- 【77〜78】昭和52年度生まれの無職と有職のクズ 9
713 :名無しさん@毎日が日曜日[]:2021/02/23(火) 02:16:53.96 ID:L2DVAyEm - 藤間春雄は新宿駅南口のセブンイレブンの前でおもむろに腕時計を見た。時刻は深夜0時22分を指している。
「終電を逃してしまいました……」 JR中央線 青梅・立川方面の最終電車は1分ほど前に新宿駅を出た所だった。 「オッサン!」 不意に後ろから声をかけられ、春雄は振り向いた。 「あのさぁ、俺達終電逃しちゃってさぁ〜。タクシー代か、ネカフェ代恵んでくんない? 頼むわ!」 ガラの悪そうな10代後半と思しき3人組が薄ら笑いを浮かべながら春雄の方を見つめている。 「それは奇遇ですね。私も終電を逃してしまいました。……でも、大変申し訳ないのですが、私一人が自宅に帰る程度のタクシー代しか持ち合わせていないので、他の人を当たっていただけませんか?」 春雄がそう言い終える前に、3人組の一人がポケットから折りたたみナイフを取り出した。
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- 【77〜78】昭和52年度生まれの無職と有職のクズ 9
714 :名無しさん@毎日が日曜日[]:2021/02/23(火) 02:29:24.77 ID:L2DVAyEm - 「ガタガタうっせーんだよ、オッサン! オメーの事情なんか聞いちゃいねーよ! 大人しく、有り金全部出しな!」
春雄は顔色一つ変えずに口を開いた。 「それが人に物を頼む態度でしょうか?」 3人組が一斉にゲラゲラ笑い出した。 「このオッサン、ラリってんじゃねーの? いいから、やっちゃえよ。少し斬りつければビビって財布ごと置いて逃げ出すって」 3人組のうちの、ナイフを持っているのとは別の少年がそう言った。 「やれやれ……、直接身体に教えて差し上げるのは私の流儀ではないのですが、仕方ありませんね」 春雄がそう言ってため息をつくと、ナイフを持った少年が奇声をあげて春雄に襲いかかってきた。 春雄はサッと身をかわすと、少年の後頭部に手刀を喰らわせた。 春雄の手刀を喰らった少年は、そのまま前のめりの姿勢のまま、アスファルトに倒れ込みピクピクと痙攣したかと思うとやがて微動だにしなくなった。
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- 【77〜78】昭和52年度生まれの無職と有職のクズ 9
715 :名無しさん@毎日が日曜日[]:2021/02/23(火) 02:41:28.94 ID:L2DVAyEm - 「お、おい! ケンジ!」
残りの2人の少年のうちの一人がそう叫んでナイフを持ったままうつ伏せに倒れている少年の元に駆け寄った。 もう一人の少年は、一体何が起きたのか? とでも言いたげな表情のまま呆然と立ち尽くしている。 「大丈夫、死んではいませんよ。……ただ、私は一線を退いてもう10年以上経つので、手加減が出来ないんです。本当にすいません。」 春雄は倒れている少年と、介抱している少年にそう言うと深々と頭を下げた。 そして、呆然と立ち尽くしている少年に真っ直ぐ見つめた。 「まだ……、やりますか?」 春雄がそう言うと、少年は我に帰り頭を大きく左右に振って、慌ててその場から逃げていった。 「あなた達、置いていかれてしまいましたね 」 地べたに倒れ込んだ少年と、介抱する少年の2人の二人に春雄は優しく語りかけた。
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- 【77〜78】昭和52年度生まれの無職と有職のクズ 9
716 :名無しさん@毎日が日曜日[]:2021/02/23(火) 02:56:38.02 ID:L2DVAyEm - 騒ぎを聞きつけて、どこからか暴力団員風の男がやってきた。
「ウチのシマで好き勝手やってんのはテメェかぁ? このうすらハゲ!」 春雄は表情を変えずに暴力団員風の男を一瞥した。 「粗暴な物言いは好きではありません。今、私は些か機嫌が悪いのです。どうやら、あなたには教育が必要なようですね?」 すぐ後にもう一人、暴力団員風の男がやって来たが、春雄の顔を見るなり咥えていたタバコを落とし 目を大きく見開いて、驚嘆の声を上げた。 「と、と、と、藤間先生! 藤間春雄先生じゃないですか!」 春雄はにこやかな表情で後からやってきた暴力団員風の男に話しかけた。 「やぁ、石川さんじゃないですか! ご無沙汰してます。お元気そうで何よりです」 春雄に話しかけられた石川という暴力団員風の男は恐縮しきりといった風に、何回か春雄に頭を下げた。 「藤間先生! ウチの若いのが、先生に何か失礼な事をしませんでしたでしょうか?」
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