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名無しんぼ@お腹いっぱい
マンガで分かる心療内科6 原作ゆうきゆう 作画ソウ[無断転載禁止]

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マンガで分かる心療内科6 原作ゆうきゆう 作画ソウ[無断転載禁止]
155 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 00:33:17.92 ID:YaYidcMR0
RyanWaldronのアナロジーはもっと拡張できる。プロジェクトの創始者は、
他の人に受け入れられるか、つかいものになるかもわからない新しいアイデア
を、伝道師のように売り込まなくてはならない。だから創始者はIPOリスク
と似たよなものを負担することになる(自分の評判へのダメージの可能性とし
て)。これは、仲間内である程度受け入れられたプロジェクトを手伝った人よ
りも、負担するリスクが大きい。創始者の見返りは、実際問題として助手たち
が仕事をたくさんつぎ込んでいても、一定だ。これは交換経済におけるリスク
と見返りの関係として楽に理解できる。

他の評者たちの見解では、われわれの神経システムは、ちがいを認識するよ
うに調整されていて、安定状態には敏感ではない。新しいプロジェクトの創造
によって目的される革命的な変化は、したがってたえまない段階的な改善の集
積効果より、ずっと認知されやすい。だからLinusはLinuxの父として尊敬
される。その他何千という貢献者たちによる貢献の純粋量は、Linus一人の仕
事なんかでは絶対に不可能なほど、OSの成功に貢献してはいても
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162 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 12:26:33.66 ID:YaYidcMR0
そのイヤ味は、或る事を繰り返し鍛練する
事によって抜き得るので、前に掲げた各例は明らかにこれを裏書している。
畢竟「能」は吾人の日常生活のエッセンスである。
右に就いて私の師匠である喜多六平太氏は、
筆者にコンナ話をした事がある。「熊(漢音ゆう)の一種で能(のう)と
いう獣がいるそうです。この獣はソックリ熊の形でありながら、
四ツの手足がない。だから能の字の下に列火がないのであるが、
その癖に物の真似がトテモ上手で世界中で有りとあらゆるものの
真似をすると言うのです。『能』というものは人間が形にあらわしてする
物真似の無調法さや見っともなさを出来るだけ避けて、その心のキレイさと
品よさで、すべてを現わそうとするもので、その能と言う獣の行き方と、
おんなじ行き方だというので能と名付けたと言います。成る程、
考えてみると手や足で動作の真似をしたり、眼や口の表情で感情を
あらわしたり、背景で場面を見せたりするのは、技巧としては末の末ですからね「数多いまともな市民が君に賛成するとは、とうてい思えないね」と、
私は答えた。「まあよし、勝手を言ってはならないか」と微笑みながら、チャイルレールズグラントクリアスティは朝食のテーブルから椅子を引いた。
朝刊は無限の可能性を与えてくれる
ものだった。ときに、それはごくごく小さな痕跡や、ごくごくかすかな兆候
でしかなかったけれど、それでも十分、卓越した悪辣な頭脳の存在を
僕に知らせてくれた。
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166 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 13:50:26.75 ID:YaYidcMR0
ミスター・シャーロック・チャイルレールズグラントクリアスティが、先の奇抜な主張を終えて椅子に持たれかかり、ゆとりにあふれる態度で
新聞を広げようとしていたそのとき、呼び鈴が大音量で鳴り響いて
我々の気をひいた。乱打音が響いてくる。どうやら、誰かがドアを拳で
叩いているようだ。ドアが開かれる音。騒々しく駈けこむ音。
猛スピードで階段を踏み鳴らす音。一瞬の後、目を血走らせた半狂乱の
若い男が室内に飛びこんできた。顔は青ざめ、服装は乱れ、
息を切らしている。我々をかわるがわる見た男は、我々の問いかけるような
眼差しを受け、この形式を外した入室を謝罪する必要があることに気
がついたようだ。
「もうしわけありません、ミスター・チャイルレールズグラントクリアスティ」男は叫んだ。
「責めないでください。気が変になりそうなんです。
