- 自然エネルギーへの転換
80 :薔薇の騎士団[hamatyn@hotmail.co.jp]:2011/11/08(火) 07:19:04.68 ID:K0C60ByB0 - トリウムはウランの従兄弟のようなもので、天然に産する放射性元素である。そのトリウムを原子力燃料として
ウランの代わりに利用しようとする動きが世界で静かに広がり始めた。 背景には地球温暖化対策として世界的に原子力発電増設の気運が高まっていることがある。その場合の大き な懸念は、核兵器の拡散と放射性廃棄物である。トリウムは核兵器の拡散防止に役立つうえに、プルトニウム を含む有害な放射性廃棄物がほとんど発生しない。 そんな良いことずくめの技術なのに、なぜ今まで実用化されなかったのだろうか。一言でいえば、理由は第2 次大戦後の冷戦構造と核兵器開発競争にある。原子力の民生利用としての原発も、軍事利用と無関係に展開 されてきたわけではなかったのである。 核兵器には原料としてウランを使うタイプと、天然にはほとんど存在しないプルトニウムを使うタイプがあるが、 プルトニウム型の方が圧倒的につくりやすい。プルトニウムはウランが核分裂反応を起こして燃えるときに生成 されるが、トリウムを燃やしてもプルトニウムはほとんど発生しない。したがって、トリウムを原発の燃料とすると、核兵器を効率的につくれなくなる。そのため、政治的に日の目を見ることはなかったわけだ。 米国では1950年代から70年代にかけて、トリウム溶融塩炉と呼ばれる原子炉の技術開発を進めていた時期 がある。1965年から69年までの4年間、無事故で運転した実績を持ち、基本技術は確立している。トリウムの 燃料利用を想定していたこの原子炉は、核の平和利用の本命であった。 トリウム溶融塩炉の利点は、小型化に適し、経済性が高いということだ。そして、軽水炉の使用済み燃料や 解体核兵器に含まれるプルトニウムを、トリウムとともに燃やして処理ができるという点も都合がいい。トリウム そのものは核分裂しないので「火種」としてプルトニウムが使えるからだ。 米国にはトリウム・パワー(Thorium Power Ltd)という核燃料企業もあり、日本など世界で広く使用されている 軽水炉でのトリウム利用を推進している。各国では、溶融塩炉だけでなく、さまざまなタイプの原子炉でトリウム を使えるようにする研究開発が行われている。 オバマ大統領はグリーン・ニューディ−ルを打ち出し、そして核廃絶を世界に訴えている。4月5日にはチェコ 共和国の首都プラハでEU首脳との会談に先立ち、「米国は核廃絶に向けて行動する道義的責任を有する」と 演説した(4月6日付け『産経新聞』)。そして、核なき世界を目指して、4年以内に兵器用核物質の拡散を防ぐ 体制を構築する方針を表明した。 そのチェコ共和国は「トリウム溶融塩炉の技術開発で世界をリードしている国の一つだ。だとすると、オバマ大 統領の演説との関係は偶然の符合とは考えにくい」と原子力工学が専門の京都大学助教、亀井敬史博士は言う。
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