- 消費税増税 いつまで待たせるのか − 読売新聞
151 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2011/09/21(水) 20:49:18.37 ID:ARDcds8AP - 成長頼みの財政再建困難
二兎追う野田政権 石 弘光氏 一橋大学名誉教授。放送大学学長、政府税制調査会会長、一橋大学学長などを歴任。 専門は財政学。74歳。 野田首相は、成長と財政再建の両立を一つの重要な政策課題として挙げている。世論も、こ の二兎を追う姿勢を、大いに支持しているように見える。 いうまでもなく成長戦略は低迷する日本経済の悲願だし、また世界最悪の状況となっている 財政再建も待ったなしである。それぞれの政策目標の重要性を、誰もが否定しないであろう。 しかしながら、この両者の両立を、政策的に追求するとなると非常に困難である。どんな両 立の条件が必要であろうか。その条件として、私は次の3点を強調したい。 第一に、両者を結びつけると、しばしば実現しそうにない高めの成長を想定し、その税収増 により財政再建を促進しようとする安易な考えになりがちである。 確かに少し景気が好転すると、なにがしかの税収増がうまれる。しかし、その途端に国民に 不人気な増税不可避の動きは止まり、成長による財政再建を志向する発想が力を得てくる。 とりわけこの高め成長志向−財政再建路線は、わが国で政治的に好まれる傾向にある。過去 数十年間、財政再建の必要性が叫ばれながら、いつも地道な再建策が政治的に不人気だから と先送りされてきたことに、今日の財政危機の元凶がある。 実は現在の名目国内総生産(GDP)水準は、バブル崩壊後の1991年のそれとほぼ同じ 水準である。「矢われた20年」の間に、名目GDPはほとんど成長していないのだ。 そしてグローバル化の動きの中、大きな構造変化が起こり、かつ人口減少時代に入った日本 経済で、将来飛躍的に高成長が復活するとは思えない。更にGDPの2倍にもなった財政赤 字規模は、多少の高めの成長による税収増で意味のあるほど縮減されるはずもない。 第二に、財政再建は成長とは切り離し、独自に財政制度の変革に立脚した正統的な手法で、 国民に不人気でも断固進めるべきである。財政で成長を下支えするという余地はもはやない であろう。規制緩和、金融政策および民間の地力に依存するしかない。 仮に成長が予想外に高まり税収増が生じたら、「思いがけない贈り物」(windfall asset) として、政府債務の削減に充てたらよい。埋蔵金依存と同様に、初めから確実に財源が確保 できないこの不確実な成長ルートに過大な期待をかけないことだ。 第三に、結局のところ財政再建は、歳出削減か増税、あるいはその組み合わせによって達成 されるべきものである。だから少なくとも短期的には、経済成長にとってデフレ的効果をも たらすし、一般的に成長にとって阻害要因になると懸念されている。 政治的には、これが増税回避の理由にいつもされている。しかしながら、いまや累増した財 政赤字が経済に与えるマイナスの効果をより重視し、中長期的な視点から思い切って財政再 建の方向を打ち出し実行するべきだ。 最近の国際通貨基金(IMF)などのわが国に対する勧告も、短期のデフレ効果を懸念する より、中長期的な財政健全化を重視する方針が明確である。すべてが発想の転換を必要とし ているのだ。
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