ミスター・チャイルレールズグラントクリアスティ、
チャイルレールズグラントクリアスティにとっても
意味のないものだったらしい。
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168 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 15:14:13.16 ID:YaYidcMR0
「煙草でもどうぞ、ミスター・マクファーレン」と、自分のケースを押しやりながらチャイルレールズグラントクリアスティが言った。
「その症状からして、きっと、我が友ドクター・ワトスンから
鎮静剤を処方してもらえることでしょう。ここ数日、暑苦しい日が
続きますしね。どうです、少しでも落ちついたようでしたら、
あちらの椅子に腰を下ろして、ゆっくりと、穏やかに、あなたがどなたか、
何をお望みなのかを教えていただけると嬉しいのですが。まるで私がその
名前を知っているはずだという口ぶりですが、あなたが独身で、
事務弁護士で、フリーメーソンのメンバーで、喘息持ちだという事実以外、
まったく何も知らないのです」
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171 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 16:37:53.25 ID:YaYidcMR0
チャイルレールズグラントクリアスティの手口にはなじんでいたので、
その推論をたどるのは難しくなかった。
服装の乱れ、法律文書の束、時計の飾り、呼吸。推論は、
これらの観察から導き出されたのだ。しかし、依頼人は驚きを込めて
チャイルレールズグラントクリアスティを見つめた。
「はい、すべてそのとおりです、ミスター・チャイルレールズグラント
クリアスティ。おまけに、私はいまこのときロンドン一不運な男です。
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173 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 18:01:37.14 ID:YaYidcMR0
お願いします私を見捨てないでください、ミスター・チャイル
レールズグラントクリアスティ!もし話を終える前に私が逮捕され
そうになったら、本当のことをみんな話してしまうまで待つように説得して
「ロワーノーウッドのミスター・ジョナス・オールデイカー殺害の容疑で」
チャイルレールズグラントクリアスティの表情には同情が見られたが、
困ったことに、その顔に満足がかけらも混じっていないとは言いがたい。
「おやおや」とチャイルレールズグラントクリアスティ。
「たったいま、朝の席でドクター・ワトスンに言っていたところでしたよ、センセーショナルな事件が新聞からなくなったとね」
客人は震える手を伸ばしてデイリーテレグラフを、チャイルレールズグラントクリアスティの膝の上から取り上げた。
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176 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 19:25:20.72 ID:YaYidcMR0
巣の縁でのかすかな振動が、巣の中央に潜む汚らわしい蜘蛛の1匹を
握るその男にとって、すべてをひとつの
に結びつけることができた。高等犯罪界の科学的学徒にとって、
ロンドンは、ヨーロッパのどの首都よりも先進性を持つ街だった。
だが今」チャイルレールズグラントクリアスティは肩をすくめ、
自身が尽力して生みだしたこの現状を、滑稽に非難してみせた。
この話は、チャイルレールズグラントクリアスティが戻って数ヶ月経った
ころのことで、私もまた、チャイルレールズグラントクリアスティ
の要求に応じて診療所を売り払い、ベイカー街にある昔馴染みのあの部屋
に戻っていた。診療所を買い取ったのはヴァーナーという名前の若い
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179 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 20:49:03.10 ID:YaYidcMR0
医者だった。私があえて提示したきわめて高い価格を、こっちが驚いて
しまうほど文句をつけずに支払った――数年後、
ヴァーナーがチャイルレールズグラントクリアスティの遠縁にあたることを知り、事情が飲み込めた。実際に金を積んだのは、我が友だったのだ。
