、もともと特定第二種は二次的自然に生息する動植物、つまり里地・里山で 生きている身近な生き物を選んで指定することが前提とされていたからである。 具体的には第一回の指定として、農業用のため池に棲む有皿緑色水魔の捕獲、 草原性の小妖精の採集、平地性の火精サラマンダーの卵塊採取などが規制される 予定であり、植物系の魔物については今のところ検討対象では無かったというのもある。。 そもそも絶滅寸前の種であるならば第一種の希少動植物種に指定して、捕獲・採取を 禁止すべきであり、特定第二種への指定は筋違いである。それが他の委員達の 意見であった。 次回「その25」
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120 :花咲か名無しさん[sage]:2018/07/17(火) 23:27:41.14 ID:PsqSHS70 - だが、この世界において捕獲・採取の禁止は、領主の狩りの権利に制限を加えることに
つながっていた。そのため王国官僚が第一種への指定に対して及び腰であり、追加種の 選定は遅々として進んでいなかった。 そのため、代替策として特定第二種への指定が重要かつ現実的である。山田はそう主張 した。そして山田の説得により、最終的に他の委員も山田の意見に賛成した。 「では、山田委員の意見を採択するということで(あーもうコイツ何とかしてほしいわー 空気読めねぇし完全に頭おかしいよなー。でもなー王様のお気に入りみたいだし喧嘩しても 俺が損するだけだしなー。考えてみたら指定種なんて何だろうが俺と関係ねーし、適当に 決めて早く帰ろーぜ。あー尻かゆい)」という議長の締めの言葉によって、指定種への 追加が決定した。 こうして、山田はフセイランの販売禁止を勝ち取ったのである。 そしてその後、フセイランが販売されることはもう二度と無かった。 次回「その26」
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