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165 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:12:12 ID:wi77UAJb0 - 443 :元登山者 :2007/03/11(日) 18:21:07 ID:p/o9vpbt0
聞いた話です。 田舎の友人に聞いた話です。 私の田舎は山に囲まれていて、本当に山里と言った感じのところです。 子供の頃の遊び場は専ら山の中で、よく一緒に遊んだ友人の話。 まだ、小学生の頃、その友人が一週間以上休んだことがありました。 風邪の流行る季節でもなく、先生も欠席の理由について何も言わず、 不思議だなと思った記憶があります。 しばらくして、久しぶりに登校してきた友人は丸坊主で別人のようになって いたのです。 その友人と私は帰り道が一緒の方向なので、帰り道に休んでいた理由を聞く ことにしました。その日の帰り道、「一緒に帰ろうで。」と声をかけて 帰りの道々に「なんで休んでたん?風邪?」と聞くと、友人は「まあね」 とか「色々あって」と言いたくなさそうでしたが、そのうち「まあ、あまり いい話じゃないんだけどさ」と言いながら話してくれました。
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166 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:13:02 ID:wi77UAJb0 - 444 :元登山者 :2007/03/11(日) 18:55:20 ID:p/o9vpbt0
続きです。 「こないだの休みの時なんだけどさ・・」 と友人が話した内容はこんな感じの内容でした。 前の休みの時、暇だったので遊びに行こうと周りに声をかけたけど みんな用事や出かけていたりで、結局、一人で山に遊びに行ったそうです。 その頃、「煙の実」と言う殻を剥いて息を吹きかけると煙が出る木の実を 集めるのが私たちの間で流行っていて、その実を探しに行ったそうです。 山道から少し外れた所を下を向いて歩いていると、いつもとは違う山道を 見つけたそうです。「どこに行ってるんだろう?」と思い、その道を歩いて 行くと、ちょっとした畑に出たそうです。畑といっても雑草がボウボウで、 誰かが手入れしているようには見えなかったそうです。 「何が植えてあるんだろう?」と思い、近寄ろうとすると、向かい側の藪 からデカイ人が出てきて、友人を見て「どこのガキじゃ!食っちまうぞ!」 と怒鳴られ、怖くなって大急ぎで逃げ帰ったそうです。 帰ってから、家族にその話をすると、いきなりお祖父さんに引っ叩かれ、 神社に連れて行かれて坊主にされ、灰塩とお神酒を掛けられたそうです。 何がなんだか分からない友人にお祖父さんは「お前は入っちゃいけない 所に行ったんだ。もしかしたら、攫いに来るかもしれん。しばらく家から 出るな。」と言われ、学校も休んでたそうです。 その後、私も山には人が入ってはいけない場所があると言うのを初めて 聞きました。 皆様も山に登る際は気をつけてください。
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167 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:13:58 ID:wi77UAJb0 - 167 1/3 2007/02/05(月) 22:47:31 ID:uuWi3n130
一週間前の話。 娘を連れて、ドライブに行った。 なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。 で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。 娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。 そしたら、急にエンジンが停まってしまった。 山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから 娘と途方に暮れてしまった。飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。 で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン 行くことにしたんだ。 車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。 夜の山って何も音がしないのな。たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。 で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。 俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。 今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで 「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。 最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、 音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。
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168 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:15:03 ID:wi77UAJb0 - 168 2/3 2007/02/05(月) 22:48:10 ID:uuWi3n130
そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいて くるのが見えた。形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで 足は一本に見えた。そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに 振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。 めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは 「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることも できないでいた。 そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。 通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。 音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして 娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。 近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。思い出したくもない 恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。 俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って 叫んだんだ。 叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。 俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が 「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」 ってぶつぶつ言ってる。
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169 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:15:53 ID:wi77UAJb0 - 169 3/3 2007/02/05(月) 22:48:49 ID:uuWi3n130
やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。そしたら かかった。急いで来た道を戻っていった。娘はとなりでまだつぶやいている。 早く人がいるとこに行きたくて、車を飛ばした。ようやく街の明かりが見えてきて、 ちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から「テン・・ソウ・・メツ・・」に いつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。 家に帰るにも娘がこんな状態じゃ、って思って、目についた寺に駆け込んだ。 夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ?には明かりがついてて、娘を引きずりながら チャイムを押した。 住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。 山に入って、変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、気休めにしかならないだろうが、 と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。 住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって、泊めてもらうことにした。 娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら 一生このまま、正気に戻ることはないらしい。住職はそうならないように、娘を預かって、 何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。妻にも俺と住職から電話して、 なんとか信じてもらった。住職が言うには、あのまま家に帰っていたら、妻にもヤマノケが 憑いてしまっただろうと。ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは、妻も 娘に会えないらしい。 一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。 ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。 早くもとの娘に戻って欲しい。 遊び半分で山には行くな。
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170 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:36:31 ID:wi77UAJb0 - 567 :元登山者 :2007/03/17(土) 19:05:54 ID:FCn9y77U0
田舎で聞いた話です。 田舎で働いている友人から聞いた話です。 彼は在宅介護の仕事をしていて、一人暮らしの老人のウチへ良く行くことが あります。その彼の巡回先に山際の家に住んでいるお爺さんがいます。 無口な人なのか、あまり話したことが無い人なのですが、ある日、彼が 行くと、人が変わったようによく喋ったそうです。 そんなことが何度か続いたので、ある日「最近、機嫌がいいですね。何か 良い事でもあったんですか?」と聞くと、お爺さんは「いやあ、飲み友達が できてのう。」と嬉しそうにいい、「そうじゃ、あんたも今晩どうだ?」と 思いもよらぬ誘いを受けました。「いえいえ、私は」と断ったそうですが、 普段、世話になっているお礼がしたいから。と言われ夜に再訪することに なりました。
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171 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:39:05 ID:wi77UAJb0 - 568 :元登山者 :2007/03/17(土) 19:29:57 ID:FCn9y77U0