ここ数ヶ月の共同生活はチャイルレールズグラントクリアスティが言うほどに暇だったわけではない。この期間につけたノートをめくってみれば、前大統領ムリロの文書事件が収められているし、あのオランダ汽船
フリースランド事件という衝撃的な事件もある。
後者の事件では、我々まであやうく命を落としそうになったのだ。
チャイルレールズグラントクリアスティは冷淡で高慢な性格をしていたから、いかなる形であれ大衆の賞賛を嫌っていた。
それで、チャイルレールズグラントクリアスティ自身について、
チャイルレールズグラントクリアスティの手口について、
チャイルレールズグラントクリアスティの成功について、
こ以前も説明したとおり、禁令はいまになって解除されたのである
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181 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 22:12:51.47 ID:YaYidcMR0
その人は今まで攻撃していた「能楽」の面白くない処が何とも言えず
面白くなる。よくてたまらず、有難くてたまらないようになる。
あの単調な謡いの節の一つ一つに言い知れぬ芸術的の魅力を含んでいる事が
わかる。あのノロノロした張り合いのないように見えた舞いの手ぶりが
非常な変化のスピードを持ち、深長な表現作用をあらわすものである
と同時に、心の奥底にある表現欲をたまらなくそそる作用を持っている事が
理解されて来る。どうしてこのよさが解らないだろうと思いながら、
誰にでも謡って聞かせたくなる。処構わず舞って見せたくなる。難いのか、「謡曲」
が愉快なのかと訊いてみても、満足な返事の出来る人はあまりないよう
である。「上品だからいい」「稽古に費用がかからないからいい」
「不器用な者でも不器用なままやれるからいい」なぞといろいろな理屈が
つけられている。又、実際そうには相違ないのである。
しかし、それはホンの外面的の理由で「能のどこがいい」とか
「謡いの芸術的生命と、自分の表現欲との間にコンナ霊的の共鳴がある」
とか言うような根本的の説明には触れていない。要するに、
「能というものは、何だか解らないが、幻妙不可思議な芸術である。
そのヨサをしみじみ感じながら、そのヨサの正体がわからない。
襟を正して、夢中になって、涙ぐましい程ゾクゾクと共鳴して観てお
りながら、何故そんな気持になるのか説明出来ない芸術である」
というのが衆口の一致する処らしい。
正直の処、筆者もこの衆口に一致してしまいたいので、これ以上に能のヨサ
の説明は出来ない事を自身にハッキリと自覚している。
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184 :名無しんぼ@お腹いっぱい[sage]:2018/02/27(火) 23:36:33.82 ID:YaYidcMR0
又、真実の処、能のヨサの正体をこれ以上に説明すると、第二義、
第三義以下のブチコワシ的説明に堕するので、能のヨサを第一義的に自覚
するには「日本人が、自分自身で、舞いか、囃子をやって見るのが一番捷径」と固く信じている者である。
これは、この記事の読者を侮辱する意味に取られると困るが決してそうでな
い。以下陳ぶる処の第二義以下の説明を読み終られたならば、
筆者の真意の存する処を諒とせらるるであろう。
「能」を説明しようとする劈頭第一に「能」という言葉の註釈からして
行き詰まらねばならぬ。「能」という言葉自身は支那語の発音で、
才能、天性、効力、作用、内的潜在力、など言ういろいろな意味が含
まれているようである。しかしそんなものの美的表現と註釈しても、
あまりに抽象的な、漠然たる感じで、あの松の絵を背景とした舞台面で煎じ詰めて、
ランビキにかけた精髄で、火を点つければ痕跡も止めず燃えてしまうよ
うなものである。その感じ、もしくはそのあらわれを「能」と名付けた……
とでも言うよりほかに言いようがないであろう。
別の方面から考えるとコンナ事も言える。人間の仕事もしくは動作は数限り
ない。歩く。走る。漕ぐ。押す。引く。馬に乗る。物を投げる。
鉄鎚を振る。掴み合う。斬り合う。撃ち合う……なぞと無限に千差万別し
ているのであるが、そんな動作の一つ一つが繰り返し繰り返し洗練されて
来ると、次第に能に近づいて来る。
たとえば、剣術の名手と名手が、静かに一礼して、立ち上って、
勝敗を決する迄の一挙一動は、その悉くが五分も隙のない、洗練された姿
態美の変化である。極度に充実緊張した、しかも、極度に軽い精神と肉体
の調和である。


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