- 村治佳織 8
982 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 【東電 80.6 %】 [sage]:2012/07/12(木) 21:23:56.15 ID:7ioSeoC3 - 日本盤のアンセルメのベートーヴェン交響曲全集は6枚組で発売されています。
そして、このオーストラリア盤も全部揃えると6枚組のセットになる訳ですがるどういうことか中身が違います。 曲の組み合わせもそうですが、オーストラリア盤の方が収録曲数が多いのです。 それがこの最後の2枚組に含まれている「レオノーレ序曲第3番」です。 LP時代は序曲集の中に含まれていたものが、今までCD化されていなかったことが不思議でなりません。 それが、このオーストラリア盤ではじめて日の目を見たのですから日本盤より価値があるということです。 それはさておき、この2枚組のセットの中心は何といっても交響曲第9番「合唱」でしょう。 アンセルメの「合唱」なんてレコ芸では話題になったこともありません。 しかし、世の中は捨てたもんじゃありません。 「クラシックCD名盤バトル」なる洋泉社の書物にはこのアンセルメの「合唱」が取り上げられているのです。 まあ、その中では名盤というよりは珍盤バトルみたいな取り上げ方なんですけど アンセルメファンにとっては溜飲が下がる思いでほくそ笑んだものです。
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983 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 【東電 80.6 %】 [sage]:2012/07/12(木) 21:24:33.81 ID:7ioSeoC3 - 流れ的に言えばこれも「運命」と同じ傾向の演奏ということが出来ます。
すなわち、第一楽章なんかテンポの変化の激しい演奏ということです。 それに、なんと言ってもトランペットが異常に目立つ演奏です。 これは第一楽章から第4楽章まで徹底していてベートーヴェンの魂の叫びがこのトランペットの響きに象徴されているような感じすら受けます。 しかし、全体のサウンド的には思ったよりどっしりとした響きで、 アンセルメの目指したベートーヴェンはフランス的なものとドイツ的なものの中間を狙ったのではと思えてきます。 それは表情付けの観点から一拍目にアクセントを置いたフレーズで旋律線が描かれており、 実に明快でストレートな表現になっていることです。 これはリズミカルに響く反面、一般に聴かれる演奏とはちょっと違うなぁという印象になり、いわゆるラテン系の明るい音色になっています。 そしてもティンパニの音もクローズアップ気味に捉えられており、これもリズミカルに響く一因になっています。 こういう楽器の響きのバランスは独特で、これがアンセルメの第九の特色となっています。 個人的にはこういう響きは好きです。 そう言えば、モントゥーがロンドン交響楽団を指揮した第九もやや明るい響きがしていましたが、 どうもフランス系の指揮者の特徴かもしれません。 第二楽章はテンポの変化はあまり目立ちませんが、 相変わらず押し出しの強いリズムで推進力のある演奏を聴かせてくれます。 オーケストラの響き的にはティンパニは左側に配置されているようです。
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984 : 忍法帖【Lv=40,xxxPT】 【東電 80.6 %】 [sage]:2012/07/12(木) 21:26:43.71 ID:7ioSeoC3 - 第三楽章は美しいカンタービレで、アンセルメの美意識が顕著に感じられます。
ここではバソンの響きが魅力的です。このどことなくくすんだ響き、いわゆる鼻にかかったような独特な音がします。 これがスイス・ロマンドの音色の特徴です。 この音でこの叙情楽章を聴くとまた独特の味わいがあります。 今ではほとんどこの響きは聴くことが出来ませんから、このアンセルメのベートーヴェンは貴重です。 そして、ホルンの響きも独特の様な気がします。 この頃のホルンは多分ラッパの中に手を突っ込むバルブ式のホルンを使っていると思いますから、 その響きではないでしょうか。ですから良く聴いていると所々で音程が不安定になっています。 さて、終楽章です。ここでも冒頭トランペットが炸裂します。 こういう演奏はびっくりします。 俺のベートーヴェンはひとあじちがうぞ、というアンセルメのこだわりが聴こえてきます。 それに続くコントラバスの響きはぎゅんぎゅん唸るというよりはアクセントがついてゴツゴツとはしていますがいささか軽く聴こえます。 これはコントラバスの弓の握り手がフランス式であることからくる響きなのかもしれません。 スペアナで確認すると63Hz以下はすとんと落ちています。 一つ残念なことは、オーストラリア盤だけかもしれませんが、最初のコントラバスの主題提示の最後の部分で音が不安定になりドロップアウトがあります。 それ以外は絶好調の第四楽章です。 独唱の四人はオンマイクでやや強調して録られています。 歌声は明瞭で、スター歌手たちによる四重唱は聴きものです。 ソプラノのジョン・サザーランドはこれがDECCAデビュー録音でした。 そして、この録音が有ったからこそ、後年イッセルシュテット/ウィーンフィルのレコーディングでもサザーランドに声がかかったのではないでしょうか。
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