その日の夜、そのお爺さんのウチを尋ねると満面の笑みのお爺さんが 迎えてくれました。そして、通された場所は山側の縁側。「なんで縁側?」 と思い、お爺さんに「何で居間じゃなくて縁側なんですか?と聞くと、 「お客さんは山から来るんじゃ」と言ったそうです。 とりあえず縁側に行き、先にお爺さんと飲みながら暫くすると、山から ざわざわ、と人が茂みを掻き分けながら降りてくる気配がしました。 ぼんやりと、人のような影が降りてくるのが見えました。 「おお、こられたか」お爺さんが言うと、その影は手を振りながら近づいて 来ました。縁側の明かりに照らされて見えたその影は、明らかに猿だった そうです。猿と言っても小学生くらいの背丈はあり、普通の人間のように 歩いていたそうですが、毛が黒く、手足が長かったそうです。 人間のように縁側に腰掛け、「は?」と唖然としている友人を尻目に お爺さんは猿に酒の入った湯呑を渡し「まあ、一杯」と勧めていたそうで す。お爺さんが猿に話しかけると、猿はまるで相槌を打つように、うんうん と頷き、お爺さんが「この人がいつも世話になるヘルパーさんじゃ」 と友人を紹介すると、猿は友人の方を見、ペコリと人間のように会釈した そうです。 よくわからない飲み会は結構、遅くまで続き、猿が縁側を立ち、おじいさんに 手を振って山に帰っていったそうです。 友人は、その日、お爺さんのウチに泊まって帰ったそうです。 その話を聞いたとき、私は「そのお爺さんは今でも元気なん?」 と聞くと、友人は「ああ、今でも元気だし。よく喋るよ。今でも 猿と飲んでるんじゃない?」と言っていました。
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172 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:43:21 ID:wi77UAJb0 - 137 名前:オチャカナ[1/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:23:25 ID:RxbVZm330
もうかなり昔のことになるので、思い出しながら書いていきたいと思います。 この歳になってあらためてそのことを考えますと、経験した自分自身でも とても現実と思えない内容なので、記憶だけでなくその後に見た悪夢などが 入り混じっているのでしょう。 正直に申しますと悪夢にうなされた記憶など全く無いのですが、 あれはそういうことだったのだと考えるようにしています。 あれは三十年くらい前、当時わたしは中学生で、まだ猟師を生業に する人たちも若干残っていた頃の話です。 わたしの祖父には狩猟の趣味があり、愛犬2頭を連れてよく狩りに 行っていたものでした。 一匹は雪のように白く、もう一匹は墨のように黒い犬で、 犬達の名前は外見そのままシロとクロといいました。 祖父自慢の賢い犬達で、私ともすぐ仲が良くなったことを覚えています。 雪の無い季節にはわたしを連れ立って行くこともありました。 狩りへついて行くことに対して、両親は余り良い顔を していなかったようですが、わたしにとっては楽しみのひとつでした。 体力的に無理をした覚えも無いので、わたしがいるときはそれほど 奥深くまで行かないようにしていたのだと思います。 誤射を避けるためでしょう、散弾は使わず、山に入る時には常に 自分の傍にいるようわたしに厳しく言い聞かせていました。 傍にいないときには決して発砲しなかったとも記憶しています。
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173 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:44:10 ID:wi77UAJb0 - 138 名前:オチャカナ[2/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:24:12 ID:RxbVZm330
その日は祖父にしては珍しく、夕刻になってもまだ一匹の獲物も 仕留めることが出来ずにいました。 帰る時間も近づき焦りが出てきたのか、そのときは「どうもおかしい……」とか 「どうなっているんだ」といったことをしきりにつぶやいていたと思います。 今思えば、祖父は長年の経験から山の様子などに、いつもと違う なにか変化のようなものを感じ取っていたのかも知れません。 あれを見たのはそんな時でした。 「なんだ? あれは」 怪訝そうな祖父の視線を追ってみると、岩場と木立の境界あたりに動物がいて、 魚を食べているようでした。 「猿……か?」 言われてみると確かに猿にも似ているのですが、私には猿には見えませんでした。 大きさは猿と同じくらいですし、目の大きい『アイアイ』という猿に似た印象では あるのですが、もっとなんというかヌメッとしているような嫌な質感をしていて、 うまく説明できないのですが明らかに違う生き物でした。 この後に起きたことを思い出させるような動物は図鑑の写真を見るのも嫌なので、 どの辺りが似ているとか似ていないとか細かく指摘することはしたくありません。 とにかくあれは得体の知れない生き物でした。
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174 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 05:46:22 ID:wi77UAJb0 - 139 名前:オチャカナ[3/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:24:56 ID:RxbVZm330
「見たことのないやつだが、とにかく仕留めてみるか」 祖父はわたしに耳を塞ぐよう合図すると、すばやく猟銃を構え発砲しました。 生き物は岩の向こうに倒れこみ、祖父も手ごたえを感じていたようです。 これは仕留めたと思った瞬間、茂みがガサガサと揺れ、取り逃がしたことが解りました。 追いかけた犬達もそれほど経たずに戻ってきてしまい、申し訳なさそうにしていました。 あの生き物がいた辺りに行くと、まだ食べられていなかったヤマメが数匹、 岩の上に残っていました。 「今夜のおかずだな」 祖父は魚を集めて喜んでいました。 そうこうしているうちに夕闇が迫って来たため、近くにあるという 祖父の知り合いの狩猟小屋へと向かうことになりました。 そこは狩猟で泊り込む為に用意したもので、基本的に最低限の炊事と 寝泊りをするだけの簡素な作りの小屋でした。 「美味いぞ?」 祖父からは焼き魚を食べるよう何度か薦められましたが、あの生き物が触れていたかと思うと どうにも気味が悪かったので、私は魚に手を付けませんでした。 それほど数があったわけでもないので、魚は祖父と犬とでペロリと平らげてしまいました。 その晩のことです
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175 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 06:00:00 ID:wi77UAJb0 - 140 名前:オチャカナ[4/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:31:21 ID:RxbVZm330
