- 堺屋太一
66 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:23:30.31 ID:0e/GWFEz - ある時、官僚主導国家でひどいものは何かと議論したことがあった。その中で、各省がそれぞれ独自の「法人格」を作っているのは困るという話になって、大いに意気投合したものだ。
例えば、教育分野に新規参入しようとする。本来なら株式会社を作って「学校免許」をもらえば、それでおしまいで、「学校免許」の適格性だけに問題は絞られる。ところが、官僚の作った制度では、 学校は「学校法人」でないと、学校免許すら取れない。 株式会社なら、誰でも出資金さえ出せば設立可能だが、「学校法人」は文科官僚が認めないと設立もできない。しかも、「学校法人」と「学校免許」の2つのハードルを越すのは至難の業だ。 こうした各省ごとの「法人格」は文科省に限らない。厚労省の「医療法人」「社会福祉法人」、農水省の「農業法人」など他にもある。 こうした話の相手は、堺屋さんでないと務まらない。堺屋さんはこの仕組みを歴史から明快に説明できたからすごいのだ。 営利を追求する株式会社は適当でないと、各省は自分の省独自の法人格にこだわるが、戦前には株式会社もあったでしょうと反論できる。 所詮、独自の法人格は天下りや官僚に都合のいい法人を作りたいだけなのだ。
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- 堺屋太一
67 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:29:44.26 ID:0e/GWFEz - 『夢を実現する力』に堺屋太一は[プロデュース「成功の方程式」]を書いています。40ページ程の分量ですが、プロデュースをマネジメントするときの基本を一番よくまとめたものだと思いました。
堺屋はこの文章で「プロデュースの10段階法」を示します。 ▼プロデュースの10段階 1. 目的の明確化━━━━全員で共有 2. コンセプトの確立━━事業の全体概念、テーマを混同するな 3. ストーリーを描く━━具体的な全体イメージを語る 4. シンボルを立てる━━全員にコンセプトを知らせる 5. 全体計画を練る━━━規模、日程、行事イメージ、主要施設 6. 基本構想を描く━━━組織構想、予算構想、配置構想、マスタースケジュール(工程表) 7. 基本計画をつくる━━各分野専門家の仕事 8. 総合調整を図る━━━成功可能性の高い最終形を見出す 9. 基本設計を書く━━━全体設計、建物設計、運営設計、展示設計 10.実施設計━━━━━━専門技術者が多数参加 (『夢を実現する力』p.30:番号を付加) 堺屋はプロデュースの方法を、石田三成から学んだそうです。関ヶ原の戦いを企画したのが石田三成だとのこと。大義名分を掲げ、宇喜多秀家をスポンサーにして宣伝をして、 たくさんの人を集めました。万博のとき[私もその通りにやりました]と記しています。
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- 堺屋太一
68 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:31:44.32 ID:0e/GWFEz - 一番目は目的の明確化です。大阪万博なら、先進国となった「近代工業国家日本」を世界に示す文化産業行事でした。目的は複数あるものですが、最大・最終の目的を決めることが大切です。
[主要な関係者の間で合意がないことには絶対うまくいきません]。 二番目はコンセプトを作ること。[「目的」は理念、「コンセプト」は概念です]。沖縄海洋博の場合、目的は沖縄の人口を減らさないこと、だから「沖縄の観光客を10倍にしよう」というのが目的でした。コンセプトは「海洋リゾート沖縄」です。 コンセプトとテーマは違います。沖縄海洋博のテーマは「海−その望ましい未来」だったそうです。テーマは「みなさまのNHK」といった[キャッチフレーズであり]、 [キャッチフレーズからは具体的なものにつながりません]。コンセプトが大事なのです。 三番目に[目的とコンセプトにあわせて、納得できるようなストーリーを書かなくてはなりません]。この能力が[プロデューサーの最大の能力]になります。 イメージの提示ではなくて、そのイメージがストーリーのどの場面に入るのかという発想になります。 たとえば日本の都市計画は[配置設計、基本計画から入]りがちですが、本来[十年後、二十年後にどんな町にするのか]という[コンセプトとストーリーから入る]べきです。そのためにも、このストーリーを読んでもらうことが必要になります。
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- 堺屋太一
69 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:34:23.45 ID:0e/GWFEz - 「目的を明確にして、コンセプトを作り、それをストーリーにしていく」、ここまではプロジェクトの基本の話です。しかし、なかなかプロジェクトのストーリーなど読んでくれません。堺屋はストーリーを読み聞きしてもらうために、
ひと工夫した段階を考えます。 四番目はシンボルを打ち立てることです。シンボルを定めて、それにふさわしいものを考えてほしい…と促すなら[ストーリーの話も聞いてくれます]。大阪万博で[巨大なお祭り広場]を作ったら、 「何でそれがあるんだ」とストーリーの話になったとのことです。 五番目の段階では、全体計画を練って、[大体の規模、開催の日時、行われる行事と主要施設のイメージ]などを決めていきます。[間尺に合った全体計画、規模と内容]にすることが重要です。黒字にならないプロジェクトに、いい人は集まりません。 だから[全体計画をつくるにはお金を絞らないといけません。これはプロジェクトを黒字にするために絶対に必要なことです]。堺屋太一は強調します、[大衆の支持がなければ文化にならない。 「文化は赤字」は大間違い。必ず黒字にしなければならない]。
