- 【クラ板には】名曲喫茶 3店目【必須?】
179 :年がわかるね[]:2013/11/02(土) 17:18:37.15 ID:rcMZBC+Y - むかし、大阪の梅田新道に、名曲喫茶「日響」(にっきょう)という店があった。
クラシック音楽を、落ち着いて聴くことができる店だった。 クラシックに縁のない私だったが、友人に連れて行ってもらい、病み付きになった。 店の奥には、巨大なスピーカーが左右に据えられていて、レコードは何千枚もあった。 店内は概してこげ茶色で、壁は白壁。 教室にあるような質素な木のテーブル。 深い緑色のシートを張った木椅子。 若くはないが、魅力的なママがいた。 店員の女性もいろいろ、みな素敵だった。 「ロペ」という名のシャム猫がいて、客の足元を、そっと歩く。 客は、自分の聴きたい曲を、リクエストすることができる。 おしゃべりをしてはいけない。 しゃべると、店員が注意にくる。 二階もある。 二階ではいくら大声をあげてしゃべってもかまわない。 あのころ、市民も学生も、まだ元気で、この二階で熱い議論を交したものだった。
|
- 【クラ板には】名曲喫茶 3店目【必須?】
180 :年がわかるね[]:2013/11/02(土) 17:19:29.53 ID:rcMZBC+Y - しかし、一階は音楽を聴くための部屋。
マニアックな常連客が集まってくる。 最前列で、ベートーベンに酔い、両手を挙げ、堂々と指揮をしながら聴いているのは、常連中の常連。 コーヒーは超不味いが、やがて、その不味さが気にならなくなる。 最初、コーヒーは一杯60円だったが、後日、70円、80円と値上がりした。 食べるものは、バタートーストとサンドイッチだけ。 注文伝票などなく、客は帰りに店の出口で、「コーヒーとトーストです」と、自分のオーダーを正直に申告して、それぞれの料金を払う。 私はそこで、沢山の時間をすごした。 仕事が終わると、電車に乗り、道を急いで、日響に通った。 その店が閉鎖されるまでの十五年間、三日に二日はそこに通った。 そんな私を、友人は、「おまえ病気やな」と評した。 いろいろな曲に出会ったが、一番素晴らしいのはバッハだった。 特に「シャコンヌ」を聴くと、偉大な人格に接している気持になった。 好きな曲がどんどん増えていった。 「シチリアーナ」や、「管弦楽組曲二番」は幾度となくリクエストした。 シューベルトの「冬の旅」は、私の琴線に響いた。 「死と乙女」の二楽章もいい。 そんな曲ばかりリクエストする私に、ママは、「ロマンチストね」と言ったが・・・、それは誉めすぎでしょう。
|
- 【クラ板には】名曲喫茶 3店目【必須?】
181 :年がわかるね[]:2013/11/02(土) 17:20:31.71 ID:rcMZBC+Y - その店に通うようになって十五年たったころ、店の敷地は借地だったのだが、
地主の都合で立ち退きを迫られ、名曲喫茶「日響」は閉店することになった。 閉店のその夜、記念のお別れパーティーがあった。 何を飲んでも食べても、無料。 ほとんどの常連が集まり、別れを惜しんだ。 最後に、皆で、ママを胴上げして、お別れ。 ああ、私の青春の日々よ。 http://happy.papnet.jp/monologue-box1/monologue0005.html
|