夜になり、なかなかわたしが寝付けずにいると 「……ナ」 外からなにか声がするのです。 最初は空耳だろうと思い、それほど気にも留めずにいました。 しかし片言というか、ボソボソと不鮮明で聞き取りにくいのですが 「オチャカナ、オチャカナ」 と言っているように聞こえます。 そのうち壁の向こうでカリカリと引っかくような物音がして、 その音は次第に上へと、屋根まで移動したように思われました。 (なにかがいる) そして気が付くと、窓の隅から丸く光る目が見下ろしていたのです。 暗くてよく見えなかったにも関わらず、 直感的に(あ! あの生き物だ)と思った瞬間、 こんどは、はっきりと 「オチャカナ、オチャカナ。 ワタチノオチャカナヲカエチテオクレ……」
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176 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 06:01:06 ID:wi77UAJb0 - 141 名前:オチャカナ[5/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:33:06 ID:RxbVZm330
「わぁあああああああっ!」 思わずわたしは叫んでいました。 悲鳴に驚いた祖父が駆けつけましたがもうあの生き物の姿はありません。 流石に祖父もすぐには信じてはくれず、最初の内は怖い夢でも見たのだろうと 笑っていたのですが、わたしの怯えかたが尋常でないことを察し真面目に 聞いてくれるようになりました。 祖父に話すだけ話すと、平常心を取り戻すことが出来ました。 落ち着きを取り戻してみると、他の生き物が人の言葉を話すなど考えられない ことですし、やはり悪夢だったのだろうということでその場は納得しました。 それでもわたしの心細そうにしている様子を見て、祖父は添い寝してくれました。
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177 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 06:02:17 ID:wi77UAJb0 - 142 名前:オチャカナ[6/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:36:06 ID:RxbVZm330
祖父が寝付いた後もわたしは寝つくことができず、悶々としていました。 そうしているうちに、またあの気配を感じ祖父を揺り起こしました。 「オチャカナ、オチャカナ。 ワタチノオチャカナヲカエチテオクレ……」 今度は祖父もあの声を聞いたようでした。 祖父はよほど肝が座っていたのか、孫の前で臆するわけにはいかないと思ったのか、 「もう無いわっ! わしと犬とで食ってしまったわい!」 と怒鳴りつけると銃に弾を込め始め、外へ出て撃ち殺そうとしました。 暗いこともあってか銃は当たらなかったようでしたが、追い払うことは出来ました。 「いけっ!」 森に逃げ込んだ生き物に向けて、祖父はシロとクロをけしかけました。 犬達は吠え立てながら木立の奥へ走りこんで行き、その鳴き声は 次第に遠のいていきました。
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179 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 06:04:28 ID:wi77UAJb0 - 143 名前:オチャカナ[7/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:36:35 ID:RxbVZm330
「わしもこの山を歩いて何十年にもなるが、あんなのは初めてだ」 銃に弾を篭め直しながら、祖父は首を傾げていました。 「また戻ってくるようならこんどこそ仕留めてやる」 そう祖父が言った時です。 入り口の方でなにか物音がしたようでした。 祖父と共に様子を見に行くと、小屋の前に腹を割かれた犬が転がっていました。 正面の森の暗い闇の中では、ふたつの丸い目が光っていました。 「オチャカナ、オチャカナ。 ワタチノオチャカナヲカエチテオクレ……」 そのときの私は恐怖で頭が真っ白になり、声も出せずに震えていたと思います。 「おのれ」 大事な犬を殺された怒りが勝ったのでしょう。 祖父は猟銃を持って飛び出していきました。夜の森に2回ほど銃声が響き渡ったあと、しばらく何も音がしなくなりました。 そして唐突に、森の奥から今も忘れられないあの声が聞こえたのです。 「オチャカナ! オチャカナ!」 今までと違う、興奮して叫んでいるような響きでした。
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180 :名無しんぼ@お腹いっぱい[]:2007/03/18(日) 06:06:00 ID:wi77UAJb0 - 144 名前:オチャカナ[8/8] 投稿日:2007/03/08(木) 09:38:42 ID:RxbVZm330
その後のことはあまりはっきりとは覚えていません。 子供心にあの頼もしい祖父も犬達と同様に死んでしまったのだと悟りました。 恐怖のあまりわけが解らなくなって走り続け、いつしか山道を転落して 気を失ってしまったようなのです。 運良く狩猟に来ていた猟師に助けられ、 わたしが次に気が付いたときは病院のベッドの中でした。 あの出来事を必死で大人たちに説明しましたが、まともに取り合って もらえるはずも無く、何かの恐怖がもとで現実と幻覚の区別が 付かなくなったというような診断結果を受けました。 そのためしばらくは入院して過ごす羽目になりましたが、そのため 祖父の葬式にも出ることが叶わなかったのはなによりも悲しいことでした。 祖父の死も、最終的はクマかなにかの獣に襲われたということで 片付けられてしまいました。 信じてもらえないことが解ったので、そのうち他人にはこのことを 話さなくなり、自分でも夢だと思うようにしてきました。 ですが、あの恐ろしい出来事が夢だったとして、 いったいどこからが夢なのか何度思い返しても未だに解らないのです。 母が祖父の葬式について聞かせてくれたことがあったのですが、 祖父の知り合いの猟師さんが「あれはクマの仕業なんかじゃねぇ」 と言っていたそうです。 わたしは川魚を一切食べることができません。 犬の無残な姿を思い出してしまい、今でも胃が受けつけないのです。
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