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- 堺屋太一
70 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:42:35.16 ID:0e/GWFEz - 6番目は基本構想を描くことです。ここから[プロデュースの後半、実施段階になります]。決めなくてはいけないことは、@組織・人員配置、A予算、B空間構想(配置のマスタープラン)、
C時間設計(マスタースケジュール・工程表)、の4つです。 まず、どのような組織(会社・役所)に参加してもらうかを決めていきます。このとき[人材に頼ってはいけません]。圧倒的な人材ばかりが集まるわけではないからです。 特別でない人達で成功することを前提にします。現実を見る必要があるのです。 続いて予算について、[建設費はどれくらいにするか、運営費はどれくらいにするか、どれを目玉商品、シンボルにして重点を置くか、ということをはっきりと決める]。さらに、 [どういうところに何を配置するかという空間構想を練ります]。 また、[時間設計が後置されると必ず失敗します]。[時間がかかるのはソフトウェアです。職員・要因への訓練を間に合わせるというのも、なかなか難しい]。 のんびりやれないのです。博覧会が[開会するときに立派で美しくなっていなければいけません]。 こうした基本構想はプロデューサーが描くべき事項です。[実は、これが大事なところです]。この[段階で初めて図面が出てきます]。これ以降、 プロデューサーの描いた図面にそって進みます。次の基本計画というのは[全部プロ、専門家の仕事です]。
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- 堺屋太一
71 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 18:56:14.67 ID:0e/GWFEz - 7番目に基本計画をつくります。[総合プロデューサーが建設プロデューサーと議論する場合]、目的を[議論しないといけない]。博覧会なら展示が終わったら潰してしまうので、汎用性は不要です。
[プロデューサーには無駄を見付ける能力がいります]。 8番目で総合調整を行います。[色々な専門家が持ってきたもの]が[総合的に調整されているかどうか、これを検証する段階]です。ここでは[予算を絞らないといけません]。 そうしないと[大赤字になります]。この段階が[一番苦しいところです]。 あれこれの言い分や事情があるため、[現実的には、今はこうするしかない]と言う人が出てきます。[しかしここでいう「現実的」とは、「着手容易性」を言っているに過ぎません]。 成功が必要なのに[着手はできるけれど成功はできない入口が多いのです]。 9番目が基本設計です。[あらゆる条件を定めてから設計する]こと。[基本設計で一番重要な問題はお金が合っている(予算内)かどうかの確認です]。たいてい[設計を先にやりたがります]が、それを認めたら、まとまらなくなります。設計は後です。 10番目は実施設計です。この段階で[各組織の長や実施の技術者]といった[最初の目的やコンセプトに関わらなかった人々がどっと来るわけです]。 [各プロデューサーや事務局長が、これを全員に丁寧に説明]することがプロジェクト成功の鍵になります。
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- 堺屋太一
72 :名無しさん@お腹いっぱい。[sage]:2019/08/26(月) 19:04:02.18 ID:0e/GWFEz - 堺屋太一は博覧会に長年かかわってきましたが、[結局はほとんどの人に愛されたと思います]と言います。[総合プロデュースは、非常に結果がよく分かります]から、[「終わり良ければ全て良し」なんです]。
途中の人間関係はあまり関係ないとのこと。 博覧会をプロデュースをするためには「多技能性」が必要でした。[特に会計と設計図と工程表が読めなければならない]。設計図なら、[音符を見て音が聴こえる]のと同様、[設計図を見て完成予想場面を確実に見ることができる]ことが必要でした。 先見性も求められます。[十年後の社会がどうなっているかを考えなくてはならない]。[だから、未来小説みたいなものを書く練習をするのもよいのです]、[これは才能ではなくて訓練です]とのこと。 ▼プロデューサーの資質 (1) 強気━━━━「終わり良ければ全て良し」に徹する気の強さ (2) 多技能性━━会計、設計、工程表がわかること。結果を想像する能力 (3) 先見性━━━イベント当日の世の中を見通す。開催時点で歓ばれることを選べる ▼プロデューサー気質とは何か (1) あきらめない━━━━━━壁を超える努力を止めない (2) 怒らない━━━━━━━━だが、甘い顔をしない。ケンカをしても冷静 (3) 譲らない(初志貫徹)━━目的とコンセプトは変えない。手練手管で初志を貫く (4) 疲れない━━━━━━━━「絶対的好き」になる(好きな者は疲れない) (5) 自慢しない━━━━━━━権限を持つ(調整する)者は嫉妬されないように用心しよう
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